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想い残した遅れた葉
恋文
しおりを挟む貴方と笑いあった過去があります。
笑った貴方の隣には私がいました。
ティーカップに注がれた私だけの為にブレンドされた紅茶は、とても酸っぱく感じました。
「美味しい?」
その言葉が、どれほど私へ愛情を込めたのか物語っていて、幸せな涙がこぼれてしまう。
「うん」
不器用な私の口から出たのはその一言。その言葉に困ったような顔をしながらも慈愛に満ちた顔になる貴方がとてもとても眩しかったのです。
「今日は小春日和だね」
そっと私の涙を親指で拾った貴方の口からは、優しい優しい声で私に笑いかける。
「…そうね」
静かなこの庭に、私たちだけが時を進めているように感じるほど、貴方との空間がとても、とても幸せでした。
「ケーキ、作ったんだけど…どうかな?」
テーブルの隅の方で待っていた手作りにしては上出来なチョコレートケーキがある。
私が食べられる大きさにカットしながら不安そうに言う貴方に私は「貴方の作ったものが、どれほどの味でもどのくらいの見た目でも、私は美味しいと感じるわ」そう言えれたのなら楽になるのに、それを叶えるのは難しかったようです。
「ありがとう」
カットされたチョコレートケーキを一口食べると、甘いチョコレートの味が広がった。これを作るまで貴方がどれほど努力したのか分かってしまうくらいに。
酸っぱく感じた紅茶はチョコレートケーキの味に相性が良く、貴方の愛が絶えず感じられてホロリと涙がこぼれ落ちた。
「ふふ。美味しい?」
笑う貴方の顔を見ると、とても…とても幸せでより美味しく感じます。
貴方の幸せを願いました。
貴方の隣で幸せを噛み締めた私がいたのです。
風に飛ばされた木の葉を2人で窓から眺めながら本を読みました。
こうして隣に座るなんて初めての事で、私は本に集中する事が出来ません。
「寒くない?」
そう言って1枚のブランケットを自分と私の肩にかける貴方に私は気が気でありません。
きっと、私は貴方にどうやっても勝つことなんて出来ないのでしょう。
「ありがとう」
貴方によりくっついてしまった肩に、この心臓の振動が伝わらなければいいのにと、願いながらお礼を伝えた言葉はいつもより短く早く伝えてしまったと、こうして動揺している事がバレてしまったのではないかと鼓動が早くなるのです。
「なんだか、幸せだな」
そう笑った貴方に私は見つめることが出来ず、そっと応えるように若干貴方の肩に寄りかかりました。
「私も幸せ」そう伝えられたのならどんなに楽だろうと考えながらも貴方は優しく自分と接していない肩に手をかけて自分に寄せると、幸せそうに笑うのです。
「どうしました?」
貴方が笑っていると釣られて私も顔がほころんでしまうせいで、私はいつもより固く言葉を伝えます。
「ふふ。こうしていられるのが、本当に幸せだと思ったんだ。」
貴方は本当に思ったことをすぐ言える人です。
その素直な貴方に惚れてしまった私ですが、貴方のその素直で思ったことを言えるその口が、私は本当に羨ましく思ってしまいます。
本当に、貴方は私の全てなのですね
貴方に触れられなくなってしまって、私はこの庭が怖くなりました。
もう紅茶を入れてくれる貴方がここにはいなくて、私はもうここにいる意味がなくなってしまいました。
貴方がそばにいれなくなってしまって、私はこの広い部屋が寂しくなりました。
もうブランケットをかけて肩を寄せてくれる貴方がいなくて、私はもう本を読んでいる意義さえなくなってしまいました。
もう、これが最後で、貴方に伝えられる言葉を紡ぐとしたら、きっと私は何十年もかかってしまうでしょう。
不器用な私に、貴方は何を求めてくれたのでしょう?
こんな無愛想な私に、貴方はどこを好きでいてくれたのでしょう?
笑えるようになって、泣けるようになった私に、貴方は私にどういう感情でいたらいいと言うのですか?
やっと私から抱きしめることができるようになったのに、貴方に何一つ返すことが出来なくて謝ることを許してくれますか?
なんだっていい。
なんだっていいの。
貴方が幸せなら、私が貴方を幸せにできるのなら、どうなったっていい。
これが、最期になるから。
私はなにも求めません。
だから、
だから、貴方の幸せが訪れてしまえばいいのです。
本当は、私がその幸せになった貴方の隣にいられれば、よかったというのに。
「私を許してくれ。」なんて、言ってはいけないのかもしれません。
それでも、
それでも、こうして貴方と隣にさえ並べない私に、どれほどの罰を受けさせたらいいんですか?
そう思ってしまうのです。
そう思ってしまわないと、もう。もう、貴方に会えない私は、笑えないのです。
なんでもいい。
なんでもいいの。
まだ、隣に…。
まだ隣に貴方と私がいられる世界が続くのなら、もういいんです。
こうして貴方がこんな私と出会ってくれたことが、奇跡なの。
だから…
あぁ。
やっと、分かった。
貴方に最後伝えられる言葉。
最初で最後の恋文だけれど…
『貴方が私の奇跡よ』
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