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消えかけた光の葉
魔法で動く呪われた世界を壊した男
しおりを挟むふと、走り続ける僕の初心の人を思い出す。最後までずっとずっと、僕を置いていきながらそれでも僕を見捨てずに僕のペースを乱さないようにしてくれた彼女。
貴女はまるで『ブルースター』
一途に恋をした彼女は、強い思いでこの呪われた世界を変えようとした強い女性だ。
僕には到底かないっこない相手だ。だから、傍で支えられるように僕は居たつもりで、でも彼女は1人でも生きれる強くてすごい人で…、だから、どうしても僕はお飾りになってしまっていた。
彼はその強い思いの持ち主な故に、世界の秘密を不当に知って、歯車の止まった時間の空間へ閉じ込められた。
僕たちに「行ってくる。」と、強く言って手紙を書くと彼女は怒りながら言うのを傍で見るしかなかった。
「あぁ、すぐ戻ってくるが懲役の時間を言われてないから分からないが、手紙待ってるな。」
そう言って彼女の頭を撫でて、僕に強い視線で優しく「頼んだ」と言うようにアイコンタクトして彼は消えて行った。
彼女は、教会で祈りを捧げるように手紙を何枚も書いて送る。その様子を見て、僕はただ体が壊れるからと、止めに入る事しか出来なくて息苦しく感じてしまう。
そんな僕は、彼女の方が苦しくて辛い事を理解してるのに、ただただ、何もしてやれない無能さで「彼に怒られてしまうな。」と思っていた。
大罪を犯したとされる最凶の男を何故知りたくなったのか僕には分からないけど、彼女は彼のように調べていく。
僕たちに何が出来るかなんて知れているのに、彼女はエンジンが切れない程燃え上がるように行動していた。
それなのに、僕を心配して笑いかける彼女は彼に似て、眉が上がって苦労をした人の目をしていて…僕にはもう手が届かないとハッキリ分かりきってしまった。
彼女はいつの間にかその調べ物が終わったのか、急に閉じこもるようになった。
彼への手紙は欠かさずに送るのに、彼からは手紙が来ないままだった。
「もう、やめよう?」
僕は思い切って彼女の肩を優しく手を置く。
「っ…どうして?」
震える声が、何故か分かりきってるような声色のように聞こえた。
「こんな事をしても、いつまで経っても彼からは手紙が来ない。
ディアが体を壊すだけだよ。」
彼女の愛称で言う僕の言葉に震え立って僕を睨む。
「ナナカ。そんなの、分かってるわよっ!!
それでも、私は信じてるのっ!
お兄ちゃんをずっと………」
僕は何も言えなかった。
そうだ。彼女は、ずっと待ってるんだ。だけど…、もう彼は死んでるのかもしれない。帰って来れないのかもしれない。それなら、もう僕は、僕たちはどうする事も出来ないんだ。
「分かってるよ。僕だって彼をずっと待ってる。
それでも、ディアがこうやって体を壊しながらずつと手紙を書いたり外に出ないなんて、僕は見てられないよ。」
「それはナナカの自己満足じゃない。
貴方のものになった覚えもないわ!
貴方が私を捨てたって、見捨てたって私は変わらないから。」
冷たい視線を浴びせられながらクマの酷いやつれた顔はユラユラと僕の顔から背けて机にかじりついた。
もう、僕が彼女にしてあげられる事なんて無いのかもしれない。そう思いながら、僕は立ち去ろうと思えない弱虫で、図々しくて自己中なんだと思い知らされる。
「ディア。ご飯ここに置いておくね。」
そう言って、立ち去ろうとすると手紙の紙が1枚落ちていて、読まないようにしていたのに、読んでしまう。
┄┄┄┄┄┄┄┄
お兄ちゃんは笑っていて欲しいよ。
私も、お兄ちゃんが笑っているならナナカと笑ってられる。
ずっとずっと、待ってるから。
いつでも帰ってきていいからね。
お兄ちゃんの妹 トゥイーディアより。
┄┄┄┄┄┄┄┄
眠っているディアに分厚いブランケットを掛けて、手紙も机に戻す。
キッチンに戻ると、とても苦しくなった。
彼女に何もしてあげれないのに、何も僕は歩き出せないままなのに、それなのに前を走ってる彼女は何故か止まりきって、時間がそのままのように思えて苦しくて…。
僕には、到底そうやって何かを成す事なんて出来ないのに、彼女はそれでも僕の前で走って泣いているのを我慢した1人の少女に見えた。
僕は、彼女を支える為に調べる事にした。彼女が読んだだろう歴史書や、戦争、政治、世界の決まり等を読み漁る。
彼女に気づかれないように調べていくのにも関わらず、色んなものを知って、最凶の男がどんなに恐ろしいかが分かった。
ただ、1度戦争が起こった内容で少し不思議に思った物があった。
最凶の男について、「免罪だ」と言う派閥が出来た事だった。すぐにその派閥は負けて世界中でその者たちを抹殺した事だ。
当たり前だと思った。だけど、それは1つの目線でしか見えてないからだと、僕は気づいた。
その者たちの言い分を記された物は無く、分からなかった。
ただただ、抹消されただけの無意味な戦だと言われている様で、変な気持ちになった。
「ナナカ?」
その声の主に顔を向けると、彼女がいた。よく寝たのか、顔色が少し良くなっていた。
「何読んでるの?」
「こ、これは…」
そう言って隠すと、彼女は僕の手から奪い取って本の表紙を見た瞬間悟った。
「…どうして?」
「こ、これは…その、」
「これ、なんで見つけれたの?」
「え?」
そう言う彼女は、不安そうに言う。
「ディアが何を必死に読んでたのか知りたくて…」
「戦争の所、見た?」
さっき見た場所の事を言ってるのを感じ取る。
「うん。」
「そっか。
その戦争、免罪派がなんで抹消されたのか、分かる?」
急にそんな事を言われて、僕は息を飲んだ。
「…ううん。分からない。」
「それはね、おそらくこの世界に都合が悪いからだよ。」
頭のいいディアは、ゆっくりと重みのある声で僕に言った。
「ど、どうして?」
「この歴史書は、ここまで書いてあるけど他の本にはその戦すら書かれてなかったりする。
そこまでして、忘れ去られるのを望んでるってこと。」
「……。
そ、そこまでして、なんでそんな…」
そう言って、気づいた。この世界は、何かを隠したいからなんだと。頭の悪い僕はやっと気づいた。
「あの最凶の男の所と同じ所にお兄ちゃんも行ったけど、もしかしたら、お兄ちゃんも何か知って捉えられてしまったのかもしれないって思ったの。
まるで、真実を隠して知った者は閉じ込めて本当の事を知られないようにしてるみたいに。」
そう言ったディアは、続いて言った。
「最凶の男は、免罪なのかもしれない。」
その顔は決意をした顔だった。
「で、でも、それを思っても根拠も何も無いのに、どうするの?」
「そんなの、革命を私が起こす。」
そう言った彼女の顔は真剣で、闘志がまた燃えるように火がついていた。
「近くで見守ってくれる?ローワン」
僕の本当の名前を呼ぶ彼女は、また僕から離れるように走り出すのに、僕を置いていかないようにするその顔が、僕は好きだとまた感じてしまう。
「うん。かつて倭国で捨てられた僕を拾ってくれたトゥイーディアの為になら、見守るよ。」
そう言った。守ることなんて出来ないのに、ただ初めて抱いた貴女を近くで居られるなら、僕はかつて禁じた魔法を使い続けるよ。
走り出す貴女を失う事を知っていても、この薄汚れた作り物のような呪われた世界を壊してみせるよ。
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