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追求する想いの葉
この空間に抵抗し、今挑むのだ。
しおりを挟む消しゴムと、薄目でなくても見えるその内通手紙。酷く震えた様に強ばる女の子も男の子も休んで、机の維持は私の仕事だ。
古文の授業も、英語も、数学も、化学も、歴史も、全部全部バケモノ達はこの滑り止め校にそぐう。いや、似つかうバケモノ達はゲラゲラと笑いながら写真を撮る。校則すらそのチートのような頭でものともしない姿は、流石だと拍手を贈る気力さえも無くなった。
教師すら、手を焼くどころか怯えて暮らすこの行き遅れた学校は、警察沙汰にいつなっても良いくらいの戦場で誰を信じていいのか…いえ、信じてはいけない。
「あ、菊野先生。
今日は帰ってもらって大丈夫ですよ。あとは私がやっておきますから。」
夜になり、テストの作成を終わらせて、学校の見回りの準備をしていると、この学校で一番最年長で事務の立花先生は懐中電灯をもってゆっくりと職員室から出た。
大丈夫か心配で後を追うのを考えたがやめた。一番この学校を知ってるのはあの人だ。それなら、任せておけばいい。私は、あのバケモノ達の事を考えたくもない。早く寝て、好きな事をしたい。そう言ってもバケモノ達と言いながら、優しい先生であろうとしてしまうし、あの子達をどうしたら良いのか、どう接してどうすれば、社会に出た時逆境に流されず、自分を維持していられる人に、素敵な人を見つけて幸せな未来を掴めさせれるのか…鉛のように頭の下に溜まって蓋をしてもいつも何処かで思い出してしまう。
立花先生にお礼のメモを立花先生の机に置いて、学校を出る。
終電もこの時間で学校付近の駅は無いのを確認して、数少ない本数のバスに運良く乗って帰ると、化粧を落として白ご飯とふりかけをお腹に入れる。
「あ……、日誌…」
日誌を確認したか思い出そうとしても思い出せない。まぁ、別に思い出せなくても誰も書いてないし、書いてあってもきっとセクハラのような文面か、日頃の鬱憤を吐き出すように悪口を書いているかのどっちかしかない日誌だから気にしなくていいのに、それでも面白い事に私は毎日確認と返事を書いている。
我ながら馬鹿だなと、感じている。
鬱にならないのか?と思うけれど、別にあの頃よりも別に緩和されたか同じくらいだからいい事だ。
食器を洗って、シャワーで済まして布団に入る。朝はどうせ普通に早く起きる。とりあえず、睡眠時間を取らなければ…。
﹌﹌﹌﹌﹌﹌﹌
『よもぎ!立ちなさい!!
早くしなさい!』
パシッ!
叩かれて顔を上げると、あぁ。いつものお母さんとお父さんの険しい顔だ。
『ほら!あざみ!
貴女もよ!』
バシッ!バシッ!!
そうお母さんが言って、お父さんが妹に向けて叩く。
あざみは、泣き腫らしながら私の手を握ろうとするのを見て握り返そうとすると、お母さんに顔を蹴られる。
『貴女は教師になるのでしょう!!
なら、勉学も技術も全て完璧以上でなければならない事、意味が分かってるの?!』
『あざみ!お前は姉と違って完璧すら出来ない落ちぶれてるんだから、お前は完璧になって維持しろ!
あざみ、姉が出来ないことをしろ。分かったか。』
二人の怒声を浴びて、静かに2人で頷く事しか出来なかった。
『お姉ちゃん…』
『どうしたの?』
『私、これからどうしたらいいの…?』
『大丈夫。私が守ってあげるから。
あざみは、何がしたいの?』
『私、お父さんとお母さんが居ない所に行きたい。』
『うん。いいよ。
私が教師になって一人暮らししたら一緒に暮らそう。』
『うん』
『それまで、我慢出来る?』
『……うん!』
あざみは、私よりも心が疲弊していた。私は「教師になるから」お父さんは私を見逃してあざみを性的暴行もしていた。
お母さんは、それを知っていてお父さんを失いたくないから。と離婚もせずあざみに私が居ないところで過激な虐待をする。
私はそれを知っているのに、何も出来なくて…ただただ、妹を抱きしめて2人で暖を取る様に身を寄せて傷を癒していた。
『あっははははは!
え~、よもぎちゃんってぇ、面白いねぇ!』
『え~!なになに~!』
机の上の花瓶を元の場所に戻そうと花瓶に触れる所で机を倒された。間一髪で花瓶を持つと、笑い声と共に皆が集まってくるのを感じた。
『えぇ、よもぎちゃん!
机が倒れてるよぉ?』
『えぇ!ダメじゃん!』
クスクスと笑う声に、「あと1年耐えればいなくなる。」そう心で念を唱える。
┅┅┅┅┅┅┅┅
「~~~~で、この言葉は~~~………」
そう言いながら淡々と授業をこなしている。チョークが黒板に強く当たって折れる。笑い声の中ジーッとそれを見つめると、何かがチョークと共に折れた気がした。
どす黒い何かが蠢いて、何かの準備が整った気がした。
〘目には目を歯には歯を〙
昔の王様はその教えを問い、国を制した。
それならば、私はこの教室の教師。王であっても可笑しくない。
同じバケモノになれば良いのだ。身をもって知ればいいのだ。自分を壊してでもこの子達を優しくする必要なんてないのだ。
いい教師と、優しい教師も、あの時に誓った見返しも。全て、現実には思った物に叶わないもの。
「はは。呆れた。」
それならば私が私で作るのだ。
あの頃に出来なかった全てを、ハッキリと正しく言うのだ。
優しいあの私とは違う。
目をつぶったりなんかしない。
私が満足するまで、道を踏み外したモノへ罰するのだ。それが報復となるならば。もう何も怖くない。
だって、狂った教室に正常なモノが一番馬鹿なのだから。
いっそ、ダメなものはダメだと叱れる教師の頂点になってやる。
───先生をいい教材だと思い、上手に朽ち果てなさい。───
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