23 / 73
消えた世界、消えかけた世界の葉
君は秋夏になった呪い。
しおりを挟む「ねぇ、どこか行かない?」
『どこに?』
「どこか遠く」
『じゃあ、居るものだけ持っていこ?』
「うん」
『お金は?』
「持った」
『携帯は?』
「あるよ」
『リュックは?』
「うん」
「じゃあ、行こ?」
『うん、忘れものは?』
「無いよ。」
『…そっか。』
「じゃあ行こ?」
『結構来たね』
「うん」
『いつまで電車に乗るの?』
「分からない」
『そっか』
『お腹空かないの?』
「空かない」
『おにぎり買ったでしょ?
食べないの?』
「あげるよ」
『ありがたいけど、お腹いっぱいなんだ』
「そっか。
じゃあ、また後で食べる」
『飲み物は飲んでね』
「うん。後で」
『ここは?』
「1番景色がいい所」
『そうなんだ。
どう思った?』
「別に、高いなって」
『そっか(笑)』
「もう、いいんじゃない?」
『何が?』
「……いや。」
『そう?』
『何買ってきたの?』
「別に」
『そう』
『美味しい?』
「うん」
『そっか♪』
「どこまで着いてくるの?」
『死の果てまで?』
「なんだよそれ(笑)」
『嘘だよ(笑)』
『暑いね』
「何が?」
『秋なのに、まだ暑いなって』
「そうかな」
「そろそろ、いいんじゃない?」
『何が?』
「もうこっちに居なくても」
『こっちに来たい?』
「…君がいるのなら。」
『そっか』
『…何してるの…?』
「別に」
『何してるの?』
「別に」
『やめなよ』
「別に」
『馬鹿じゃないの』
「別に」
『馬鹿じゃないのっ?!
やめてっ』
「馬鹿だよ」
『そんなんじゃないよっ!』
買ってきたナイフを突きつける僕の手を、君は震える手で奪い取る。
今日初めて、手が震えた君と僕。
何もかも怖くない。と、何も僕らには怖くない。と信じてた。
それでも、どうしても、僕の手は震えた。君の手が震えて涙を流すその姿を見ると、震えが止まらなかった。
まだ死にたくない訳じゃない。
まだ逝きたくない訳じゃない。
もう死にたくない訳じゃない。
もう生きたくない訳じゃなかった。
君は、僕から消えた。
目の前で、僕から消えた。
ナイフを持って、僕から消えたんだ。
君は一言幸せそうに、僕に呪いを残した。
『君は生きてなきゃいけないよ。』
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

[完結]子供のままの婚約者
日向はび
恋愛
セレナは幼い頃ら婚約者のマルクが大好きだった。
16歳になった今でもその想いは変わらない。ずっとずっと好きなのだ。たとえ、彼が自分と同じ身長のまま時を止めてしまっていたとしても。
そんなセレナに、父は婚約破棄をするといいだした。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。


麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる