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幸せを願う葉
いつか、深い闇に2人ぼっちの2人に差し出す光を【一番星】
しおりを挟む俺は、大罪を犯した。
この明けない夜を何とかしたくて、あのパンドラの箱を見つけようと、知ろうと、研究をし続けた。
『それは、何百年も前の男が犯した罪からだった。』
だから、知ろうと思った。
記述では、それしか書かれていなかった。最果ての監獄へと捉えられ、箱庭で大切な物を忘れる呪いを受けながら生き続ける。
そんな呪いと監獄だけの罰で済んでいるという事に、腹が立った。
何が面白くてこの世界を、夜の世界にしたのか…、そんな事も知る由もなく、箱庭でぬくぬくと暮らしてるだけなのは、本当に腹が立った。
死ねない体になったとしても、それだけの事。
『それなら、ずっと苦しめられる体にすればいいのに。』
だが、何があったのか屈辱すら感じるその監獄へと俺は追いやられた。
最果ての監獄は、小綺麗で、一人の女が召使いとして使われてるらしい。
伯爵気分で本当、より一層憎悪が増した。綺麗な花も、綺麗な建物も、綺麗な噴水すらある。
これだけの事を、この女1人でしてるのかと考えると、イライラした。
そこら辺の伯爵でもしない事を、悠々と命令して、反省の色もないのか。と、口に出してしまうところだった。
この女には、何も悪くないのだから。
「私、初めてなんです。
ここに、人が来るなんて。」
綺麗な声で、聞き入ってしまいそうになるくらい、透明で消え入りそうな儚い声だった。
「そう…か?
俺は、こんな監獄、初めて来たが…誰も来ないなんて信じられん。」
素の話し方になって、謝ろうと口に出す直前に「ふふふ♪いいですよ、その話し方。久しぶりにその話し方を聞いたので、そのままで。」と、寂しそうに聞こえた事は、聞き間違えなのか、気のせいなのか…そんなもの分からなかった。
「そう…か。
了解した。
俺は…、ディザイア。
どう呼んでもいい。
あんたは…」
「ディザイアさん。分かりました。
じゃあ、ここの部屋がディザイアさんのお部屋になります。
私は、これから、用事があるので、ゆっくりして下さい。
ご飯はどうしますか?」
名前を聞きそびれたが、フルで言われるのは久しぶりのようで、少し気恥ずかしかった。
「あ、俺は…どういう風でもいいが…あんたは、どういう風にいつも食事をとってるんだ?」
少し寂しそうにする女は、笑顔を絶えないように悲しそうな笑顔を向ける。
「実は、私も彼も、ご飯はあまり取らないんです。」
「なので…」と、付け加えて俺を見つめる。きっと、俺に合わせようと思ってるようだ。
「あ~、そうなのか。
少食な感じか?」
また、悲しそうな顔をするその顔は、何故か苦しそうに見えた。
「少食というよりかは、何も食べなくても私達は生きていけるんです。
だから、食べない時も少なからずあるんです。」
「それは、どういう事だ?」
至極真っ当な率直な疑問だった。
「私達は、死ねない体なので」
「……っ」
息を飲んだ。
という事は、この女は少なからず、あの男と同じくらい死ねない時間を…
召使いなのに、何故そこまでして…
「確か、召使いは、交代制もあったと記述に書いてあったが…、もしかして…」
「はい。私は、ずっと、彼の元にいます。」
「っ?!
な、なぜだ!
なぜ!
そんな事までして、あの男元にいるんだっ!!
最低な奴なのにっ!
俺たちは…あの男で……っ」
怒鳴りながらも、女に、今までの溜めていた負の感情を吐き出す。
そんな中、優しく俺を包み込む様に俺の言葉を真っ直ぐ受け止めた。そんな姿が目に入る度、目を逸らしたくなる。いつの間にか、言葉は止まっていて、涙が溜まっていた。
「ごめんなさい。
……私は、彼の元にずっと居なくちゃいけないと、そう思ったので、いるんです。」
「そんな事ないっ!
あんたはっ、何も罪を犯してない!
なら、ならっ!!
……………。」
微笑むその顔には、決意を決めているような。強い信念があるような。それでいて、とてつもない、悲しみの海にいるような目をしていた。
「もう。行かないと…」
「あ、えっと、あんたの名前…」
「私は、スピカです。
彼は、ケフェウス。彼を、憎まないで。」
そう言うと、小走りでどこかへ行ってしまった。「彼を、憎まないで」なんて、よく分からなかった。あと、あの男に名前があったなんて、知らなかった。当然ではあるが、名前なんてある事に普通に驚いた。
スピカは、何故そこまでして、あの男を守りたいのか分からなかった。俺たちをこんな目にした張本人に、何故そこまでして情けをかけるのか分からなかった。
本物の太陽が上がらないこの世界にした奴を、誰が許すと思う。
そんな奴に、どうして、こんなにも、優遇されているのか、気味が悪かった。
少しすると、楽しそうなスピカの声が聞こえた。そして、歌を歌う声が聞こえて、その歌を聴きながら、これからどうするか考えた。
復讐?今の状況を楽しむ?そんな事は出来ない。あの男がいるこの空間に、何が楽しむだ。
俺は、この箱庭から出られる事はあるのか分からない。刑期は知らされなかったからだ。
ただ、妙な事に、好きな物を持って行っても、好きな物を取り寄せていいと言われた。
俺は、これからどうすべきか、分からないが、スピカの歌声だけを聴きながら、ベッドに転がった。
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