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幸せの前後に出来る葉

時間が止まった紛い物

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「フォージ、ごめんね。」
「いいんだよ。僕は、平気」
「うん、また新しいの買ってあげるから、待ってて?」
 そう言う10歳の少女の名前は、リーリネ。僕とリーリネは姉弟だ。
 


「ねぇ、リーリネどこか苦しいとこない?
 なんでも言って?」
 リーリネは風邪をひいたみたいで、口で息をしながら僕を見る。

「…大丈夫。
 私は平気だよ。」
 そう言って笑うリーリネは熱が上がりっぱなしで、お母さん達が心配そうにお世話をしている。



「ねぇ!フォージ!
 見て!可愛いでしょ!」
 僕はリーリネの部屋に呼ばれて、リーリネが僕に見せたのは、可愛らしいワンピースを体に当てて見せる。

「うん!可愛いよ。
 もしかして、リーリネの彼氏?」
 僕の言葉に反応して顔を真っ赤にするリーリネは、頬を少しかきながら言う。

「う、うん。
 今回はなんだか、運命感じちゃったんだよね」
「ふ~ん?
 でも、リーリネ毎回そう言って捨てられてるじゃん。」
 僕が笑うと、口をふくらませてリーリネは後ろを向いた。

「いいもん!
 じゃあ、もう見せないからっ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!
 冗談だよ!僕は応援してるから!
 だから、相談また聞かせてよ」
 焦って僕が言うと、クスクスと笑い声が聞こえて、リーリネがこっちを向く。

「ふふふっ♪
 そんなに必死にならなくてもいいのに」
 そう笑いながら、僕の頭を撫でる。

「か、からかわないでよぉ」
「え~、でも、少し怒ったのは事実だからね?
 少しは反省してもらわないと♪」
 そう言って、僕をまだ子供扱いするように言う。

「さぁ!もう寝る時間じゃない?
 フォージ、寝る場所に戻ったら?」
「あ、うん!
 教えてくれてありがとう♪
 じゃあ、リーリネも早く寝るんだよ?」
「分かった分かった♪
 おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
 そう伝えて、僕は部屋から出た。




 僕は、もう少し注意していたら良かったのかもしれない。
 リーリネに、その彼氏はどんな人なのか、詳しく聞けばよかったと、何度も後悔した。


「フォージ、リーリネ!!
 逃げてっ!」
 視界がおかしくなりながらお母さんの方を見ると、お母さんが僕達に向かって必死に言う姿が見える。

「行くよっ!
 フォージ!」
「う、うん…
 リーリネは、大丈夫?」
「何が?」
「だって、あの人…絶対に…」
「うん。そうだね。
 でも、もう縁を切った相手だから。」
「でも…」
 言葉を言いかけてやめた、アイツが走ってくる感覚がした。
 僕は止まって、リーリネに伝える。

「リーリネ!
 先行ってて!」
「はっ?!
 なんで?!」
「いいからっ!
 走って!!」
 段々視界がおかしくなって、見えなくなりつつありながら、リーリネが走って逃げるのを確認できた。
 もう、音が聞こえない。だけど、まだ目が使える。それなら、僕は頑張れる。

「止まれっ!」
 僕は言えたつもり。相手は怯んだみたいだった。僕は突進した時、急に何も見えなくて、眠りについたような感覚がした。
 後ちょっとだったのに…と、後悔しながら僕はリーリネやお母さん、お父さんの事を考えた。




「フォージ、こんにちわ!」
 目を覚ますと、視界が広がって傷が癒えている感じがした。

「あ…、えっ…と…リー…リネ?」
「へ?!お、お母さんっ!
 動いたっ!!」
 小さな女の子は、そのお母さんという者に目で訴えるような仕草をした。
 この女の子は、よく知ってる気がする。いや、知ってる。リーリネだ。

「リーリネだよね?
 無事だったんだね!
 やけに縮んだ気がするけど…」
「ひゃっ?!」
 僕が充電装置から下りて動くと、身構える体制をするリーリネは、なんだかおかしかった。

「フォージ、私はこっち。」
「え…、…お母…さん?」
 僕は、タイムリープしたのかもしれないと疑った。だって、お母さんにしては、少し若く見えて、でも…少し違って、可笑しい事には変わりない。

「フォージ?」
「え、…あ、えっと…今って何年?」
 そう。2146年なら、タイムリープして時間が戻った事になる。

「えっと、2166年だけれど…?
 本当にどうしたの?フォージ?」
 時間が、一気に進んだ?
 という事は、この人たちは、知らない人?
 あの後、どうなったんだ?

「あの、リーリネっていう子を知らないですか?」
「え…?」
「2154年に強盗が来て、僕達それに巻き込まれたんです。
 その時、リーリネっていう僕のお姉ちゃんがいたんです。そのお姉ちゃんは、強くて、すごく弱くて、騙されやすくて、真剣に物事を考えられる、すごい人なんです!
 …その人、知らない…ですか?」
 女の人は、とても悲しそうにしながら、涙を貯めて僕の話を聞いていた。
 すると、女の子が僕の手を取って一言言った。




「リーリネって、私のお母さんの名前と一緒ね!」




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