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綺麗な実をつける葉
いつか、壊れていない世界で一緒になろう
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アナタは、壊れている。
綺麗な顔も、綺麗な手も、綺麗な髪も、綺麗なその横顔も、綺麗な目も、何もかも綺麗なのに、アナタは壊れてしまった。
いや、元から壊れていたのかもしれない。
透き通った白い手で私の頬を撫でるアナタに、ずっとこうしていたいと感じてしまったの。
綺麗な着物を贈って下さるアナタを、とても愛おしく感じてしまって、いつか私の事を忘れてしまうんじゃないかと、何もかも忘れて、私だけを見てくれればいいのにと、何度も思ってしまう私は許されてはいけないと、感じてるの。
「なぁ、恋春。
これ、恋春にあげるよ。
好きだっただろ?」
「これって…」
渡された包みを開いてみると、みたらし団子だった。
「初めて会った時、恋春がそれ持ってたから好きなのかなって思ってさ」
「はははっ」と、軽快に笑うアナタの横顔は、惚けてしまうほどだった。
「べ、別に、好きという程ではない。よ。」
「よ?」
「べっ!別にいいじゃないですかっ!!」
恥ずかしくて怒る私に、アナタは「可愛いなぁ」と、呑気に言う。
「ねぇ。次は、いつ会える?」
「嗚呼、それが分からないんだ。
家を空けることが出来たらいいんだけれど…中々…」
「そっか。
私も、上手く抜け出せるか分からなくて…」
「ははは。どっちも難儀だね」
「うん。」
「じゃあ、また、ここで。」
「うん。」
アナタが先に帰っていく。あの家に。
重苦しい鉛の刺が、胸へ刺さってドロドロとした黒い液体がポタポタと落ちているようなそんな姿は、何故かとても、好きにならずにいられなかった。
「お嬢様!どこに居られたのですか?!」
「ちょっと外の空気に触れたくて」
「全く。お嬢様とあろう方が…!」
「すみません」
「いいえ!全く、お嬢様は分かってませんっ!
身分を弁えてください!
お嬢様は何にも分からないんですから!」
「はい。」
この人は私の身の回りのお世話と教育係の、お琴さんだ。
「恋春っ!!
お前は、ほんっとうに使えないやつだなっ!
跡取りはお前しかいないんだから、我が家紋を随時背負っていると思えと、何度言ったら気が済むんだ!」
「すみま
「何を口答えしているっ!
お前は、謝る事しか出来ないのか!
お前は承知する事だけだ!いいか!分かったか!」
「はい。分かりました。」
「おい!陽乃!
──────────っ!!」
食卓に居ても、ずっとこうだった。
父上は、何度も、私や母上を怒鳴りつける。何をしても、何をやっても失態を犯していると怒鳴られる。私がいけないのだと、ずっと思っていた。でも、目が覚めたんだ。
そう。幸夫さんに会って、話を聞いてくれて、初めて私を肯定してくれたあの人だ。
私と同じように、家族で苦しみ続けている幸夫さんだ。いつも、「アナタ」としか言えない私にも、優しく微笑んでくれる幸夫さん。
私はそっと、幸夫さんの事を考えた。
━━━━━━━━━━━
事は急に始まった。
私の家のせいで、戦争になりそうになったんだ。
父上は処刑に、母上も死んだ。次は、私の番だった。
アナタの事をずっと考えていた。初めて会った時。アナタの家の話を初めてしてくれた時。初めて、私に好きだと言ってくれた事。
ずっと、ずっと、この時が止まればいいのにと何度考えたか覚えてないくらいだった。
アナタは壊れてる。でも、私もアナタと同じくらい壊れてるみたいね。
今更気づいたって、仕方ないのに。
私は大馬鹿者だ。
「出ろ。
お前の番だ。」
「お前」か…。父上はずっと私の事をお前と呼んでいたな。
名前を呼ばれるだなんて、あまり無かったな。
「お前って、可哀想だよな。
こんな家族に産まれてきたが為に、こんな直ぐに死ぬなんてなっ!」
二人の男は、汚い笑い方をする。
「お前、なんか言えよ~
最後の言葉なんだぜ?」
そう言って、私の胸ぐらを掴む。
「やめろっ!」
聞き慣れたあの声がした。
何度も想いを心の中で唱え続けた相手の声。
ずっと、聞きたかったあの声だ。
二人の男を刀で斬って、私の腕を掴んで逃げる。
「な…んで。来たの?」
「そんなの。恋春の事が好きだから分かるよ。」
「はははっ」と、いつもの笑い声を出して、うるさい周りから、遠くへ遠くへと逃げていく。
「も、いいんじゃ……ない?」
「そう…だねっ」
はぁはぁ…と、肩で息をしながら減速していく。
身体は重たいのに、何故かとても体が軽くて自然と笑みが出る。
「私と、一緒に逃げよう。
そして、一緒に暮らそう。」
「は?馬鹿じゃないの?」
「恋春の事、好きだから一緒になりたいと言っているのに?」
「うっ…そ、それは………っ?!」
私の肩を持つ幸夫さんを見つめていた。
その時、私は刀で背中から胸を貫かれた。幸夫さんも、私と同じようにお腹から刀がはえていた。
幸夫さんの背中へ、もう1人の男が刀で貫いて、同時に二本の刀が抜かれる。
バタッと、倒れる私たちは、手を繋いだままだった事に気がつく。
強く握り直して、汗が流れる中、幸夫さんは言う。
「好きだよ、恋春」
私に笑顔を見せながら言う姿は、とても綺麗で、宝石のような涙が流れていた。
「愛してる」
私も言わないと、言いたいのに…と、思っているのに、段々感覚が無くなって、目も開けられなくなってきた中で、私は伝える。
「ねぇ」
「なに?」
「私も、」
アナタが好きよ。
綺麗な顔も、綺麗な手も、綺麗な髪も、綺麗なその横顔も、綺麗な目も、何もかも綺麗なのに、アナタは壊れてしまった。
いや、元から壊れていたのかもしれない。
透き通った白い手で私の頬を撫でるアナタに、ずっとこうしていたいと感じてしまったの。
綺麗な着物を贈って下さるアナタを、とても愛おしく感じてしまって、いつか私の事を忘れてしまうんじゃないかと、何もかも忘れて、私だけを見てくれればいいのにと、何度も思ってしまう私は許されてはいけないと、感じてるの。
「なぁ、恋春。
これ、恋春にあげるよ。
好きだっただろ?」
「これって…」
渡された包みを開いてみると、みたらし団子だった。
「初めて会った時、恋春がそれ持ってたから好きなのかなって思ってさ」
「はははっ」と、軽快に笑うアナタの横顔は、惚けてしまうほどだった。
「べ、別に、好きという程ではない。よ。」
「よ?」
「べっ!別にいいじゃないですかっ!!」
恥ずかしくて怒る私に、アナタは「可愛いなぁ」と、呑気に言う。
「ねぇ。次は、いつ会える?」
「嗚呼、それが分からないんだ。
家を空けることが出来たらいいんだけれど…中々…」
「そっか。
私も、上手く抜け出せるか分からなくて…」
「ははは。どっちも難儀だね」
「うん。」
「じゃあ、また、ここで。」
「うん。」
アナタが先に帰っていく。あの家に。
重苦しい鉛の刺が、胸へ刺さってドロドロとした黒い液体がポタポタと落ちているようなそんな姿は、何故かとても、好きにならずにいられなかった。
「お嬢様!どこに居られたのですか?!」
「ちょっと外の空気に触れたくて」
「全く。お嬢様とあろう方が…!」
「すみません」
「いいえ!全く、お嬢様は分かってませんっ!
身分を弁えてください!
お嬢様は何にも分からないんですから!」
「はい。」
この人は私の身の回りのお世話と教育係の、お琴さんだ。
「恋春っ!!
お前は、ほんっとうに使えないやつだなっ!
跡取りはお前しかいないんだから、我が家紋を随時背負っていると思えと、何度言ったら気が済むんだ!」
「すみま
「何を口答えしているっ!
お前は、謝る事しか出来ないのか!
お前は承知する事だけだ!いいか!分かったか!」
「はい。分かりました。」
「おい!陽乃!
──────────っ!!」
食卓に居ても、ずっとこうだった。
父上は、何度も、私や母上を怒鳴りつける。何をしても、何をやっても失態を犯していると怒鳴られる。私がいけないのだと、ずっと思っていた。でも、目が覚めたんだ。
そう。幸夫さんに会って、話を聞いてくれて、初めて私を肯定してくれたあの人だ。
私と同じように、家族で苦しみ続けている幸夫さんだ。いつも、「アナタ」としか言えない私にも、優しく微笑んでくれる幸夫さん。
私はそっと、幸夫さんの事を考えた。
━━━━━━━━━━━
事は急に始まった。
私の家のせいで、戦争になりそうになったんだ。
父上は処刑に、母上も死んだ。次は、私の番だった。
アナタの事をずっと考えていた。初めて会った時。アナタの家の話を初めてしてくれた時。初めて、私に好きだと言ってくれた事。
ずっと、ずっと、この時が止まればいいのにと何度考えたか覚えてないくらいだった。
アナタは壊れてる。でも、私もアナタと同じくらい壊れてるみたいね。
今更気づいたって、仕方ないのに。
私は大馬鹿者だ。
「出ろ。
お前の番だ。」
「お前」か…。父上はずっと私の事をお前と呼んでいたな。
名前を呼ばれるだなんて、あまり無かったな。
「お前って、可哀想だよな。
こんな家族に産まれてきたが為に、こんな直ぐに死ぬなんてなっ!」
二人の男は、汚い笑い方をする。
「お前、なんか言えよ~
最後の言葉なんだぜ?」
そう言って、私の胸ぐらを掴む。
「やめろっ!」
聞き慣れたあの声がした。
何度も想いを心の中で唱え続けた相手の声。
ずっと、聞きたかったあの声だ。
二人の男を刀で斬って、私の腕を掴んで逃げる。
「な…んで。来たの?」
「そんなの。恋春の事が好きだから分かるよ。」
「はははっ」と、いつもの笑い声を出して、うるさい周りから、遠くへ遠くへと逃げていく。
「も、いいんじゃ……ない?」
「そう…だねっ」
はぁはぁ…と、肩で息をしながら減速していく。
身体は重たいのに、何故かとても体が軽くて自然と笑みが出る。
「私と、一緒に逃げよう。
そして、一緒に暮らそう。」
「は?馬鹿じゃないの?」
「恋春の事、好きだから一緒になりたいと言っているのに?」
「うっ…そ、それは………っ?!」
私の肩を持つ幸夫さんを見つめていた。
その時、私は刀で背中から胸を貫かれた。幸夫さんも、私と同じようにお腹から刀がはえていた。
幸夫さんの背中へ、もう1人の男が刀で貫いて、同時に二本の刀が抜かれる。
バタッと、倒れる私たちは、手を繋いだままだった事に気がつく。
強く握り直して、汗が流れる中、幸夫さんは言う。
「好きだよ、恋春」
私に笑顔を見せながら言う姿は、とても綺麗で、宝石のような涙が流れていた。
「愛してる」
私も言わないと、言いたいのに…と、思っているのに、段々感覚が無くなって、目も開けられなくなってきた中で、私は伝える。
「ねぇ」
「なに?」
「私も、」
アナタが好きよ。
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