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消えかけた光の葉

忘れる君と君の中だけ死ぬ僕【下】

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梅乃うめの
 おはよ」
「おはよう…ございます。」
 私の視界いっぱいに映るこの男の人は、私の大事な人です。名前は…えっと…。
 そう、毎回日記に書いてある名前。あった。空閑くがさんです。

「えっと…空閑…さん。」
「ん?どうしたの?」
 立てる?と、ベッドに座っている私の目の前に手を差し出して、優しく笑う。

「いえ…」
「そう?今日は雨が降ってるみたいだよ♪
 昨日はお散歩行けなかったんだけど、今日はどうする?」
 私の記憶能力はあまり使えないみたいだから、こういう言い方をしてくれる。
 昨日の天気はどうだったんだろう?

「あめ…外出てみたい。」
「そっか♪じゃあ、朝ごはん食べたら用意しよっか♪」
 そういう空閑さんは私の手を引いて、食卓に向かう。

「昨日の天気はどうだったんですか?」
「ん?えっとね、晴れだよ♪」
 頬に指をおいて笑うこの人は、なんだか可愛いなって感じる。心が暖かくなる気分。

「いただきます。」
「はい!召し上がれ♪」
 今日は、コーンスープだ。パンをつけて食べてみる。なんか、懐かしい気分がする。

「美味しい…」
「フフフ♪梅乃はご飯食べてて?
 僕はお散歩行く用意するから」
 優しく言うこの人は、本当に私を見てくれてるんだと根拠は無いけど、そんな気がする。


「ごちそうさまでした。」
「あ!食べた?
 今用意終わったから、ちょっと待ってね?」
「あ、えっと…洗い物私がする」
「へ?!あ、じゃあ、一緒にしない?」
 照れくさそうに、僕も洗い物したいからさ。と、私に言う。

「洗い物、好きなんですか?」
「え?あ、いや…梅…じゃなくて、1人で家事をしないといけなくなってから長いから、梅乃にも伝授しようかな~って」
 笑いながら言うこの人は、少し悲しそうに感じた。

「私、洗い物した事ないんですか?」
「え!あ、いや、結構してるよ?
 けど、やり方が忘れちゃうでしょ?」
「そう…なんですね」
 何か、私に隠してるのは分かるけど、この人はきっと、私が悲しむ事を知ってるんだと私は分かる。



「雨って、いいですよね」
「ん?そうかなぁ?」
「そうです!」
「そ、そっか!」
 今日の雨は、激しくも緩やかでもない優しい雨が降ってる。なんだか、気分がすごくいい。

「あ、写真!
 私も撮りたいです!」
「え?あ、いいけど…」
 空閑さんに向けてカシャッ と、カメラから聞こえて、なんだか嬉しくなる。

「ちょ、ちょっと!
 僕を撮っちゃダメだよっ
 恥ずかしいからっ」
「え~、じゃあ、2人で撮ればいいですか?」
「うぅ…」
 一緒に撮るのは難しいけど、空閑さんに支えてもらって撮る。カシャッ と、なんだか心地いいような嬉しい音がして、撮れた写真を見る。

「上手く撮れた!
 他も撮っていいですか?」
「いいけど…転けないようにね?」
 軽く返事をして、道端の花を撮る。なんだか綺麗に撮れた。雨も撮れればいいのに…撮っても、雨はただの線になるばかり。



「そろそろ帰ろっか」
「え、やだ!」
「でも…ご飯食べられないよ?」
「なら、私はここに居るから先帰って下さいっ!」
 私を子供扱いなんてしないで欲しい。

「で、でも、危ないよ?
 外はもう暗いし…、僕が寂しい…あと、怖いな…」
 なんだ。空閑さんは、男の子なのにこんなので怖いなんて、情けないなぁ。
 仕方ないから一緒に帰ることにした。


「ご飯、美味しかった?」
「うん。美味しかった。」
「ならよかった~♪」
 なんだか子供っぽい空閑くんは、なんだか可愛くてやっぱり私の大事な人なんだと感じる。
 別に疑ってはなかったけど、再確認した感じがする。


「ねぇ、空閑くん」
「ん~?」
「私は、何の病気なの?」
「えっ?!」
「病気…なんでしょ?」
「いや、それは…」
「病気じゃないと、私はなんで社会人じゃないの?」
「なんで、そう思うの?」
「私のスーツとか無いから…
 あるのは薬だよ?薬って、何か病気じゃないと飲むものじゃないでしょ?」
「うん…ごめんね」
 なんで謝るのかよく分からない。でも、これ以上は聞いても何も言ってくれないのは何故か分かる。
 なら、もういいよ。もう寝て。また明日、また明日聞けば言ってくれるはず。

「じゃあ、もういいよ」
「うん。ごめん。 
 ほら、梅乃、もっと布団かぶって?」
「…ありがと」
「じゃあ、もう寝よう?」
「うん。」
 また明日。そう、また明日になれば、教えてくれるよね?





 空閑くん、また明日。



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