20 / 77
消えた世界、消えかけた世界の葉
夢と祈りと願いの呪い
しおりを挟む
【夢の重さはいつも21g。でも、君達は双子だから42gなんだ。】
「ねぇ、カストール」
「なぁに?ポクス?」
「父さんは、僕達の事どう思ってるんだろう?」
「…そんなの知らない。」
1本に銀色の髪をまとめたエメラルドグリーンの目をした片割れが口を膨らませる。
「ふふふ♪そう言わないの!
僕達を住まわせてくれて、働かせてくれるいい人なんだよ?」
「そうだけど…」
優しく笑うもう1つの片割れは、2人分の自分と同じくらいの大きさな武器を軽々と持って、2人の言う《父さん》という者へ向かう。
「あの人嫌いっ!
僕達を変な目で見るんだもん!」
「はははっ、いいんだよ
その鬱憤を僕達は、どう発散させればいいのか教えてくれてるのは父さんだよ?」
「そ、それは…そうだけど…」
うー…と、唸る片割れはもう1人に頭を撫でられて扉を4回ノックする。
「カストールとポルクスです。」
「入りなさい。」
扉の向こうから、中性的で年齢不詳の声が緊迫するような声色で、それでももう慣れたのか2人は平然とした態度で中へ入る。
「遅い。」
椅子に座って、2人に背中を見せるその人の周りには緊張感と恐怖を煽る空気が漂っている。
「ごめん。父さん。」
「でも!僕達、完璧だったよ?!」
「報告に1分と少し遅れた。それは完璧と言うのか?」
「すみません。
それ以外のヘマはしてません。なので…」
「それで?」
「っ…」
「うぅ…」
「はぁ…それで、今日はどうする?」
「依頼はもう入ってないのであれば、僕達は部屋に戻るつもりです。」
「です!」
「カストール。君は服が小さいんじゃないのか?」
「え…な、なんで…」
「仕立て屋を見つけている。限度はあるが君の好きな服を注文すれば良い。」
「へ?!いいの?!」
「こら、カストール!」
「あ…」
「ポルクス。君の武器はあまり合ってないんじゃないか?」
「い、いえ…父さんに初めて選んでいただいたので…」
「それじゃダメだと言っている。
意味が分からないのか」
「すみません…」
「君は大きくなったんだ。
初めて私がやったのは、5歳未満だ。」
「っ?!
あ、ありがとうございますっ!」
その意味は、小さな体で一番合っている物をずっと使っていても、今の年齢は13だ。差は8歳以上。それは、玩具と比較しても、服で比較しても身の丈には合わない事だった。
「今から様々な武器を決める。いいか」
「は、はい!」
「なら、15分後動きやすい服で良い。
地下のプレイングルームに来い。
では行け。」
「は、はい!父さん、ありがとうございます! 」
「ありがとーございます!」
2人は目を輝かせて部屋から出る。
「ね、今日の父さんは優しかったね!」
「そう?僕は不機嫌そうに見えた。」
「でもでも!優しいじゃん!
そろそろ服を変えたいって思ってたし…もしかしたら、ポクスのも新調してくれるかもだよ!」
「そうかなぁ…」
「あ!そういえば、ポクスって元々はナイフを主に使ってたよね!」
「え…う、うん。そうだけど…?」
「そのナイフって父さんからだったんだね!
色んな武器を毎回持っていくけど、いつも服の中から取り出せるように、ナイフ入れてるじゃん!」
「ま、まぁ…父さんからもらった初めてのものだから…」
「ふ~ん、ポクスって父さん絡みだと、結構真剣だよねっ
あ、僕そのままあっちの部屋に行くから!また後で!」
「うん。じゃあ、また夜に。」
2人は別れて別の部屋に向かう。これは何気ない父との平和な日常だ。
~6年後~
kasutoru
降り出す雨に濡れながら1人うずくまって地面を叩く1人の成人は銀色の髪の毛が腰まで長く、黒いリボンで一本に結われていて、茶色のベストに白のシャツと自分の目の色と同じエメラルドグリーンの色をした細いリボンを付けて、茶色のズボンと靴を履いている。
その姿は、何もしなくても美形で美しく、悲壮感が周りの空気を包み込む。
「くそっくそっくそくそくそくそくそっ…くそっ!!」
父さんと、ポクスは大丈夫か?いや、大丈夫じゃない。僕はまだ生きることが出来る。猶予がある。
ダイヤモンドよりも固いこの鉱石は僕を絶望させる物であるけど、今は好都合だ。
だから、立たないと…少しでいいから、先陣を切って皆の役に…ポクスに、父さんに少しでも生きられる様にならないと…。
「っ…くっそがっ!!
僕がこんなので消えるなんて思うなよっ!!」
未だ決着がついてない…いや、まだ生き残っている僕らの家族達と、敵国はどちらかと言うと僕らの方が弱ってる。
なら、話が早い。気を少しでも許しているという事。それなら…悪魔の双子と呼ばれた僕がこんな事で時間を使っちゃいけない。
骨も何も残らなくても、父さんの役に立つなら…それでいいんだ。
僕は走った。先日、少しづつ鉱石になる呪いを敵国にかけられて帰ってきた僕を知って、実は誰もいない場所で、父さんは僕の事で自分を悔いていたのを聞いた。
そんなの、腹が立つ。それと同時に、すごく涙が出た。涙も目からこぼれ落ちて手に落ちる頃には宝石となっていたけど。
心臓が痛いほど走った。それと同じくらい人を殺していった。それのせいなのか、かなり鉱石化が進行してる気がする。でも、いい。
父さんを守ることが出来るならいいんだ。
ほら、城の大広間まで着いた。あとは、父さんを…
porukusu
雷が落ちる音がする。カストールは大丈夫なのかな。いや、カストールなら、大丈夫。
鉱石化が進まなければ、丈夫に生きることが出来る。僕は、まだ大丈夫。
魔法国が呪いを使うのは誤算だった。あの国は魔法を使うと名が通っている。でも、違った。呪いで魔法のように使っているだけだ。
僕の大事な双子。カストールだけでも生きていれば…父さんの跡継ぎになる。それだけでいい。父さんや僕を気にせず家族達と今は逃げて…。
僕らは《勝つ》と信念を曲げてはいけないけど、直感で分かる。僕は死ぬ。父さんも、僕がどう足掻いても死ぬ気がする。
「ぐっ…ぐぁぁぁあっ!!」
背中に激痛が走る。奴らだ。奴らの呪いだ。
「と、父さん。父さんはっ大丈夫?
僕はまだ戦えるっ!」
「私の事は良い。
王を護れっ!」
背中で伝わる父さんの背中は熱くて、触れていなくてもその熱がわかる。
「嫌ですっ!父さん…、僕達が守るのは家族だけだっ!」
「親不孝だ。」
微かに笑っている父さんを感じる。少し嬉しそうな気がする。
「父さん。その角っ、どうにかしてくださいね。 」
背中の痛みに慣れさせていって、父さんにそう言うと、走って敵陣に進む。父さんだけでも王を護ればいい。僕達は父さんを守る。例え死んでも、死んだ後でも、骨が無くなっても。消し炭にされても。僕達は戦い続ける。
「ポルクスっ!
クククッ…本当に、親不孝だ。
私を守れ!君達の役目はそれだけだ!」
「分かってますよっ!」
その声が聞こえて、嬉しさが込み上げるのを隠しきれずに言う。父さんの分の道を開ける。
背中の羽に激痛が走る。さっきよりも羽の大きさは大きくなってる気がする。背中の服を切って羽を広げる。さっきまで何も無かった物が急激に成長する感覚。筋肉痛でも成長痛でもない、刺されるような痛み。
「くっ…父さんっ!行きますよっ!」
「王の場所は、分かっているっ
私の指示を聞け。」
「っ?!わ、分かりました。」
父さんの指示で大広間に着くと、壁から大きな爆音とともに敵が入ってくる。ざっと50人以上。こちらは、2人。割に合わないけど、手練じゃ無ければ優にこなせる。
「父さ…」
「君は何もするな。そのままで居ろ。」
そう言う父さんは僕の返事の時間を与えずに走って毒を塗った大太刀を大きく振る。父さんがいつも仕込んでる毒は解毒薬がまだ一般公開されてない。
直ぐに効くし、父さんの毒は優しい。痛みもなく意識が消えて何も考えられなくなって死ぬから。
そう考えてると、周りの敵は消えていた。
「と、父さん!」
「行くぞ。っ……。」
父さんの目線は壁が崩壊して白い煙と大雨に濡れて、弱々しく立っている人物を息を飲んで固まっていた。
僕も目線の先を見る。
「っ?!カストール?!
ど、どうしてっ…ぅっ…」
「ポ…クス…!」
柔らかく笑って一生懸命に走りよってくる双子のカストールを見て、走り寄りたくても僕は背中の痛さに耐えきれなくて、崩れ落ちる。
カストールは、力なくカツッ…カツッ…カツッ…と、こっちに来てる感覚がする。
「うぐっ…あああぁっ!」
のたうち回る僕は、視力が段々落ちてきてる気がする。
「ポク…ス…。と、うさ…ん!」
鉱石化が進んでるのか、生命力が弱まってきている。
「っ…くそっ…
私は行く。君達は、そこに…居なさい。
すぐ、私も君達に追いつく。」
その声がして、父さんは頭にある植物の角に生命力を吸い取られているにもかかわらず、いつもの様だった。僕達は、手を合わせて、横たわる。
「僕達はっ呪いに侵されてるけど、僕達もっ呪いが使える…よね。」
「あ、ポクス。悪い顔…してる。」
「はは…そういう、カストールの方が、だよ。」
2人で涙を流しながら、両手で握りしめる。あの言葉を言おう。カストールも分かっていると思う。これは、父さんの為じゃない。僕達の願いだ。
僕達には、1つ隠してる事がある。最期の祈り叶える《呪い》。祈りを叶えた瞬間僕達は死んでしまう。そんな能力。
呪われた双子と言われてるけど、僕達が否定しなかった理由はこれがあるから。
父さんにもハッキリと伝えなかった、この神様に貰った能力を今使うんだ。
「願おう。」「祈ろう」
「僕達の夢は」『42g』
『僕達に』
「呪いと」「この国とあの国を消し去る罰を」
『全部この命と魂で引き受け(る/ます)』
そう言い残して、僕達の胸から光が出て、天井を突破ってこの国全部を光で包まれた。あとは、時間の問題。父さん、僕達やったよ?
褒めてくれるかな?怒るかな?泣いてくれるかな?僕達をあの日のように抱きしめてくれるかな?
遠くで僕達の大好きなあの声が、泣きながら走りよってくれるのを感じたけど、僕達の意識は消えた。
「ねぇ、カストール」
「なぁに?ポクス?」
「父さんは、僕達の事どう思ってるんだろう?」
「…そんなの知らない。」
1本に銀色の髪をまとめたエメラルドグリーンの目をした片割れが口を膨らませる。
「ふふふ♪そう言わないの!
僕達を住まわせてくれて、働かせてくれるいい人なんだよ?」
「そうだけど…」
優しく笑うもう1つの片割れは、2人分の自分と同じくらいの大きさな武器を軽々と持って、2人の言う《父さん》という者へ向かう。
「あの人嫌いっ!
僕達を変な目で見るんだもん!」
「はははっ、いいんだよ
その鬱憤を僕達は、どう発散させればいいのか教えてくれてるのは父さんだよ?」
「そ、それは…そうだけど…」
うー…と、唸る片割れはもう1人に頭を撫でられて扉を4回ノックする。
「カストールとポルクスです。」
「入りなさい。」
扉の向こうから、中性的で年齢不詳の声が緊迫するような声色で、それでももう慣れたのか2人は平然とした態度で中へ入る。
「遅い。」
椅子に座って、2人に背中を見せるその人の周りには緊張感と恐怖を煽る空気が漂っている。
「ごめん。父さん。」
「でも!僕達、完璧だったよ?!」
「報告に1分と少し遅れた。それは完璧と言うのか?」
「すみません。
それ以外のヘマはしてません。なので…」
「それで?」
「っ…」
「うぅ…」
「はぁ…それで、今日はどうする?」
「依頼はもう入ってないのであれば、僕達は部屋に戻るつもりです。」
「です!」
「カストール。君は服が小さいんじゃないのか?」
「え…な、なんで…」
「仕立て屋を見つけている。限度はあるが君の好きな服を注文すれば良い。」
「へ?!いいの?!」
「こら、カストール!」
「あ…」
「ポルクス。君の武器はあまり合ってないんじゃないか?」
「い、いえ…父さんに初めて選んでいただいたので…」
「それじゃダメだと言っている。
意味が分からないのか」
「すみません…」
「君は大きくなったんだ。
初めて私がやったのは、5歳未満だ。」
「っ?!
あ、ありがとうございますっ!」
その意味は、小さな体で一番合っている物をずっと使っていても、今の年齢は13だ。差は8歳以上。それは、玩具と比較しても、服で比較しても身の丈には合わない事だった。
「今から様々な武器を決める。いいか」
「は、はい!」
「なら、15分後動きやすい服で良い。
地下のプレイングルームに来い。
では行け。」
「は、はい!父さん、ありがとうございます! 」
「ありがとーございます!」
2人は目を輝かせて部屋から出る。
「ね、今日の父さんは優しかったね!」
「そう?僕は不機嫌そうに見えた。」
「でもでも!優しいじゃん!
そろそろ服を変えたいって思ってたし…もしかしたら、ポクスのも新調してくれるかもだよ!」
「そうかなぁ…」
「あ!そういえば、ポクスって元々はナイフを主に使ってたよね!」
「え…う、うん。そうだけど…?」
「そのナイフって父さんからだったんだね!
色んな武器を毎回持っていくけど、いつも服の中から取り出せるように、ナイフ入れてるじゃん!」
「ま、まぁ…父さんからもらった初めてのものだから…」
「ふ~ん、ポクスって父さん絡みだと、結構真剣だよねっ
あ、僕そのままあっちの部屋に行くから!また後で!」
「うん。じゃあ、また夜に。」
2人は別れて別の部屋に向かう。これは何気ない父との平和な日常だ。
~6年後~
kasutoru
降り出す雨に濡れながら1人うずくまって地面を叩く1人の成人は銀色の髪の毛が腰まで長く、黒いリボンで一本に結われていて、茶色のベストに白のシャツと自分の目の色と同じエメラルドグリーンの色をした細いリボンを付けて、茶色のズボンと靴を履いている。
その姿は、何もしなくても美形で美しく、悲壮感が周りの空気を包み込む。
「くそっくそっくそくそくそくそくそっ…くそっ!!」
父さんと、ポクスは大丈夫か?いや、大丈夫じゃない。僕はまだ生きることが出来る。猶予がある。
ダイヤモンドよりも固いこの鉱石は僕を絶望させる物であるけど、今は好都合だ。
だから、立たないと…少しでいいから、先陣を切って皆の役に…ポクスに、父さんに少しでも生きられる様にならないと…。
「っ…くっそがっ!!
僕がこんなので消えるなんて思うなよっ!!」
未だ決着がついてない…いや、まだ生き残っている僕らの家族達と、敵国はどちらかと言うと僕らの方が弱ってる。
なら、話が早い。気を少しでも許しているという事。それなら…悪魔の双子と呼ばれた僕がこんな事で時間を使っちゃいけない。
骨も何も残らなくても、父さんの役に立つなら…それでいいんだ。
僕は走った。先日、少しづつ鉱石になる呪いを敵国にかけられて帰ってきた僕を知って、実は誰もいない場所で、父さんは僕の事で自分を悔いていたのを聞いた。
そんなの、腹が立つ。それと同時に、すごく涙が出た。涙も目からこぼれ落ちて手に落ちる頃には宝石となっていたけど。
心臓が痛いほど走った。それと同じくらい人を殺していった。それのせいなのか、かなり鉱石化が進行してる気がする。でも、いい。
父さんを守ることが出来るならいいんだ。
ほら、城の大広間まで着いた。あとは、父さんを…
porukusu
雷が落ちる音がする。カストールは大丈夫なのかな。いや、カストールなら、大丈夫。
鉱石化が進まなければ、丈夫に生きることが出来る。僕は、まだ大丈夫。
魔法国が呪いを使うのは誤算だった。あの国は魔法を使うと名が通っている。でも、違った。呪いで魔法のように使っているだけだ。
僕の大事な双子。カストールだけでも生きていれば…父さんの跡継ぎになる。それだけでいい。父さんや僕を気にせず家族達と今は逃げて…。
僕らは《勝つ》と信念を曲げてはいけないけど、直感で分かる。僕は死ぬ。父さんも、僕がどう足掻いても死ぬ気がする。
「ぐっ…ぐぁぁぁあっ!!」
背中に激痛が走る。奴らだ。奴らの呪いだ。
「と、父さん。父さんはっ大丈夫?
僕はまだ戦えるっ!」
「私の事は良い。
王を護れっ!」
背中で伝わる父さんの背中は熱くて、触れていなくてもその熱がわかる。
「嫌ですっ!父さん…、僕達が守るのは家族だけだっ!」
「親不孝だ。」
微かに笑っている父さんを感じる。少し嬉しそうな気がする。
「父さん。その角っ、どうにかしてくださいね。 」
背中の痛みに慣れさせていって、父さんにそう言うと、走って敵陣に進む。父さんだけでも王を護ればいい。僕達は父さんを守る。例え死んでも、死んだ後でも、骨が無くなっても。消し炭にされても。僕達は戦い続ける。
「ポルクスっ!
クククッ…本当に、親不孝だ。
私を守れ!君達の役目はそれだけだ!」
「分かってますよっ!」
その声が聞こえて、嬉しさが込み上げるのを隠しきれずに言う。父さんの分の道を開ける。
背中の羽に激痛が走る。さっきよりも羽の大きさは大きくなってる気がする。背中の服を切って羽を広げる。さっきまで何も無かった物が急激に成長する感覚。筋肉痛でも成長痛でもない、刺されるような痛み。
「くっ…父さんっ!行きますよっ!」
「王の場所は、分かっているっ
私の指示を聞け。」
「っ?!わ、分かりました。」
父さんの指示で大広間に着くと、壁から大きな爆音とともに敵が入ってくる。ざっと50人以上。こちらは、2人。割に合わないけど、手練じゃ無ければ優にこなせる。
「父さ…」
「君は何もするな。そのままで居ろ。」
そう言う父さんは僕の返事の時間を与えずに走って毒を塗った大太刀を大きく振る。父さんがいつも仕込んでる毒は解毒薬がまだ一般公開されてない。
直ぐに効くし、父さんの毒は優しい。痛みもなく意識が消えて何も考えられなくなって死ぬから。
そう考えてると、周りの敵は消えていた。
「と、父さん!」
「行くぞ。っ……。」
父さんの目線は壁が崩壊して白い煙と大雨に濡れて、弱々しく立っている人物を息を飲んで固まっていた。
僕も目線の先を見る。
「っ?!カストール?!
ど、どうしてっ…ぅっ…」
「ポ…クス…!」
柔らかく笑って一生懸命に走りよってくる双子のカストールを見て、走り寄りたくても僕は背中の痛さに耐えきれなくて、崩れ落ちる。
カストールは、力なくカツッ…カツッ…カツッ…と、こっちに来てる感覚がする。
「うぐっ…あああぁっ!」
のたうち回る僕は、視力が段々落ちてきてる気がする。
「ポク…ス…。と、うさ…ん!」
鉱石化が進んでるのか、生命力が弱まってきている。
「っ…くそっ…
私は行く。君達は、そこに…居なさい。
すぐ、私も君達に追いつく。」
その声がして、父さんは頭にある植物の角に生命力を吸い取られているにもかかわらず、いつもの様だった。僕達は、手を合わせて、横たわる。
「僕達はっ呪いに侵されてるけど、僕達もっ呪いが使える…よね。」
「あ、ポクス。悪い顔…してる。」
「はは…そういう、カストールの方が、だよ。」
2人で涙を流しながら、両手で握りしめる。あの言葉を言おう。カストールも分かっていると思う。これは、父さんの為じゃない。僕達の願いだ。
僕達には、1つ隠してる事がある。最期の祈り叶える《呪い》。祈りを叶えた瞬間僕達は死んでしまう。そんな能力。
呪われた双子と言われてるけど、僕達が否定しなかった理由はこれがあるから。
父さんにもハッキリと伝えなかった、この神様に貰った能力を今使うんだ。
「願おう。」「祈ろう」
「僕達の夢は」『42g』
『僕達に』
「呪いと」「この国とあの国を消し去る罰を」
『全部この命と魂で引き受け(る/ます)』
そう言い残して、僕達の胸から光が出て、天井を突破ってこの国全部を光で包まれた。あとは、時間の問題。父さん、僕達やったよ?
褒めてくれるかな?怒るかな?泣いてくれるかな?僕達をあの日のように抱きしめてくれるかな?
遠くで僕達の大好きなあの声が、泣きながら走りよってくれるのを感じたけど、僕達の意識は消えた。
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

三度目の嘘つき
豆狸
恋愛
「……本当に良かったのかい、エカテリナ。こんな嘘をついて……」
「……いいのよ。私に新しい相手が出来れば、周囲も殿下と男爵令嬢の仲を認めずにはいられなくなるわ」
なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる