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消えた世界、消えかけた世界の葉
夢と祈りと願いの呪い
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【夢の重さはいつも21g。でも、君達は双子だから42gなんだ。】
「ねぇ、カストール」
「なぁに?ポクス?」
「父さんは、僕達の事どう思ってるんだろう?」
「…そんなの知らない。」
1本に銀色の髪をまとめたエメラルドグリーンの目をした片割れが口を膨らませる。
「ふふふ♪そう言わないの!
僕達を住まわせてくれて、働かせてくれるいい人なんだよ?」
「そうだけど…」
優しく笑うもう1つの片割れは、2人分の自分と同じくらいの大きさな武器を軽々と持って、2人の言う《父さん》という者へ向かう。
「あの人嫌いっ!
僕達を変な目で見るんだもん!」
「はははっ、いいんだよ
その鬱憤を僕達は、どう発散させればいいのか教えてくれてるのは父さんだよ?」
「そ、それは…そうだけど…」
うー…と、唸る片割れはもう1人に頭を撫でられて扉を4回ノックする。
「カストールとポルクスです。」
「入りなさい。」
扉の向こうから、中性的で年齢不詳の声が緊迫するような声色で、それでももう慣れたのか2人は平然とした態度で中へ入る。
「遅い。」
椅子に座って、2人に背中を見せるその人の周りには緊張感と恐怖を煽る空気が漂っている。
「ごめん。父さん。」
「でも!僕達、完璧だったよ?!」
「報告に1分と少し遅れた。それは完璧と言うのか?」
「すみません。
それ以外のヘマはしてません。なので…」
「それで?」
「っ…」
「うぅ…」
「はぁ…それで、今日はどうする?」
「依頼はもう入ってないのであれば、僕達は部屋に戻るつもりです。」
「です!」
「カストール。君は服が小さいんじゃないのか?」
「え…な、なんで…」
「仕立て屋を見つけている。限度はあるが君の好きな服を注文すれば良い。」
「へ?!いいの?!」
「こら、カストール!」
「あ…」
「ポルクス。君の武器はあまり合ってないんじゃないか?」
「い、いえ…父さんに初めて選んでいただいたので…」
「それじゃダメだと言っている。
意味が分からないのか」
「すみません…」
「君は大きくなったんだ。
初めて私がやったのは、5歳未満だ。」
「っ?!
あ、ありがとうございますっ!」
その意味は、小さな体で一番合っている物をずっと使っていても、今の年齢は13だ。差は8歳以上。それは、玩具と比較しても、服で比較しても身の丈には合わない事だった。
「今から様々な武器を決める。いいか」
「は、はい!」
「なら、15分後動きやすい服で良い。
地下のプレイングルームに来い。
では行け。」
「は、はい!父さん、ありがとうございます! 」
「ありがとーございます!」
2人は目を輝かせて部屋から出る。
「ね、今日の父さんは優しかったね!」
「そう?僕は不機嫌そうに見えた。」
「でもでも!優しいじゃん!
そろそろ服を変えたいって思ってたし…もしかしたら、ポクスのも新調してくれるかもだよ!」
「そうかなぁ…」
「あ!そういえば、ポクスって元々はナイフを主に使ってたよね!」
「え…う、うん。そうだけど…?」
「そのナイフって父さんからだったんだね!
色んな武器を毎回持っていくけど、いつも服の中から取り出せるように、ナイフ入れてるじゃん!」
「ま、まぁ…父さんからもらった初めてのものだから…」
「ふ~ん、ポクスって父さん絡みだと、結構真剣だよねっ
あ、僕そのままあっちの部屋に行くから!また後で!」
「うん。じゃあ、また夜に。」
2人は別れて別の部屋に向かう。これは何気ない父との平和な日常だ。
~6年後~
kasutoru
降り出す雨に濡れながら1人うずくまって地面を叩く1人の成人は銀色の髪の毛が腰まで長く、黒いリボンで一本に結われていて、茶色のベストに白のシャツと自分の目の色と同じエメラルドグリーンの色をした細いリボンを付けて、茶色のズボンと靴を履いている。
その姿は、何もしなくても美形で美しく、悲壮感が周りの空気を包み込む。
「くそっくそっくそくそくそくそくそっ…くそっ!!」
父さんと、ポクスは大丈夫か?いや、大丈夫じゃない。僕はまだ生きることが出来る。猶予がある。
ダイヤモンドよりも固いこの鉱石は僕を絶望させる物であるけど、今は好都合だ。
だから、立たないと…少しでいいから、先陣を切って皆の役に…ポクスに、父さんに少しでも生きられる様にならないと…。
「っ…くっそがっ!!
僕がこんなので消えるなんて思うなよっ!!」
未だ決着がついてない…いや、まだ生き残っている僕らの家族達と、敵国はどちらかと言うと僕らの方が弱ってる。
なら、話が早い。気を少しでも許しているという事。それなら…悪魔の双子と呼ばれた僕がこんな事で時間を使っちゃいけない。
骨も何も残らなくても、父さんの役に立つなら…それでいいんだ。
僕は走った。先日、少しづつ鉱石になる呪いを敵国にかけられて帰ってきた僕を知って、実は誰もいない場所で、父さんは僕の事で自分を悔いていたのを聞いた。
そんなの、腹が立つ。それと同時に、すごく涙が出た。涙も目からこぼれ落ちて手に落ちる頃には宝石となっていたけど。
心臓が痛いほど走った。それと同じくらい人を殺していった。それのせいなのか、かなり鉱石化が進行してる気がする。でも、いい。
父さんを守ることが出来るならいいんだ。
ほら、城の大広間まで着いた。あとは、父さんを…
porukusu
雷が落ちる音がする。カストールは大丈夫なのかな。いや、カストールなら、大丈夫。
鉱石化が進まなければ、丈夫に生きることが出来る。僕は、まだ大丈夫。
魔法国が呪いを使うのは誤算だった。あの国は魔法を使うと名が通っている。でも、違った。呪いで魔法のように使っているだけだ。
僕の大事な双子。カストールだけでも生きていれば…父さんの跡継ぎになる。それだけでいい。父さんや僕を気にせず家族達と今は逃げて…。
僕らは《勝つ》と信念を曲げてはいけないけど、直感で分かる。僕は死ぬ。父さんも、僕がどう足掻いても死ぬ気がする。
「ぐっ…ぐぁぁぁあっ!!」
背中に激痛が走る。奴らだ。奴らの呪いだ。
「と、父さん。父さんはっ大丈夫?
僕はまだ戦えるっ!」
「私の事は良い。
王を護れっ!」
背中で伝わる父さんの背中は熱くて、触れていなくてもその熱がわかる。
「嫌ですっ!父さん…、僕達が守るのは家族だけだっ!」
「親不孝だ。」
微かに笑っている父さんを感じる。少し嬉しそうな気がする。
「父さん。その角っ、どうにかしてくださいね。 」
背中の痛みに慣れさせていって、父さんにそう言うと、走って敵陣に進む。父さんだけでも王を護ればいい。僕達は父さんを守る。例え死んでも、死んだ後でも、骨が無くなっても。消し炭にされても。僕達は戦い続ける。
「ポルクスっ!
クククッ…本当に、親不孝だ。
私を守れ!君達の役目はそれだけだ!」
「分かってますよっ!」
その声が聞こえて、嬉しさが込み上げるのを隠しきれずに言う。父さんの分の道を開ける。
背中の羽に激痛が走る。さっきよりも羽の大きさは大きくなってる気がする。背中の服を切って羽を広げる。さっきまで何も無かった物が急激に成長する感覚。筋肉痛でも成長痛でもない、刺されるような痛み。
「くっ…父さんっ!行きますよっ!」
「王の場所は、分かっているっ
私の指示を聞け。」
「っ?!わ、分かりました。」
父さんの指示で大広間に着くと、壁から大きな爆音とともに敵が入ってくる。ざっと50人以上。こちらは、2人。割に合わないけど、手練じゃ無ければ優にこなせる。
「父さ…」
「君は何もするな。そのままで居ろ。」
そう言う父さんは僕の返事の時間を与えずに走って毒を塗った大太刀を大きく振る。父さんがいつも仕込んでる毒は解毒薬がまだ一般公開されてない。
直ぐに効くし、父さんの毒は優しい。痛みもなく意識が消えて何も考えられなくなって死ぬから。
そう考えてると、周りの敵は消えていた。
「と、父さん!」
「行くぞ。っ……。」
父さんの目線は壁が崩壊して白い煙と大雨に濡れて、弱々しく立っている人物を息を飲んで固まっていた。
僕も目線の先を見る。
「っ?!カストール?!
ど、どうしてっ…ぅっ…」
「ポ…クス…!」
柔らかく笑って一生懸命に走りよってくる双子のカストールを見て、走り寄りたくても僕は背中の痛さに耐えきれなくて、崩れ落ちる。
カストールは、力なくカツッ…カツッ…カツッ…と、こっちに来てる感覚がする。
「うぐっ…あああぁっ!」
のたうち回る僕は、視力が段々落ちてきてる気がする。
「ポク…ス…。と、うさ…ん!」
鉱石化が進んでるのか、生命力が弱まってきている。
「っ…くそっ…
私は行く。君達は、そこに…居なさい。
すぐ、私も君達に追いつく。」
その声がして、父さんは頭にある植物の角に生命力を吸い取られているにもかかわらず、いつもの様だった。僕達は、手を合わせて、横たわる。
「僕達はっ呪いに侵されてるけど、僕達もっ呪いが使える…よね。」
「あ、ポクス。悪い顔…してる。」
「はは…そういう、カストールの方が、だよ。」
2人で涙を流しながら、両手で握りしめる。あの言葉を言おう。カストールも分かっていると思う。これは、父さんの為じゃない。僕達の願いだ。
僕達には、1つ隠してる事がある。最期の祈り叶える《呪い》。祈りを叶えた瞬間僕達は死んでしまう。そんな能力。
呪われた双子と言われてるけど、僕達が否定しなかった理由はこれがあるから。
父さんにもハッキリと伝えなかった、この神様に貰った能力を今使うんだ。
「願おう。」「祈ろう」
「僕達の夢は」『42g』
『僕達に』
「呪いと」「この国とあの国を消し去る罰を」
『全部この命と魂で引き受け(る/ます)』
そう言い残して、僕達の胸から光が出て、天井を突破ってこの国全部を光で包まれた。あとは、時間の問題。父さん、僕達やったよ?
褒めてくれるかな?怒るかな?泣いてくれるかな?僕達をあの日のように抱きしめてくれるかな?
遠くで僕達の大好きなあの声が、泣きながら走りよってくれるのを感じたけど、僕達の意識は消えた。
「ねぇ、カストール」
「なぁに?ポクス?」
「父さんは、僕達の事どう思ってるんだろう?」
「…そんなの知らない。」
1本に銀色の髪をまとめたエメラルドグリーンの目をした片割れが口を膨らませる。
「ふふふ♪そう言わないの!
僕達を住まわせてくれて、働かせてくれるいい人なんだよ?」
「そうだけど…」
優しく笑うもう1つの片割れは、2人分の自分と同じくらいの大きさな武器を軽々と持って、2人の言う《父さん》という者へ向かう。
「あの人嫌いっ!
僕達を変な目で見るんだもん!」
「はははっ、いいんだよ
その鬱憤を僕達は、どう発散させればいいのか教えてくれてるのは父さんだよ?」
「そ、それは…そうだけど…」
うー…と、唸る片割れはもう1人に頭を撫でられて扉を4回ノックする。
「カストールとポルクスです。」
「入りなさい。」
扉の向こうから、中性的で年齢不詳の声が緊迫するような声色で、それでももう慣れたのか2人は平然とした態度で中へ入る。
「遅い。」
椅子に座って、2人に背中を見せるその人の周りには緊張感と恐怖を煽る空気が漂っている。
「ごめん。父さん。」
「でも!僕達、完璧だったよ?!」
「報告に1分と少し遅れた。それは完璧と言うのか?」
「すみません。
それ以外のヘマはしてません。なので…」
「それで?」
「っ…」
「うぅ…」
「はぁ…それで、今日はどうする?」
「依頼はもう入ってないのであれば、僕達は部屋に戻るつもりです。」
「です!」
「カストール。君は服が小さいんじゃないのか?」
「え…な、なんで…」
「仕立て屋を見つけている。限度はあるが君の好きな服を注文すれば良い。」
「へ?!いいの?!」
「こら、カストール!」
「あ…」
「ポルクス。君の武器はあまり合ってないんじゃないか?」
「い、いえ…父さんに初めて選んでいただいたので…」
「それじゃダメだと言っている。
意味が分からないのか」
「すみません…」
「君は大きくなったんだ。
初めて私がやったのは、5歳未満だ。」
「っ?!
あ、ありがとうございますっ!」
その意味は、小さな体で一番合っている物をずっと使っていても、今の年齢は13だ。差は8歳以上。それは、玩具と比較しても、服で比較しても身の丈には合わない事だった。
「今から様々な武器を決める。いいか」
「は、はい!」
「なら、15分後動きやすい服で良い。
地下のプレイングルームに来い。
では行け。」
「は、はい!父さん、ありがとうございます! 」
「ありがとーございます!」
2人は目を輝かせて部屋から出る。
「ね、今日の父さんは優しかったね!」
「そう?僕は不機嫌そうに見えた。」
「でもでも!優しいじゃん!
そろそろ服を変えたいって思ってたし…もしかしたら、ポクスのも新調してくれるかもだよ!」
「そうかなぁ…」
「あ!そういえば、ポクスって元々はナイフを主に使ってたよね!」
「え…う、うん。そうだけど…?」
「そのナイフって父さんからだったんだね!
色んな武器を毎回持っていくけど、いつも服の中から取り出せるように、ナイフ入れてるじゃん!」
「ま、まぁ…父さんからもらった初めてのものだから…」
「ふ~ん、ポクスって父さん絡みだと、結構真剣だよねっ
あ、僕そのままあっちの部屋に行くから!また後で!」
「うん。じゃあ、また夜に。」
2人は別れて別の部屋に向かう。これは何気ない父との平和な日常だ。
~6年後~
kasutoru
降り出す雨に濡れながら1人うずくまって地面を叩く1人の成人は銀色の髪の毛が腰まで長く、黒いリボンで一本に結われていて、茶色のベストに白のシャツと自分の目の色と同じエメラルドグリーンの色をした細いリボンを付けて、茶色のズボンと靴を履いている。
その姿は、何もしなくても美形で美しく、悲壮感が周りの空気を包み込む。
「くそっくそっくそくそくそくそくそっ…くそっ!!」
父さんと、ポクスは大丈夫か?いや、大丈夫じゃない。僕はまだ生きることが出来る。猶予がある。
ダイヤモンドよりも固いこの鉱石は僕を絶望させる物であるけど、今は好都合だ。
だから、立たないと…少しでいいから、先陣を切って皆の役に…ポクスに、父さんに少しでも生きられる様にならないと…。
「っ…くっそがっ!!
僕がこんなので消えるなんて思うなよっ!!」
未だ決着がついてない…いや、まだ生き残っている僕らの家族達と、敵国はどちらかと言うと僕らの方が弱ってる。
なら、話が早い。気を少しでも許しているという事。それなら…悪魔の双子と呼ばれた僕がこんな事で時間を使っちゃいけない。
骨も何も残らなくても、父さんの役に立つなら…それでいいんだ。
僕は走った。先日、少しづつ鉱石になる呪いを敵国にかけられて帰ってきた僕を知って、実は誰もいない場所で、父さんは僕の事で自分を悔いていたのを聞いた。
そんなの、腹が立つ。それと同時に、すごく涙が出た。涙も目からこぼれ落ちて手に落ちる頃には宝石となっていたけど。
心臓が痛いほど走った。それと同じくらい人を殺していった。それのせいなのか、かなり鉱石化が進行してる気がする。でも、いい。
父さんを守ることが出来るならいいんだ。
ほら、城の大広間まで着いた。あとは、父さんを…
porukusu
雷が落ちる音がする。カストールは大丈夫なのかな。いや、カストールなら、大丈夫。
鉱石化が進まなければ、丈夫に生きることが出来る。僕は、まだ大丈夫。
魔法国が呪いを使うのは誤算だった。あの国は魔法を使うと名が通っている。でも、違った。呪いで魔法のように使っているだけだ。
僕の大事な双子。カストールだけでも生きていれば…父さんの跡継ぎになる。それだけでいい。父さんや僕を気にせず家族達と今は逃げて…。
僕らは《勝つ》と信念を曲げてはいけないけど、直感で分かる。僕は死ぬ。父さんも、僕がどう足掻いても死ぬ気がする。
「ぐっ…ぐぁぁぁあっ!!」
背中に激痛が走る。奴らだ。奴らの呪いだ。
「と、父さん。父さんはっ大丈夫?
僕はまだ戦えるっ!」
「私の事は良い。
王を護れっ!」
背中で伝わる父さんの背中は熱くて、触れていなくてもその熱がわかる。
「嫌ですっ!父さん…、僕達が守るのは家族だけだっ!」
「親不孝だ。」
微かに笑っている父さんを感じる。少し嬉しそうな気がする。
「父さん。その角っ、どうにかしてくださいね。 」
背中の痛みに慣れさせていって、父さんにそう言うと、走って敵陣に進む。父さんだけでも王を護ればいい。僕達は父さんを守る。例え死んでも、死んだ後でも、骨が無くなっても。消し炭にされても。僕達は戦い続ける。
「ポルクスっ!
クククッ…本当に、親不孝だ。
私を守れ!君達の役目はそれだけだ!」
「分かってますよっ!」
その声が聞こえて、嬉しさが込み上げるのを隠しきれずに言う。父さんの分の道を開ける。
背中の羽に激痛が走る。さっきよりも羽の大きさは大きくなってる気がする。背中の服を切って羽を広げる。さっきまで何も無かった物が急激に成長する感覚。筋肉痛でも成長痛でもない、刺されるような痛み。
「くっ…父さんっ!行きますよっ!」
「王の場所は、分かっているっ
私の指示を聞け。」
「っ?!わ、分かりました。」
父さんの指示で大広間に着くと、壁から大きな爆音とともに敵が入ってくる。ざっと50人以上。こちらは、2人。割に合わないけど、手練じゃ無ければ優にこなせる。
「父さ…」
「君は何もするな。そのままで居ろ。」
そう言う父さんは僕の返事の時間を与えずに走って毒を塗った大太刀を大きく振る。父さんがいつも仕込んでる毒は解毒薬がまだ一般公開されてない。
直ぐに効くし、父さんの毒は優しい。痛みもなく意識が消えて何も考えられなくなって死ぬから。
そう考えてると、周りの敵は消えていた。
「と、父さん!」
「行くぞ。っ……。」
父さんの目線は壁が崩壊して白い煙と大雨に濡れて、弱々しく立っている人物を息を飲んで固まっていた。
僕も目線の先を見る。
「っ?!カストール?!
ど、どうしてっ…ぅっ…」
「ポ…クス…!」
柔らかく笑って一生懸命に走りよってくる双子のカストールを見て、走り寄りたくても僕は背中の痛さに耐えきれなくて、崩れ落ちる。
カストールは、力なくカツッ…カツッ…カツッ…と、こっちに来てる感覚がする。
「うぐっ…あああぁっ!」
のたうち回る僕は、視力が段々落ちてきてる気がする。
「ポク…ス…。と、うさ…ん!」
鉱石化が進んでるのか、生命力が弱まってきている。
「っ…くそっ…
私は行く。君達は、そこに…居なさい。
すぐ、私も君達に追いつく。」
その声がして、父さんは頭にある植物の角に生命力を吸い取られているにもかかわらず、いつもの様だった。僕達は、手を合わせて、横たわる。
「僕達はっ呪いに侵されてるけど、僕達もっ呪いが使える…よね。」
「あ、ポクス。悪い顔…してる。」
「はは…そういう、カストールの方が、だよ。」
2人で涙を流しながら、両手で握りしめる。あの言葉を言おう。カストールも分かっていると思う。これは、父さんの為じゃない。僕達の願いだ。
僕達には、1つ隠してる事がある。最期の祈り叶える《呪い》。祈りを叶えた瞬間僕達は死んでしまう。そんな能力。
呪われた双子と言われてるけど、僕達が否定しなかった理由はこれがあるから。
父さんにもハッキリと伝えなかった、この神様に貰った能力を今使うんだ。
「願おう。」「祈ろう」
「僕達の夢は」『42g』
『僕達に』
「呪いと」「この国とあの国を消し去る罰を」
『全部この命と魂で引き受け(る/ます)』
そう言い残して、僕達の胸から光が出て、天井を突破ってこの国全部を光で包まれた。あとは、時間の問題。父さん、僕達やったよ?
褒めてくれるかな?怒るかな?泣いてくれるかな?僕達をあの日のように抱きしめてくれるかな?
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