Leaf Memories 〜想いの樹木〜

本棚に住む猫(アメジストの猫又)

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春風に揺られる若葉

ボクらの始まり

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瑠衣るいくんって、ピアス好きだよねぇ」
 急に言われたボクは、絵を書いていた手を止める。

「きゅ、急だね。
 どうして?」
「ん?いやぁ、いつもピアスしてるし…
 ワタシ、少し憧れる。」
 そういう耀てるさんは、可愛らしい服を着て、ファミレスの窓から見える道路に、コップの縁を指で優しく触りながら眺めて、そう一言言うとボクを見つめて、少し艶やかで可愛らしくボクに笑う。

「べ、別にいいじゃないですか。
 あと、耀さんだっていい趣味持ってるじゃん。」
「そ~お?
 褒め言葉として受け取るけど、瑠衣くん程ではないよん♪」
 2つに結った髪の毛を片手でクルクルと巻く姿は、本当にボクとは別次元な人なんだろうなぁと、ヒシヒシと感じる。


「後どのくらい?」
「あ~、別にあとは家で出来るし…」
「ふ~ん、今日も瑠衣くんの、歪んだ純情な心の音を聞けてよかったぁ♪」
「はぁ…そういう耀さんだって、「男が~」とか「女が~」とか言うじゃん」
「それはぁ!ワタシだって、悩める女のコ♪だもん♪」
「はぁ…まぁ、別にいいですけど」
「あ~!口答えしようとしたでしょ!
 ワタシ、分かるんだからねっ!もう!
 年上に向かって、反発しちゃいけません~!」
 そんな事を言い合うボク達は一般的な人達にとっては、異常な方の人だ。言わば、異物でいてスパイスでもある様なもの。
 別にどちらかというと一般人側だから、そこまで周りには気にして欲しくない。という気持ちが大きい。


「で?瑠衣くん、次いつ実家の方に帰るの~?
 不良少年?になるつもり~?」
「え…。あ、いや、別に…。
 それを言うなら耀さんの方じゃない?
 あと、ボクはちゃんと《女》だから。ジェネレーションギャップに打ちのめされて、こんな感じになった様なものだし…。」
「ふふふ♪そうね♪
 でも、可愛いわぁ♪まだまだ青くて可愛らしい♪」
 ボクの頭をワシャワシャと撫でる手は、いつも安心する温かさで、この手で何度泣かされたかわからない。勿論それは、ボクが泣けなくて苦しんでた時に救ってくれた手。

「も、もう!
 それで誤魔化さないでくれる?!
 はぁ…ボク、心配してるからね?
 耀さんが実家に帰らない度に、耀さんは帰る機会を何倍にも無くしてる事!」
「はいはい。ありがと」
「はぁ…それで、いつ帰る?
 耀さんが帰るなら、ボクも帰るし」
「あら♪思ったよりも懐かれちゃった♡」
「気持ち悪い声で言わないでよ…」
 何度も言ったセリフに、ボクは何故か飽きてない事に、少し笑える。


「じゃあ、今週末ね!」
「はぁ…分かったぁ」
「ほら、そんなに気を落とさないで!」
 今度は、僕が年上に見えてしまって面白い。僕の袖を握って肩を落として、とぼとぼと歩く耀さんはなんだか可愛い。
 ボクは耀さんよりも少し背が高いくらいで、なんだか変な感じする。




 ボク達は、違った痛みを持っている。
 それは、分かち合うことなんて出来ないし、しようとなんかしない。思わない。
 相手の気持ちを知って、一緒に悲しむなんて余裕はあまり無いから。でも、話を聞くくらいは出来る。




 ボクの痛みは、話を聞いてもらっても消えない痛みは残っててそれを、絵を描く活力、ブーストする源にしてる。
 ボクは一見、ボーイッシュな髪型をしていて服もそこまで女の子らしくない服装をしてる。それは、高校から引きずっている、女の子への想い。
 今は大学生だけど、連絡をとることは出来る関係で、その子との関係はずっと友達止まり。変化なんてしてない。もしかしたら、友達の中で「そんな奴もいた」っていう感じに思われてるかもしれない。
 でも、ボクはそれでも覚えてくれてるだけで嬉しい。なんだか、すごく重たい人みたいになってる。

 だから、ボクはその子への想いが増える度に穴を開ける。心地いいとかじゃないし、痛い。
 毎回泣いてしまう。こんなに穴を開けてるのに…。空いてるけど、その穴はあの子への気持ちが入ってて、でも空虚でしかなくて…



 耀さんは、可愛いものが好き。
 だから、昔から可愛いものを集めていたし、自分の風貌に疑問を覚えて、実家を出る事が出来た瞬間に思いが爆発したように女の子の格好をしてる。
 だから、ボクは怖いんだ。
 声もそこまで低くないし、体も細いし、女の子っぽくて、美容にも努力してる。それでも、会社だとそういうのはあまり良く思われてなくて、友達がいなそう。
 だから、こうして休日もボクと話をしてる。
 でも、可愛い服が好きで女装してるだけで、好きな人の対象は女の子。
 そのせいで、理解を惜しむ人が多いみたい。
 ボクと燿さんは、実家が半年に1回は親戚で集まってご飯を食べるのをしてるから。近い親戚同士だと、毎月。
 だから、ボクと耀さんは昔から仲がいい。


 ボク達は、実家に帰る度に毎回ウィッグを被る。ボクは長い髪で、耀さんは短い毛の男の人の髪の毛。
 別にボクの髪はそのままでもいいと思ったけど、1度そのままで行った時、面倒になったから。
 耀さんも、髪の毛を伸ばし始めた時に行ったら、不潔だと言われたみたい。



 実はボク達、ある事を始めた。
 SNSで音楽活動を始めた。ボクはアニメーション関連。耀さんは音関連。
 それ以外は2人で一緒に考える事にした。ただ少しやってみたかったから誘った事。多分、親戚は知らないと思うし、周りも気づかないはずだから。二つ返事で始める事になったんだ。



これが、ボク達の最初の1歩。



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