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第2章 経過観察

[4] 観察記録

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 拘束して三日目。

 血液パックでの生活一日目。



 今日から彼女の記録をつけようと思う。

 悲しい事に、特に進歩はない。

 髪を振り乱し、唸り、狂暴性が見え隠れしている。

 彼女……といえる人格や人間性は、いまだに見られない。

 暴れ、疲れきった所で無理矢理だが血液パックの血液を飲ませた。

 が、一時間も経たないうちに吐き出した。







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 拘束して四日目。

 血液パックでの生活二日目。



 髪を振り乱す代わりに、喉の渇きを感じているのか喉をかきむしる行動が見え始めた。

 ほんとうに生き血の影響は消えはじめているのか?

 話しかけても、返ってくるのは唸り声ばかりだ。

 正気に戻るんだろうか……。

 血液パックの血は、やはり吐き出した。





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 拘束して五日目。

 血液パックでの生活三日目。



 朝、会いに行ってみると、混乱している叫び声は聞こえてこなかった。

 部屋の中では、苦しそうに彼女が力なく横たわっている。

 体を動かす元気もない。

 オレが近づいても、苦し気な呼吸を繰り返すばかりだ。

 自己判断は危険かもしれないが、血液パックの血を温めてから飲ませてみた。

 個数は一つ。

 吐き出す行動はない。とりあえず、これで様子を見てみよう。





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 拘束して六日目。

 血液パックでの生活四日目。





 生き血とパック詰めでは、そんなにも違うのだろうか?

 冷たいものと温かいものでは、そんなに違いがあるのだろうか?

 今日は、二つ飲ませてみたがあまり体力と気力は感じられない。

 威嚇も、唸りもせず、オレに抱えられてカップで血を飲んでいる姿に、心の奥に不可解なものを感じた。

 もしかしたら、彼女は戻れるかもしれない。



 

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 拘束して七日目。

 血液パックでの生活五日目。



 パックを二つから三つに増量。

 顔色は良くなり、呼吸も安定している。

 あまりにも酷い環境だったので、毛足が長く肌触りの良いふかふかのカーペットをひいた。

 だが、もちろん目隠しも手首の戒めも取ってはいない。

 不思議だ。

 寝返りを打つ姿も、カーペットの上で自分の腕を枕にして寝る姿も、人間と変わらない。

 きっと、明日にも目を覚ますだろう。





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 拘束して八日目。

 血液パックでの生活六日目。



 なんだか不愉快な気分だ。

 彼女に血を飲ませる行為を、楽しいと感じている自分がいるのだ。俺があれだけ嫌悪している行為だというのに。

 まったく、イカれてる。

 夕方、カップを持って部屋に入ると彼女が困惑した様子でカーペットの上に座っていた。

 ようやく彼女が目を覚ました。






【瑞季の観察及び報告書より】






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