月の絆~最初で最後の運命のあなた~

大神ルナ

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第7章 想いの行方

[3] 勇気を下さい

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 心地よいダルさに目を開けずにもう一眠りしようとすると、くすぐったい感触が肩に触れた。
 腕をするりと撫でられ、そのまま腰の辺りまで撫でられると、官能的な本能に再び火がついた。

「起きてるんだろ、マリア」

 甘さを混ぜた声で囁かれて、あたしは目を開けた。
 目の前には裸の胸があって、少し顔を上げると、頬杖をついて見つめてくる狼呀がいる。
 満ち足りた顔を見ていると、一気に昨日の記憶がよみがえる。

「あっ!」

 恥ずかしさが込み上げてきて、上掛けの下に逃げ込もうと思ったけど、狼呀の様子にやっぱりやめた。
 無理矢理じゃないし、恥じる行為でもない。
 ただ、幸せと喜びがあっただけだ。

「動けるか?」

「ええ、たぶん。あの……」

「ん?」

 狼呀も満足できたのか。
 そんなことを口走りそうになって、慌てて口を閉じた。
 代わりに、手のひらを狼呀の筋肉質で引き締まった胸から割れた腹筋までを撫で下ろす。

「......マリア」

 低くて、唸るような声は、警告を含んでいる。
 意味がわからなくて見上げると、優しい瞳に情欲が浮かんでいた。

「すぐにする気がないなら、やめておけよ」

「どうして?」

 撫でる手を止めることなく問いかけると、あたしの腰を撫でていた手が止まり、ぎゅっと握って抱き寄せた。
 下半身が密着して、あたしは意味を知った。
 あたしの腹部を固く起き上がったぺニスが、存在を主張している。

「もう一度、してもいいよ?」

「……いいのか? 次は獣みたいに後ろから繋がるぞ?」

「か、かまわない」

 低い唸り声が肌をざわめかせたと思うと、体をひっくり返され腰を持ち上げられた。四つん這いになるように両手と両膝をついて体を支えると、すぐ後ろにいる狼呀に背中を押された。

「胸はベッドにつけて、腰だけ上げてくれ」

 言われるまま、胸をしたにつけ膝をついて腰をあげると臀部を撫でられる。
 
「ああ、マリア。すごくエロチックで、興奮しているのが匂いでわかるよ」

 ベッドから下りた狼呀は、臀部から滑らせるように太股を撫で、足を開かせる。胸をしたにつけている分、お尻をつきだすような形になっていて、冷静に考えたら普通の四つん這いよりも秘部を晒していることに気がついた。
 突然、芽生えた羞恥心のせいでじわりと濡れるのが、自分でもわかった。

「昨日、かなりシタから、クリトリスが充血してるよ」

 もっとよく見えるようにと秘部を広げられ、クリトリスを狙って舌先で嬲ってくる。ぞくぞくとした気持ち良さに、腰が震えて崩れそうになるけど、狼呀に掴まれていてできない。
 わざと音を立てながら舐め、とろりと蜜を零す入口に指を出し入れしている。時折、指を締め付ける場所を見つけては指を曲げて刺激してくる。
 痛みにも似た気持ち良さに、シーツを握りしめた。
 昨夜、狼呀の硬くて太いぺニスを受け入れたソコは、指だけでは物足りなくてむずがゆい。
 思わず腰を揺すると、指を二本に増やされクリトリスを潰された。
 
「狼呀っ!」

 激しい快感に、膣が収縮して指を締め付けながら痙攣した。
 口からは喘ぎを通り越して、絶叫が上がる。

「腰が揺れていやらしくて、可愛いマリア。もう欲しいの?」

 ぐちゅぐちゅと指を抽挿しながら問われ、あたしは何度も頷いた。
 物足りない快感が長く続くのは、思いがけず苦しい。あの広げられ、奥まで満たされる感覚を知ってしまったら、長い愛撫は生殺しに近い。
 ようやく、中の柔らかい壁を擦りながら指が抜けていき、コンドームの袋を開ける音がしたかと思うと、ぺニスの先端を昨夜の行為のせいで腫れぼったく感じる入口に擦りつけてくる。

「昨日、たくさんしたからまだ柔らかそうだな。もう、熱くてぬるぬるしてる」

 襞をぺニスで上下に刺激してくる。薄い膜で隔てられていても、熱さと丸みがわかってあたしの体を熱くさせる。

「狼呀……入れて」

 顔を傾けて、ぼんやりと狼呀を振り返ると、彼は情欲に頬をうっすらと赤く染めていた。瞳は明るい金色に輝き、狼呀の奥底にいる人狼を思わせた。
 そこからは、なんの躊躇いも見せず、適切な位置に固定すると一気に押し入ってきた。
 昨夜の優しさに溢れたセックスよりも、今の方が彼のモノにされたという感覚が強い。
 奥まで満たされ、広げられている筋肉が、狼呀の形を確かめようと収縮して締め付ける。
 最高にぴったりと合っている。
 まるで、彼が入るのが決まっていたみたいに。
 間髪いれずに、狼呀は腰を引き、抜けるか抜けないかってところまでいってから、浅いところをくすぐるように動かす。
 もっと奥を刺激してほしくて腰を動かしたいけど、狼呀の強い手で腰を固定されていてはそれもできない。
 わざと耳を犯すために、濡れた音がするように動かされ、あたしは懇願した。
 声は辛くて涙声になっていた。
 
「ごめんよ、マリア」

 もう一度、一気に奥まで押し入ってきた狼呀は、今度は抜けるまで引き抜いて、一気に入るを繰り返しはじめた。
 力強い抽挿に、あたしの肌と狼呀の肌がぶつかり、乾いた音を室内に響かせる。
 あたしの好いところを狙った打ち付け方に、ナカが擦れて絶頂が忍び寄ってくるが、狼呀が動きを遅くしはじめた。

「なっ、なに?」

 問い掛けると、腹部と胸の前に回された腕によって繋がったまま体が起こされる。突然、変わった角度にぺニスの当たる位置が変わってより深いつ繋がりが苦しい。
 不安定な姿勢の中、腰を支えていた手を下から滑らせ、乳房を下から掬い上げるように揉みはじめた。
 膣を刺激される軽い突き上げと、手の平全体を使った揉み方に、あたしは揺らされるがままだ。

「も、もう……苦しい」

 片手を後ろに伸ばして狼呀の髪を掴んでキスをねだると、キスしてくれた。彼の舌が口の中に滑り込み、絡め合う貪欲なキス。
 直後、狼呀は小刻みに腰を動かし、ゴム越しに熱い精を放った。



 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 
 次に目を覚ましたのは、お昼が過ぎた頃だと思う。この部屋には時計がないから、正確な時間は分からない。
 自分のスマートフォンすら何処に置いたのか覚えていない。
 ごろりと寝返りを打つと、狼呀がベッドから出るところだった。

「まずは、汗を流すか」

 そう言って、狼呀は裸身をさらしたまま浴室に歩いていった。
 堂々とした歩き方と体に、あたしは枕に顔を埋めた。
 なんで、彼はあんなに元気な訳?
 あたしの手足は彼がもたらした快感の余韻で、ふにゃふにゃだっていうのに。
 じっとベットに横になって耳を澄ましていると、シャワーが勢いよく流れる音が聞こえてきた。
 きっと、少し時間がかかるだろうから、もう一眠りしよう。
 彼が出たら、あたしもシャワーを浴びたいけど、まだ体に力が入らなくて動ける気がしない。
 足の間には心地よい違和感があるし、腰と内腿の筋肉はこれまで使ったことがない感じの筋肉痛になっている。
 目を閉じて、近づいてくる睡魔に身を任せようとすると――体が抱き上げられた。

「ちょっと! 何してるのよ!!」

「ん? シャワーの水が温まったからな。たぶん、自分じゃ歩けないだろ?」

 そういう問題じゃない。
 狼呀はまったく恥ずかしがっていないけど、裸を曝すあたしはまだ恥ずかしい。というか、一生恥ずかしいに決まってる。たとえ、四つん這いになった姿を晒していたとしても。
 抱き上げられた時に上掛けは体を滑り落ちて、あたしの体を隠すものはない。
 どうにか両手で胸を、太ももはきつく閉じた。
 たったの数歩先にある浴室が、やけに遠く感じる。

「じ、自分でできるから」

「まだ無理だろ。それに、俺が洗ってやりたい。昔からの夢なんだ」

「夢?」

「ああ。伴侶の髪を洗い、体を洗い……タオルで拭いて、髪を乾かしてやるのがな」

 そう言われてしまうと、強く拒絶することができない。
 ゆっくりとシャワーの下に下ろされると、足にあまり力が入らなくてよろめいた。
 でも、狼呀が両手で腰を支えてくれたから、どうにか倒れずにすむ。
 バランスを取りたくて両手を狼呀の胸に置くと、お湯より熱い体温と心臓の鼓動が伝わってきた。
 思わず唇を寄せて、彼の胸に口づける。
 腹筋に力が入って、狼呀は鋭く息を吸った。
 それでも何も言わず、シャンプーを手に取りあたしの髪を洗い始めた。
 頭皮をマッサージするように揉まれて、あまりの気持ちよさに頭をのけ反らして彼の胸に爪を立てる。
 すると、狼呀はさらす形になった喉に口づけてきた。
 なんだか、優位に立たれた気がする。

「聞いてもいいか?」

「ん……何を?」

「あの冬呀って奴が言ってたこと。アルファ夫婦の子って?」

 あたしは、狼呀の胸に置いていた手を握りしめた。

「あたしは、オオカミシフターのアルファ夫婦の子供だったんだって。二人は……争いに巻き込まれて亡くなって、なぜかあたしは普通の人間の家で育てられた」

「オオカミシフター……」

 狼呀は呟くと、優しく髪を洗い流してくれた。

「冬呀は、小さい頃のあたしを知っていて、ずっと探してくれていたの。それから……」

 言うのを躊躇った。
 あたしの嬉しかった心は、狼呀を傷つけると思ったから。 
 彼は、あたしの心に安らぎと喜びをくれた。
 傷つけたくなんかない。

「それから?」

 なのに、あたしの葛藤に気づかず、狼呀は優しい手つきで首の後ろを揉みながら問いかけてくる。
 もう不安なんてないみたいに。

「狼呀。忘れないで、あたしはあなたを愛してる」

 もう話を先伸ばしにしている訳にはいかない。

「でもね……」

「やめてくれ。聞きたくない。俺を説得しようとしないでくれ」

 言わなくても狼呀には分かっているのか、拒絶の思いがありありと伝わってくる。
 でも、今話さなくちゃ、二度と話せない。






 
 
 

  



 



 
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