王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ

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その5

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「え?こ、んやくしゃ?」

アルフォンス様の今放った言葉は私たちの母国語がしら、それとも外国語?
こんやくしゃ?誰と誰が?

「あれ?知らなかったの?僕たちは1週間前にやっと正式な婚約者になったんだよ。君のお父上が中々首を縦に振らないから、最終的に脅す...いや交渉するのが大変だったけどね」

ニコニコと爽やかな顔で笑いながら、衝撃的な事実を発するアルフォンス様を凝視する。

「まさか君のお父上が君に話してないなんてね、これはこれは。最後まで往生際が悪いなぁ...」

小声で何かを呟いているアルフォンス様の、さらにニコニコと笑みを深めた顔がイケメンすぎて直視できない。

え、待って婚約者?1週間前?
な、え?

「そんな、アルフォンス様。ダメです、今からでも破棄しないと!」

「ん?破棄?」

いまだにニコニコ顔ではあるのに、破棄の二文字を発した途端、部屋の温度が5℃くらい寒くなった。
なんとなくアルフォンス様からは不穏なオーラが発せられている気がする。
こ、こわい!

「リリー、婚約は破棄しないよ。君がもし僕との結婚を嫌がったとしても絶対に離してはあげないし、もし僕以外の男を見たら僕はその男を生きながらにして地獄に堕とすよ、永遠にリリーに会わないようにしてね」

「!?」

「どうしてそんな言葉が出てくるの?」

え?イクリットは?
婚約しちゃったら、イクリットとの恋を諦めないといけなくなるわ。私は嬉しいけれど、アルフォンス様が幸せじゃなければ、私は....

「アルフォンス様には、お慕いしている女性がいらっしゃるでしょう...?私なんかと婚約しては、その人との恋がうまく行きませんわ...アルフォンス様は王子という身ではありますが、アルフォンス様も一人の人間です。生涯を共にする者くらいは、心の底から愛しいと想える者と一緒になってほしいのです」

たとえこの恋が実らなくても。
たとえ私の家が没落しようとも。
...いや没落は流石に身を削りすぎだけども。

でもアルフォンス様には!幸せになってもらいたい!

「リリー...」

途中まで絶対零度の冷気を放っていたアルフォンス様が、私の言葉を聞いて幾分が雰囲気を和らげた。
安心して下さったのね、私が恋の障害にならないから!

「僕は君のそういうところが本当に愛おしい」

「え?」

「僕が慕っているのは君だし、生涯を添い遂げたいと思ってるのも君だ。」

「えっ、え?」

「僕は好きでもない女性に抱きついたり、ましてやこんな、広い部屋で密着して過ごしたいとも思わないよ」

また耳元で囁かれて、ゾワゾワ感が戻ってくる。あ、アルフォンス様が私を好き?
イクリットは...?

「でも、イクリット様が...アルフォンス様の想い人...」

小さく呟くと、それでもアルフォンス様の耳にはバッチリと聞こえていたらしい
ム、と眉を寄せると少し不機嫌に声を出す。普段感情を悟られないように完璧なニコニコ顔なのにこの表情も珍しいわ。好き。

「その女性はテオバルトから話を聞いて知っているよ、リリーの予言通りになってるから勘違いしないように凄く遠ざけていて、今では接触もない。なのに結局勘違いするなんてね...」

よ、予言?予言といえばそうなのかしら。
なんだかしっくりこない表現だわ

「勘違い...」

「テオバルトに聞いた時はバカにしていたけど、同じクラスに件の女性が転入してくると聞いた時は驚いたね」

同じクラス?でも、実際にはイクリットはアルフォンス様とは一番遠いクラスだったわ

「だから転入した際に一番遠いクラスにさせたのに、何故が接触を測ってきて、さらには僕と恋仲のように振る舞ってくるから......」

ボソボソとつぶやかれた台詞は、最後の方は何も聞こえなかった。
振る舞ってくるからなんなのでしょうか...
アルフォンス様...?

「とにかく、僕が好きなのはリリアンヌ、君だけだよ。愛している」

そう言って蕩けるような笑みを浮かべるアルフォンス様に、私はとうとう認めるしかなかった。
その事実が嬉しくて涙が溢れてくる。

私も、ずっとずっと好きだったから。
叶わない恋だと思っていたから。

「私も、アルフォンス様のことが好きですわ。愛しています」

泣きながらもそう口にするとアルフォンス様に顎を持ち上げられ目を合わせられる

「ふふ、リリー、泣かないで。」

ちゅ、と涙にキスを落として、アルフォンス様が顔中にキスをしてくる

「大好きだよ、リリー」

甘い声が部屋に落ちる

「アルフォンス様、私も、大好きです」

先ほどまでは絶対に叶うことのない相手だと思っていた。
嬉しさに声が震えて、きゅっ、とアルフォンス様の胸元に縋り付く。
にっこりとまた笑顔のアルフォンス様は、最後に私の唇にキスをした。


「やっと僕のものだね、リリアンヌ。一生大切にするからね」


優しく響いて、その声が脳に浸透する。
私も一生、アルフォンス様を大切にする。

うっとりとした気持ちでアルフォンス様に身を預けた。


今はただ、この幸せに身を寄せたい。
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みんなの感想(1件)

tefu
2024.01.06 tefu

おもしろくて一気に読みました!
もしあれば王子サイドやテオサイド、イクリットのその後など読んでみたいです。
次回作も楽しみにしています。

エヌ
2024.01.07 エヌ

tefuさん
最後までお読みいただき、さらには感想までありがとうございます!とても嬉しいです!
続き...は書く自信がないですが、いつか書けたらと思います。

解除

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