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転生した俺が何者なのかわかってしまった、けれど……。
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そういえばこのクィーンは、毎話混沌とした惨状へ爆破するものを投じ、場をより混乱に陥れる悪役だ。
要するに、超危険人物で間違いない。
無意識に紫央はクィーンを警戒する。
しかしそこではたと、気がついた。
あくまでクィーンは、この物語の上では紫央の「助手」として登場している。
最終的にヒーローたちが倒すべき標的は、他にいたはずだ。
逡巡して、さらに肝心なことを思い出す。
そうだ。
本当に倒すべき敵は、「Dr.リュウ」──まさに、転生した「竜崎紫央」自身なのである。
中の人である紫央には、残念ながらどこにも悪役の要素がないのに。
けれど過去、甥っ子と姉が何度も紫央へ執拗に画像付きで「Dr.リュウ」の説明を耳タコで聞かされていたのだから、おそらく間違いないはずだ。
きっと。
それよりも、紫央はとんでもない人物に転生してしまったことに驚愕する。
今までモブどころか、モブ以下の。生徒にも同僚にも家族にも虐げられる、冴えないアラフォー独身男だったので、性格的にも能力的にも、突然物語の悪役になるなんて戸惑いしかない。
「い、いや……」
紫央は、焦っていた。
「リュウってばさあ、」
ため息交じりに馴れ馴れしく呼ぶ声は、明らかに紫央と真逆のカーストにいる偉そうな男だ。
顔も可愛いし。
いまだって名前呼びを簡単に紫央は受け入れはしたが、完全にそこにはクィーンとの力関係が見え隠れしている。
が、それは前世での紫央の人となりのせいだ。
クィーンの中の人がもし紫央の姉ではなければ、力関係など被害妄想に過ぎない。
黙りこむ紫央に、クィーンがとうとう心配そうに顔を覗き込んできた。
実は根が優しい、いい助手なのだろうか。
「リュウ、どうしたの? 昨日も思ったけど、どこか具合でも悪いの?」
今日はブーツを履いていなかったせいで、戦場で見た姿よりもだいぶ小柄で華奢にみえる。
その上、ちらりと見えてしまった桜色の胸の突起が、あまりにも紫央のものとは違うので激しく動揺してしまう。
「い、いや……」
冴えない男であった「竜崎紫央」には、当然前世では彼女がいなかった。
だから同性ではあるが妙に艶めかしいクィーンに、いけないとわかっていても、ついどきっとしてしまう。
これだから童貞は、と言われ続けた前世の嫌な記憶がよみがえる。
たしかにそうだ。
いくら女性とつき合ったことがないと言っても、男性相手にどきってしてしまうなんて、どういった感情がそこにあるのだろうか。
両手で顔を覆いながら紫央は、自己嫌悪に陥る。
同時に、紫央を動乱の戦場から救ってくれたキラキラな王子様であるレッドの顔を思い出し、あの男だったら同僚の男に対して、こんなにもやましい想いを抱くことはないのだろうな、とどこか恨みがましく思った。
完全にそれは、とばっちりの感情であるが。
要するに、超危険人物で間違いない。
無意識に紫央はクィーンを警戒する。
しかしそこではたと、気がついた。
あくまでクィーンは、この物語の上では紫央の「助手」として登場している。
最終的にヒーローたちが倒すべき標的は、他にいたはずだ。
逡巡して、さらに肝心なことを思い出す。
そうだ。
本当に倒すべき敵は、「Dr.リュウ」──まさに、転生した「竜崎紫央」自身なのである。
中の人である紫央には、残念ながらどこにも悪役の要素がないのに。
けれど過去、甥っ子と姉が何度も紫央へ執拗に画像付きで「Dr.リュウ」の説明を耳タコで聞かされていたのだから、おそらく間違いないはずだ。
きっと。
それよりも、紫央はとんでもない人物に転生してしまったことに驚愕する。
今までモブどころか、モブ以下の。生徒にも同僚にも家族にも虐げられる、冴えないアラフォー独身男だったので、性格的にも能力的にも、突然物語の悪役になるなんて戸惑いしかない。
「い、いや……」
紫央は、焦っていた。
「リュウってばさあ、」
ため息交じりに馴れ馴れしく呼ぶ声は、明らかに紫央と真逆のカーストにいる偉そうな男だ。
顔も可愛いし。
いまだって名前呼びを簡単に紫央は受け入れはしたが、完全にそこにはクィーンとの力関係が見え隠れしている。
が、それは前世での紫央の人となりのせいだ。
クィーンの中の人がもし紫央の姉ではなければ、力関係など被害妄想に過ぎない。
黙りこむ紫央に、クィーンがとうとう心配そうに顔を覗き込んできた。
実は根が優しい、いい助手なのだろうか。
「リュウ、どうしたの? 昨日も思ったけど、どこか具合でも悪いの?」
今日はブーツを履いていなかったせいで、戦場で見た姿よりもだいぶ小柄で華奢にみえる。
その上、ちらりと見えてしまった桜色の胸の突起が、あまりにも紫央のものとは違うので激しく動揺してしまう。
「い、いや……」
冴えない男であった「竜崎紫央」には、当然前世では彼女がいなかった。
だから同性ではあるが妙に艶めかしいクィーンに、いけないとわかっていても、ついどきっとしてしまう。
これだから童貞は、と言われ続けた前世の嫌な記憶がよみがえる。
たしかにそうだ。
いくら女性とつき合ったことがないと言っても、男性相手にどきってしてしまうなんて、どういった感情がそこにあるのだろうか。
両手で顔を覆いながら紫央は、自己嫌悪に陥る。
同時に、紫央を動乱の戦場から救ってくれたキラキラな王子様であるレッドの顔を思い出し、あの男だったら同僚の男に対して、こんなにもやましい想いを抱くことはないのだろうな、とどこか恨みがましく思った。
完全にそれは、とばっちりの感情であるが。
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