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俺、おっさんじゃなくなってるけど!
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「うぉおおおおお! ここはどこだ、お前は誰だ?」
四十二年の人生。
寝起きに興奮で雄叫びを上げる日が来るなんて、紫央はこれっぽっちも予想だにしなかった。
シックなブラックとアンティーク調のゴールドを基調としたラグジュアリーなパウダールーム。
SNS映えしそうなセンサーライト付きの洒落た長方形の大型ウォールミラーを何度覗いても、そこに映る顔は、どうみても見馴れた瓶底眼鏡の冴えないおっさんではなかった。
しゅっとした輪郭、くすみや皺のない綺麗な肌、意志の強そうなキリっとした形のいい細眉。
喋ればポジティブな言葉しか出てこないだろう口角のきゅっと上がった唇。
それから肩につくかつかないかくらいの、白髪もクセもない艶々の黒髪。
そしてその右側頭に派手な紫の髪の束が幾重にも編み込まれたコンロ―ヘアー。
どこをどうみても、これはアラフォーのおっさんの顔ではない。
テレビやSNSやでよく見かける、二十代前半から半ばくらいの派手なリア充男子の相貌でしか見えない。
信じられない……。
こんなことって、あるのか。
そうだ。
紫央は、「竜崎紫央」としての人生を終えたばかりなのだ。
そして新たに、「アイドル戦隊スターレンジャー」の世界に転生していたのである。
最大の敵、悪のマッドサイエンティストの「Dr.リュウ」として。
鏡に映る輪郭と自身の顔とを、それぞれ照らし合わせるように指で辿り、ドッキリではないことを確認してしまう。
「レーシックもICLも受けてないのに、視力が良好すぎる。キセキだ」
再び、うおおと感嘆していると、燃えるような赤褐色のさらさらなロングヘアを持つ中性的な男が、ぬっと背後から鏡へ映りこむ。
同時に、シルク素材の照りのあるガウンの袷から、女性とはまた違う瑞々しくマシュマロのような弾力のある胸が、紫央の視界へと飛び込んできた。
「ぎゃあ!」
驚いて紫央はぎょっとすると、髪と同じ色したアーモンドアイを怪訝そうに眇めた。
名前はたしか──高嶺の華のような美貌と高飛車な性格から、性別関係なく「クィーン」と呼ばれていたはず。
物語の設定上これがクィーンの常だろうが、転生したばかりの紫央は初めて目にするせいで、同性だとわかっていてもドキドキしてしまう。
「もう、朝からぎゃあぎゃあうるさいなあ。いつもクールで低血圧っぽいのに、どうしたの?」
甘く高いクィーンの声は、明らかに煩わしさを滲ませていた。
鏡越しに睨めつけるその瞳が紫央へ強い圧をかけ、せっかく最大の敵へと転生したのに及び腰になってしまう。
四十二年の人生。
寝起きに興奮で雄叫びを上げる日が来るなんて、紫央はこれっぽっちも予想だにしなかった。
シックなブラックとアンティーク調のゴールドを基調としたラグジュアリーなパウダールーム。
SNS映えしそうなセンサーライト付きの洒落た長方形の大型ウォールミラーを何度覗いても、そこに映る顔は、どうみても見馴れた瓶底眼鏡の冴えないおっさんではなかった。
しゅっとした輪郭、くすみや皺のない綺麗な肌、意志の強そうなキリっとした形のいい細眉。
喋ればポジティブな言葉しか出てこないだろう口角のきゅっと上がった唇。
それから肩につくかつかないかくらいの、白髪もクセもない艶々の黒髪。
そしてその右側頭に派手な紫の髪の束が幾重にも編み込まれたコンロ―ヘアー。
どこをどうみても、これはアラフォーのおっさんの顔ではない。
テレビやSNSやでよく見かける、二十代前半から半ばくらいの派手なリア充男子の相貌でしか見えない。
信じられない……。
こんなことって、あるのか。
そうだ。
紫央は、「竜崎紫央」としての人生を終えたばかりなのだ。
そして新たに、「アイドル戦隊スターレンジャー」の世界に転生していたのである。
最大の敵、悪のマッドサイエンティストの「Dr.リュウ」として。
鏡に映る輪郭と自身の顔とを、それぞれ照らし合わせるように指で辿り、ドッキリではないことを確認してしまう。
「レーシックもICLも受けてないのに、視力が良好すぎる。キセキだ」
再び、うおおと感嘆していると、燃えるような赤褐色のさらさらなロングヘアを持つ中性的な男が、ぬっと背後から鏡へ映りこむ。
同時に、シルク素材の照りのあるガウンの袷から、女性とはまた違う瑞々しくマシュマロのような弾力のある胸が、紫央の視界へと飛び込んできた。
「ぎゃあ!」
驚いて紫央はぎょっとすると、髪と同じ色したアーモンドアイを怪訝そうに眇めた。
名前はたしか──高嶺の華のような美貌と高飛車な性格から、性別関係なく「クィーン」と呼ばれていたはず。
物語の設定上これがクィーンの常だろうが、転生したばかりの紫央は初めて目にするせいで、同性だとわかっていてもドキドキしてしまう。
「もう、朝からぎゃあぎゃあうるさいなあ。いつもクールで低血圧っぽいのに、どうしたの?」
甘く高いクィーンの声は、明らかに煩わしさを滲ませていた。
鏡越しに睨めつけるその瞳が紫央へ強い圧をかけ、せっかく最大の敵へと転生したのに及び腰になってしまう。
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