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第一章「sinful relations」
第十四話「星明り」(2)
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「沙矢? 」
喫茶店の奥にある席に座っている女に声をかける。
幾度も夜を越えながら、未だに心を告げぬままにいる女。
彼女は俺の見せかけの偽りを信じたまま傷ついている。
赤いピーコートに、膝丈のスカートの姿。
(仕事着は、地味だが、コート姿は華やかに見えた)
「……青」
艶やかな黒髪が振り返る。
大きな瞳が瞬きした。
「会いたかった」
心底、嬉しいといった顔で彼女が笑う。
「俺も会いたかった」
何の下心もない本心。
「座って」
沙矢は俺を隣の席へ誘ったが、4人掛けテーブルなので
半端に空いてしまう。苦手に違いない正面に座った。
彼女は一瞬、頬を染めて、真顔を取り繕った。
「いらっしゃいませ」
すかさず店員がやってきてメニューを手渡してくる。
「コーヒーを」
「かしこまりました」
会釈して店員が去って行く。
「待たせてしまったな」
苦笑いを浮かべ、見つめる。
彼女の前には空になったティーカップがあった。
2度目のオーダーの分も、飲み干してしまったのだろう。
約束の時間より30分も遅れているのだ。
もしかしたら、それよりも前にここに来ていたとしたら。
「会えただけでいいの」
けなげな言葉。
次第に罪悪感に苛まれてくる。
そして耐えがたい苛立ちも。
「帰ってしまえば良かったんだ」
静か過ぎる声音は一層冷たさを呼び起こす。
内心の想いとは裏腹に残酷になれる俺は醜い。
「来なければ帰ってくれと言わなかったか。律儀に待たずに
帰ればそれで終わりにできたのに」
その時、彼女が微かに目を伏せたのが視界の端に映った。
違う。終わりになんてしたくない。
始めたいんだ。
平静を装うとしている俺に気づいてくれ。
「お待たせしました」
コーヒーが、運ばれて来た。
香ばしい匂いに鼻腔をくすぐられる。
俺は静かにカップを傾けた。
「言ったわよね。もう一度会えるならいつまでも
待ってるって。心の中で決めた事だから、
あなたが今日来ても来なくてもどっちでも良かったのよ」
強気に笑って彼女はカップを掻き混ぜた。
彼女の思い込んでいることと俺の考えていることは違う。
「……馬鹿だな」
言いたい言葉が空回りして上手く伝えられない。
どうでもいい存在じゃないからこそ適当にあしらえないのだ。
「馬鹿よね。自分が一番よく分かってるわ」
鋭い眼差しで、沙矢を見つめる。
「あなたから突然連絡が来て、驚いたけど。
遊びだとしても私のことを忘れずに
いてくれた事がどれだけ嬉しかったか
あの時の私の喜びを知らないでしょう? 」
「確かに知らなかった」
彼女が俺と会う事をそんなに喜んでくれているとは。
「あなたにとって私の事は遊びなんでしょ? 」
「遊びなんかじゃないって言ったら? 」
なんて滑稽な物言いだ。
「……えっ」
沙矢は目を大きく見開いた。 飲み終えたコーヒーをテーブルに置く。
「青」
真っ直ぐ視線がぶつかってくる。
そのまま彼女は俺を見ていた。
「行こうか」
こくりと頷いて、俺の後ろを歩き始めた。
レジで支払おうとしている時、彼女は横から、自分の分の代金を
トレイに置こうと手を伸ばした。
それを遮るかのように、紙幣をトレイに置く。
「ありがとうございました」
釣りを受け取り、歩きだす。
少し早い速度なので、彼女は、後ろから慌てて走って来る。
「ありがとう」
「いや」
ホテルのフロントで鍵を受け取る。
予約していた部屋へ向けてエレベーターに乗り込む。
「青、さっきの言葉……」
沙矢は俯き黙りこんだ。
俺は手のひらを強く握り締める。
痛いくらいの感情がきっと伝わるはず。
ふるふると見上げてきた沙矢の肩を抱いて口づける。
エレベーターは、あっという間に最上階にたどり着き、
言葉よりも単純に、本能で伝え合える場所へと俺たちを運んだ。
「夜が明けたらお前の望む答えをやる。受け止めてくれるか」
「うん」
こくりと頷いた沙矢は部屋に着くまでずっと腕にしがみついていた。
電子音が響き、目指す階へと辿り着く。
彼女の耳元では、あの日贈った真紅が揺れている。
部屋に入った俺達は、ベッドの縁に腰掛けていた。
「シャワー、先に行くね? 」
「……ああ」
座ったまま、動かない俺に、沙矢はそう告げて浴室へと消えた。
背中を見つめる。
彼女は出会った日から女だった。
少女は女だったけれど決して大人ではなく。
だからこそ俺との関係を続けられたのだ。
「沙矢」
小さな声で呟く。
シャワーの飛沫に身体を打たれ、瞳を閉じる。
両手で髪に触れ何度もかき上げた。
先程まで沙矢が、使っていたこともあって、バスルームの湿度が上がっている。
咽返るような感じがした。
本当に、むせ返るのはこれからか。
ふっと口元に笑みが浮かんだ。
何度でも求めてしまうあの肌理の細かい肌。
彼女の中に眠る心も美しくて、触れることに恐怖してきたが、
素直になるには今宵が最後の機会だ。
部屋に戻ると、沙矢はこちらに背を向けて立っていた。
足音を立てないように近づいて、
「寒い? 」
胸の下に腕を回せば、体の震えが伝わってきた。
バスローブ越しに伝わる体温。心臓がやけに高ぶっていた。
「少し」
「寒さだけで震えてるんじゃないんだろ?」
心臓が、一つ高く跳ねたのが伝わってくる。
全身が心臓になっているのではないか。
「……え……その」
「期待に応えてやるよ」
唇の端を上げて笑う。 望むがままに、さあ抱いてやる。
「……青」
バスローブの肩に頬を寄せて凭れてくる沙矢を強く抱き返す。
「好きなの」
すすり泣くような声。そして、踵を浮かせて自ら口づけてくる。
たまらなくなって、舌を絡ませた。
「……っ」
不器用に応えてくる沙矢がいじらしくて、どうしようもない。
更に体の震えは強くなり、しがみついてくる。
ふわり、と抱き上げてベッドの上に降ろした。
抱きしめると彼女の表情は見えなくなる。
衝動のままかき抱く。
きっと、欲情する己を見破られているだろう。
早鐘を打つ鼓動は、お互い同じだった。
「沙矢、好きだ」
唇を舐める。
首筋に舌を這わせると、呻き声を上げて背がしなる。
痕を残していく度に、甘い声が俺の鼓膜を震わせた。
谷間に指を這わせて、キスをする。
白い肌には見事に赤い華が咲いていく。
淫らに胸を突きだして、何かをねだっている様子に目の端を口元で笑みを刻んだ。
豊かな膨らみを揉みしだいて、赤く色づいた頂を舌でなぞった。
指と指で挟んで吸い上げる。
「ん……あっ」
頂を舌で転がし吸い上げ、きつく甘噛みしたり、指先で捏ねては弾く。
「んふ……」
唇を塞いで声を封じ込める。
舌で求めれば、 彼女も素直に返してくる。
膨らみに当てた手はそのままに、もう一方で足の付け根に触れる。
「へえ、もう待ちきれないって感じだな」
卑猥な言葉を耳元に注ぎ込むと沙矢は、瞳を閉じた。
あらゆる場所から水音が響く。
キスを交わし、音を立てて頂をすすり、秘所をなぞる。
しなやかな腕が、俺の背を抱いた。
もっと、焦らして煽ってやるつもりが、
物足りなくなってきて、突起に手を伸ばしてしまう。
唇を離すと、声が漏れた。思わずといった様子で。
「……っん」
口元を手のひらで押さえるその様が、こちらにどう映っているのか
彼女は考えもしないのだろう。
「こらえるな、もっと声聞かせろよ」
手を引きはがし、唇から唇へと言葉を注ぐ。
体がしなる。
指を秘所の中に忍ばせると、指が沈む感覚があった。
淫らな泉が湧いていた。
「シーツまで濡らしてしょうがないな」
沙矢はぶるぶると赤い顔で首を振った。
「増やすぞ」
奥へと指を突き立てる。
「指でさえこんなに締めるのか、たっぷり絡んでくるな」
彼女の方へ見せつければ、身をよじった。
付け根から、指先まで舐めて、こちらに邪笑する。
奥深くを突いた後、浅い場所を往復する。
ピストンする指の動きを少し少しずつ速めた。
「や……っ……も……だめ! 」
秘所にある突起に口づければ、あっけなく達した。
薄く開いた瞳、唇。吐き出す息の激しさは昇りつめた女の姿だった。
ごくり、と唾をのむ。弛緩する肌も、こちらを求める場所も見ているだけで、ヤられる。
茶色の瞳から、本来の色彩ブルーに戻す。
(抱き合う時は、いつも嘘をつきながら素を見せていた)
張りつめた自身に手早く避妊具を纏わせて、再び彼女の側に行く。
閉じ込めるように腕をついて、手を握りしめる。
入口に宛がう。
瞼が開くと、はっとしたように目を瞠った。
息を整えるように大きく深呼吸して、見つめてくる。
「いいか」
焦る自身をなだめるように、耳元で問う。反応した体が仰け反った。
手を握り返されたのはイエスの意志表示。
ぐ、と押し込むように中に入った。
「は……あ」
艶めかしい女の顔が真下にあった。
耳元を舌を這わせる。
耳朶を甘噛みすると同時に、動かし始めた。
夢中で、彼女の中に溺れるように。
四肢を絡ませて、口づけを交わし合って、二人だけの世界を作り出す。
揺れる胸の膨らみを揉みしだく。
部屋に響き渡るほど高らかな嬌声をあげながら昇りつめていった。
二度目の絶頂に、沙矢の体がわなないていた。
意識を手放している間に、新たな準備を整える。
しばらくして浮上した彼女を抱きあげた。
膝の上に乗せて、背に腕を回す。
秘所同士が触れ、奥へと引きずり込まれていった。
あまりにも、可愛らしくこちらを誘惑するから、
たっぷりお礼をしてやりたくなる。
お互いに腰を揺らしている。
ああ、これが抱き合うってことなのかと
改めて感じて、愛しさを覚えた。
深く繋がって求めあうのも、ただ相手と近づきたいからで。
鋭く突き上げると、背中に爪を立てられた。痛みで眉をしかめる。
「……ああ……青っ」
「……沙矢……くっ」
がくんと倒れかかってくる。
薄い膜越しに熱を放つ。幾度かに分けて。
相変わらず沙矢を求める時は貪欲で中々収まってくれない。
ぐい、と手を引いて抱きしめる。
頬が近づいてきて、顔がよく見えた。
とびきり美しくて愛らしい女の姿がそこにあった。
「これからも好きでいさせて」
声が濡れていると思い頬を見れば涙が落ちていた。
まぶたは閉じているのでどうやら寝言らしい。
彼女の感情の起伏の激しい所は嫌いじゃなかった。
俺みたいに感情を殺して生きてきた人間から見ると新鮮だ。
くるりと、体を丸めて眠り続ける沙矢。
「沙矢……」
黒髪を掻き分けピアスに触れた。
(似合うようになったな)
贈った日より、ずっと馴染んでいる。
今日は外れたりしなくて良かった。
隣に横たわりそっと抱き寄せる。しっとりと湿った肌が心地よかった。
視線を彷徨わせ、煙草の箱を探す。
置いた場所と別の所にそれはあった。
彼女の行動に自然と笑みが漏れた。
こちらがシャワーに行っている間に、煙草を吸う真似事をしたのだ。
ジッポで火をつけてくわえると紫煙が宙に立ち上る。
「……早く起きろよ?」
煙草を灰皿の縁で叩いて消し、くしゃくしゃと潰した。
彼女を腕の中に抱え込んで瞳を閉じる。
目を覚ます時が待ち遠しく、少し不安を伴った。
喫茶店の奥にある席に座っている女に声をかける。
幾度も夜を越えながら、未だに心を告げぬままにいる女。
彼女は俺の見せかけの偽りを信じたまま傷ついている。
赤いピーコートに、膝丈のスカートの姿。
(仕事着は、地味だが、コート姿は華やかに見えた)
「……青」
艶やかな黒髪が振り返る。
大きな瞳が瞬きした。
「会いたかった」
心底、嬉しいといった顔で彼女が笑う。
「俺も会いたかった」
何の下心もない本心。
「座って」
沙矢は俺を隣の席へ誘ったが、4人掛けテーブルなので
半端に空いてしまう。苦手に違いない正面に座った。
彼女は一瞬、頬を染めて、真顔を取り繕った。
「いらっしゃいませ」
すかさず店員がやってきてメニューを手渡してくる。
「コーヒーを」
「かしこまりました」
会釈して店員が去って行く。
「待たせてしまったな」
苦笑いを浮かべ、見つめる。
彼女の前には空になったティーカップがあった。
2度目のオーダーの分も、飲み干してしまったのだろう。
約束の時間より30分も遅れているのだ。
もしかしたら、それよりも前にここに来ていたとしたら。
「会えただけでいいの」
けなげな言葉。
次第に罪悪感に苛まれてくる。
そして耐えがたい苛立ちも。
「帰ってしまえば良かったんだ」
静か過ぎる声音は一層冷たさを呼び起こす。
内心の想いとは裏腹に残酷になれる俺は醜い。
「来なければ帰ってくれと言わなかったか。律儀に待たずに
帰ればそれで終わりにできたのに」
その時、彼女が微かに目を伏せたのが視界の端に映った。
違う。終わりになんてしたくない。
始めたいんだ。
平静を装うとしている俺に気づいてくれ。
「お待たせしました」
コーヒーが、運ばれて来た。
香ばしい匂いに鼻腔をくすぐられる。
俺は静かにカップを傾けた。
「言ったわよね。もう一度会えるならいつまでも
待ってるって。心の中で決めた事だから、
あなたが今日来ても来なくてもどっちでも良かったのよ」
強気に笑って彼女はカップを掻き混ぜた。
彼女の思い込んでいることと俺の考えていることは違う。
「……馬鹿だな」
言いたい言葉が空回りして上手く伝えられない。
どうでもいい存在じゃないからこそ適当にあしらえないのだ。
「馬鹿よね。自分が一番よく分かってるわ」
鋭い眼差しで、沙矢を見つめる。
「あなたから突然連絡が来て、驚いたけど。
遊びだとしても私のことを忘れずに
いてくれた事がどれだけ嬉しかったか
あの時の私の喜びを知らないでしょう? 」
「確かに知らなかった」
彼女が俺と会う事をそんなに喜んでくれているとは。
「あなたにとって私の事は遊びなんでしょ? 」
「遊びなんかじゃないって言ったら? 」
なんて滑稽な物言いだ。
「……えっ」
沙矢は目を大きく見開いた。 飲み終えたコーヒーをテーブルに置く。
「青」
真っ直ぐ視線がぶつかってくる。
そのまま彼女は俺を見ていた。
「行こうか」
こくりと頷いて、俺の後ろを歩き始めた。
レジで支払おうとしている時、彼女は横から、自分の分の代金を
トレイに置こうと手を伸ばした。
それを遮るかのように、紙幣をトレイに置く。
「ありがとうございました」
釣りを受け取り、歩きだす。
少し早い速度なので、彼女は、後ろから慌てて走って来る。
「ありがとう」
「いや」
ホテルのフロントで鍵を受け取る。
予約していた部屋へ向けてエレベーターに乗り込む。
「青、さっきの言葉……」
沙矢は俯き黙りこんだ。
俺は手のひらを強く握り締める。
痛いくらいの感情がきっと伝わるはず。
ふるふると見上げてきた沙矢の肩を抱いて口づける。
エレベーターは、あっという間に最上階にたどり着き、
言葉よりも単純に、本能で伝え合える場所へと俺たちを運んだ。
「夜が明けたらお前の望む答えをやる。受け止めてくれるか」
「うん」
こくりと頷いた沙矢は部屋に着くまでずっと腕にしがみついていた。
電子音が響き、目指す階へと辿り着く。
彼女の耳元では、あの日贈った真紅が揺れている。
部屋に入った俺達は、ベッドの縁に腰掛けていた。
「シャワー、先に行くね? 」
「……ああ」
座ったまま、動かない俺に、沙矢はそう告げて浴室へと消えた。
背中を見つめる。
彼女は出会った日から女だった。
少女は女だったけれど決して大人ではなく。
だからこそ俺との関係を続けられたのだ。
「沙矢」
小さな声で呟く。
シャワーの飛沫に身体を打たれ、瞳を閉じる。
両手で髪に触れ何度もかき上げた。
先程まで沙矢が、使っていたこともあって、バスルームの湿度が上がっている。
咽返るような感じがした。
本当に、むせ返るのはこれからか。
ふっと口元に笑みが浮かんだ。
何度でも求めてしまうあの肌理の細かい肌。
彼女の中に眠る心も美しくて、触れることに恐怖してきたが、
素直になるには今宵が最後の機会だ。
部屋に戻ると、沙矢はこちらに背を向けて立っていた。
足音を立てないように近づいて、
「寒い? 」
胸の下に腕を回せば、体の震えが伝わってきた。
バスローブ越しに伝わる体温。心臓がやけに高ぶっていた。
「少し」
「寒さだけで震えてるんじゃないんだろ?」
心臓が、一つ高く跳ねたのが伝わってくる。
全身が心臓になっているのではないか。
「……え……その」
「期待に応えてやるよ」
唇の端を上げて笑う。 望むがままに、さあ抱いてやる。
「……青」
バスローブの肩に頬を寄せて凭れてくる沙矢を強く抱き返す。
「好きなの」
すすり泣くような声。そして、踵を浮かせて自ら口づけてくる。
たまらなくなって、舌を絡ませた。
「……っ」
不器用に応えてくる沙矢がいじらしくて、どうしようもない。
更に体の震えは強くなり、しがみついてくる。
ふわり、と抱き上げてベッドの上に降ろした。
抱きしめると彼女の表情は見えなくなる。
衝動のままかき抱く。
きっと、欲情する己を見破られているだろう。
早鐘を打つ鼓動は、お互い同じだった。
「沙矢、好きだ」
唇を舐める。
首筋に舌を這わせると、呻き声を上げて背がしなる。
痕を残していく度に、甘い声が俺の鼓膜を震わせた。
谷間に指を這わせて、キスをする。
白い肌には見事に赤い華が咲いていく。
淫らに胸を突きだして、何かをねだっている様子に目の端を口元で笑みを刻んだ。
豊かな膨らみを揉みしだいて、赤く色づいた頂を舌でなぞった。
指と指で挟んで吸い上げる。
「ん……あっ」
頂を舌で転がし吸い上げ、きつく甘噛みしたり、指先で捏ねては弾く。
「んふ……」
唇を塞いで声を封じ込める。
舌で求めれば、 彼女も素直に返してくる。
膨らみに当てた手はそのままに、もう一方で足の付け根に触れる。
「へえ、もう待ちきれないって感じだな」
卑猥な言葉を耳元に注ぎ込むと沙矢は、瞳を閉じた。
あらゆる場所から水音が響く。
キスを交わし、音を立てて頂をすすり、秘所をなぞる。
しなやかな腕が、俺の背を抱いた。
もっと、焦らして煽ってやるつもりが、
物足りなくなってきて、突起に手を伸ばしてしまう。
唇を離すと、声が漏れた。思わずといった様子で。
「……っん」
口元を手のひらで押さえるその様が、こちらにどう映っているのか
彼女は考えもしないのだろう。
「こらえるな、もっと声聞かせろよ」
手を引きはがし、唇から唇へと言葉を注ぐ。
体がしなる。
指を秘所の中に忍ばせると、指が沈む感覚があった。
淫らな泉が湧いていた。
「シーツまで濡らしてしょうがないな」
沙矢はぶるぶると赤い顔で首を振った。
「増やすぞ」
奥へと指を突き立てる。
「指でさえこんなに締めるのか、たっぷり絡んでくるな」
彼女の方へ見せつければ、身をよじった。
付け根から、指先まで舐めて、こちらに邪笑する。
奥深くを突いた後、浅い場所を往復する。
ピストンする指の動きを少し少しずつ速めた。
「や……っ……も……だめ! 」
秘所にある突起に口づければ、あっけなく達した。
薄く開いた瞳、唇。吐き出す息の激しさは昇りつめた女の姿だった。
ごくり、と唾をのむ。弛緩する肌も、こちらを求める場所も見ているだけで、ヤられる。
茶色の瞳から、本来の色彩ブルーに戻す。
(抱き合う時は、いつも嘘をつきながら素を見せていた)
張りつめた自身に手早く避妊具を纏わせて、再び彼女の側に行く。
閉じ込めるように腕をついて、手を握りしめる。
入口に宛がう。
瞼が開くと、はっとしたように目を瞠った。
息を整えるように大きく深呼吸して、見つめてくる。
「いいか」
焦る自身をなだめるように、耳元で問う。反応した体が仰け反った。
手を握り返されたのはイエスの意志表示。
ぐ、と押し込むように中に入った。
「は……あ」
艶めかしい女の顔が真下にあった。
耳元を舌を這わせる。
耳朶を甘噛みすると同時に、動かし始めた。
夢中で、彼女の中に溺れるように。
四肢を絡ませて、口づけを交わし合って、二人だけの世界を作り出す。
揺れる胸の膨らみを揉みしだく。
部屋に響き渡るほど高らかな嬌声をあげながら昇りつめていった。
二度目の絶頂に、沙矢の体がわなないていた。
意識を手放している間に、新たな準備を整える。
しばらくして浮上した彼女を抱きあげた。
膝の上に乗せて、背に腕を回す。
秘所同士が触れ、奥へと引きずり込まれていった。
あまりにも、可愛らしくこちらを誘惑するから、
たっぷりお礼をしてやりたくなる。
お互いに腰を揺らしている。
ああ、これが抱き合うってことなのかと
改めて感じて、愛しさを覚えた。
深く繋がって求めあうのも、ただ相手と近づきたいからで。
鋭く突き上げると、背中に爪を立てられた。痛みで眉をしかめる。
「……ああ……青っ」
「……沙矢……くっ」
がくんと倒れかかってくる。
薄い膜越しに熱を放つ。幾度かに分けて。
相変わらず沙矢を求める時は貪欲で中々収まってくれない。
ぐい、と手を引いて抱きしめる。
頬が近づいてきて、顔がよく見えた。
とびきり美しくて愛らしい女の姿がそこにあった。
「これからも好きでいさせて」
声が濡れていると思い頬を見れば涙が落ちていた。
まぶたは閉じているのでどうやら寝言らしい。
彼女の感情の起伏の激しい所は嫌いじゃなかった。
俺みたいに感情を殺して生きてきた人間から見ると新鮮だ。
くるりと、体を丸めて眠り続ける沙矢。
「沙矢……」
黒髪を掻き分けピアスに触れた。
(似合うようになったな)
贈った日より、ずっと馴染んでいる。
今日は外れたりしなくて良かった。
隣に横たわりそっと抱き寄せる。しっとりと湿った肌が心地よかった。
視線を彷徨わせ、煙草の箱を探す。
置いた場所と別の所にそれはあった。
彼女の行動に自然と笑みが漏れた。
こちらがシャワーに行っている間に、煙草を吸う真似事をしたのだ。
ジッポで火をつけてくわえると紫煙が宙に立ち上る。
「……早く起きろよ?」
煙草を灰皿の縁で叩いて消し、くしゃくしゃと潰した。
彼女を腕の中に抱え込んで瞳を閉じる。
目を覚ます時が待ち遠しく、少し不安を伴った。
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