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主人公を倒したい
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闘技場近郊の、宿屋の一室。
魔王らとの激戦を終えある男と最後の決闘を明日に控えた俺は、夜も眠れずイメージトレーニングに勤しんでいた。
自分でいうのもおかしな話だが、俺はいわゆる「ライバル」のポジションにいる人間なのだ。ファンタジー小説を愛読してきた俺には分かる。魔王討伐が始まった辺りから中盤までの時点で相手より全スキルが高く、尚且つ仲間を積極的に作ることなくほぼ単独行動で戦ってきた俺のような者は、最終戦で、仲間と手を取り合い確実に俺より生ぬるい冒険ライフを送ってきたナチュラル人たらしの主人公気質な奴に敗北を喫することになるのだ。(断じて相手を羨ましいと思っているわけではない。断じて。)
故に、何の対策もしないまま勝負に臨んだりしたら、俺は明日の決戦で確実に敗ける。それはどうしても避けたい。
そこで今、俺は複数のファンタジー小説、過去の決闘の記録を元に、敗北要因とその対策についての分析を行っているのだ。
まず目についたのは、「使用できる能力の相性」。
このケースでは、例えば主人公側が火の能力、ライバル側が水の能力を使う場合に、序盤は水使いのライバル側が優勢になるが主人公の火力の増強により「水を利用した攻撃が全て蒸発、無効化される」といったような、ステータスによる相性の逆転現象がしばしば見受けられる。
しかしこれは俺には関係ない。俺もアイツもこの世界に存在する属性全ての力を行使できるから、そもそも相性は考慮しなくていいな、うん。
次に見つけたのは、「ライバル側が不利になるような深手、呪いの類いを負っている」パターン。これも現状俺は健康そのものなので無視。
そして更に、気がかりなものが一つ。「主人公の新能力が覚醒する」パターン。これがやたら多かった。
一番の懸念材料はコイツだ。そんなことされたらこちらは対策のしようがない。どれだけ熱心な鍛練を積んでも「なんだこの力は!?」と叫んで為す術もなくやられるという惨めなオチに行き着いてしまう。
やむを得ん。決闘の流儀としてどうかとは思うが、覚醒を回避するためには、勝負開始数秒後に持てる力全てを出し最大火力の魔法を連続して撃ち、早期に決着をつけるしかない。
そう考え、短期決戦用のプランを俺が立てているうちに、空が明るくなり始めた。
もはや、準備は全て整った。あとは冷静に取り組めばアイツに勝てるはず。
そう確信して、俺は闘技場へと向かった。
* * *
決戦の舞台。空は今日この日を祝福するかのように青く輝き、観客もカンカン照りの太陽に負けぬほどの熱気を以て声援を送る。
手に取るは、苦楽を共にした相棒たる杖。対峙するは、幾度となく激戦を繰り広げ時に共闘した因縁の好敵手。
二人の鼓膜を先頭開始のラッパの音が揺らし、相手は炎を纏った剣で俺に斬りかかってきた。
盛り上がっているところすまんが、早急に終わらせてもらおう。
俺はその場から動かず、極大魔法を発動しようと杖を構えた。
しかし…魔法は発動せず、俺はすんでのところで奴の剣をかわすことになった。
何故だ?詠唱せずとも俺なら念じるだけで魔法を発動できるはずなのに。
考える間もなく第二、第三の攻撃が来る。俺は防御に徹することしか出来なかった。
更に、発動したバリアも平常より薄く、ほんの数回の攻撃で砕かれてしまう。
なにかがおかしい。明らかに俺の力に一種の制限がかかっている。それに頭もボーッとしてきた。まさか、知らぬ間に俺は呪いでも受けてしまったのだろうか?
いやそんなはずはない。だって倒される要素がないか、昨日徹夜してまで……
俺が結論に行き着くと同時に、光を纏った斬撃により、俺の身体は打ち上げられた。
同時に、その結論のあまりのくだらなさに、変な笑いがこみ上げてしまった。
敗因:深刻な寝不足
魔王らとの激戦を終えある男と最後の決闘を明日に控えた俺は、夜も眠れずイメージトレーニングに勤しんでいた。
自分でいうのもおかしな話だが、俺はいわゆる「ライバル」のポジションにいる人間なのだ。ファンタジー小説を愛読してきた俺には分かる。魔王討伐が始まった辺りから中盤までの時点で相手より全スキルが高く、尚且つ仲間を積極的に作ることなくほぼ単独行動で戦ってきた俺のような者は、最終戦で、仲間と手を取り合い確実に俺より生ぬるい冒険ライフを送ってきたナチュラル人たらしの主人公気質な奴に敗北を喫することになるのだ。(断じて相手を羨ましいと思っているわけではない。断じて。)
故に、何の対策もしないまま勝負に臨んだりしたら、俺は明日の決戦で確実に敗ける。それはどうしても避けたい。
そこで今、俺は複数のファンタジー小説、過去の決闘の記録を元に、敗北要因とその対策についての分析を行っているのだ。
まず目についたのは、「使用できる能力の相性」。
このケースでは、例えば主人公側が火の能力、ライバル側が水の能力を使う場合に、序盤は水使いのライバル側が優勢になるが主人公の火力の増強により「水を利用した攻撃が全て蒸発、無効化される」といったような、ステータスによる相性の逆転現象がしばしば見受けられる。
しかしこれは俺には関係ない。俺もアイツもこの世界に存在する属性全ての力を行使できるから、そもそも相性は考慮しなくていいな、うん。
次に見つけたのは、「ライバル側が不利になるような深手、呪いの類いを負っている」パターン。これも現状俺は健康そのものなので無視。
そして更に、気がかりなものが一つ。「主人公の新能力が覚醒する」パターン。これがやたら多かった。
一番の懸念材料はコイツだ。そんなことされたらこちらは対策のしようがない。どれだけ熱心な鍛練を積んでも「なんだこの力は!?」と叫んで為す術もなくやられるという惨めなオチに行き着いてしまう。
やむを得ん。決闘の流儀としてどうかとは思うが、覚醒を回避するためには、勝負開始数秒後に持てる力全てを出し最大火力の魔法を連続して撃ち、早期に決着をつけるしかない。
そう考え、短期決戦用のプランを俺が立てているうちに、空が明るくなり始めた。
もはや、準備は全て整った。あとは冷静に取り組めばアイツに勝てるはず。
そう確信して、俺は闘技場へと向かった。
* * *
決戦の舞台。空は今日この日を祝福するかのように青く輝き、観客もカンカン照りの太陽に負けぬほどの熱気を以て声援を送る。
手に取るは、苦楽を共にした相棒たる杖。対峙するは、幾度となく激戦を繰り広げ時に共闘した因縁の好敵手。
二人の鼓膜を先頭開始のラッパの音が揺らし、相手は炎を纏った剣で俺に斬りかかってきた。
盛り上がっているところすまんが、早急に終わらせてもらおう。
俺はその場から動かず、極大魔法を発動しようと杖を構えた。
しかし…魔法は発動せず、俺はすんでのところで奴の剣をかわすことになった。
何故だ?詠唱せずとも俺なら念じるだけで魔法を発動できるはずなのに。
考える間もなく第二、第三の攻撃が来る。俺は防御に徹することしか出来なかった。
更に、発動したバリアも平常より薄く、ほんの数回の攻撃で砕かれてしまう。
なにかがおかしい。明らかに俺の力に一種の制限がかかっている。それに頭もボーッとしてきた。まさか、知らぬ間に俺は呪いでも受けてしまったのだろうか?
いやそんなはずはない。だって倒される要素がないか、昨日徹夜してまで……
俺が結論に行き着くと同時に、光を纏った斬撃により、俺の身体は打ち上げられた。
同時に、その結論のあまりのくだらなさに、変な笑いがこみ上げてしまった。
敗因:深刻な寝不足
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