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魔法庁附属、魔法学校・紺碧校。本科。
ニイナ・ファレル②
しおりを挟む「ニーイーナー!」
「? あれ、みんなー! どおしたのー?」
興奮気味に走り寄ってきたのは3人の女友達だ。
普段、良く一緒にいるメンバーである。
「ちょっとー! 特別棟から和久くんと出て来るの見てたよっ!? どーしたのよー!」
「晩御飯誘おうと思ったらいないしさー!」
「こんなの問い詰めなきゃダメなやつじゃんっ!」
ニイナを取り囲むようにして、口々に聞いてくるのは、勿論、歓迎会のことで……。
「えへ。……実はね、会長にお呼ばれしちゃって、ご飯食べてきたの」
「えぇぇえええ!! 嘘でしょーー!? なんでなんでっ、鷺ノ宮家のお食事!? え、どんな感じだったのっ!?」
「すっごかった……。もうね、ナイフとフォークを端から使うやつ」
いやーん、夢あるー! そう言ってキャッキャとはしゃぐ友達に、身振り手振りで細かく伝えれば、更に喜ぶ3人。
それもそうだ。特別棟なんて、一般生である私たちは、誰かにお呼ばれしない限り入れないのだ。ニイナの周りでは、今まで入った者はいないのだから、質問攻めも仕方がない。
「えーっ、何でそんな事になってんのよー! 羨ましいっ!」
「ニイナと和久くんだけがお呼ばれしたの?」
「吐けっ吐くんだっ、あたしだって会長とか、あわよくば副会長とお近付きになりたぁーい!」
矢継ぎ早の質問からの、心の奥の願望が垂れ流しで、思わず吹き出す。
「ぶはっ! 待って待って、ちゃんと答えるからさー。……えっとね、会長が累くんの歓迎会をしてくれてね、私達も誘ってくれたの。たぶん今日、累くんと同じ班だったからかな?」
「あぁ、歓迎会かー! あたし達も思いつけば良かったねー。彼、なんだか近寄り辛そうに見えてさ……」
「わかるー! 凄い余裕な感じが、なんかウチらと違ってて思わず避けちゃったんだけど、あの模擬訓練見たら親近感湧いたー!」
「きゃはははっ、あたしも。基礎科の基準ギリギリな、あたし達と同じぐらいっぽい? なーんて。……で?」
「…………?」
ニイナの背後を探すように首を巡らせる友人。
「その編入生は?」
「え、累くんなら部屋に戻ったよ?」
「そうなの? 先に1人で帰っちゃったんだ」
「違う違う。——累くん、特別棟だから」
あっさりと告げるニイナの言葉から数拍を置いて、えぇぇぇええぇええ!? という叫びが、木立に響き渡った。
「うっそ、本当に!?」
「やばいー。最初に声かけときゃ良かったー!」
「ニイナばっかり羨ましいぞーこらーー!」
途端に色めき立つ友人達に、若干複雑な心境になるニイナ。
気持ちはわかるのだ。ニイナも、模擬訓練の後に聞かされた時には非常に驚いたし、ちょっとだけ中に入れて欲しいなーなんてお願いを口にしたくもなった。
だって、たった8人しかいなかった特別棟の中に、新たに編入生が加わると言うのだから、紺碧校生にとっては一大ニュースだ。
「ね、ね、彼、貴族なの!?」
「ううん、それは違うってー。魔法の才能が認められたんだと思うよ」
「……そーなの? ふーん、別に全然凄そうじゃなかったけどなぁー……」
「でもね、会長が累くんの探知系魔法を褒めてたんだよ? 模擬訓練の時も、累くんのアドバイスは凄い的確だったし……」
実際、相手班の動きから、遠くのトラップ魔法まで、恐ろしい精度で助言してくれたのだ。班長経験の豊富な和久すら、後半になると累くんの助言に絶対の信頼を置いていた程だ。
「マジか。会長が褒めるなら相当だねー」
「ってことは、彼もすぐ生徒会入りするのかな? お貴族様以外の特待生は、みんな生徒会のメンバーだもんね」
「うわぁー、じゃあ生徒会だけの青いシンボルアイテム、貰えちゃうのかなー?」
きゃっきゃと累くんの話題で盛り上がる3人と共に、一般棟へ向かって歩いていく。
途中、チラリと振り返って見つめた特別棟には、何個もの綺麗な明かりが、窓から漏れていた。
——こんなに注目されてるって気付いてるのかな……累くん。結構、自分のことには無頓着そうだからなー……。
きっとこの話は、すぐにでも一般棟の中を駆け巡る。
明日になれば、一躍時の人になっていること、間違いないのだから。
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