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変な保健医
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保健室で眠りについた俺は誰かが入ってくる音にすら反応しないぐらい寝入ってしまったらしい。だから起きたときに白衣を身につけた男がすぐそばで本を読んでいることにビックリした
銀髪で銀縁の真面目そうな眼鏡をかけた教師だがネクタイは緩く着けているしシャツのボタンも二つぐらい開けていた。更にタバコのように棒付きの飴をくわえていた
「あ、起きたんだ」
「...ぇ?」
「俺は保健医をしている倉田涼介。お前さんは新しい生徒会長の...降谷だっけ?」
「.......はい...」
「まだ休んでろ。微熱があるから」
「...微熱?」
「親衛隊に投げられたときの怪我だろうな。見た目は大丈夫だが内部のダメージが大きかったんだろ」
なるほど...
微熱でも熱出すなんて久しぶりだな...
体が丈夫だからかここ何年かは風邪を引くどころかインフルになったことすらなかった。だけど微熱なら大丈夫だと思い起き上がろうとしたら先生にデコピンされた。地味に痛い
「寝てろ。どうせ始末書をやって徹夜したんだろ」
「そうですけど?」
「無理するな」
「無理してません」
「ここの生徒会...それも会長をやるだけでも無理してる。少しぐらいワガママになれ」
変な人だ...
ワガママになれなんて辰兄にも鐵太郎さんにも七音達にも言われた。素直になれ、ワガママになれって...
でもなれない。素直に、ワガママになったら途端に怖くなってしまう。本当は生徒会なんて関わりたくもないし市長だってやりたくなかった。重役に就いたせいでまわりからは疎まれて、無駄に期待されて...正直鬱陶しい。でも、俺がワガママ言ったら誰も俺を見てくれなくなる。捨てられる。それが怖い...一人になるのが怖い
「別にお前がワガママになっても誰もお前を捨てたりしねぇよ」
「......嘘だ」
「そうか?ワガママって信頼関係があるから言えるもんだぞ?素直に甘えられたら相手は嬉しく思うぞ」
「.................」
「それより、無理をして働く方が心配する。世話をしたいのにそれが出来ねぇなんて生殺しだろ」
「.................」
「子供なら大人に甘えろ。すがりつけ。それが子供の特権だ」
先生の言葉がグサグサ心に刺さる。子供を叱るようなトーンで話すから尚更心に刺さる。誰かに説教されて涙を流すなんて初めてかもしれない...
目をこすろうとしたら先生がハンカチで優しく拭ってくれた。それに余計に涙が止まらなくなった
「とりあえず休め。担任には連絡してある」
「...はい」
今だ止まらない涙を隠すように横になると先生が頭を撫でてきた。指で髪を絡ませるかのように遊んだも思えば整えるように撫でたりと、とにかく優しいのだ
むず痒さを覚えたが優しい手つきにいつしか眠りについてしまった
*******************
※倉田視点
いつも通り八時に職場に着くと見知らぬ生徒がベッドを使用していた。叩き起こそうと思ったが生徒の顔を見てやめた。顔色が悪そうだし、右手に怪我をしていた。ケンカをしたかのように指の付け根が腫れていた。そのままってのも具合が悪いので一応手当てをした。その時手を取って触診したが全然目覚めない。それにこいつの手は戦い慣れしている手をしていた。剣道をやっている人特有のマメがあったり柔道や空手をやっている人特有の手の厚さがあった
処置を終えたときに思い出した。こいつ、新しい生徒会長だった。一回だけ廊下で見たことがある。確か本橋先生と華宮先生が話している傍にいた
「思った以上に平凡だな」
そうとしか思わなかった。どこにでも居そうな平凡極まりない顔と体型。だけど、なんか目を離せない
眺めるのもいいが保健医としての職務がある。クラスの担任に保健室にいることを伝えなければならないしその理由も必要だ。念のためにと体温を測ってみれば37.0とやや微熱。警戒のために休ませていると言えばいいか...
俺の勘的にこの平凡君のクラスは華宮先生のクラスだったと思う。毎朝ある短い職員会議が終わったら伝えるか...
「華宮先生」
「倉田先生...どうされたんですか?」
「華宮先生のクラスの...あ~...名前なんだっけ?」
「生徒が保健室にいるんですか?」
「そーです。朝いったらベッドで寝てたんです」
「珍しいですね...倉田先生が寝かせたままなんて...」
「微熱があったので...あ、その生徒ですが多分華宮先生のクラスの人だと思います」
「そうですか...何か特徴的なことを覚えていますか?」
「えっと...生徒会長の子です」
そういえばあからさまに華宮先生は動揺した。いつもは冷静沈着で何事にも興味を示さない華宮先生が驚いている。ちょっとだけ笑えた
「降谷が...本当ですか」
「はい。原因はわかりませんがあの様子からして徹夜でもしたんだと思います」
「徹夜?...始末書の片付けか」
「すいませんね、うちの風紀委が全然仕事しなで」
「本当ですよ。生徒会にこれ以上の仕事を回さないでください」
嫌味満載です言う華宮先生は強面なこともありいつもより怖く思う。どれほど気に入っているだ?
とりあえず保健室にいることは伝えといたから後は降谷君が起きるまでその空間内にいればいいか
「...ぇ?」
報告してから三十分ぐらい経ったとき、降谷君が目を覚ました。俺が居ることに驚いたのか間抜けな顔をしている。警戒させないために俺の名前をいって念のために本人の名前も確認した。頷いたあたり意識はしっかりしているようだ
そしたら、降谷君は起き上がろうとした。まだ少しふらついているのに何で無理すんのかな...デコピンをして動きを止めたが睨まれてしまった
「無理するな」
「無理してません」
コイツ...平凡の癖に分からず屋だな...
いや、甘え方を知らない餓鬼みたいだ。ワガママになれって言えば豆鉄砲を喰らったように驚いている。平凡なのに構いたくなる、甘えさせたくなる...そう思ってしまう。子供に言い聞かせるように話せば突然ボロボロ涙を流しやがった。目をこすろうとしたから持っていたハンカチで目元を優しく抑えてやったら余計に涙を流しやがった
再び休め、と言えば今度は素直に従って横になった。まだ涙を流してやがるから頭を撫でてみた。意外と柔らかくていい髪をしていた。しばらく撫でていたら眠ってしまったらしく寝息が聞こえてきた
「はぁ~...俺ってこんなの好みだったっけ?」
これは、ライバルが多くなりそうだな...
───────────────
こにゃちは(・∀・)
誰か視点...やっぱり難しいです(・_・;)
倉田先生は仕事はやりますがねんどうくさいことはやらないタイプ。風紀委の顧問だけど問題を起こしても放置している人です
銀髪で銀縁の真面目そうな眼鏡をかけた教師だがネクタイは緩く着けているしシャツのボタンも二つぐらい開けていた。更にタバコのように棒付きの飴をくわえていた
「あ、起きたんだ」
「...ぇ?」
「俺は保健医をしている倉田涼介。お前さんは新しい生徒会長の...降谷だっけ?」
「.......はい...」
「まだ休んでろ。微熱があるから」
「...微熱?」
「親衛隊に投げられたときの怪我だろうな。見た目は大丈夫だが内部のダメージが大きかったんだろ」
なるほど...
微熱でも熱出すなんて久しぶりだな...
体が丈夫だからかここ何年かは風邪を引くどころかインフルになったことすらなかった。だけど微熱なら大丈夫だと思い起き上がろうとしたら先生にデコピンされた。地味に痛い
「寝てろ。どうせ始末書をやって徹夜したんだろ」
「そうですけど?」
「無理するな」
「無理してません」
「ここの生徒会...それも会長をやるだけでも無理してる。少しぐらいワガママになれ」
変な人だ...
ワガママになれなんて辰兄にも鐵太郎さんにも七音達にも言われた。素直になれ、ワガママになれって...
でもなれない。素直に、ワガママになったら途端に怖くなってしまう。本当は生徒会なんて関わりたくもないし市長だってやりたくなかった。重役に就いたせいでまわりからは疎まれて、無駄に期待されて...正直鬱陶しい。でも、俺がワガママ言ったら誰も俺を見てくれなくなる。捨てられる。それが怖い...一人になるのが怖い
「別にお前がワガママになっても誰もお前を捨てたりしねぇよ」
「......嘘だ」
「そうか?ワガママって信頼関係があるから言えるもんだぞ?素直に甘えられたら相手は嬉しく思うぞ」
「.................」
「それより、無理をして働く方が心配する。世話をしたいのにそれが出来ねぇなんて生殺しだろ」
「.................」
「子供なら大人に甘えろ。すがりつけ。それが子供の特権だ」
先生の言葉がグサグサ心に刺さる。子供を叱るようなトーンで話すから尚更心に刺さる。誰かに説教されて涙を流すなんて初めてかもしれない...
目をこすろうとしたら先生がハンカチで優しく拭ってくれた。それに余計に涙が止まらなくなった
「とりあえず休め。担任には連絡してある」
「...はい」
今だ止まらない涙を隠すように横になると先生が頭を撫でてきた。指で髪を絡ませるかのように遊んだも思えば整えるように撫でたりと、とにかく優しいのだ
むず痒さを覚えたが優しい手つきにいつしか眠りについてしまった
*******************
※倉田視点
いつも通り八時に職場に着くと見知らぬ生徒がベッドを使用していた。叩き起こそうと思ったが生徒の顔を見てやめた。顔色が悪そうだし、右手に怪我をしていた。ケンカをしたかのように指の付け根が腫れていた。そのままってのも具合が悪いので一応手当てをした。その時手を取って触診したが全然目覚めない。それにこいつの手は戦い慣れしている手をしていた。剣道をやっている人特有のマメがあったり柔道や空手をやっている人特有の手の厚さがあった
処置を終えたときに思い出した。こいつ、新しい生徒会長だった。一回だけ廊下で見たことがある。確か本橋先生と華宮先生が話している傍にいた
「思った以上に平凡だな」
そうとしか思わなかった。どこにでも居そうな平凡極まりない顔と体型。だけど、なんか目を離せない
眺めるのもいいが保健医としての職務がある。クラスの担任に保健室にいることを伝えなければならないしその理由も必要だ。念のためにと体温を測ってみれば37.0とやや微熱。警戒のために休ませていると言えばいいか...
俺の勘的にこの平凡君のクラスは華宮先生のクラスだったと思う。毎朝ある短い職員会議が終わったら伝えるか...
「華宮先生」
「倉田先生...どうされたんですか?」
「華宮先生のクラスの...あ~...名前なんだっけ?」
「生徒が保健室にいるんですか?」
「そーです。朝いったらベッドで寝てたんです」
「珍しいですね...倉田先生が寝かせたままなんて...」
「微熱があったので...あ、その生徒ですが多分華宮先生のクラスの人だと思います」
「そうですか...何か特徴的なことを覚えていますか?」
「えっと...生徒会長の子です」
そういえばあからさまに華宮先生は動揺した。いつもは冷静沈着で何事にも興味を示さない華宮先生が驚いている。ちょっとだけ笑えた
「降谷が...本当ですか」
「はい。原因はわかりませんがあの様子からして徹夜でもしたんだと思います」
「徹夜?...始末書の片付けか」
「すいませんね、うちの風紀委が全然仕事しなで」
「本当ですよ。生徒会にこれ以上の仕事を回さないでください」
嫌味満載です言う華宮先生は強面なこともありいつもより怖く思う。どれほど気に入っているだ?
とりあえず保健室にいることは伝えといたから後は降谷君が起きるまでその空間内にいればいいか
「...ぇ?」
報告してから三十分ぐらい経ったとき、降谷君が目を覚ました。俺が居ることに驚いたのか間抜けな顔をしている。警戒させないために俺の名前をいって念のために本人の名前も確認した。頷いたあたり意識はしっかりしているようだ
そしたら、降谷君は起き上がろうとした。まだ少しふらついているのに何で無理すんのかな...デコピンをして動きを止めたが睨まれてしまった
「無理するな」
「無理してません」
コイツ...平凡の癖に分からず屋だな...
いや、甘え方を知らない餓鬼みたいだ。ワガママになれって言えば豆鉄砲を喰らったように驚いている。平凡なのに構いたくなる、甘えさせたくなる...そう思ってしまう。子供に言い聞かせるように話せば突然ボロボロ涙を流しやがった。目をこすろうとしたから持っていたハンカチで目元を優しく抑えてやったら余計に涙を流しやがった
再び休め、と言えば今度は素直に従って横になった。まだ涙を流してやがるから頭を撫でてみた。意外と柔らかくていい髪をしていた。しばらく撫でていたら眠ってしまったらしく寝息が聞こえてきた
「はぁ~...俺ってこんなの好みだったっけ?」
これは、ライバルが多くなりそうだな...
───────────────
こにゃちは(・∀・)
誰か視点...やっぱり難しいです(・_・;)
倉田先生は仕事はやりますがねんどうくさいことはやらないタイプ。風紀委の顧問だけど問題を起こしても放置している人です
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