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はじめ
生け贄
しおりを挟むアフケシン王国。他国との貿易、戦力が優れており世界で最も多い民を抱えている
人も多ければ、起こる問題も多い。そんな問題を解決するのは国を守る騎士団だ。国にいくつもある騎士団のうち、最も信頼が厚く憧れとされるのは王家直属の騎士団“朱雀”
だが、信頼が厚いのは副騎士長で...
騎士長の俺は信頼なんか、まるでない
「騎士長。南門で問題が...」
「...副騎士長に言ってくれ」
「騎士長!この書類にサインを!」
「......した。持ってけ」
「騎士長。国王がお呼びです」
「...わかった」
ただ報告に来るだけ。新人も古参も...
騎士長なんて、柄じゃないのに、なんで騎士長なんかやっているのか...
ただ、強くなりたくて、我武者羅に訓練・実践していたら、いつの間にか騎士長になっていた
「お~い、カーティル!」
「...なんだ」
「この討伐、お前が適任じゃねぇか?ってか、お前しか出来ねぇだろ」
「...国王に呼ばれてる...どけ」
「お...おぅ...」
副騎士長を避けて国王の間へ向かった。討伐だとか、貴族の防衛とか、正直言ってやりたくない。騎士長は貴族のオモチャじゃないんだ。やっぱり無理だったんだ...
国王はここ数日、体調を崩している王妃に付きっきりだ。そのせいで国の行政は行き詰まりが多い
「...国王様。カーティルです」
「入れ」
中に入ると神妙な顔付きの国王が居た。少し入ったところで最敬礼をして命令を待った。重々しく話し始めた国王の内容は、正直言ってどうでも良いことだった
王妃の容態がよくならないことを嘆いた国王は占い師に縋った。占い師曰く、この国に大きな禍が降りかかろうとしている。王妃が倒れたのはその前兆とのこと。このままではこの国は破滅する。それを止めるためには、この国より北に位置する山の神に生け贄を捧げることだけ...
だそうだ
で、その生け贄に最もふさわしいのが俺、っというわけだ
「妻を...国を護るために生け贄となれ」
「......わかりました」
騎士長最後の仕事が生け贄とは......
つくづくこの国は腐っている
明日の朝には山の麓へ連れて行かれ、処刑されるとのこと。今日中に別れやしたいことをやるように、と言われた
部屋を出て、始めに副騎士長の元へ出むいた。自分が除隊すること、騎士団をまかせることを伝えた。驚かれたがすぐに立ち去ったから言葉なんて聞いてない。やることなんてない。最後の日なら部屋でボンヤリとしながら過ごそう
昼になり外の稽古の声が止んだ。鳥の声や風の音しか聞こえなくなった。ゆっくりと目を閉じて鳥たちの声を聞いた
そのまま寝てしまい、起きると夕暮れ時になっていた。空は赤く染まり徐々に黒くなっている。イスから立ち軽く伸びをして部屋を出た。外に出るとヒンヤリとした空気が充満していた。近くの芝生に寝っ転がり空を見た。幾千の星が輝き、月が地を照らしていた
太陽のように明るくは照らさない。しかし、目立たずもひっそり優しく地を照らす月は太陽にはない美しさがある。星々は小さいながらも自らを光らせている。夜空は俺にとっては少しだけ騒がしい
「カーティル騎士長。ご準備を」
真夜中になったころ、黒服を着た数名の男たちが現れた。恐らく、俺の処刑人だろう。準備するものなどない。そう伝えれば王宮内にある馬車に案内された。安易だが立派な馬車だ
「出発しろ」
その言葉で...
もう、ここには戻らぬ事になるだろう
今さら、後悔の念が出てきた。でも、遅すぎた。もう、後戻りはできない
自分で選んだんだ
山の麓についたのは少し空が明るくなった時。馬車の中で白い生地の服に着替え、外に出る。ゆっくりと処刑の場に案内された
「カーティル騎士長」
「...なんだ」
「...最後に残されるお言葉はありますか?」
「........ない」
「...そうですか......それでは、生け贄の儀を行います」
生け贄の儀と言っているがようは処刑のことだ。手に湯呑みを渡され、水を注がれた。恐らく毒だろう。湯呑みに並々と水を注ぎ終わると黒服達は後ろへ下がった
毒なら、一気に飲んでしまった方が楽だ。そう思って一気に湯呑みを空にした
優しく朝日が差し込む中...
俺は息を引き取った
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