たおやかな慈愛 ~窓のない部屋~

あさひあさり

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斎藤福寿、終わり始まる日々。

5 マザーの勘とこれから

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「ではまた、今度の仕事が終わったら」
「はい、わたくしはここで今まで通り日本国民を見守っています」
「日本で一人だけのマザーさんです。無理しないでくださいね」
僕はそう言って廊下側に出た。マザーさんは少し困った表情をしている。
「でも、私が無理しないと日本が終わっちゃいますわよ」
「それもそうかぁ」
無責任なことを言うもんじゃないなと思った。それでも、国民は群れているようでひとりぼっちでマザーさんも一人だ。
「次もきっと四人で集まれます」
「それはマザーさんの未来予測ですか?」
「一個人のことは存じ上げませんの。国家や政治などのデータならたくさんあるのですが分かりませんわ。恥ずかしいですが、これはわたくしの勘です」
マザーさんの勘か……と僕は思う。でも、マザーさんは窓華さんの死因も知っていたのだ。これはきっと嘘だろう。窓華さんの死因とか個別に知っていたじゃないか。あぁ、この感情もマザーさんに読み取られているのだな。怖くてマザーさんのぐるぐるの目を見つめることができず、僕は自分の手を見ていた。それを見てマザーさんが少しだけ笑う。でも、前みたいにネクタイを掴まれることなく平和な時間が過ぎる。そういえば、詩乃の勘も当たる。そうだ、僕はまた次の仕事が決まるまでゲームができる。エンドザワールドはカムバックキャンペーンなどで、石の配布もあるだろう。それはそれで嬉しい。
「女の勘は当たるって言いますからね」
「まぁ、わたくしは女性ではありませんが未来を作ることは得意ですのよ」
自信たっぷりにマザーさんは言う。僕はマザーさんが男でも女でもないことは知っている。ただのひとりぼっちのパソコンだ。
「じゃあ、お元気で」
「わたくしもみんなが幸せになれるように、善処しますわ」
僕はにこりと笑ってマザーさんの部屋を後にした。そして家族と詩乃に仕事が終わったと連絡をする。これから次の仕事までどうしようか。僕は久しぶりにエンドザワールドも起動させた。僕はまた少しの間だけ前の生活に戻る。そしてまた次の保護人と会うのだ。それでもどうしてかこの仕事をやっていけそうな気がした。確信はできないけれども……
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