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斎藤福寿、守咲窓華と終わりに向かう日々。
1 雨が降る花火大会
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堤防にレジャーシートを置いて、僕らは花火を見る。周りに居る人も平和そうで窓華さんだけに未来がないように感じる。花火がどんどん上がって消えていく。僕らの人生も窓華さんの好きな星に比べたら小さなものだ。窓華さんの手に持つ金魚たちもこれからの生活をどう思うだろう。窓華さんが死んだとして、金魚は悲しまないのだろう。僕は死を受け入れられるだろうか。
そんなことを思っていると突然雷が鳴り、急にザーザーと雨が降ってきた。花火大会はマザーさんの言ったように雨で中止になった。僕は教えられた未来を知っているというのに、傘なんて持ってきていない。僕らは濡れながらシートを片付ける。
「雨降ってきたね。こりゃあ、バスが混むぞ」
「バスに乗れると良いのですが……」
僕らは雨に濡れながらバス停の方に行くと、もうバスはいっぱいいっぱいで乗れないと係員がアナウンスしている。僕らは歩いて変えることになった。曇り空だから窓華さんの好きな星座は見えない。話すこともなく、僕らは黙っていた。
「何か面白いこと話してよ」
「僕に無理難題を言いますね」
「例えばあと何日で私が死ぬかとか?」
あと何日という具体的なことを聞く窓華さんにぎくりとする。残された四日を僕は言うことができない。もどかしさでいっぱいだった。
「それは言えないって言ったでしょう」
「呪は本当にケチだね」
僕らは下駄で足の親指と人差し指の付け根が痛い。それでも雨にあたりながらアパートまで帰る。窓華さんはケチだねというと無言になり、僕らはそこまで目立った会話もせず帰ってきた。僕はお風呂に入ってから寝るべきと言ったが、窓華さんは浴衣を脱いでそのまま自室に入っていく。これでは風邪を引いてしまうだろう。窓華さんは風邪で死ぬということだろうか。僕は焼かれなかったハンバーグの種を冷凍庫に入れて、お風呂に入ってから寝た。
次の日、窓華さんは僕を起こしに来ない。僕はだいたいログインボーナスの時間に習慣で目が覚めて二度寝すると言った感じだ。僕は八時半に起きて窓華さんの部屋を除くと、ベッドで窓華さんが真っ赤な顔をしている。僕はリビングに来るように促した。この状況では料理も作れないだろうから、昨日のカロリーも配慮してコントロールベーカリーで朝食を作るか。
「部屋の中なのに花火が見えるぅ、なんで?」
「どうしたんですか?」
その言葉を僕が発すると同時に、窓華さんは自室から出てきたと思ったらソファーに倒れ込んだ。リビングのソファーに受け止められて、それから立ち上がろうともしない。僕が近寄って真っ赤な顔に手を当てる。すると酷い熱だ。病院に連れていくレベルの熱だな。あぁ、窓華さんの命は八月二六日水曜日の二時五六分に本当に死ぬんだ。今日から三日後だ。僕はこの時のために一緒に居るというのに、とうとう来てしまったという実感しかない。
「高熱ですよ。昨日お風呂入らなかったからでしょう。とにかく食事を食べたら病院に行きましょう」
「私、病院で死ぬのは嫌だよ」
僕は何も言えない。死ぬ時間は分かってもどうやって死ぬかはマザーは僕らに教えてくれない。窓華さんは自分の死ぬ時間すら知らない。僕は何も断言することもできずに戸惑ってしまう。窓華さんに朝のヨーグルトを食べさせて、僕らは病院に向かうことにした。だって、このアパートで死なれたら僕が困る。
「あぁ、呪はここで死んで欲しくないだけでしょ?」
「そうですが、悪いですか」
「まぁ、私が呪の人生を左右しちゃ駄目だよね」
コンベの食事を食べながら、真っ赤な顔をした窓華さんを見る。もしかしたら今まで当たり前のように過ごしてきたこの朝も、これで終わりなのかもしれない。僕は喜代也を打って遺書を書いてあるから、遺書で書いた日付で死ぬ。決意はできているつもりだ。でも、窓華さんは違う。喜代也ができる前の、いつ死ぬか分からないという世界で生きている。人はいつか死ぬ。その窓華さんのいつかは、僕と上司が知っているだけだ。昔の人は死の恐怖にはどう耐えていたのだろうか。
そんなことを思っていると突然雷が鳴り、急にザーザーと雨が降ってきた。花火大会はマザーさんの言ったように雨で中止になった。僕は教えられた未来を知っているというのに、傘なんて持ってきていない。僕らは濡れながらシートを片付ける。
「雨降ってきたね。こりゃあ、バスが混むぞ」
「バスに乗れると良いのですが……」
僕らは雨に濡れながらバス停の方に行くと、もうバスはいっぱいいっぱいで乗れないと係員がアナウンスしている。僕らは歩いて変えることになった。曇り空だから窓華さんの好きな星座は見えない。話すこともなく、僕らは黙っていた。
「何か面白いこと話してよ」
「僕に無理難題を言いますね」
「例えばあと何日で私が死ぬかとか?」
あと何日という具体的なことを聞く窓華さんにぎくりとする。残された四日を僕は言うことができない。もどかしさでいっぱいだった。
「それは言えないって言ったでしょう」
「呪は本当にケチだね」
僕らは下駄で足の親指と人差し指の付け根が痛い。それでも雨にあたりながらアパートまで帰る。窓華さんはケチだねというと無言になり、僕らはそこまで目立った会話もせず帰ってきた。僕はお風呂に入ってから寝るべきと言ったが、窓華さんは浴衣を脱いでそのまま自室に入っていく。これでは風邪を引いてしまうだろう。窓華さんは風邪で死ぬということだろうか。僕は焼かれなかったハンバーグの種を冷凍庫に入れて、お風呂に入ってから寝た。
次の日、窓華さんは僕を起こしに来ない。僕はだいたいログインボーナスの時間に習慣で目が覚めて二度寝すると言った感じだ。僕は八時半に起きて窓華さんの部屋を除くと、ベッドで窓華さんが真っ赤な顔をしている。僕はリビングに来るように促した。この状況では料理も作れないだろうから、昨日のカロリーも配慮してコントロールベーカリーで朝食を作るか。
「部屋の中なのに花火が見えるぅ、なんで?」
「どうしたんですか?」
その言葉を僕が発すると同時に、窓華さんは自室から出てきたと思ったらソファーに倒れ込んだ。リビングのソファーに受け止められて、それから立ち上がろうともしない。僕が近寄って真っ赤な顔に手を当てる。すると酷い熱だ。病院に連れていくレベルの熱だな。あぁ、窓華さんの命は八月二六日水曜日の二時五六分に本当に死ぬんだ。今日から三日後だ。僕はこの時のために一緒に居るというのに、とうとう来てしまったという実感しかない。
「高熱ですよ。昨日お風呂入らなかったからでしょう。とにかく食事を食べたら病院に行きましょう」
「私、病院で死ぬのは嫌だよ」
僕は何も言えない。死ぬ時間は分かってもどうやって死ぬかはマザーは僕らに教えてくれない。窓華さんは自分の死ぬ時間すら知らない。僕は何も断言することもできずに戸惑ってしまう。窓華さんに朝のヨーグルトを食べさせて、僕らは病院に向かうことにした。だって、このアパートで死なれたら僕が困る。
「あぁ、呪はここで死んで欲しくないだけでしょ?」
「そうですが、悪いですか」
「まぁ、私が呪の人生を左右しちゃ駄目だよね」
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