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斎藤福寿、2回目の花火大会。
4 はじめての花火大会
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そんな日々が続き何事もなく花火大会を迎えることになる。毎日が平凡で、窓華さんはいつも通りティラミスを食べ、今年最後の花火大会の二二日がきた。
「今日の夜は屋台で食べたりするから簡単なものでも良いよね?」
「僕は少食なので、きっと屋台でお腹いっぱいですよ」
そこまで食べる方ではない僕は、窓華さんが進める屋台料理でお腹がいっぱいになると感じる。
「呪は男の子なんだからもっと食べなきゃ駄目だって」
「僕は成人ですよ。窓華さんが思う、簡単で栄養のあるもので良いですよ」
「ならハンバーグだね。種を作って焼くだけにしておこう」
午前中に窓華さんは楽しそうにキッチンで夜の料理していた。僕は窓華さんがいつも見ている三択クイズを見ていた。この日だって保護人と暮らしていると忘れるほどに平和だった。いつも通りに配給が届く。でも今日は僕は甚平を着るのだし、窓華さんだって浴衣を着るそんな日々が続き何事もなく花火大会を迎えることになる。毎日が平凡で、窓華さんが死ぬことはなく今年最後の花火大会の日がきた。でも、寿命は迫ってきている。八月二六日木曜日の二時五六分まであと少し。
「どう?似合うかな?」
「良いんじゃないですか?」
「いつも思うけど、なんでもっと褒めてくれないのさ」
窓華さんは髪をアップにまとめて髪留めをしていた。僕も買っていた甚平を着る。下駄というものは思ったより履きにくい。足が痛くなりそうだ。窓華さんは嬉しそうに玄関で下駄を履いている。
「ほら、呪行くよ?」
僕は花火大会は夜なのに、こんな夕方にアパートを出ることに疑問を持っていた。
「あ、こんな早く行って意味あるって思っているでしょ?」
「そりゃあ、花火は夜だから早いでしょう」
「私は屋台巡りがしたいの。夜だと混むから夕方から行くの」
僕らは夕方からバスに揺られていた。僕も新品の甚平を着て、窓華さんも髪をアップにまとめてあのとき買った水玉の浴衣を着ていた。バスは花火大会に行くんだろうなと思う人でいっぱいだった。僕は花火大会に行くのは初めてだったから、十九時から上がる花火のために十六時から準備することに驚いた。限られたスペースでの場所取りとかもあるらしい。今日も窓華さんは上機嫌だ。
「行きはそこまでバスも混まないんだけどね」
「え、今日のバスは人でいっぱいじゃないですか?」
「もう、呪は常識がないな。行きの時間はバラバラだけど、帰る時間はみんな一緒でしょ?分かる?」
「まぁ、みんな花火が終わったら帰りますからね」
行きはバラバラでも帰りはみんな花火が終わったら早く帰りたい。その気持はとても良く分かったけど、今のバスだっていつもよりかなり混んでいる。歩いて帰らなきゃいけないかもねと窓華さんは言ったので、その言葉を聞いて僕は青ざめた。花火大会というのはこんなに体力を使う行事だったのか。僕は今まで知らなかった。僕にとって花火は家から見るものだった。それが今回は屋台で食べて堤防で見るのだ。
バス停を降りると道にはもう屋台が並んでいる。親子連れやカップルなどいろいろな人がここに来ていて、それぞれの人生を楽しんでいる。窓華さんはまるで子どもに戻ったように屋台を眺めていた。
「まずもちもちローングポテトでしょ?それに全部食べるわけじゃないけど、りんご飴は手に持っていると可愛いよね」
「桜ちゃんが買ってたっていう光るドリンクは?」
「あれは子ども騙しだよぉ。桜は欲しがったから仕方なく買ってたけど」
あぁ、窓華さんは僕と違って親子で花火大会に来るような人だった。もし、旦那さんが看取る覚悟があったなら、僕なんかと来ていなかっただろう。
「呪は、お好み焼きかたこ焼きだったらどっちが好き?」
「お好み焼きですね。初めて食べた時美味しかったですし」
「こういうときは普通はたこ焼きって答えるの。友達居ないことはこれが確定的だったね。たこ焼きの方がシェアしやすいでしょ?」
僕は初めて聞く意見に納得した。僕は今まで特に仲の良い友達も居なかったので、こういうことは知らなかった。そして見透かされていた。窓華さんは生きていく先が短い癖に、僕にいろいろ一般常識を教えてくれる。僕らは屋台を眺めていろいろ買いながら、少し早めに会場に行くことにした。
花火大会の会場につくと、河原に本格的な屋台がたくさん並んでいた。僕はここまで屋台が出ているなんて思わなかった。さっきの道のりだけで屋台が終わりかと思ったら屋台はまだ続いていた。
「こういう道って戻ることって基本ないから、気になったらそこで買うんだよ」
「戻ることはない?」
「だって混むでしょ?それに人の流れってものがあるんだよ。あと、会場の近くにならばなるほどお値段も高くなるからそのつもりでね」
窓華さんは何度も花火大会を楽しんだだけはある。戻ることはないってなんだか人生みたいだと、僕はちょっと深いことを考えてしまった。窓華さんは喜代也は効かないしあと四日で死ぬ。僕がこの職業になった過去だって変えることはできない。だって今の日本はマザーがすべてだから。
「今日の夜は屋台で食べたりするから簡単なものでも良いよね?」
「僕は少食なので、きっと屋台でお腹いっぱいですよ」
そこまで食べる方ではない僕は、窓華さんが進める屋台料理でお腹がいっぱいになると感じる。
「呪は男の子なんだからもっと食べなきゃ駄目だって」
「僕は成人ですよ。窓華さんが思う、簡単で栄養のあるもので良いですよ」
「ならハンバーグだね。種を作って焼くだけにしておこう」
午前中に窓華さんは楽しそうにキッチンで夜の料理していた。僕は窓華さんがいつも見ている三択クイズを見ていた。この日だって保護人と暮らしていると忘れるほどに平和だった。いつも通りに配給が届く。でも今日は僕は甚平を着るのだし、窓華さんだって浴衣を着るそんな日々が続き何事もなく花火大会を迎えることになる。毎日が平凡で、窓華さんが死ぬことはなく今年最後の花火大会の日がきた。でも、寿命は迫ってきている。八月二六日木曜日の二時五六分まであと少し。
「どう?似合うかな?」
「良いんじゃないですか?」
「いつも思うけど、なんでもっと褒めてくれないのさ」
窓華さんは髪をアップにまとめて髪留めをしていた。僕も買っていた甚平を着る。下駄というものは思ったより履きにくい。足が痛くなりそうだ。窓華さんは嬉しそうに玄関で下駄を履いている。
「ほら、呪行くよ?」
僕は花火大会は夜なのに、こんな夕方にアパートを出ることに疑問を持っていた。
「あ、こんな早く行って意味あるって思っているでしょ?」
「そりゃあ、花火は夜だから早いでしょう」
「私は屋台巡りがしたいの。夜だと混むから夕方から行くの」
僕らは夕方からバスに揺られていた。僕も新品の甚平を着て、窓華さんも髪をアップにまとめてあのとき買った水玉の浴衣を着ていた。バスは花火大会に行くんだろうなと思う人でいっぱいだった。僕は花火大会に行くのは初めてだったから、十九時から上がる花火のために十六時から準備することに驚いた。限られたスペースでの場所取りとかもあるらしい。今日も窓華さんは上機嫌だ。
「行きはそこまでバスも混まないんだけどね」
「え、今日のバスは人でいっぱいじゃないですか?」
「もう、呪は常識がないな。行きの時間はバラバラだけど、帰る時間はみんな一緒でしょ?分かる?」
「まぁ、みんな花火が終わったら帰りますからね」
行きはバラバラでも帰りはみんな花火が終わったら早く帰りたい。その気持はとても良く分かったけど、今のバスだっていつもよりかなり混んでいる。歩いて帰らなきゃいけないかもねと窓華さんは言ったので、その言葉を聞いて僕は青ざめた。花火大会というのはこんなに体力を使う行事だったのか。僕は今まで知らなかった。僕にとって花火は家から見るものだった。それが今回は屋台で食べて堤防で見るのだ。
バス停を降りると道にはもう屋台が並んでいる。親子連れやカップルなどいろいろな人がここに来ていて、それぞれの人生を楽しんでいる。窓華さんはまるで子どもに戻ったように屋台を眺めていた。
「まずもちもちローングポテトでしょ?それに全部食べるわけじゃないけど、りんご飴は手に持っていると可愛いよね」
「桜ちゃんが買ってたっていう光るドリンクは?」
「あれは子ども騙しだよぉ。桜は欲しがったから仕方なく買ってたけど」
あぁ、窓華さんは僕と違って親子で花火大会に来るような人だった。もし、旦那さんが看取る覚悟があったなら、僕なんかと来ていなかっただろう。
「呪は、お好み焼きかたこ焼きだったらどっちが好き?」
「お好み焼きですね。初めて食べた時美味しかったですし」
「こういうときは普通はたこ焼きって答えるの。友達居ないことはこれが確定的だったね。たこ焼きの方がシェアしやすいでしょ?」
僕は初めて聞く意見に納得した。僕は今まで特に仲の良い友達も居なかったので、こういうことは知らなかった。そして見透かされていた。窓華さんは生きていく先が短い癖に、僕にいろいろ一般常識を教えてくれる。僕らは屋台を眺めていろいろ買いながら、少し早めに会場に行くことにした。
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「戻ることはない?」
「だって混むでしょ?それに人の流れってものがあるんだよ。あと、会場の近くにならばなるほどお値段も高くなるからそのつもりでね」
窓華さんは何度も花火大会を楽しんだだけはある。戻ることはないってなんだか人生みたいだと、僕はちょっと深いことを考えてしまった。窓華さんは喜代也は効かないしあと四日で死ぬ。僕がこの職業になった過去だって変えることはできない。だって今の日本はマザーがすべてだから。
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