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斎藤福寿、2回目の花火大会。
1 2回目の花火大会の準備
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「呪、おはよ!」
「あぁ、もう八時ですか。昨日はゆっくり眠れたみたいで良かったですね」
「いやぁ、花火してたけど途中で記憶なくてさ」
「そうですよ」
窓華さんと関係を持つなんて、やはり考えられないなと僕は思った。食事をしてしばらくして、窓華さんは散歩というかウォーキングに行きたいと言った。なので僕もジャージに着替えた。僕は窓華さんを失ったらどうなるだろう。そう朝食を食べて今日の分のティラミスを買いに行った。この生活も、もう数えるほどしか残されていない事実を僕は言ってはいけなかった。言えたら少し楽だったかもしれない。マザーさんのあのぐるぐるの目を思い出すと言えなかった。僕は殺されたくない。
二二日の二日前の二0日。もう残された日は一週間もない。それを僕は窓華さんに言えなくて、もやもやとした感情を抱いていた。
「迷ってたけどさ、やっぱり二二日の花火大会に行こうよ!今度は屋台が出ているとこで!」
庭で花火をしたのは一五日。それからも毎日どこかでティラミスを買って、何も変わらない日々を過ごしている。でも、ここからも花火は見れるのだから、行かなくても良いじゃないか。でもこの地区だと次の花火大会が今年で最後になる。叶えるのも悪くない。しかし雨が降るとマザーさんは言っている。
「目的は屋台ですか?そういうのって子ども騙しでしょ?」
「もちもちローングポテトとかすごい美味しいんよ」
「でもそういうのはお祭り価格だから、原価は激安で……」
「呪って本当につまらない人生送っているよ。お祭り価格でも楽しければ良いの」
窓華さんはそういう。潔癖症っていうわけではないが、外で調理する屋台っていうのは僕には抵抗があった。
「そうと決まれば浴衣と甚平買おうよ」
「そこまで本格的にするんです?」
「きっと花火大会もこれで終わりだからさ、激安で売っているよ」
と言うと、僕らはショッピングモールに行くことになった。バスを乗り継いで行くのだが、私どんなのにしようかな?と道中でも窓華さんはご機嫌だった。僕は窓華さんが選んだものを適当に着れば良い。配給の服も夏服に切り替わって、僕も窓華さんも半袖だ。このまま秋まで一緒に過ごせるのだろうかと勘違いしてしまう。それくらい僕らは平和だった。
今日の僕らだって、特にお洒落をするわけでもない。ショッピングモールに来たは良いが、花火大会のシーズンが終わりかけということで、探しても探しても浴衣のコーナーを見つけることができなかった。痺れを切らした窓華さんは聞く。
「店員さん、すみません。浴衣ってどこで売ってますか?」
「申し訳ありませんが、浴衣はもうほとんど置いて無くて……」
「それで良いんで、場所紹介してください」
「はい、本当に少ないですよ?では、こちらになります」
丁寧な店員さんは僕らに浴衣売り場まで案内してくれた。そこには浴衣が三着ぐらいあるだけだった。でも、下駄もセットになっているもので、お値打ちなものが残っているようだった。簡単にいえば人気のない絵柄。
「うわ、本当に時期逃しちゃたね」
と言って窓華さんは水色で水玉の浴衣を手に取る。半額の値札が付いていた。だからもう、夏は終わるのだなと僕は思った。窓華さんは春に出会って、もう夏になって後六日でこの生活が終わる。僕はぼっと考えていた。
「ちょっと考え事しているわけ?選ぶ柄もほとんどないのに」
「そうですね、もう時期を逃したんだなって思ってました」
「ぼーっとしている呪はこれにしなよ」
と緑色の生地に黒猫がついた甚平を見せてきた。下駄も付属品として付いている。それも半額だった。
「窓華さんはどうするんです?」
「朝顔と、金魚と水玉だからなぁ。私、朝顔嫌いだし、金魚って子どもっぽくない?まぁ、消去法で水玉かな?」
「朝顔の着物も綺麗だと思いますけどねぇ……」
と僕は窓華さんが指差す朝顔の浴衣を見て言った。ピンクと黄色でグラデーションになっていて、水色の朝顔が咲いている綺麗な浴衣だったから。
「朝顔は嫌だよ。今の朝顔は喜代也のおかげでずっと咲いているけどさ、昔の朝顔は朝しか咲いていなかったって話だよ?」
「それって、これから死ぬ窓華さんにぴったりだと思いますけど?」
「私に早く死ねって言うの?昔は朝しか朝顔は花としての価値がないんだよ?昼にしぼむって存在が私みたいって酷いよ。」
死ぬとか殺すとかこんなところで言うのは物騒だと思う。でも、僕はあと数日で失うことに頭がついていかない。こんなに親しくなった人は家族以外に居ない。窓華さんを失うことは家族を失うことと同意だ。僕にとって大きい存在だ。
「簡単に言うなら、期間限定の方が有り難みあるでしょ?ほら、コンビニでもレストランでも期間限定メニューって惹かれるみたいな」
「あ、保護人である私の命の価値がそういうメニューと同じ価値しかないって言いたいんだ?そういう嫌味は良くないと思いますぅ」
「窓華さんって着物の着付けってできるの?」
「私ができると思う?浴衣はできるけどね。だから作り帯にしたんだよね」
僕らは浴衣売り場を出てショッピングモールを歩く。もう秋物の服が置いてあったりして、ハロウィンの飾りも置いてある。その時期まで窓華さんは生きることができないんだ……
「あぁ、もう八時ですか。昨日はゆっくり眠れたみたいで良かったですね」
「いやぁ、花火してたけど途中で記憶なくてさ」
「そうですよ」
窓華さんと関係を持つなんて、やはり考えられないなと僕は思った。食事をしてしばらくして、窓華さんは散歩というかウォーキングに行きたいと言った。なので僕もジャージに着替えた。僕は窓華さんを失ったらどうなるだろう。そう朝食を食べて今日の分のティラミスを買いに行った。この生活も、もう数えるほどしか残されていない事実を僕は言ってはいけなかった。言えたら少し楽だったかもしれない。マザーさんのあのぐるぐるの目を思い出すと言えなかった。僕は殺されたくない。
二二日の二日前の二0日。もう残された日は一週間もない。それを僕は窓華さんに言えなくて、もやもやとした感情を抱いていた。
「迷ってたけどさ、やっぱり二二日の花火大会に行こうよ!今度は屋台が出ているとこで!」
庭で花火をしたのは一五日。それからも毎日どこかでティラミスを買って、何も変わらない日々を過ごしている。でも、ここからも花火は見れるのだから、行かなくても良いじゃないか。でもこの地区だと次の花火大会が今年で最後になる。叶えるのも悪くない。しかし雨が降るとマザーさんは言っている。
「目的は屋台ですか?そういうのって子ども騙しでしょ?」
「もちもちローングポテトとかすごい美味しいんよ」
「でもそういうのはお祭り価格だから、原価は激安で……」
「呪って本当につまらない人生送っているよ。お祭り価格でも楽しければ良いの」
窓華さんはそういう。潔癖症っていうわけではないが、外で調理する屋台っていうのは僕には抵抗があった。
「そうと決まれば浴衣と甚平買おうよ」
「そこまで本格的にするんです?」
「きっと花火大会もこれで終わりだからさ、激安で売っているよ」
と言うと、僕らはショッピングモールに行くことになった。バスを乗り継いで行くのだが、私どんなのにしようかな?と道中でも窓華さんはご機嫌だった。僕は窓華さんが選んだものを適当に着れば良い。配給の服も夏服に切り替わって、僕も窓華さんも半袖だ。このまま秋まで一緒に過ごせるのだろうかと勘違いしてしまう。それくらい僕らは平和だった。
今日の僕らだって、特にお洒落をするわけでもない。ショッピングモールに来たは良いが、花火大会のシーズンが終わりかけということで、探しても探しても浴衣のコーナーを見つけることができなかった。痺れを切らした窓華さんは聞く。
「店員さん、すみません。浴衣ってどこで売ってますか?」
「申し訳ありませんが、浴衣はもうほとんど置いて無くて……」
「それで良いんで、場所紹介してください」
「はい、本当に少ないですよ?では、こちらになります」
丁寧な店員さんは僕らに浴衣売り場まで案内してくれた。そこには浴衣が三着ぐらいあるだけだった。でも、下駄もセットになっているもので、お値打ちなものが残っているようだった。簡単にいえば人気のない絵柄。
「うわ、本当に時期逃しちゃたね」
と言って窓華さんは水色で水玉の浴衣を手に取る。半額の値札が付いていた。だからもう、夏は終わるのだなと僕は思った。窓華さんは春に出会って、もう夏になって後六日でこの生活が終わる。僕はぼっと考えていた。
「ちょっと考え事しているわけ?選ぶ柄もほとんどないのに」
「そうですね、もう時期を逃したんだなって思ってました」
「ぼーっとしている呪はこれにしなよ」
と緑色の生地に黒猫がついた甚平を見せてきた。下駄も付属品として付いている。それも半額だった。
「窓華さんはどうするんです?」
「朝顔と、金魚と水玉だからなぁ。私、朝顔嫌いだし、金魚って子どもっぽくない?まぁ、消去法で水玉かな?」
「朝顔の着物も綺麗だと思いますけどねぇ……」
と僕は窓華さんが指差す朝顔の浴衣を見て言った。ピンクと黄色でグラデーションになっていて、水色の朝顔が咲いている綺麗な浴衣だったから。
「朝顔は嫌だよ。今の朝顔は喜代也のおかげでずっと咲いているけどさ、昔の朝顔は朝しか咲いていなかったって話だよ?」
「それって、これから死ぬ窓華さんにぴったりだと思いますけど?」
「私に早く死ねって言うの?昔は朝しか朝顔は花としての価値がないんだよ?昼にしぼむって存在が私みたいって酷いよ。」
死ぬとか殺すとかこんなところで言うのは物騒だと思う。でも、僕はあと数日で失うことに頭がついていかない。こんなに親しくなった人は家族以外に居ない。窓華さんを失うことは家族を失うことと同意だ。僕にとって大きい存在だ。
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