たおやかな慈愛 ~窓のない部屋~

あさひあさり

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斎藤福寿、マザーとのカウンセリング。

5 マザーとみんなの孤独

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「でも、マザーさんの孤独は僕達より別格だと思いますけど」
「そうね、毎日国民を観察するだけですから。滅多なことがないと介入することなんてできませんのよ」
ぐるぐるの目で僕を見つめる。この目が僕はまだ怖い。何か思っていることを抜き取られているような気がするから。あの目はどんな機能があるのだろう。
「目ですか?レーダーとかいろいろ機能かありますの。説明のときに言ったようにこの目で人を死に至らしめることもできましてよ?」
「あ、また僕の心から発言しましたね?」
「ごめんなさい。そんなに私の目は怖いかしら?」
マザーさんは低いテーブルにあった鏡を手にとって顔を見ている。化粧直しをするように見えるそれはまるで女の子だ。でも、あの目が怖いことは事実で、殺人までできるとは思わなかった。
「本当、マザーさんはすごいです」
「褒めても、八0一番さんの運命は変わりませんわ」
鏡をテーブルに置いてマザーさんは言った。マザーさんも人の言うことが気になるのだなと、生き物のような不思議を感じていた。
「僕は運命を変えようだなんて、思ってませんよ」
「そう、なら良かったのだわ。次は保護人を呼んで」
次の面談は窓華さんらしい。僕が部屋を出ると窓華さんが居た。僕は窓華さんと入れ替わりでマザーさんの部屋を出る。窓華さんはマザーさんが日本を動かすマザーだとは知らない。ただのカウンセラーだと思っている。それでも通用するくらいマザーさんは人間らしい。李さんが母さん国に残した子どもというのも、マザーのように感情がころころ変わる女の子だったのだろうか。マザーが幸せな未来を約束してくれて、国民はみんな平和な生き方ができる。それなのにマザーさんに関わった人は不幸になっているような気がする。僕も真実を知ったから普通の生活はもう送れない。
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