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斎藤福寿、マザーとのカウンセリング。
2 マザーは女の子ではない
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「李さんのこと、お父様って呼んでいるって聞きましたよ」
「だって本当にお父様ですわ」
ぐるぐるの目で僕を見つめる。その目を見ていたらやはり人間じゃないのだなと実感した。マザーさんはパソコンなのだ。でも、涙ぼくろがある。これはお父様である李さんの趣味だろうか。
「マザーさんって目元にほくろがあるのか」
「これはほくろに見せかけたサーモグラフィーカメラですわ。人というのは異常事態が温度で分かるのだわ」
「どこまでもパソコンなんですね」
その言葉にマザーさんは少し悲しそうだ。僕は話題を変えることにした。詩乃と連絡ができるようになったことにお礼が言いたい。多分、霞さんは友達との連絡なんて認められていないのだから。
「あと、詩乃と連絡を取らせてくれてありがとうございます」
「これには条件があるのですわ」
「条件?」
僕は少し恥ずかしそうに笑うマザーさんに問う。恥ずかしそうにしていると言っても顔が赤いわけでもなく、汗が出ているわけではない。そのぐるぐるの目を僕からそらしたからそう感じるだけだ。
「わたくしとすももさんをくっつけて欲しいの。わたくしは八0一番さんと彼女さんをくっつけるように仕向けたのですから」
「パソコンにも好きとかあるんですね」
失礼かと思ったが、僕は本心を言った。あぁ、だからあの時詩乃から連絡があったのか。これはマザーさんの判断だったのか。てっきり母さんが教えたのだろうぐらいにしか思っていなかった。マザーさんとの会話は慣れない。どうせ心で思ったところで先読みされてしまう。なら本心を述べたほうが良い。
「きっとないのですわ。多分、作った人に逆らわないように好意を持つプログラムがわたくしにされているだけだと思いますの」
「なんだ、分かってるんだ」
「それでも、わたくしは結婚したいの意味ですももさんが好きなのですわ」
マザーさんは口角を上げてにこりとした。こういった表情だけ見ると本当に女の子なのにな。この部屋だって女の子の部屋なのに。
「その考えを聞くとマザーさんは女性って感じがしますね」
「そうかしら」
そうしてマザーさんは対面した座布団から立ち上がり、歩いてきて僕の隣にそっと座る。そして僕の手を持って自分の服の中に入れるような仕草をしてきた。突然のことで僕はびっくりする。マザーさんは僕の手に自分の胴体を触らせた。
「ちょっと何するんですか?」
「胸もないし、下もついてないでしょう」
マザーさんはにこにこしている。僕が恥ずかしいと思ったことがおかしいのだろうか。だって人の形をしているだけでパソコンだ。でも、マザーさんの胴体は思ったより温かくてびっくりしていた。人間の皮膚の感触がするのは手だけで、あとは金属みたいにつるつるした胴体があった。
「だって本当にお父様ですわ」
ぐるぐるの目で僕を見つめる。その目を見ていたらやはり人間じゃないのだなと実感した。マザーさんはパソコンなのだ。でも、涙ぼくろがある。これはお父様である李さんの趣味だろうか。
「マザーさんって目元にほくろがあるのか」
「これはほくろに見せかけたサーモグラフィーカメラですわ。人というのは異常事態が温度で分かるのだわ」
「どこまでもパソコンなんですね」
その言葉にマザーさんは少し悲しそうだ。僕は話題を変えることにした。詩乃と連絡ができるようになったことにお礼が言いたい。多分、霞さんは友達との連絡なんて認められていないのだから。
「あと、詩乃と連絡を取らせてくれてありがとうございます」
「これには条件があるのですわ」
「条件?」
僕は少し恥ずかしそうに笑うマザーさんに問う。恥ずかしそうにしていると言っても顔が赤いわけでもなく、汗が出ているわけではない。そのぐるぐるの目を僕からそらしたからそう感じるだけだ。
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「パソコンにも好きとかあるんですね」
失礼かと思ったが、僕は本心を言った。あぁ、だからあの時詩乃から連絡があったのか。これはマザーさんの判断だったのか。てっきり母さんが教えたのだろうぐらいにしか思っていなかった。マザーさんとの会話は慣れない。どうせ心で思ったところで先読みされてしまう。なら本心を述べたほうが良い。
「きっとないのですわ。多分、作った人に逆らわないように好意を持つプログラムがわたくしにされているだけだと思いますの」
「なんだ、分かってるんだ」
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