たおやかな慈愛 ~窓のない部屋~

あさひあさり

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斎藤福寿、守咲窓華と台湾旅行する。

3 屋台めぐりもいろいろしたい

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「あと少しで台湾につくから。あと、夜は決めた?」
「すももさん、私迷っているんですよね」
「俺のおすすめとしてはこの時期だと蛍かなぁ?」
日本で絶滅して、人工的に復活させたという蛍が台湾にはいたみたいだ。
「夜店の屋台巡りはおすすめできない……と?」
「それも楽しいと思うよ。でも、ディナーを食べた後に蛍を見るのもロマンチックだと俺は思うけどね」
「確かにそれはロマンティックかも」
窓華さんはどこかうっとりして言った。
「台湾って日本と違って空に地上鉄が走っているんだ」
「地上鉄って海外ドラマで有名な空飛ぶ電車ですよね?」
「そうだね、地下鉄の地上版っていうべきかな」
そんなに危ないものが走っているなんて、台湾は正気だろうかと思った。日本は車でさえ空は緊急時しか飛べないのに。
「すももさん、それがあると夜空ってどうなるんですか?」
「海外は景観の配慮には日本より力を入れているからね。夜にはできるだけ光を強くしないか、行事のときは逆にライトアップするよね」
「へぇ、日本以外の国ってすごいんだぁ。私はやっぱり夜景が見たいな」
窓華さんはその李さんの提案に乗り気で、僕らは展望台があるレストランで食事ができるように、李さんは手配してくれるようだった。李さんには本当に世話してもらってばかりだ。霞さんに知られたら呆れられるだろうか。
「じゃあ、俺は遠くから見ているから二人で仲良くね。あと、首輪が爆発するようなことはしないでね」
と李さんは言って、僕らの前から姿をくらませた。と言っても、監視はされているのだ。僕らは海外に行けることだって一般人じゃないからできることだけれど、保護人と二人で旅行だって一般人のできることじゃない。僕はその異常事態に居た。
「なんか海外って感じだね。なんか日本に来た外国人って、日本の匂いは醤油の匂いって思うらしいよ?すっごい前の特番の情報だけど」
「これからどうします?」
「夜にディナーって決めたんだからさ。屋台で食べ歩きだよ!」
窓華さんは決めつけるように言った。台湾は電車が安いとパンフレットに書いてあったが、この場合は李さんはどうやって僕らを監視するのだろうと不安になる。僕だて窓華さんが逃げようとかドラマティックなことを提案しないことが、完全にないとは言い切れなかった。僕だって死にたくない。
「屋台が出るところは第二台北だから……」
と言って僕はパンフレットの後ろの路線を見る。繁華街に出た方が楽しいだろうと思って、僕はそこを探す。行き先は決まっていた。中心部の繁華街だ。いろいろな店があるから窓華さんも楽しんでくれるだろう。

台湾は地下鉄が発達していると聞いたが、今はそれが空にあるようだ。パンフレットに紹介されていたし李さんも教えてくれた。モノレールなどとは言わず地上鉄と言うらしい。実際に空を見上げると路線などがたくさんある。こんなに複雑で、よくジェット機がぶつからなかったなと思う。でもここでは整備されていてこれが当たり前みたいだ。昔の人間が想像する未来の世界みたいな感じで僕はびっくりした。
「これって空を飛ぶのかな?なんかわくわくするね」
「切符が必要だと思いますけど」
「え、呪はお金持ってきたの?」
「多分、このスマホとクレカでなんとかなるんしゃないでしょうか」
僕の予想は的中して、スマホをかざすと決済ができた。僕は眼鏡の辞書機能を使って路線図を読んで台北に行ことにする。
「わぁ、飛んでるねぇ」
「なんか遊園地のおもちゃみたいですね」
「呪のその言い方はすごく冷めているなぁ」
「でも、空から見ると路線って邪魔なのに、上から見ると景色は綺麗ですね」
正直な感想を口にする。今の日本は電柱がない。古い人間が外観が悪いとか言う理由で電柱を地下に設置するようにした。だから日本の空は開けている。でも、ここでは夜空なんて見れないのではないだろうか。海外の夜空って日本と違ってすごく近未来的で、それでいて昔の夜景なんて期待できないのでは?僕は窓華さんが星空を好きなことを知っていたから不安になった。
「そうかぁ、呪にとっては自分の方が上の立場って言いたいんだ?」
「そんな酷い意味で言ってませんよ。ただ星が見れるかなって」
「だって、私達って保護人と寿管士の仲でしょう?本当は上下関係みたいな難しいことあっても良いのに、呪は普通にしてくれるもん」
窓華さんは僕を困らせる存在だと思うことは多いと思うが、下に見たことは正直一度もない。言動に呆れるというのは毎日の話だが。それに窓華さんがそんなことを気にしていたなんて、微塵も思わなかった。
「じゃあ、上下関係があった方が良いと?」
「そんなこと言ってないよ。ただ、呪は優しいなって」
「どんなこと言っても窓華さんは死ぬだけですけどね」
「やっぱりさっきの言葉は撤回しますぅ」
そう言って不機嫌に空を走る地上鉄に乗る。それは思ったより速度が出る。バスみたいに窓が開くようにはなっていない。とりあえず、目的地の駅で降りる。僕らはなんだか観光気分でわくわくしていた。周りの人もアジア系の人だけでなく、欧州系の金髪碧眼という人物を見て、アニメの世界から飛び出たようだと思った。
「ここが第二台北かぁ。やっと着いたね!」
僕らは迷いながらも繁華街に着いた。荷物はホテルに李さんがホテルに届けてくれるように手配していたので身軽だ。僕も眼鏡のおかげでだいたいの文章は理解できた。それよりも窓華さんのジェスチャーが通用するのにもびっくりした。
「あ、屋台出ている。あと、私は足つぼも気になるのよね」
「そんなにいっぱい回れませんよ」
テンション高めな窓華さんの意見には呆れてしまう。僕らには残された時間がどれだけあるのかなんて分からない。それくらい、僕らの未来なんていうものはない。そんな人と思い出に残るような旅行なんて。
「そうだね、旅行の時間にも人生にも制限があるもん」
「たまにはまともなこと言うんですね」
「あ、また酷いこと言っているじゃん。やっぱり保護人の私をまともじゃないって思っているよね?」
窓華さんと会話しながら僕は街を歩く。確かにこんな海外にいるのは窓華さんだけでなくて、僕だってまともではないなと思った。そこで大判焼きみたいなものが売っている。僕は窓華さんの分も買って渡した。
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