たおやかな慈愛 ~窓のない部屋~

あさひあさり

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斎藤福寿、守咲窓華と台湾旅行する。

2 台湾旅行が楽しみな守咲窓華

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「ところで、飛行機って空を飛ぶんですよね?」
窓華さんは嬉しそうに言う。それより僕はこれから車って聞いたけど、そっちも空を飛ぶのではないかと期待していた。空を飛ぶ車っていうのは、男として昔からの憧れでもある。
「そりゃあ、ジェット機だから空を飛ぶかな」
「じゃあ、空港までの道のりは?」
「普通の車で行くよ。そんな目立つことできないでしょう。君達は自分達の立場が分かっているよね」
それなりに期待したのに、そんなことを言われてしまう。まぁ、国内線じゃない飛行機が今の日本にあることがびっくりなんだけど。昔はキャビンアテンダントのドラマとかで、海外に行く作品とかがあった。その職業は今もあるけれど、昔と違って国内線だけだし、パイロットは自動になったしなりたいと思う子どもは、少なくなったと聞く。昔はパイロットはモテたらしい。確かに海外を行き来するなんて、今の日本では考えられない仕事だ。苦労は大きいだろうけど楽しいだろう。でも、今は日本だけなのだしそこまで魅力はない。
「でも私達は海外に行くんですよね?パスポートとかないけど、ドラマみたいにパスポート見せて、係の人に旅行のためって英語で答えたりするんだよね」
「窓華さんはそんな詳しいドラマ見てたんですね」
「まぁ、大昔のドラマって面白いからよく見ちゃうもん」
そう言っているけれど、僕はそんな英語が言えるだろうか。搭乗手続きは時間がかかっていて、日本でも海外でもない特殊な空間に入ることになると聞いた。僕はそこでなら、まだ日本を恋しいと思えるかもしれない。僕は海外を知らないから。
「まぁ、昔は搭乗手続きとかあったけどさ。今回はプライベートジェットだから乗ってすぐ行けるよ?」
「へぇ、やっぱり国家公務員って優遇されているですね」
「呪やったね!なんかお金持ちになった気分だね!」
窓華さんは嬉しそうに言った。僕らは小さなジェット機に乗る。運転はもちろん全自動だ。僕は車は全自動になったことは知っていたが、今はこういうものの操縦も全自動だと知ってとてもびっくりした。僕らは空を飛ぶということで、李さんが着てからゆったりした服に着替えていた。旅行の荷物だって持っている。

「すももさん、すごいですね」
「それほどでもないよ。保護人も楽しんでね。俺は居ないものとして扱ってもらって良いから、個室に案内するよ」
僕らはジェット機の個室に案内された。個室というか、座席が向かい合わせになっているスペースだ。そこには李さんは居ない。
「ここだけの話だよ?ちょっとだけ気になることあってさぁ、私はすももさんになんか変なこと言ったかな?」
窓華さんは不思議そうに、そして寂しそうに僕に聞いた。
「いや、何も言ってないと思うよ。なんで?」
「だってさ、すももさんも私の名前知っているんでしょ?でも、保護人って言うだけで窓華って名前を呼んでくれないじゃん?」
そう言われれば、李さんは窓華さんの名前を呼んだことがない。
「それは気にしなくて良いんじゃない?」
「呪はそういうけどさ、私は気にしちゃうタイプなんだよ」
そんなとき、ジェット機は滑走路に入り上空に上がった。僕は耳が痛くなるのを感じて、本当にに日本を旅立っているのだなと思った。ここまで車で二時間ぐらいだったしそのときも、李さんは窓華さんのことを名前で呼んでいないと思い出した。
「あれ富士山だよ。普通の日本人は空から見ることができないよ」
しばらくして窓華さんは離陸してすぐの外を眺めてそう言った。
「そうですね、僕らは普通じゃないですからね」
空から見る景色は偉大だった。普通に暮らしていたら、展望台からしか見ることができないような景色を全面に見ている。僕は空港は日本の真ん中ぐらいにあるのではないか?と思いつつ運ばれてきた食事を食べていた。昔は機内食があって、グレードでいろいろ選べたというが、僕らは途中で買ったコンビニ弁当だった。
「なんか、わくわくするね」
窓華さんはサラダチキンをかじりながらそんなことを言う。僕はある程度の英語は話せるけれど、海外で通用するか分からないから困っていた。まぁ、翻訳機能は眼鏡についているから、会話は聞きとれるのだけれども。
「フライトは四時間ぐらいだって」
「さっき李さん言ってましたね」
「時差も一時間ぐらいみたいだよ」
と言って、窓華さんはパンフレットの情報を僕に伝える。パンフレットなんていう違法なものはもちろん、普通に流通しているわけではなくて李さんが僕らに渡してくれたものだ。
「楽しそうですね」
「一泊二日なんでしょ?二泊三日が良かったなぁ……」
「一泊で十分じゃないですか」
「だってさ、夜店が出るみたいだよ?それにも行きたいし、夜景が見れるところでディナーも食べたいし。どっちが良いかなんて選べないじゃん」
僕にも同じパンフレットが渡されているので、夜店の屋台巡りは楽しそうだと思ったことは事実で、良いディナーよりもそっちを選んで欲しいと思った。
「僕は屋台巡りが良いですね。なんか異国情緒ありますもん。夜景を見てディナーなら日本でやろうと思えばやれるじゃないですか」
「海外の夜景だから良いんだよ!でも、屋台も気になるなぁ。食べ歩きとかしてみたい気分だし、だって楽しそうじゃん」
窓華さんは手振り身振りをして興奮しているように話す。
「ディナーの場合は早めに予約って書いてありますよ?」
「うーん、出店や市場は昼もやっているみたいだし、昼行く?」
「昼も行って夜も行けば良いのでは?」
僕は提案してみるが窓華さんはやっぱり反論する。
「せっかくすももさんがドレス用意してくれたんだよ?行きたいじゃん。それに海外ではコントロールベーカリーないから、屋台だってリアル食材だし本当に迷ってしまうよね!」
窓華さんはクリスマスのプレゼントを選ぶ子どものように、楽しそうに悩ましそうに慎重に選択していた。僕もせっかくスーツを用意してもらったのだから、ディナーにしても良いかもしれないと思っていた。台湾につくまで四時間もあると思ったが、ジェット機のテレビは海外映画を放送していたしパンフレットを見ていたこともあってすぐ時間が経った。李さんが個室にやってきた。
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