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斎藤福寿、守咲窓華との日々。
2 上司の話
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「今日の分のティラミス買って帰ろうよ。今日はコンビニ」
「僕は何を買おうかなぁ……」
「やっぱり桜子ちゃんが言う通りなのかな。私の最期は惨めなものじゃないし、これからも楽しい生活ができるって」
マザーさんの見る僕らの生活はどこまで分かっているのだろう。僕はそんなことを考えながら、コンビニに吸い込まれていった。コンビニでは僕の好きなエンドザワールドのフェアがやっており、僕はお菓子三つを買ってクリアファイルを交換した。窓華さんはティラミスを買っていた。
「窓華さんは自分の死についてどう考えているのか分からないです」
「あぁ、それね。私も分からない。死ぬ事実は受け入れているつもり。でも実際問題心の方が追いつかないの」
「死ぬことが怖いから?」
死を感じないと生きている実感がないと言った窓華さん。今の窓華さんは生きていると嫌なぐらい実感しているはずだ。僕には分からない気持ち。喜代也が普通に効果のある僕らには分からない窓華さんの未来。
「そりゃあ怖いよ。でも、もう決まったことでしょ?諦めるって言うと言葉が悪いけど、仕方ないんだろうなぁ」
「だからと言って、もう僕を殺そうとしないでくださいね」
「それも分からない。私は弱いから」
そう言って窓華さんは、コンビニの袋を持って僕の前を歩く。僕より先に歩いて僕より早く死んでいくのか。
数日後の朝、朝食のベーコンエッグと食パンを食べた後、僕はリビングの学習机で漫画を読んでいると、窓華さんはソファーでいつも通りテレビを見たりしてゆっくりしていた。なのに窓華さんは急に何か思い立ったように動き出す。僕は当番なので瓶缶のゴミを出した。今日の朝一緒に出せば良かったのに、今更になって昨日の分と言ってゴミ箱にチューハイの缶を捨てたから少しイライラしていた。
「呪の上司のすももさんってどんな人なの?その人に遺書を預けるってどう?私が死んでから読んだりしたら感動ドラマみたいじゃない?」
と恐ろしい提案をしていた。窓華さんは自分の死を受け入れている。それは一緒に暮らしていて分かったことで、死を怖がっては居ない。でも、自分から命を絶つことはしないようだ。僕はどこまで説明したら良いか分からない。そもそも上司の話をしても良いのか。
「すももさんは韓国から来た人ですよ……」
「ちょっとまって、やっぱり外国の方なの?」
「マザーを作るために来たみたいですけど、何か問題でも?」
「問題大アリだよ!だって日本は鎖国中でしょ?」
最初に李さんのことを聞いたときの僕と同じ反応をする。今の日本だったらこの反応は誰だって同じだと思う。両親だってそうだった。
「日本は完全に鎖国してないんですよ」
「真実を一般人が知って始末に来るアサシンとか居ない?怖いんだけどさぁ……」
「窓華さんはもう一般人ではない保護人です」
「あ、そうだったね」
窓華さんは可愛く笑うとびっくりするような提案をする。まだ一緒に暮らして間もないし、好きな食べ物がティラミスってぐらいしか知らない。だから海外旅行に行こうと言い出すなんて僕だってびっくりした。
「じゃあさ、すももさんに頼んで海外旅行しようよ。私は一度も日本から出たことないんだよね。そのまま死ぬなんて嫌じゃん」
「僕も日本から出たことありませんけど、僕は心中とか考えませんよ?」
「何言っているの?私はこれのせいで自殺さえできない」
首輪を触って窓華さんは答える。窓華さんは日本で死ぬしかない。僕と一緒に過ごす生活だってマザーに決められたものだ。僕らの意志じゃない。だから海外旅行なんて許されるのだろうか。
「この首輪を作ったのも僕の上司の李さんなんですよ」
「へえ……。じゃあその人って私にとっての敵だね」
「いや、窓華さんの敵とまではいかないと思いますけど」
僕が本当のことを言うと窓華さんは、何がおかしいの?と聞きたくなるほど軽快に笑った。
「でもさ、この生活も良いなって思っているんだよ」
「この生活が続くわけじゃないですよ。終わりは来ます」
「まぁ、そうなるけどさ。でも、生きてて楽しいよ。今までの中で生きているって実感しちゃった。それは死を感じてるからかな?幸せだよ」
僕はその言葉に顔を真っ赤にした。窓華さんがいろいろと茶化してくるが、僕は誤魔化していた。まぁ、前に窓華さんが言ったように死を感じているから、生きる楽しみが分かったということだろう。
「ところでさ、海外旅行って割と真面目に考えているんだけど」
「上司に聞いてみます。期待しないでくださいよ」
「聞いてみないことには分からないじゃない?」
窓華さんがそういうので僕は電話することにした。僕だって、海外旅行に興味がないと言ったら嘘になる。これは本当の話だ。ネットでしか海外のことは分からない時代だ。昔は海外ドラマが流行ったと聞く。鎖国した今でも、文化は海外から入ってくるしドラマもパソコンでなら見放題だ。だから海外が日本より発展していることも当たり前に知れ渡った知識だ。
「僕は何を買おうかなぁ……」
「やっぱり桜子ちゃんが言う通りなのかな。私の最期は惨めなものじゃないし、これからも楽しい生活ができるって」
マザーさんの見る僕らの生活はどこまで分かっているのだろう。僕はそんなことを考えながら、コンビニに吸い込まれていった。コンビニでは僕の好きなエンドザワールドのフェアがやっており、僕はお菓子三つを買ってクリアファイルを交換した。窓華さんはティラミスを買っていた。
「窓華さんは自分の死についてどう考えているのか分からないです」
「あぁ、それね。私も分からない。死ぬ事実は受け入れているつもり。でも実際問題心の方が追いつかないの」
「死ぬことが怖いから?」
死を感じないと生きている実感がないと言った窓華さん。今の窓華さんは生きていると嫌なぐらい実感しているはずだ。僕には分からない気持ち。喜代也が普通に効果のある僕らには分からない窓華さんの未来。
「そりゃあ怖いよ。でも、もう決まったことでしょ?諦めるって言うと言葉が悪いけど、仕方ないんだろうなぁ」
「だからと言って、もう僕を殺そうとしないでくださいね」
「それも分からない。私は弱いから」
そう言って窓華さんは、コンビニの袋を持って僕の前を歩く。僕より先に歩いて僕より早く死んでいくのか。
数日後の朝、朝食のベーコンエッグと食パンを食べた後、僕はリビングの学習机で漫画を読んでいると、窓華さんはソファーでいつも通りテレビを見たりしてゆっくりしていた。なのに窓華さんは急に何か思い立ったように動き出す。僕は当番なので瓶缶のゴミを出した。今日の朝一緒に出せば良かったのに、今更になって昨日の分と言ってゴミ箱にチューハイの缶を捨てたから少しイライラしていた。
「呪の上司のすももさんってどんな人なの?その人に遺書を預けるってどう?私が死んでから読んだりしたら感動ドラマみたいじゃない?」
と恐ろしい提案をしていた。窓華さんは自分の死を受け入れている。それは一緒に暮らしていて分かったことで、死を怖がっては居ない。でも、自分から命を絶つことはしないようだ。僕はどこまで説明したら良いか分からない。そもそも上司の話をしても良いのか。
「すももさんは韓国から来た人ですよ……」
「ちょっとまって、やっぱり外国の方なの?」
「マザーを作るために来たみたいですけど、何か問題でも?」
「問題大アリだよ!だって日本は鎖国中でしょ?」
最初に李さんのことを聞いたときの僕と同じ反応をする。今の日本だったらこの反応は誰だって同じだと思う。両親だってそうだった。
「日本は完全に鎖国してないんですよ」
「真実を一般人が知って始末に来るアサシンとか居ない?怖いんだけどさぁ……」
「窓華さんはもう一般人ではない保護人です」
「あ、そうだったね」
窓華さんは可愛く笑うとびっくりするような提案をする。まだ一緒に暮らして間もないし、好きな食べ物がティラミスってぐらいしか知らない。だから海外旅行に行こうと言い出すなんて僕だってびっくりした。
「じゃあさ、すももさんに頼んで海外旅行しようよ。私は一度も日本から出たことないんだよね。そのまま死ぬなんて嫌じゃん」
「僕も日本から出たことありませんけど、僕は心中とか考えませんよ?」
「何言っているの?私はこれのせいで自殺さえできない」
首輪を触って窓華さんは答える。窓華さんは日本で死ぬしかない。僕と一緒に過ごす生活だってマザーに決められたものだ。僕らの意志じゃない。だから海外旅行なんて許されるのだろうか。
「この首輪を作ったのも僕の上司の李さんなんですよ」
「へえ……。じゃあその人って私にとっての敵だね」
「いや、窓華さんの敵とまではいかないと思いますけど」
僕が本当のことを言うと窓華さんは、何がおかしいの?と聞きたくなるほど軽快に笑った。
「でもさ、この生活も良いなって思っているんだよ」
「この生活が続くわけじゃないですよ。終わりは来ます」
「まぁ、そうなるけどさ。でも、生きてて楽しいよ。今までの中で生きているって実感しちゃった。それは死を感じてるからかな?幸せだよ」
僕はその言葉に顔を真っ赤にした。窓華さんがいろいろと茶化してくるが、僕は誤魔化していた。まぁ、前に窓華さんが言ったように死を感じているから、生きる楽しみが分かったということだろう。
「ところでさ、海外旅行って割と真面目に考えているんだけど」
「上司に聞いてみます。期待しないでくださいよ」
「聞いてみないことには分からないじゃない?」
窓華さんがそういうので僕は電話することにした。僕だって、海外旅行に興味がないと言ったら嘘になる。これは本当の話だ。ネットでしか海外のことは分からない時代だ。昔は海外ドラマが流行ったと聞く。鎖国した今でも、文化は海外から入ってくるしドラマもパソコンでなら見放題だ。だから海外が日本より発展していることも当たり前に知れ渡った知識だ。
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