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斎藤福寿、普通の日々に苦しむ。
6 謝るしかないじゃないか
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コンベのオーブン機能で温めた食パンにジャムを塗りながら僕は、今まで通りの朝を迎えていた。いつもと違うことはゲームをしていないぐらいか。
「霞さんは母さん親と北海道旅行するらしいんだ」
「春の北海道も素敵よね。美味しいものたくさんあるわ」
「そんな覚悟を決めた同僚が居るのに、わがまま言ってごめん」
僕は昨日、自暴自棄になって両親に当たった。だからそれについて今になって謝ることにした。両親にはもう会えないかもしれないんだ。そのことを二人はまだ心のどこかで悩んでいたらしく、それからは僕に普段どおり接してくれた。きっとこの僕の行動だってマザーの想定内なのだろう。
「僕はさ、引っ越しの準備を頼める人が居ないから旅行は無理だと思う。でも、上司にいろいろ雑務に使って良いって言われているクレカがあるからさ。何か僕は父さんと母さんにしようと思うよ」
「そんなことしなくて良いよ」
と父さんは言った。でも、僕はどうしても後ろ髪が引かれるのだ。もう会えないような気が本気でするのだ。詩乃にだって何かしたいけど、これは李さんに止められるような気がする。僕は詩乃とも別れることになるかもしれない。
「引っ越しは業者の料金は無料なんだ。だから、誰か頼める人が居るなら僕らだって旅行に行けるし……」
「その気持ちは嬉しいわ」
「どうしても父さんと母さんに何かしたいんだ」
僕は昨日途中から無視をしまったこともあり、両親の優しさ涙が出てきた。僕が不幸になって日本がうまくいくとして、子どもを不幸にしたい親は居ないと思う。二人だって辛いはずだ。寿管士という謎の仕事に、日本に居るはずのない保護人。そんな仕事を子どもにさせるのだから、きっと辛い。
「父さん、母さん、なんか昨日はさ、ごめん」
僕は昨日、両親に当たって無視してしまったことを何度も謝る。でも、これで許してもらおうなんて思っていない。だって、父さんも母さんも僕が幸せになるように育ててきたと思うから。本当は両親を責めるなんて間違っている。そんなことは分かっている。僕はだからこそ今の自分には謝るしか残されていない。
「仕方ないだろ、あんな仕事に就くなんて思わないから」
父さんは僕の肩を持つ。
「そうよ、母さんもね、福寿のことが心配なのよ。ただそれだけ」
母さんも僕を心配してくれる。僕はなんて良い両親の居る家庭に産まれたのだろうと思い、また違う意味で涙が出た。家族でどこかに行くのはこれが最後になるかもしれない。過ちというのは繰り返すから過ちだ!と誰か有名な人が言っいたことを思い出す。僕はもう進路選択に関して過ちは犯さないつもり。決まったことは後悔しないつもりだ。自分なりに受け入れたから。あんなマザーだけど、僕だって幸せになりたい。幸せになる道をマザーが選ぶのならそれに従うしかない。だって僕らは、今の日本はマザージェネレーションでマザーに従うことが一般的なのだから。だからこの結果は仕方がない。誰も恨むことはできないのだ。僕は母さんが運んできたコーヒーにたくさん砂糖を入れて飲んでいる。母さんも紅茶を飲んでいた。
「あら、泣かないの。そんなんだと保護人に舐められちゃうわよ?」
母さんが僕の頭をなでながら言った。僕は母さんの優しさには産まれてきて何度も助けられていた。だから、それが嬉しかったのだ。僕は本当に愚か者だ。こんな両親に心配を二度とかけたくない。だからこの機会の引っ越しは良いきっかけになるだろう。このままずるずる居ても、こういう両親に対する感謝とかそういうの。気づけないままだっただろうし。独り暮らしをしていると言っても近場で助けてもらうことが多かった。これからは恩返しせねば。
「父さん、母さん、今まで本当にありがとう」
僕は本心を口にした。昨日言ったことも本心だけれど、これは家族を喜ばせる本音の話だった。父さんと母さんのおかげでここまで来たのだ。これからは、できるだけ一人で頑張らなければならない。これはきっとマザーが与えた試練だと思う。気まずくなってしまったのは事実だけれども。
「霞さんは母さん親と北海道旅行するらしいんだ」
「春の北海道も素敵よね。美味しいものたくさんあるわ」
「そんな覚悟を決めた同僚が居るのに、わがまま言ってごめん」
僕は昨日、自暴自棄になって両親に当たった。だからそれについて今になって謝ることにした。両親にはもう会えないかもしれないんだ。そのことを二人はまだ心のどこかで悩んでいたらしく、それからは僕に普段どおり接してくれた。きっとこの僕の行動だってマザーの想定内なのだろう。
「僕はさ、引っ越しの準備を頼める人が居ないから旅行は無理だと思う。でも、上司にいろいろ雑務に使って良いって言われているクレカがあるからさ。何か僕は父さんと母さんにしようと思うよ」
「そんなことしなくて良いよ」
と父さんは言った。でも、僕はどうしても後ろ髪が引かれるのだ。もう会えないような気が本気でするのだ。詩乃にだって何かしたいけど、これは李さんに止められるような気がする。僕は詩乃とも別れることになるかもしれない。
「引っ越しは業者の料金は無料なんだ。だから、誰か頼める人が居るなら僕らだって旅行に行けるし……」
「その気持ちは嬉しいわ」
「どうしても父さんと母さんに何かしたいんだ」
僕は昨日途中から無視をしまったこともあり、両親の優しさ涙が出てきた。僕が不幸になって日本がうまくいくとして、子どもを不幸にしたい親は居ないと思う。二人だって辛いはずだ。寿管士という謎の仕事に、日本に居るはずのない保護人。そんな仕事を子どもにさせるのだから、きっと辛い。
「父さん、母さん、なんか昨日はさ、ごめん」
僕は昨日、両親に当たって無視してしまったことを何度も謝る。でも、これで許してもらおうなんて思っていない。だって、父さんも母さんも僕が幸せになるように育ててきたと思うから。本当は両親を責めるなんて間違っている。そんなことは分かっている。僕はだからこそ今の自分には謝るしか残されていない。
「仕方ないだろ、あんな仕事に就くなんて思わないから」
父さんは僕の肩を持つ。
「そうよ、母さんもね、福寿のことが心配なのよ。ただそれだけ」
母さんも僕を心配してくれる。僕はなんて良い両親の居る家庭に産まれたのだろうと思い、また違う意味で涙が出た。家族でどこかに行くのはこれが最後になるかもしれない。過ちというのは繰り返すから過ちだ!と誰か有名な人が言っいたことを思い出す。僕はもう進路選択に関して過ちは犯さないつもり。決まったことは後悔しないつもりだ。自分なりに受け入れたから。あんなマザーだけど、僕だって幸せになりたい。幸せになる道をマザーが選ぶのならそれに従うしかない。だって僕らは、今の日本はマザージェネレーションでマザーに従うことが一般的なのだから。だからこの結果は仕方がない。誰も恨むことはできないのだ。僕は母さんが運んできたコーヒーにたくさん砂糖を入れて飲んでいる。母さんも紅茶を飲んでいた。
「あら、泣かないの。そんなんだと保護人に舐められちゃうわよ?」
母さんが僕の頭をなでながら言った。僕は母さんの優しさには産まれてきて何度も助けられていた。だから、それが嬉しかったのだ。僕は本当に愚か者だ。こんな両親に心配を二度とかけたくない。だからこの機会の引っ越しは良いきっかけになるだろう。このままずるずる居ても、こういう両親に対する感謝とかそういうの。気づけないままだっただろうし。独り暮らしをしていると言っても近場で助けてもらうことが多かった。これからは恩返しせねば。
「父さん、母さん、今まで本当にありがとう」
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