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斎藤福寿、普通の日々に苦しむ。
1 保護人の守咲窓華の生活を覗き見
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引っ越しの準備もあるということで、僕らは早く切り上げて家に帰らされることになった。でも、僕は言いつけを破って、僕と一緒に住む未来の保護人の住む団地に向かっていた。引越し先のアパートからすぐのところにある。僕は青いファイルを持ち、コンビニの位置とバス停を確認した。今度住むアパートと近かったこともあるし、これから暮らす人がどんな人か知りたかったってのもある。
「今日は夕飯何にしようか?」
スーパーに寄った帰りのような保護人になる守咲窓華は、これから離れて生活する子どもと手をつないでいた。調書によると桜ちゃんだ。守咲さんは優しい顔をした女性だった。身長は一五0センチあるかないかの小柄な体型で、三二歳ということだが着る服や化粧にによっては学生にも見えるだろう。普通そうに見えるこの女性が保護人になるの?という感想の方が大きい。そして家族に看取られる最期よりも僕との生活を選んだ人。
「うん、ママの料理は何でも美味しいから何でも良いよ」
「あら嬉しい。なら何にしましょうねぇ……」
二人は手を繋いで歩いている。桜ちゃんの方もレジ袋を持っているが、お菓子など軽いものを持っているようだ。僕は小さい頃も母さんが牛乳など重いものを持っていたことを思い出し懐かしくなった。
「あ、健君だ!こんにちはぁ、健君は今日もスイミングでコンビニ飯?」
「そうだよ、いつもコンビニ飯」
健君と言われる男の子はどこか寂しそうな顔だ。桜ちゃんはそんな態度も気にせずに男の子に明るく話しかけた。男の子は鬱陶しそうにしているが、そこまで嫌な顔もしていない。もしかしたら恋心があって、わざと冷たくしているのかも?
「今度、うちにいらっしゃいな。一緒に御飯を食べましょう」
「ありがとうございます」
「じゃあね~」
「じゃ、じゃあ……」
僕はそんな仲の良さそうな親子連れを見て、話しかけようと足を踏み出した。母さん親のように見える人は僕の担当になる保護人だと思う。漆黒の髪をしていておかっぱで思ったよりも若くみえる。僕が小さいときに塾で作ったような黄色の熊のエプロンをしていた。子どもの女の子はツインテールをしていてこちらも可愛い。この子はワンピースを着ていた。男の子は髪が濡れていて大きな手提げを持っている。町の中の平和を表しているような、そんな感じに見える。
僕は守咲窓華が保護人になることが信じられない。だからこの女性を最期まで家族と住むように提案しようとした。守咲さんのところに歩き出そうとすると、電子機器である眼鏡から『保護人に話しかけたらわたくしも行動に出ましてよ。その結果はどちらのご家族だってきっと悲しみますわ。だから立ち去ってくださいまし』とマザーの声が聞こえた。見えない透明な壁がそこにあった。そして僕の眼鏡にこの先は立ち入りできませんと警告が入った。こんな機能があることを初めて知った。危ない場所などはそういう警告が出ると説明書にあったけれども。だからここはマザーとヘルスメーターにより何かしら守られ細工がされている空間だと分かる。その場に留まることしかできなかった。もちろん僕だってこの操作は国民のためだと僕は理解した。そうだ、ここは僕は本来居てはいけない世界だから、抑止力が働いていたのだと思うことにした。でもあんな仲良しの親子連れがどうして僕に最期を任せるのだろう。
その後、親子連れは家に入っていった。僕はスーツ姿で住宅街に居たから目立っていたこともあって、女性は僕に会釈していた。僕も反応を返してしまった。これは李さんにバレるとやばい。でも、何でこの女性が家族と離れて、保護人になるのだろうと僕は納得がいかなかった。
結局僕はその親子に話しかけることができない。僕は大人しく家に帰る。どうせこの女性とはしばらくのうちにまた会うことになる。今度会うときは一般的な日本国民ではなく、保護人と寿管士の関係だ。僕はただいまも言わずに家に帰り、そして自室に向かう。子ども部屋でまだ使っている学習机でそのファイルを開いた。下宿先にも机はあったが、僕は自宅にあるこの学習机が好きだった。学習机は下宿には持ち込まなかったけれど、引っ越しには持っていこうと思っている。そのファイルには保護人には名前を教えてはいけないと最初に書いてあった。情が湧くからだと書いてある。これは昔見た少年院でのドラマでも同じようなことをしていたと思った。そして守咲窓華という女性について、僕は資料を読むことにした。写真を確認すると、やっぱりさっき会ってきた親子だった。
調書である程度知っていたが、守咲さんは三十二歳の元幼稚園の先生だ。あんな小柄だから、一六五センチしかない僕でも喧嘩したら勝てそう。あの優しそうな感じは仕事柄だろう。偏見かもしれないけれど、エプロンが似合っていた。今は少子化だから幼稚園は少ない。その先生になれるのだから頭が良い。そこには飛び級をしていると書いてあった。やっぱりと僕は思った。三十五歳の夫とは友人主催の合コンで知り合って結婚とある。夫はシステム系の会社員みたいだ。今の時代の会社員ということは、収入だって高い。忙しくて帰りが遅いことが多いようだが、会社の部下と不倫をしていると書いてある。守咲さんは夕方に小学校二年生の桜という女の子が居るようだ。さっき見た女の子だろう。
守咲さんは左手で右手首を切って自殺未遂を何度もしているらしい。でも、何度も失敗している。喜代也が一般的になった今だからではなく、昔も手首を切っての自殺というものは成功率が低かったと聞いたことがある。そこにはずたずたになった右腕の写真が添えられていた。ちょっとだけ包丁で指を切っただけでも痛いのに、想像力がない僕には分からない。それに自殺で成功率が高いのは首吊りだと思う。簡単な縄と適度な高さがあれば死ねると聞いたことがある。手を切るというのは、薬を大量に飲むことと同じでかまって欲しいだけなのでは?
今はマザーが行うマッチングでほとんどのカップルが成立し結婚するため、離婚する家庭や問題を起こす家はほとんどなくなったと言っても良い。それくらい平和な世の中になったのに、守咲さんは喜代也が効かないせいで死ぬしかない。二人はマッチングで知り合ったと書いてある。浮気をどう思っているのだろう。僕はあの女の子のようなパソコンがマザーだということを思い出して、まぁ、あんなパソコンが決めるんだもんなぁ……と嘲笑してしまった。世間ではあんな女の子の形をした可愛いパソコンが思わないだろう。それにしてもあんなに子どもと楽しそうに仲良くしていたのに最期を家族と過ごしたくないのか……と僕は帰り道に寄った守咲さんと子どもを見て思った。窓華さんが死ぬことは将来的に確実に起こる悲惨な未来だ。
「今日は夕飯何にしようか?」
スーパーに寄った帰りのような保護人になる守咲窓華は、これから離れて生活する子どもと手をつないでいた。調書によると桜ちゃんだ。守咲さんは優しい顔をした女性だった。身長は一五0センチあるかないかの小柄な体型で、三二歳ということだが着る服や化粧にによっては学生にも見えるだろう。普通そうに見えるこの女性が保護人になるの?という感想の方が大きい。そして家族に看取られる最期よりも僕との生活を選んだ人。
「うん、ママの料理は何でも美味しいから何でも良いよ」
「あら嬉しい。なら何にしましょうねぇ……」
二人は手を繋いで歩いている。桜ちゃんの方もレジ袋を持っているが、お菓子など軽いものを持っているようだ。僕は小さい頃も母さんが牛乳など重いものを持っていたことを思い出し懐かしくなった。
「あ、健君だ!こんにちはぁ、健君は今日もスイミングでコンビニ飯?」
「そうだよ、いつもコンビニ飯」
健君と言われる男の子はどこか寂しそうな顔だ。桜ちゃんはそんな態度も気にせずに男の子に明るく話しかけた。男の子は鬱陶しそうにしているが、そこまで嫌な顔もしていない。もしかしたら恋心があって、わざと冷たくしているのかも?
「今度、うちにいらっしゃいな。一緒に御飯を食べましょう」
「ありがとうございます」
「じゃあね~」
「じゃ、じゃあ……」
僕はそんな仲の良さそうな親子連れを見て、話しかけようと足を踏み出した。母さん親のように見える人は僕の担当になる保護人だと思う。漆黒の髪をしていておかっぱで思ったよりも若くみえる。僕が小さいときに塾で作ったような黄色の熊のエプロンをしていた。子どもの女の子はツインテールをしていてこちらも可愛い。この子はワンピースを着ていた。男の子は髪が濡れていて大きな手提げを持っている。町の中の平和を表しているような、そんな感じに見える。
僕は守咲窓華が保護人になることが信じられない。だからこの女性を最期まで家族と住むように提案しようとした。守咲さんのところに歩き出そうとすると、電子機器である眼鏡から『保護人に話しかけたらわたくしも行動に出ましてよ。その結果はどちらのご家族だってきっと悲しみますわ。だから立ち去ってくださいまし』とマザーの声が聞こえた。見えない透明な壁がそこにあった。そして僕の眼鏡にこの先は立ち入りできませんと警告が入った。こんな機能があることを初めて知った。危ない場所などはそういう警告が出ると説明書にあったけれども。だからここはマザーとヘルスメーターにより何かしら守られ細工がされている空間だと分かる。その場に留まることしかできなかった。もちろん僕だってこの操作は国民のためだと僕は理解した。そうだ、ここは僕は本来居てはいけない世界だから、抑止力が働いていたのだと思うことにした。でもあんな仲良しの親子連れがどうして僕に最期を任せるのだろう。
その後、親子連れは家に入っていった。僕はスーツ姿で住宅街に居たから目立っていたこともあって、女性は僕に会釈していた。僕も反応を返してしまった。これは李さんにバレるとやばい。でも、何でこの女性が家族と離れて、保護人になるのだろうと僕は納得がいかなかった。
結局僕はその親子に話しかけることができない。僕は大人しく家に帰る。どうせこの女性とはしばらくのうちにまた会うことになる。今度会うときは一般的な日本国民ではなく、保護人と寿管士の関係だ。僕はただいまも言わずに家に帰り、そして自室に向かう。子ども部屋でまだ使っている学習机でそのファイルを開いた。下宿先にも机はあったが、僕は自宅にあるこの学習机が好きだった。学習机は下宿には持ち込まなかったけれど、引っ越しには持っていこうと思っている。そのファイルには保護人には名前を教えてはいけないと最初に書いてあった。情が湧くからだと書いてある。これは昔見た少年院でのドラマでも同じようなことをしていたと思った。そして守咲窓華という女性について、僕は資料を読むことにした。写真を確認すると、やっぱりさっき会ってきた親子だった。
調書である程度知っていたが、守咲さんは三十二歳の元幼稚園の先生だ。あんな小柄だから、一六五センチしかない僕でも喧嘩したら勝てそう。あの優しそうな感じは仕事柄だろう。偏見かもしれないけれど、エプロンが似合っていた。今は少子化だから幼稚園は少ない。その先生になれるのだから頭が良い。そこには飛び級をしていると書いてあった。やっぱりと僕は思った。三十五歳の夫とは友人主催の合コンで知り合って結婚とある。夫はシステム系の会社員みたいだ。今の時代の会社員ということは、収入だって高い。忙しくて帰りが遅いことが多いようだが、会社の部下と不倫をしていると書いてある。守咲さんは夕方に小学校二年生の桜という女の子が居るようだ。さっき見た女の子だろう。
守咲さんは左手で右手首を切って自殺未遂を何度もしているらしい。でも、何度も失敗している。喜代也が一般的になった今だからではなく、昔も手首を切っての自殺というものは成功率が低かったと聞いたことがある。そこにはずたずたになった右腕の写真が添えられていた。ちょっとだけ包丁で指を切っただけでも痛いのに、想像力がない僕には分からない。それに自殺で成功率が高いのは首吊りだと思う。簡単な縄と適度な高さがあれば死ねると聞いたことがある。手を切るというのは、薬を大量に飲むことと同じでかまって欲しいだけなのでは?
今はマザーが行うマッチングでほとんどのカップルが成立し結婚するため、離婚する家庭や問題を起こす家はほとんどなくなったと言っても良い。それくらい平和な世の中になったのに、守咲さんは喜代也が効かないせいで死ぬしかない。二人はマッチングで知り合ったと書いてある。浮気をどう思っているのだろう。僕はあの女の子のようなパソコンがマザーだということを思い出して、まぁ、あんなパソコンが決めるんだもんなぁ……と嘲笑してしまった。世間ではあんな女の子の形をした可愛いパソコンが思わないだろう。それにしてもあんなに子どもと楽しそうに仲良くしていたのに最期を家族と過ごしたくないのか……と僕は帰り道に寄った守咲さんと子どもを見て思った。窓華さんが死ぬことは将来的に確実に起こる悲惨な未来だ。
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