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斎藤福寿、寿管士に就職する。
13 寿管士ができないこと
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「じゃあ、引っ越すための準備を早くしてくれ。引越し業者の助けは出すしある程度の家具は揃えてある。良い部屋だと思うよ?」
「でも、そこって家族って呼べるんですか?僕には友達は居ないですけど……」
彼女の詩乃はどうか?と聞く前に男性が言葉を遮った。僕は両親とは大きな喧嘩もなく大きくなっている。詩乃とも喧嘩なんてしたことがない。
「これは言いにくいことなんだが、友達の連絡先はなかったことにしてもらう。というか、ここで支給されるスマホだけを使って欲しい。家族とは仕方ないから、俺が登録しておいたけれども……」
「え、友達と連絡取れなくなるんですか?」
大学生活を楽しんできたであろう霞さんはびっくりしていた。僕はあまり友達とか居なかったから、ダメージは少ない。家族とだけ連絡が取れるならそれで良いと思った。だって詩乃とは僕はゲームでログインしていれば、相手の安否が分かる。それだけで良かった。なんか蛋白な恋愛関係である。
「まぁ、これからは保護人と一日中向き合うことになるんだし、友達は不要だと思ってくれるとありがたい。それくらいきつい仕事なんだ」
「はぁ、せっかく国家公務員になれたって友達に自慢したかったのになぁ……」
と霞さんは言う。僕は国家公務員になったことを自慢する知り合いも居ない。親と詩乃が喜んでいたぐらいだ。マザーが僕らを選んだ理由はひとりぼっちだからだとホールで言っていた。霞さんは僕と違って友達も多いみたいだしひとりぼっちとは違うのではないだろうか。僕は友達が多い知り合いを羨ましく思ってきた。今だって、家族と彼女以外に話せる人が居ないことが辛い。
「根暗君も思うでしょ?国家公務員って言って、有利な立場で合コンとかコンパみたいなの参加したかったって!」
「僕はそんなこと考えてないかな……。だって友達少なかったし」
「なんでこんな、根暗君と同期なんだろ。つまらないな」
僕に霞さんは本音を言う。でも根暗も眼鏡も本当のことだから傷つかない。きっと霞さんも国家公務員とだけ言って、寿管士とは言わないで合コンに参加するつもりだろう。さっきも言われた通り、保護人が死ぬまで一緒に暮らすのだ。合コンへ行く暇なんてあるわけないじゃないか。僕は霞さんがどこか抜けているのでは?と思った。強がりなだけじゃなくて、可愛らしいところもある。
「二人とも元気だなぁ。まぁ、引っ越しも良い業者頼んであるから楽だと思うし頑張ってくれよ」
僕は特に返事もできずに、自分の置かれてしまった特殊な状況について思いつめ悩んでいた。だって僕には家族と詩乃しかこの就職を知らせる人が居ない。今までと同じように精神面ではひとりぼっちだ。ひとりぼっちの僕が保護人と暮らす。保護人だってこの日本からいらないとされた孤独な存在だ。ひとりぼっちが二人集まっての生活はどのようなものになるのだろうか。僕は今よりも人と関わることになる。内気な性格の僕に向いている仕事なのだろうかと不安になった。だって、普通の人間とも仲良くなれない僕が保護人と仲良くできるとは思えない。仕事は仲良くなるわけじゃなくて、死までの期間を共にするだけのことだけど……
「そして、俺は直属の上司ね。何かあったら連絡して。配給関連でも相談でも何でも来いだよ。これ、新しいスマホだから」
李さんは鞄の中から真新しいスマホを出す。最新機種だ。僕はゲームの体力ゲージがそろそろ満タンになっているのでは?と思った。今はイベント中だから、体力を使わないことはもったいない。アイテムで体力を回復させることはできるけど、僕はできるだけお金をかけたくない。
「わぁ、すごい。これ発売して間もないやつじゃん」
机に置かれた黒いスマートフォンを見て霞さんが騒ぐ。僕もこれならゲームがさくさく動くだろうなと思った。引き継ぎコードは僕の眼鏡のメモ機能に入っている。すぐにこの新しいスマホでゲームをできる。両親はこの新しい機種のすごさについて理解できないだろうから、詩乃に自慢してやろう。
「そうだよ、国家公務員は優遇されているよ」
「さっそく自撮りして、SNSかなぁ」
僕も嬉しかったけど、霞さんの喜びは僕以上だ。僕だって、こんな高画質でゲームができることで胸が高まっている。
「そういうのは駄目って言ったでしょ?」
「なんだ、最新機種持っててもそういうことできないなら意味ないじゃない」
その最新のスマホを手に取ろうともせず霞さんは言い放った。僕は新しいスマホを手にして設定していた。壁紙はゲームのキャラクターにしようかと思って、ネットで検索をかけたが引っかからない。検閲が入っているようだ。
「そのスマホには俺と家族の連絡先しか入れれないようになっているし、SNSにもロックがかかっててアプリをダウンロードできないんだ」
「へぇ、そんなことができるなんてハイテクなんですね。ゲームのキャラクターを待ち受けにしようとしても出てこなくて」
「どの鉄の塊のどこがハイテクなのよ!」
霞さんは手を机に叩いてかなり怒っていた。最新機種なのにできないことがいっぱいということは、僕がずっとハマっていたゲームはどうなるだろうと不安になる。引き継ぎコードを眼鏡のレンズに出しながら僕は李さんに駄目元で問いかける。
「スマホのゲームはできますか?」
「あぁ、ダウンロードはできると思うよ。でも、ゲームをする時間はないと思った方が良いね」
「何よ、ゲームは良くてSNSが駄目とか信じられない!」
霞さんはまだご立腹のようだった。僕は連絡先を見た。もう家族のデータは入っている。あと、霞さんの連絡先も李さんの連絡先も入っていた。詩乃の連絡先は入っていないけど、きっと両親が教えるだろう。僕の母さんと詩乃はとても仲が良くて本当の親子みたいだから。
「まぁ、迷うことの多い仕事だと思うよ。俺に何かあったら即連絡ってことでよろしくな。あと君達の連絡先も入れておいたから、何か困ったら同僚同士相談すると良いんじゃないかな?」
「あ、ありがとうございます」
僕は李さんにお礼を言う。でも霞さんは家族以外に僕と李さんしか連絡先の入ってないスマホをつまらなそうに眺めていた。まだ触ってすら居ない。霞さんは今のスマホをかばんから出して、どうやら文章を打っているようだ。
「はい、霞さん。それを投稿する前に俺に渡して」
李さんは笑顔で手を出した。霞さんはまだスマホを見ながら文章入力をしている。僕と違ってそのスピードは早い。
「で、何を渡すんですか?」
「今まで使ってたスマホ、愚痴を投稿する前にね?」
びくっとした霞さんは、李さんの方を見る。自分のしようとしていたことを見透かされて驚いた様子だ。僕からしても不満を持っていることは明白で、予測はできたかもしれない。霞さんはスマホを手放し李さんに渡した。
「僕はゲームデータの引き継ぎをしてから……」
「斎藤君はこの期に及んでまだゲーム続ける気なんだ?」
「だって、サービス当初からやってますもん。期間限定のキャラとか……」
と僕はオタクのように、いやオタクだからか早口で言った。今は配布キャラのあるイベント中だ。これを逃したら復刻がいつになるか分からない。あともう少しでイベントのキャラが完全体になるし、二日後にはピックアップガチャが更新され、僕がこの前引けなかったキャラクターを入手できる可能性だってある。そんなスマホを渡すなんて僕はしたくない。
「これから仕事をしてもらうの。分かる?」
「それは僕にだって分かってますけど……」
「ゲームしている間に保護人が逃げようとして首輪が反応したら?ゲームしているところを狙って自殺を決行したら?ゲームが原因でありえない事故が起きたとしたら?それで保護人がうまく死ねなかった場合の責任は取れるわけ?」
そんなの取れっこない。僕は一点集中で一つのことにしか集中できない。もうこの仕事に就くと決まったんだ仕方ない。学生でもないんだしゲームは諦めろか……と僕は悲しくなった。そして今まであったゲーム内での繋がりもなくなる。ログインしなくなるということはフレンドが減るということだ。それを伝えることができないって悔しい。ここでプレイヤー人生も終わりか。詩乃と連絡が取れないことの重要性をここで思い知った。オタクとは薄情な生き物だ。
「というわけで、霞さんはSNS禁止で君ゲーム禁止ってとこかな?」
「っていうか、すももさん。私だけ厳しいですよ!」
「そうでもないよ。斎藤君は結構お金遣ってたみたいだから」
僕は最後に手に入れたキャラをまだ育成し終えていなくて、それが心残りだった。ピックアップ期間を迎えられないことだって心残りで。フレンドのみんなにログインできませんと伝えられないことも辛い。今育てているイベントキャラは就職が決まったときに期間限定で配布されたキャラだった。それにこれからもきっと当たり前のようにピックアップがあるから、僕はこのために生きてきた。僕がログインしなくてもゲームは続くだろうけど、僕にとってゲームができないことは大問題だった。
「僕のゲーム……」
「君も諦めなさい。霞さんも諦めるんだから」
詩乃に紹介されて、僕が初めてハマったノベルゲーだ。そのゲーム会社にはお布施として貢献していたこともあり、なかなか受け入れるのが難しかった。それにそのゲームを通して知り合った数少ないフレンドまで失うことが確定された。
「何、ゲームごときでそんなしょんぼりしているの?私なんて何十人もの友達とも知り合いともここでさようならなんだよ?」
という霞さんの言葉も入ってこないぐらいに、僕はこの現実にかなりの絶望を感じていた。あぁ、僕の青春の思い出というか、なんというか。このゲームしか僕にはなかったのか。このゲームは朝の四時に更新が入るから、僕はその時間に起きていた。その週間さえ僕からなくなるなら、もう朝の何時に起きて良いのかすら分からない。眼鏡レンズに映る英数字の引き継ぎコードも無駄になってしまう。
「でも、そこって家族って呼べるんですか?僕には友達は居ないですけど……」
彼女の詩乃はどうか?と聞く前に男性が言葉を遮った。僕は両親とは大きな喧嘩もなく大きくなっている。詩乃とも喧嘩なんてしたことがない。
「これは言いにくいことなんだが、友達の連絡先はなかったことにしてもらう。というか、ここで支給されるスマホだけを使って欲しい。家族とは仕方ないから、俺が登録しておいたけれども……」
「え、友達と連絡取れなくなるんですか?」
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「まぁ、これからは保護人と一日中向き合うことになるんだし、友達は不要だと思ってくれるとありがたい。それくらいきつい仕事なんだ」
「はぁ、せっかく国家公務員になれたって友達に自慢したかったのになぁ……」
と霞さんは言う。僕は国家公務員になったことを自慢する知り合いも居ない。親と詩乃が喜んでいたぐらいだ。マザーが僕らを選んだ理由はひとりぼっちだからだとホールで言っていた。霞さんは僕と違って友達も多いみたいだしひとりぼっちとは違うのではないだろうか。僕は友達が多い知り合いを羨ましく思ってきた。今だって、家族と彼女以外に話せる人が居ないことが辛い。
「根暗君も思うでしょ?国家公務員って言って、有利な立場で合コンとかコンパみたいなの参加したかったって!」
「僕はそんなこと考えてないかな……。だって友達少なかったし」
「なんでこんな、根暗君と同期なんだろ。つまらないな」
僕に霞さんは本音を言う。でも根暗も眼鏡も本当のことだから傷つかない。きっと霞さんも国家公務員とだけ言って、寿管士とは言わないで合コンに参加するつもりだろう。さっきも言われた通り、保護人が死ぬまで一緒に暮らすのだ。合コンへ行く暇なんてあるわけないじゃないか。僕は霞さんがどこか抜けているのでは?と思った。強がりなだけじゃなくて、可愛らしいところもある。
「二人とも元気だなぁ。まぁ、引っ越しも良い業者頼んであるから楽だと思うし頑張ってくれよ」
僕は特に返事もできずに、自分の置かれてしまった特殊な状況について思いつめ悩んでいた。だって僕には家族と詩乃しかこの就職を知らせる人が居ない。今までと同じように精神面ではひとりぼっちだ。ひとりぼっちの僕が保護人と暮らす。保護人だってこの日本からいらないとされた孤独な存在だ。ひとりぼっちが二人集まっての生活はどのようなものになるのだろうか。僕は今よりも人と関わることになる。内気な性格の僕に向いている仕事なのだろうかと不安になった。だって、普通の人間とも仲良くなれない僕が保護人と仲良くできるとは思えない。仕事は仲良くなるわけじゃなくて、死までの期間を共にするだけのことだけど……
「そして、俺は直属の上司ね。何かあったら連絡して。配給関連でも相談でも何でも来いだよ。これ、新しいスマホだから」
李さんは鞄の中から真新しいスマホを出す。最新機種だ。僕はゲームの体力ゲージがそろそろ満タンになっているのでは?と思った。今はイベント中だから、体力を使わないことはもったいない。アイテムで体力を回復させることはできるけど、僕はできるだけお金をかけたくない。
「わぁ、すごい。これ発売して間もないやつじゃん」
机に置かれた黒いスマートフォンを見て霞さんが騒ぐ。僕もこれならゲームがさくさく動くだろうなと思った。引き継ぎコードは僕の眼鏡のメモ機能に入っている。すぐにこの新しいスマホでゲームをできる。両親はこの新しい機種のすごさについて理解できないだろうから、詩乃に自慢してやろう。
「そうだよ、国家公務員は優遇されているよ」
「さっそく自撮りして、SNSかなぁ」
僕も嬉しかったけど、霞さんの喜びは僕以上だ。僕だって、こんな高画質でゲームができることで胸が高まっている。
「そういうのは駄目って言ったでしょ?」
「なんだ、最新機種持っててもそういうことできないなら意味ないじゃない」
その最新のスマホを手に取ろうともせず霞さんは言い放った。僕は新しいスマホを手にして設定していた。壁紙はゲームのキャラクターにしようかと思って、ネットで検索をかけたが引っかからない。検閲が入っているようだ。
「そのスマホには俺と家族の連絡先しか入れれないようになっているし、SNSにもロックがかかっててアプリをダウンロードできないんだ」
「へぇ、そんなことができるなんてハイテクなんですね。ゲームのキャラクターを待ち受けにしようとしても出てこなくて」
「どの鉄の塊のどこがハイテクなのよ!」
霞さんは手を机に叩いてかなり怒っていた。最新機種なのにできないことがいっぱいということは、僕がずっとハマっていたゲームはどうなるだろうと不安になる。引き継ぎコードを眼鏡のレンズに出しながら僕は李さんに駄目元で問いかける。
「スマホのゲームはできますか?」
「あぁ、ダウンロードはできると思うよ。でも、ゲームをする時間はないと思った方が良いね」
「何よ、ゲームは良くてSNSが駄目とか信じられない!」
霞さんはまだご立腹のようだった。僕は連絡先を見た。もう家族のデータは入っている。あと、霞さんの連絡先も李さんの連絡先も入っていた。詩乃の連絡先は入っていないけど、きっと両親が教えるだろう。僕の母さんと詩乃はとても仲が良くて本当の親子みたいだから。
「まぁ、迷うことの多い仕事だと思うよ。俺に何かあったら即連絡ってことでよろしくな。あと君達の連絡先も入れておいたから、何か困ったら同僚同士相談すると良いんじゃないかな?」
「あ、ありがとうございます」
僕は李さんにお礼を言う。でも霞さんは家族以外に僕と李さんしか連絡先の入ってないスマホをつまらなそうに眺めていた。まだ触ってすら居ない。霞さんは今のスマホをかばんから出して、どうやら文章を打っているようだ。
「はい、霞さん。それを投稿する前に俺に渡して」
李さんは笑顔で手を出した。霞さんはまだスマホを見ながら文章入力をしている。僕と違ってそのスピードは早い。
「で、何を渡すんですか?」
「今まで使ってたスマホ、愚痴を投稿する前にね?」
びくっとした霞さんは、李さんの方を見る。自分のしようとしていたことを見透かされて驚いた様子だ。僕からしても不満を持っていることは明白で、予測はできたかもしれない。霞さんはスマホを手放し李さんに渡した。
「僕はゲームデータの引き継ぎをしてから……」
「斎藤君はこの期に及んでまだゲーム続ける気なんだ?」
「だって、サービス当初からやってますもん。期間限定のキャラとか……」
と僕はオタクのように、いやオタクだからか早口で言った。今は配布キャラのあるイベント中だ。これを逃したら復刻がいつになるか分からない。あともう少しでイベントのキャラが完全体になるし、二日後にはピックアップガチャが更新され、僕がこの前引けなかったキャラクターを入手できる可能性だってある。そんなスマホを渡すなんて僕はしたくない。
「これから仕事をしてもらうの。分かる?」
「それは僕にだって分かってますけど……」
「ゲームしている間に保護人が逃げようとして首輪が反応したら?ゲームしているところを狙って自殺を決行したら?ゲームが原因でありえない事故が起きたとしたら?それで保護人がうまく死ねなかった場合の責任は取れるわけ?」
そんなの取れっこない。僕は一点集中で一つのことにしか集中できない。もうこの仕事に就くと決まったんだ仕方ない。学生でもないんだしゲームは諦めろか……と僕は悲しくなった。そして今まであったゲーム内での繋がりもなくなる。ログインしなくなるということはフレンドが減るということだ。それを伝えることができないって悔しい。ここでプレイヤー人生も終わりか。詩乃と連絡が取れないことの重要性をここで思い知った。オタクとは薄情な生き物だ。
「というわけで、霞さんはSNS禁止で君ゲーム禁止ってとこかな?」
「っていうか、すももさん。私だけ厳しいですよ!」
「そうでもないよ。斎藤君は結構お金遣ってたみたいだから」
僕は最後に手に入れたキャラをまだ育成し終えていなくて、それが心残りだった。ピックアップ期間を迎えられないことだって心残りで。フレンドのみんなにログインできませんと伝えられないことも辛い。今育てているイベントキャラは就職が決まったときに期間限定で配布されたキャラだった。それにこれからもきっと当たり前のようにピックアップがあるから、僕はこのために生きてきた。僕がログインしなくてもゲームは続くだろうけど、僕にとってゲームができないことは大問題だった。
「僕のゲーム……」
「君も諦めなさい。霞さんも諦めるんだから」
詩乃に紹介されて、僕が初めてハマったノベルゲーだ。そのゲーム会社にはお布施として貢献していたこともあり、なかなか受け入れるのが難しかった。それにそのゲームを通して知り合った数少ないフレンドまで失うことが確定された。
「何、ゲームごときでそんなしょんぼりしているの?私なんて何十人もの友達とも知り合いともここでさようならなんだよ?」
という霞さんの言葉も入ってこないぐらいに、僕はこの現実にかなりの絶望を感じていた。あぁ、僕の青春の思い出というか、なんというか。このゲームしか僕にはなかったのか。このゲームは朝の四時に更新が入るから、僕はその時間に起きていた。その週間さえ僕からなくなるなら、もう朝の何時に起きて良いのかすら分からない。眼鏡レンズに映る英数字の引き継ぎコードも無駄になってしまう。
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