6 / 87
斎藤福寿、寿管士に就職する。
6 寿命管理士の仕事
しおりを挟む
「ならば、保護人の方はご自分の寿命は理解されていると?」
「斎藤君も気になる?」
「それは私も気になります」
霞さんが大きな声をあげる。喜代也を打った僕は遺書に書いた年齢まで死なないというか物理的に死なない。しかし、その喜代也が効かない人である保護人というのは昔の人間と同じようにいつ死ぬか分からないのだ。いや、マザーやヘルスメーターなら分かるだろう。しかし死ぬ時期を教えられて正気を保っている人間なんてこの世に居るのだろうか。
「保護人には寿命は伝えてない」
「それって私達も知らないままで良いの?」
「今は自死保護機構もあるでしょ。それが絡んでくるとやっかいなんだけど、今回の保護人は絡んで居ないから」
今の時代はどんな場合であれ、マザーのカウントがあるため自殺や自死はヘルスメーターによって止められる。それをおかしいと思うのが自死保護機構だ。絶対助からない命の人を安楽死させる違法集団。保護人がもしそこに駆け込んだとして、僕ら寿管士はどうすることもできない。安楽死だって違法だけど、僕は自分で死んでしまいたい気持ちも分かる。
「でも安楽死って違法ですよね?」
「当たり前じゃない、根暗眼鏡。海外では合法の国も多いらしいけど、私には自分で命を絶つ気持ちが分からない」
「霞さんは健康だから言えるんだよ。もし不治の病で喜代也を打った永遠に近い命だったらって考えたことある?」
その李さんの意見に霞さんは黙った。だって、僕も治らない病にかかったとして生きていくことは辛いと思う。
「保護人の寿命については、当たり前だけど君達には知ってもらうよ。保護人は死ぬ約半年前から、国が管理しているからね。そして、希望者は寿管士と一緒に生活するんだ」
「それを伝えないのですか?これも自殺予防のために?」
「おぉ、勘が良いね。その死亡時期までに自殺されたら困るから、もちろん寿命は伝えないよ」
僕はあと半年以内に自分が死ぬと言われて、正気で居ることができるかどうか分からない。それくらい寿命というものは日本人とは無縁になった。海外では喜代也は受け入れられていないけど、日本では当たり前だったから。
「もしかして、死ぬまで一緒に居ることが仕事なの」
と僕が聞こうとすると、隣の霞さんが間に入ってきた。それまで鏡を見て化粧直しをしていたのに、話は聞いていたようだ。
「それって危なくないですか?喜代也が効かないって、そんなことをもし私が聞いたら自暴自棄なります。私だったら寿管士に向かって暴れますよ。そんな危険な仕事をするなんて無理です」
「霞さん落ち着いて」
式部霞と呼ばれた女の人は大慌てをしている。僕はこの人をどう呼ぼうかと考えながら様子を見ていた。実は僕のことを根暗眼鏡を呼んだことを実はまだ根に持っている。だから平安貴族のような苗字よりも、下の名前で呼ぼうと思った。
「落ち着けませんよ。それに保護人に寿命は教えられない?私だったらあと半年のいつかに死ぬって言われたら自分から死を選ぶわ。それに加えて、今の保護人なんてマザーから見捨てられたとしか思えない」
「あぁ、保護人の首には自殺予防の首輪をつけるんだ。だから、保護人が自殺で死ぬようなことはないよ」
「そうじゃなくて。私はもっと人間的な最期を迎えて欲しいだけで」
霞さんは言いたいことが伝わらないと思ったようで、身振り手振りをして危険をアピールする。もし僕があと半年で死ぬとして、寿管士と隔離されたなら僕だったら寿管士を恨むだろうなと感じる。自分より平和に日本で命を全うできる喜代也が当たり前に効く人間と、喜代也が効かなかった人間だ。どうしても仲良くなれるようには思えない。僕が保護人だったら寿管士と仲良くしたくない。しかし、喜代也での遺書による死が普通だとも僕は思えない。日本人の死への価値観は、喜代也によって狂わされてしまったのだ。
「保護人なんて勝手に死ねば良いじゃない。無駄よ」
「そうだね、無駄かもしれないね。でもとあるデータが大事になってくるから」
男性は曖昧に答えた。でもそれって重要では?僕の仕事というのは在宅勤務と男性は言ったが、保護人と暮らすことが仕事とでも言うわけか?さすがに一緒に過ごすって危険だろう。僕は一気に不安になった。
「斎藤君も気になる?」
「それは私も気になります」
霞さんが大きな声をあげる。喜代也を打った僕は遺書に書いた年齢まで死なないというか物理的に死なない。しかし、その喜代也が効かない人である保護人というのは昔の人間と同じようにいつ死ぬか分からないのだ。いや、マザーやヘルスメーターなら分かるだろう。しかし死ぬ時期を教えられて正気を保っている人間なんてこの世に居るのだろうか。
「保護人には寿命は伝えてない」
「それって私達も知らないままで良いの?」
「今は自死保護機構もあるでしょ。それが絡んでくるとやっかいなんだけど、今回の保護人は絡んで居ないから」
今の時代はどんな場合であれ、マザーのカウントがあるため自殺や自死はヘルスメーターによって止められる。それをおかしいと思うのが自死保護機構だ。絶対助からない命の人を安楽死させる違法集団。保護人がもしそこに駆け込んだとして、僕ら寿管士はどうすることもできない。安楽死だって違法だけど、僕は自分で死んでしまいたい気持ちも分かる。
「でも安楽死って違法ですよね?」
「当たり前じゃない、根暗眼鏡。海外では合法の国も多いらしいけど、私には自分で命を絶つ気持ちが分からない」
「霞さんは健康だから言えるんだよ。もし不治の病で喜代也を打った永遠に近い命だったらって考えたことある?」
その李さんの意見に霞さんは黙った。だって、僕も治らない病にかかったとして生きていくことは辛いと思う。
「保護人の寿命については、当たり前だけど君達には知ってもらうよ。保護人は死ぬ約半年前から、国が管理しているからね。そして、希望者は寿管士と一緒に生活するんだ」
「それを伝えないのですか?これも自殺予防のために?」
「おぉ、勘が良いね。その死亡時期までに自殺されたら困るから、もちろん寿命は伝えないよ」
僕はあと半年以内に自分が死ぬと言われて、正気で居ることができるかどうか分からない。それくらい寿命というものは日本人とは無縁になった。海外では喜代也は受け入れられていないけど、日本では当たり前だったから。
「もしかして、死ぬまで一緒に居ることが仕事なの」
と僕が聞こうとすると、隣の霞さんが間に入ってきた。それまで鏡を見て化粧直しをしていたのに、話は聞いていたようだ。
「それって危なくないですか?喜代也が効かないって、そんなことをもし私が聞いたら自暴自棄なります。私だったら寿管士に向かって暴れますよ。そんな危険な仕事をするなんて無理です」
「霞さん落ち着いて」
式部霞と呼ばれた女の人は大慌てをしている。僕はこの人をどう呼ぼうかと考えながら様子を見ていた。実は僕のことを根暗眼鏡を呼んだことを実はまだ根に持っている。だから平安貴族のような苗字よりも、下の名前で呼ぼうと思った。
「落ち着けませんよ。それに保護人に寿命は教えられない?私だったらあと半年のいつかに死ぬって言われたら自分から死を選ぶわ。それに加えて、今の保護人なんてマザーから見捨てられたとしか思えない」
「あぁ、保護人の首には自殺予防の首輪をつけるんだ。だから、保護人が自殺で死ぬようなことはないよ」
「そうじゃなくて。私はもっと人間的な最期を迎えて欲しいだけで」
霞さんは言いたいことが伝わらないと思ったようで、身振り手振りをして危険をアピールする。もし僕があと半年で死ぬとして、寿管士と隔離されたなら僕だったら寿管士を恨むだろうなと感じる。自分より平和に日本で命を全うできる喜代也が当たり前に効く人間と、喜代也が効かなかった人間だ。どうしても仲良くなれるようには思えない。僕が保護人だったら寿管士と仲良くしたくない。しかし、喜代也での遺書による死が普通だとも僕は思えない。日本人の死への価値観は、喜代也によって狂わされてしまったのだ。
「保護人なんて勝手に死ねば良いじゃない。無駄よ」
「そうだね、無駄かもしれないね。でもとあるデータが大事になってくるから」
男性は曖昧に答えた。でもそれって重要では?僕の仕事というのは在宅勤務と男性は言ったが、保護人と暮らすことが仕事とでも言うわけか?さすがに一緒に過ごすって危険だろう。僕は一気に不安になった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ゾンビの坩堝
GANA.
SF
……とうとう、自分もゾンビ……――
飲み込みも吐き出しもできず、暗澹と含みながら座る自分は数メートル前……100インチはある壁掛け大型モニターにでかでかと、執務室風バーチャル背景で映る、しわばんだグレイ型宇宙人風の老人を上目遣いした。血色の良い腕を出す、半袖シャツ……その赤地に咲くハイビスカスが、ひどく場違いだった。
『……このまま患者数が増え続けますと、社会保障費の膨張によって我が国の財政は――』
スピーカーからの、しわがれた棒読み……エアコンの効きが悪いのか、それとも夜間だから切られているのか、だだっ広いデイルームはぞくぞくとし、青ざめた素足に黒ビニールサンダル、青地ストライプ柄の病衣の上下、インナーシャツにブリーフという格好、そしてぼんやりと火照った頭をこわばらせる。ここに強制入所させられる前……検査バス車内……そのさらに前、コンビニで通報されたときよりもだるさはひどくなっており、入所直後に浴びせられた消毒薬入りシャワーの臭いと相まって、軽い吐き気がこみ上げてくる。
『……患者の皆さんにおかれましては、積極的にリハビリテーションに励んでいただき、病に打ち勝って一日も早く職場や学校などに復帰されますよう、当施設の長としてお願い申し上げます』
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
青空顎門
SF
病で余命宣告を受けた主人公。彼は介護用に購入した最愛のガイノイド(女性型アンドロイド)の腕の中で息絶えた……はずだったが、気づくと彼女と共に見知らぬ場所にいた。そこは遥か未来――時空間転移技術が暴走して崩壊した後の時代、宇宙の遥か彼方の辺境惑星だった。男はファンタジーの如く高度な技術の名残が散見される世界で、今度こそ彼女と添い遂げるために未来の超文明の遺跡を巡っていく。
※小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様、ノベルバ様にも掲載しております。

女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
『エンプセル』~人外少女をめぐって愛憎渦巻く近未来ダークファンタジー~
うろこ道
SF
【毎日更新•完結確約】
高校2年生の美月は、目覚めてすぐに異変に気づいた。
自分の部屋であるのに妙に違っていてーー
ーーそこに現れたのは見知らぬ男だった。
男は容姿も雰囲気も不気味で恐ろしく、美月は震え上がる。
そんな美月に男は言った。
「ここで俺と暮らすんだ。二人きりでな」
そこは未来に起こった大戦後の日本だった。
原因不明の奇病、異常進化した生物に支配されーー日本人は地下に都市を作り、そこに潜ったのだという。
男は日本人が捨てた地上で、ひとりきりで孤独に暮らしていた。
美月は、男の孤独を癒すために「創られた」のだった。
人でないものとして生まれなおした少女は、やがて人間の欲望の渦に巻き込まれてゆく。
異形人外少女をめぐって愛憎渦巻く近未来ダークファンタジー。
※九章と十章、性的•グロテスク表現ありです。
※挿絵は全部自分で描いています。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 『修羅の国』での死闘
橋本 直
SF
その文明は出会うべきではなかった
その人との出会いは歓迎すべきものではなかった
これは悲しい『出会い』の物語
『特殊な部隊』と出会うことで青年にはある『宿命』がせおわされることになる
法術装甲隊ダグフェロン 第三部
遼州人の青年『神前誠(しんぜんまこと)』は法術の新たな可能性を追求する司法局の要請により『05式広域制圧砲』と言う新兵器の実験に駆り出される。その兵器は法術の特性を生かして敵を殺傷せずにその意識を奪うと言う兵器で、対ゲリラ戦等の『特殊な部隊』と呼ばれる司法局実働部隊に適した兵器だった。
一方、遼州系第二惑星の大国『甲武』では、国家の意思決定最高機関『殿上会』が開かれようとしていた。それに出席するために殿上貴族である『特殊な部隊』の部隊長、嵯峨惟基は甲武へと向かった。
その間隙を縫ったかのように『修羅の国』と呼ばれる紛争の巣窟、ベルルカン大陸のバルキスタン共和国で行われる予定だった選挙合意を反政府勢力が破棄し機動兵器を使った大規模攻勢に打って出て停戦合意が破綻したとの報が『特殊な部隊』に届く。
この停戦合意の破棄を理由に甲武とアメリカは合同で介入を企てようとしていた。その阻止のため、神前誠以下『特殊な部隊』の面々は輸送機でバルキスタン共和国へ向かった。切り札は『05式広域鎮圧砲』とそれを操る誠。『特殊な部隊』の制式シュツルム・パンツァー05式の機動性の無さが作戦を難しいものに変える。
そんな時間との戦いの中、『特殊な部隊』を見守る影があった。
『廃帝ハド』、『ビッグブラザー』、そしてネオナチ。
誠は反政府勢力の攻勢を『05式広域鎮圧砲』を使用して止めることが出来るのか?それとも……。
SFお仕事ギャグロマン小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる