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斎藤福寿、寿管士に就職する。
3 市松模様の着物を来た女の子
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「わたくしが、日本においてマザーと呼ばれるパソコンなのですわ」
司会者の人が示す方向には黒と赤の市松模様の振り袖を着た、遠くからになるが僕よりも若そうな女の子が居た。遠くからでも、背はそこまで高くないことぐらいは分かる。髪は真っ黒でピンクのメッシュが入っている。そして左右ともう一個で合計三個のお団子が宙に浮いている。そのお団子がどうなっているのかは分からない。そんな高そうな着物の女の子が自分のことをマザーだと言う。これには静かだった会場がざわつく。だって、こんなパソコンがあってたまるか。想像以上にマザーは酷いパソコンだ。それ以上に僕はこんなものに人生を決めてもらうことがショックだった。
ここのホールに居る人も同じ感想ではないか?マザーがこんな存在だなんて予想外だからだ。でも、日本国民はマザーには逆らえない。だって街中にヘルスメーターというものが設置されている。肉体の健康チェックのために設置された監視カメラのようなものである。国民の健康管理のためという設置理由だが、監視の目的では?という意見もあり、マザーに批判的なことを言えない世の中だ。政治家だって文句を言えないのだから、一般人が文句をつけるようなことはできない。
「一0三番さん、何か言いたいことがあるようで?」
「いや、マザーってでかいパソコンかと思ってたので意外でして」
「大昔のパソコンは大きい部屋のようだったと言いますし、わたくしにも誠に妥当なご意見だと感じます。でも、マザーが自由に動ける方が、何か起きたときに安全だと思うのですの」
急に話しかけられた一0三番の新卒者とマザーがやりとりをしている。どうやらお高く止まっているように見えて、普通に会話ができるようだ。それに、マザーの言う通りだ。一部屋がすべてパソコンだと逃げられないが、こうやってマザーが動くなら危険を察知したときにマザーを逃がすことができる。そしてマザーは心が読めるのか分からないが、次々に人を指名して質問に答えていく。
「八0一番さんですか。ふふっ、わたくしに何か思うことがありまして」
僕はふとマザーがその単語の通り女なのだなということを思っていたら、マザーから話しかけられてびっくりする。僕はさっきから名指しされたような人と同じように席を立ち、マザーに向かって答えた。
「八0一番の斎藤福寿です」
「礼儀が良い人は好きですよ。それで何を思ったかしら?」
「不満じゃありませんよ。ただマザーって英単語通りの母さん親で、女性なのだなと感じただけです」
「それは振り袖を着ているから?でもそれは外れね。わたくしは男でも女でもないパソコンなのだわ。ただ生き物の基本形はメスと言うじゃない?だからそれになぞらえて作られたのだと思うの」
それは生物の授業で習ったことがある。でも、実際に中性という人は僕の周りには居なくて、僕はどう答えて良いか迷っていた。昔とは違って夫婦別姓も同性婚も認められているし、男性でも女性でもない性があるとされている今、マザーのその言葉は当たり前だろう。
「わたくしは女物が好きよ。だって可愛いじゃない」
「ただそれだけの理由ですか」
「これは重要だと思うのだけれど。可愛いものに囲まれるって幸せでしょう」
僕はそう言われて座る。すると隣の派手な格好をした女性が手を上げる。マザーが会場の人を指定して話していたのに、自分から話そうとするなんて初めてだ。
「どうしたの?八00番さん」
「私はまだあなたがマザーだということに半信半疑です」
「どうして八00番さんはそう思うのかしら」
「ここには推定一000人は居ます。そこからマザーという重大な存在がバレるとは考えないのですか?」
その女性の言葉に会場も納得したようだ。僕だったら、マザーがこんな風だったよって家族や詩乃に話したいし、日本中が興味のある存在だろう。友達の少ない僕ですら思うのだから、きっと他の人はもっとそうだ。
「大事なことを言っていなかったわね。わたくしのことを世間に話そうとすると、ヘルスメーターがあなた方に物理攻撃に出ます」
「物理攻撃?具体的には?」
「それを言わせるのですね。マザーの存在を言おうとした瞬間に、あなた達の命はヘルスメーターによって奪われますわ。わたくしは直接的には下しませんけど、これくらいはできましてよ?バレたくないのだから仕方ないのだわ」
それにマザーは基本的に確実に幸せな未来を予測する。だから従うなら絶対にが幸せになれるとされる。このマザーの存在を公言したら僕の命はないというわけか。僕らって言うのは軽い命だな。僕のように疑問を持つ人も居ないわけではないが、マザーに反発するような人は滅多に居ない。日本国民はいろいろな意味でマザーに頼りっきりだった。任せっきりというか。それを悪く思うようなひねくれ者は、僕みたいに少数派だ。だから僕はマザーに嫌われていたため、進学となり将来を決めてもらえなかったのかもしれない。マザーの存在をどこかで疎ましいと思っていたから、僕はマザーが取り扱いに困ったのだと感じる。こんな性格だからマザーも今の日本での配置に困ったのだろう。
「わたくしがあなた達を特殊な仕事に選んだ理由を知りたいでしょうね。それはつまりひとりぼっちだからです。人間はずっとひとりぼっちだけど、それを実感してきた人の方が覚悟を決めることができるでしょう」
「それは自分の存在が漏れることを最小限にするため?」
「それもあるのかもなのだわ。わたくしは平和主義者ですのよ」
マザーが自信たっぷりに言う。マザーが幸せを約束する存在だということ。それは産まれてから嫌というほど聞かされていた。ただ、こんな振り袖を着た普通の女の子とは思っていなかったから意外だったのだ。
僕はホールでマザーと名乗る女の子を見ながら、マザーをここで見せた日本政府の真意を読み取ろうとしていた。でもそんなことができるはずがない。あの黒髪の女の子がマザーだと言われて、会場はまだざわざわしている。しかしマザーだと発表された時は式典の最中で、人の心を読むかのように質問をしてきたパソコン。僕らにとって謎の存在でしかない。
司会者の人が示す方向には黒と赤の市松模様の振り袖を着た、遠くからになるが僕よりも若そうな女の子が居た。遠くからでも、背はそこまで高くないことぐらいは分かる。髪は真っ黒でピンクのメッシュが入っている。そして左右ともう一個で合計三個のお団子が宙に浮いている。そのお団子がどうなっているのかは分からない。そんな高そうな着物の女の子が自分のことをマザーだと言う。これには静かだった会場がざわつく。だって、こんなパソコンがあってたまるか。想像以上にマザーは酷いパソコンだ。それ以上に僕はこんなものに人生を決めてもらうことがショックだった。
ここのホールに居る人も同じ感想ではないか?マザーがこんな存在だなんて予想外だからだ。でも、日本国民はマザーには逆らえない。だって街中にヘルスメーターというものが設置されている。肉体の健康チェックのために設置された監視カメラのようなものである。国民の健康管理のためという設置理由だが、監視の目的では?という意見もあり、マザーに批判的なことを言えない世の中だ。政治家だって文句を言えないのだから、一般人が文句をつけるようなことはできない。
「一0三番さん、何か言いたいことがあるようで?」
「いや、マザーってでかいパソコンかと思ってたので意外でして」
「大昔のパソコンは大きい部屋のようだったと言いますし、わたくしにも誠に妥当なご意見だと感じます。でも、マザーが自由に動ける方が、何か起きたときに安全だと思うのですの」
急に話しかけられた一0三番の新卒者とマザーがやりとりをしている。どうやらお高く止まっているように見えて、普通に会話ができるようだ。それに、マザーの言う通りだ。一部屋がすべてパソコンだと逃げられないが、こうやってマザーが動くなら危険を察知したときにマザーを逃がすことができる。そしてマザーは心が読めるのか分からないが、次々に人を指名して質問に答えていく。
「八0一番さんですか。ふふっ、わたくしに何か思うことがありまして」
僕はふとマザーがその単語の通り女なのだなということを思っていたら、マザーから話しかけられてびっくりする。僕はさっきから名指しされたような人と同じように席を立ち、マザーに向かって答えた。
「八0一番の斎藤福寿です」
「礼儀が良い人は好きですよ。それで何を思ったかしら?」
「不満じゃありませんよ。ただマザーって英単語通りの母さん親で、女性なのだなと感じただけです」
「それは振り袖を着ているから?でもそれは外れね。わたくしは男でも女でもないパソコンなのだわ。ただ生き物の基本形はメスと言うじゃない?だからそれになぞらえて作られたのだと思うの」
それは生物の授業で習ったことがある。でも、実際に中性という人は僕の周りには居なくて、僕はどう答えて良いか迷っていた。昔とは違って夫婦別姓も同性婚も認められているし、男性でも女性でもない性があるとされている今、マザーのその言葉は当たり前だろう。
「わたくしは女物が好きよ。だって可愛いじゃない」
「ただそれだけの理由ですか」
「これは重要だと思うのだけれど。可愛いものに囲まれるって幸せでしょう」
僕はそう言われて座る。すると隣の派手な格好をした女性が手を上げる。マザーが会場の人を指定して話していたのに、自分から話そうとするなんて初めてだ。
「どうしたの?八00番さん」
「私はまだあなたがマザーだということに半信半疑です」
「どうして八00番さんはそう思うのかしら」
「ここには推定一000人は居ます。そこからマザーという重大な存在がバレるとは考えないのですか?」
その女性の言葉に会場も納得したようだ。僕だったら、マザーがこんな風だったよって家族や詩乃に話したいし、日本中が興味のある存在だろう。友達の少ない僕ですら思うのだから、きっと他の人はもっとそうだ。
「大事なことを言っていなかったわね。わたくしのことを世間に話そうとすると、ヘルスメーターがあなた方に物理攻撃に出ます」
「物理攻撃?具体的には?」
「それを言わせるのですね。マザーの存在を言おうとした瞬間に、あなた達の命はヘルスメーターによって奪われますわ。わたくしは直接的には下しませんけど、これくらいはできましてよ?バレたくないのだから仕方ないのだわ」
それにマザーは基本的に確実に幸せな未来を予測する。だから従うなら絶対にが幸せになれるとされる。このマザーの存在を公言したら僕の命はないというわけか。僕らって言うのは軽い命だな。僕のように疑問を持つ人も居ないわけではないが、マザーに反発するような人は滅多に居ない。日本国民はいろいろな意味でマザーに頼りっきりだった。任せっきりというか。それを悪く思うようなひねくれ者は、僕みたいに少数派だ。だから僕はマザーに嫌われていたため、進学となり将来を決めてもらえなかったのかもしれない。マザーの存在をどこかで疎ましいと思っていたから、僕はマザーが取り扱いに困ったのだと感じる。こんな性格だからマザーも今の日本での配置に困ったのだろう。
「わたくしがあなた達を特殊な仕事に選んだ理由を知りたいでしょうね。それはつまりひとりぼっちだからです。人間はずっとひとりぼっちだけど、それを実感してきた人の方が覚悟を決めることができるでしょう」
「それは自分の存在が漏れることを最小限にするため?」
「それもあるのかもなのだわ。わたくしは平和主義者ですのよ」
マザーが自信たっぷりに言う。マザーが幸せを約束する存在だということ。それは産まれてから嫌というほど聞かされていた。ただ、こんな振り袖を着た普通の女の子とは思っていなかったから意外だったのだ。
僕はホールでマザーと名乗る女の子を見ながら、マザーをここで見せた日本政府の真意を読み取ろうとしていた。でもそんなことができるはずがない。あの黒髪の女の子がマザーだと言われて、会場はまだざわざわしている。しかしマザーだと発表された時は式典の最中で、人の心を読むかのように質問をしてきたパソコン。僕らにとって謎の存在でしかない。
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