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斎藤福寿、寿管士に就職する。
2 国家公務員として庁舎に出向く
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四月、僕は案内された書類などを持って、庁舎へバスで行く。父さんと母さんは嬉しそうに見送ってくれた。家からかなり近い大学に通っていたわけだが、一人暮らしは経験した方が良いとの両親の意見で、大学近くに寮を借りていた。もう六年も暮らしたその寮も戻ることはないのだろう。少子高齢化が進んだ日本で、その寮は取り壊しが決まった。次は老人ホームができるのだとか。しかし、やはり自宅というのは快適だ。先に会社員になった彼女の竹田詩乃は貯金をするなら、自分は賛成はしないけど実家暮らしがおすすめだと教えてくれた。僕には知り合いは居るが友達というものは居ない。しかしこんな僕にでも彼女は居る。共通の趣味で知り合った人だけど特に親密というわけでもない。僕と彼女の詩乃はエンドザワールドというゲームのオタクだ。僕はバスの中で、スマホのゲームの体力ゲージを計算しつつアイテム集めのためのクエストを周回していた。庁舎での仕事についての説明がどれくらい続くか分からないから、体力を使い切って、そして長時間の遠征任務をキャラクターに命じてバスを降りる。空はとても晴れていて、それでいて太陽もさんさんと輝く。しかし僕の心はどこかもやもやしている。
朝日を眺めながら海外では車は空を飛ぶらしい、と父さんが英字新聞を片手に言っていたことを思い出す。しかし日本はインフラ整備が間に合わなくて、今はまた地べたを走っている。空中なら渋滞などしないだろうと思われたが、みんなが空中で移動するとやっぱり渋滞も発生する。それに加えて事故は地上と同じように起きる。空中で事故が起きると、下に住んでいる民家にも影響が出て、破片が空から落ちて大変なのだ。そんなとてもつまらない理由で空を飛ぶ乗り物はない。乗り物の技術的な問題はとっくの昔に解決している。それでも整備が整っていない。昔の人はこんな問題が起こるとは思っていなかっただろう。僕は庁舎で降りたからすぐそこに庁舎があってこれから仕事が決まるということも、現実なのだなという気がしていた。
空に飛ぶ機会があったとして、政府の緊急事態とかだ。昔のドラマでいう、ドクターヘリみたいな。だから、町並みは大昔に見たドラマとあまり進歩しない。だから僕らは大昔のドラマを見てもさほど違和感を感じない。それどころか、その頃の日本人が未来を夢見た様子を見ると、こんな発展はしないんだよなぁと苦笑してしまうぐらいだ。鎖国しているから、海外はどうなっているか分からないけれど。町の様子は二000代の前半とあまり変わっていない。まぁ、バスも自動車も完全な自動運転になって、自動車免許が取りやすくなったのは変わったことか。どうやら文明の発展というものには限界があるみたいだ。すぐに庁舎についた。僕みたいなスーツを着た人はだいたい僕と同じような要件で庁舎に呼ばれているようだ。僕は大学の入学式と成人式と卒業式ぐらいしかスーツを着たことがない。今日は珍しくスーツだ。学生時代は学ランだったため、人生で三回ほどしかスーツを着ていない僕はまだ上手にネクタイを結べない。
掲示板に貼り出された紙でホールの場所を再確認しつつ、僕は政府から書留はがきの後に送られてきた八0一のネームプレートを首からかける。将来が決まる知らせは書留はがきだけなのに、それから先は分厚い封筒で書類が送られてきた。今は紙の資料なんて珍しいから、僕はその封筒をスマホの写真に記念に撮ったぐらいだ。そしてその書類には僕が就くことになった職業について、まるで触れられていない。ある種の不気味さを覚えたほどに。
僕らは案内されたホールへ行き指定された席に座る。僕みたいに真新しいスーツを着て、同じようなプレートを下げた人がここにはたくさん居た。みんなどんな幸せをマザーから与えられるのか楽しみにしているうようだ。それは僕だって同じで国家公務員だから、会社員よりも安定はしているよな?と考えたりした。しかしその考えは甘かった。国家公務員に選ばれるということは、マザーの本体を見ることができるという噂があった。なのでここに居る選ばれた人はマザーを見るのかもしれない。その権利はきっと僕にだってある。そしてやはり僕らは入社式で初めてマザーを見た。
朝日を眺めながら海外では車は空を飛ぶらしい、と父さんが英字新聞を片手に言っていたことを思い出す。しかし日本はインフラ整備が間に合わなくて、今はまた地べたを走っている。空中なら渋滞などしないだろうと思われたが、みんなが空中で移動するとやっぱり渋滞も発生する。それに加えて事故は地上と同じように起きる。空中で事故が起きると、下に住んでいる民家にも影響が出て、破片が空から落ちて大変なのだ。そんなとてもつまらない理由で空を飛ぶ乗り物はない。乗り物の技術的な問題はとっくの昔に解決している。それでも整備が整っていない。昔の人はこんな問題が起こるとは思っていなかっただろう。僕は庁舎で降りたからすぐそこに庁舎があってこれから仕事が決まるということも、現実なのだなという気がしていた。
空に飛ぶ機会があったとして、政府の緊急事態とかだ。昔のドラマでいう、ドクターヘリみたいな。だから、町並みは大昔に見たドラマとあまり進歩しない。だから僕らは大昔のドラマを見てもさほど違和感を感じない。それどころか、その頃の日本人が未来を夢見た様子を見ると、こんな発展はしないんだよなぁと苦笑してしまうぐらいだ。鎖国しているから、海外はどうなっているか分からないけれど。町の様子は二000代の前半とあまり変わっていない。まぁ、バスも自動車も完全な自動運転になって、自動車免許が取りやすくなったのは変わったことか。どうやら文明の発展というものには限界があるみたいだ。すぐに庁舎についた。僕みたいなスーツを着た人はだいたい僕と同じような要件で庁舎に呼ばれているようだ。僕は大学の入学式と成人式と卒業式ぐらいしかスーツを着たことがない。今日は珍しくスーツだ。学生時代は学ランだったため、人生で三回ほどしかスーツを着ていない僕はまだ上手にネクタイを結べない。
掲示板に貼り出された紙でホールの場所を再確認しつつ、僕は政府から書留はがきの後に送られてきた八0一のネームプレートを首からかける。将来が決まる知らせは書留はがきだけなのに、それから先は分厚い封筒で書類が送られてきた。今は紙の資料なんて珍しいから、僕はその封筒をスマホの写真に記念に撮ったぐらいだ。そしてその書類には僕が就くことになった職業について、まるで触れられていない。ある種の不気味さを覚えたほどに。
僕らは案内されたホールへ行き指定された席に座る。僕みたいに真新しいスーツを着て、同じようなプレートを下げた人がここにはたくさん居た。みんなどんな幸せをマザーから与えられるのか楽しみにしているうようだ。それは僕だって同じで国家公務員だから、会社員よりも安定はしているよな?と考えたりした。しかしその考えは甘かった。国家公務員に選ばれるということは、マザーの本体を見ることができるという噂があった。なのでここに居る選ばれた人はマザーを見るのかもしれない。その権利はきっと僕にだってある。そしてやはり僕らは入社式で初めてマザーを見た。
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