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CCⅩⅩⅩⅠ 星々の膨張と爆縮編 前編(2)

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第1章。友愛(?)の妖精


 ふたつの月が、天空に浮遊する美しい妖精を射抜けかとのように、
勇猛で果敢な光を、この時空に放っている。
その美貌の妖精は、『ふふふ、われの高みに追い付く妖精なし。』などとは
絶対に思っていないだろうなという としたたたずまいで、
宙に浮く姿勢を保持している。

≪ラティスさん。攻撃的メンチ切るような精神波は、止めてくれません!?≫

ひとつの精神波が夜空にひびいた後、
ラティスの目の前の空間がゆがみ、その空間かられ出た白金の光が、
それが虹色の環光に変わり、更に49色の光に乖離かいりしていき・・・、
そして、ラファイアが本来の姿で、空中に顕現けんげんする。
超絶の美しい笑顔、旧双月教の聖なる御姿を写したような妖精・・・。

また、一陣の風と共に、淡く緑金色の光をまとった、
緑色の髪・青色の瞳・白い肌・超絶の美貌の 風の蜃気楼体の妖精が、
超高速で、ふたりの妖精のまわりをけ抜けていく。

「なんなのよ、あれは?」

「さあ~、飛翔速度が速すぎて、止まれなかったんじゃないですか?」

ラティスのあきれ顔の質問に、ラファイアは面倒めんどくさそうに答える。
その会話のさなか、はるか遠方からリーエが、今度は止まれる高速で戻ってきて、
キチンと、ふたりの前で停止する。
その笑顔にも、余裕のない様子がはりついているのが、ありありと見える。

「ふ~ぅ。ふたりとも、超絶な魔力を持つ妖精と、みなから思われているけど、
私から言わせれば、私のこの精神波で、
心乱されているアンタらは、まだまだ未熟だわね。」

そのラティスの言葉に、間髪入れずに緊張感が走り、
ラファイアの右手に白金色の輝きが、リーエの背後に緑金色の放電が、
急速に集束していく。
そのふたりの様子を知ってか知らずか、ラティスは、もったいぶるように
あさっての方向に、話を切り出していく。

「わたしに、新たなふたつ名が、出来つつあるわ。その名が、なんだかわかる?」

「「・・・・・・・・!?」」

そんなことで、呼び出したのかと、ふたりの表情に壮絶怒りの波動が流れる。
そして、ふたつの、輝きと放電が激しくなり、発射回避の停止限界領域を
超えようとしたその瞬間、

「その名は、の妖精よ!!」

暗黒の妖精のその華々はなばなしい?言葉が、見えない導線の上を走ったのか、
次の瞬間、皇都の夜空に、ふたつの大きな大輪の花を咲かした!

・・・・・・・・

「アンタたちね。自爆するなら他所よそでやってよね。
他の妖精ひとを巻き込むんじゃないわよ、わかった!!」

ラティスの激怒の言葉に、ラファイアもリーエも、沈黙の笑顔で応じる。
さすが妖精界の頂点で輝く?ふたりと、ふたりと遊べる妖精さんである。
先程の大暴発?でも、傷一つってはいない。

「で、用ってそれだけですか?」

ラファイアは、このままラティスに会話の主導権をにぎらせると、
どこまでもバカにされるだけと、果敢にそれを奪取しようとこころみる。
(リーエも小さくうなずいていたのは、秘密の話だ。)

「ラファイア。ラファイスと、あんたの話よ。」

「・・?・・。わたしは、別にラファイスさんと、めてなんかいませんよ。」

「ほんと、あんたのような妖精やつを、【歩くケンカ因子 ばらき機】
とでも言うのよね。」

「無意識だからって、許されるってもんじゃないわ・・・。」

さらに、暗黒の妖精は、話を重ねる。

「具体的に言わないとわからない?れいの〖ラファイスの禁呪〗の話よ!」

そこまで言われても、ラファイアには、心当たりがないようだが・・・。

「ノエルよ! あのが、〖ラファイスの禁呪〗が上手うまくいかないのは、
『そうか、おそらくは場所のせい!』だと言って、
あそこの闘技場で、きのうからやり出したのよ。」

ラティスは、眼下の皇都の一部を、指で指し示す。

「当然、そんなものは、場所を変えたからといって、成功するはずもないわ。」

「で、このままでは、『教都ムランや、公都ノープルにまで、行く!』と、
ノエルが言い出しかねないと、ラファイスは、
なぜかわたしに、お怒りのわけ。わたしに、どうにかしろとね。」

「そう、言われましてもね・・・。
なぜ、わたしに直接じゃなく、ラティスさんにと言いたいんですが・・・。」

ラファイアは、ほんとうに顔をして、一応ラティスに答える。

「あんたに直接交渉したって、良くて、物事を解決するどころか、
物事をないことに、そく、しようとするでしょうが・・・。」

「ま、白光の妖精同士の激突も見てみたい気はするけど、
もし、とばっちりがアマトに飛んできた日には、エリースの絨毯じゅうたん電撃が、
わたしたち3妖精にんおそいかかってくるからね・・・。」

そのラティスの言葉に、リーエの顔色が、みるみるあお色に変わってゆく。
ラファイアも笑顔が無機質なものに変わり、なにか考えて込んでいる。
その相手は、ラファイスなのか、それともエリースなのか、やはり・・・・。

「そこで、このラティスさまは、深々と探ってみたわけだ。」

「なぜ、ノエルが、ラファイスに会いたい理由をね。」

ラティスは、ほんの少し遠い目をして、再び語りを始める。

「それは、学院で、
ノエルに初めて出来た友人のひとり、キリナのことが原因だったわ。」

「彼女の婚約者である トリハがいるミカル大公国に、内乱の危機がせまっている。
情けないことに、レリウスのやつの方が、圧倒的に不利みたいだしね。」

「この状況で、開戦となれば、トリハは大公国宰相として、
まず生きてはいないわ。」

ラファイアとリーエがめずらしく、暗黒の妖精の話に引き込まれていく。

「だから、友人に悲しみを背負わせたくないために、ノエルは、
ラファイスに、いくさを止める魔力ちからを貸して欲しいと、
〖ラファイスの禁呪〗で、彼の妖精かのひとを、呼び出し続けているわけよ。」

「そんなの、ラティスさん。ラファイスさん本妖精ほんにんが、正体を明かして、
強いあの魔力で、ミカル大公国に干渉すれば、
それで終わりでしょう・・・。」

ラティスは、ラファイアの目の前で、指を左右にふりながら、
ラファイアの問いに答える。

「それがあいつ。契約当初から、枠下級外妖精のふりをしているから、
どうにも、気まずいらしいのよ。」

「契約者に、ノエルに、嫌われないかと、ムダな悩み事をしてるっていうわけ。」

「いわゆる、ラファイスさんの自業自得っていうやつですよね。」

「あんたね、同じ白光の妖精でしょうが。手を貸してやろうかとかないの。」

「じゃ、ラティスさんは、アピスさんが困っているといって、
アピスさんに手を貸すんですか?」

妖精界なら、至極しごく当然な質問が、質問として、ラファイアから返される。

「アホなの、ラファイア。ここは、妖精界と違う世界よ!」

リーエが、帰ろうかなのポーズで、風に吹かれて、右から左へ流れていく。

「わたしは、友人の危機を知って、健気けなげに努力を続けるノエルに、
学院の名誉理事長として、いえ、ひとりの妖精として、
心の琴線きんせんふるわせられたの。」

「まあ、あんたと違って、ノエルに友誼ゆうぎを与えていいとさえ、
感じたわ。」

滔々とうとうと語るラティスにラファイアは、
なんか悪い物でも拾い食いでもしたのかこの御方おかたは・・と言わんばかりの
やや冷たい目で、ラティスを見やっている。

「で、友愛の妖精のラティスさんは、何をしたいんですか?
叛乱軍を消滅させると?」

「バカなのラファイア。だったら、ノエルの想いをみにじるじゃない。」

「平和をいのる人間たちにとって、ラファイスって、
最後のとりでみたいなところがあるわ。」

「だったら、ラファイスに比べても、完全至高のわたしが動くとすれば、
平和裏にことを収めてやらないと、いけないんじゃなくて!!」
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