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CCⅩⅫ 星々の様相と局面編 後編(1)

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第1章。恐怖!女子〖ノ〗会(0)


 白光の妖精の白金に輝く背光オーラが、まばゆく広がってゆく。
その姿は、まさに神々しく、各地の大聖堂に描かれた、聖ラファイスの壁画が、
極めて、凡庸ぼんような平面図に感じられるほどだった。

この白光の妖精の聖姿に、この場で、唯一免疫めんえきの少なかったリントは、
理性をばされ、白光の妖精の、その瞳の極めて冷たいのを見取り、
敬虔けいけんな信徒として、己の罪を意識し、
自らの魂を破壊しかけていた。

≪「リント!」≫

カシノの声と精神波が、かわいた平手打ちの音とともに、この場に響く。

「ラファイアさん!」

ほんの少し遅れて、あわてたアマトの声もこだまする。

「え~!アマトさん、わたしは、なにもしてませんよ~!」

アマトだけが読み取れる、その困った思いが笑顔に加わった白光の妖精は、
やがて、イルムらにもわかるような困った笑顔に、変わっていった。

・・・・・・・・・

しばらくして、

「すまない。」

と、リントのあおい声が、そこにいる、みなの耳に届く。
それに対し、生暖かい表情でルリが、生真面目な性格のリントに答える。

「気にするな、リント。
ラファイアさんの、日頃の態度と行動を、十分知るわたしでも、
あやうく、だまされかける。ほんと、まさに、魔性のものだから・・・。」

「そうそう、ここまでくれば、天然記念妖精てんねんきねんぶつ詐欺さぎというべきかもね。」

ルリの言葉に、キョウショウも加わってくる。
それでも、イルムだけは、やれやれとのポーズで、無言を通すが・・・。

「アマトさん聞きましたか。今回は、本当になにもしていませんよ。
わたしは、正真正銘しょうしんしょうめいいやしと平穏へいおんの妖精さんですよ・・・。」

と、ラファイアは、両の手でアマトの襟首えりくびをわしづかみにし、
激しくすって、アマトに同意の返事を強制するが、カシノ司祭の

ねぇ~。」

との言葉に、アマトの瞳が、かすかに動いたたことを、目ざとくみつけ、
契約者アマトの心持ちを知り、軽く天をあおいで、固まってしまう。

もはや、がなくなった部屋のとびらの外から、打音ノックがあり、

「失礼します、アマルです。
イルム執政官に、旧双月教国のナナリスさま、ルリ副執政官にノマさまが、
いらっしゃっています。」

と、イルムの筆頭護衛騎士の声が、聞こえた。

・・・・・・・・

「ごめん、アマトくんにラファイアさん。ふたりとも、特にナナリス卿を、
待たせるわけにはいかない。」

と、ルリが、アマトとその契約妖精ラファイアに、済まなさそうに声をかける。

「いいですよ、ルリさん。
こちらは、ユウイさんの元から逃げ出して来ただけですから。
それに、いつも、香茶のことでは、楽しませてもらってますし~。」

先ほどの固まった姿勢はどこへやらで、いつもの執事の姿に戻った・・・、
いや、いつもの表情に戻ったラファイアは、ルリの机の脇に置いてあった
木箱をチラ見し、
契約者のアマトの返事も聞かず、魔力でアマトをヒョイと持ち上げ、
そのまま、軽快な足取りで、アマトをぶら下げて、扉へと向かう。

「そして、みんな。武国の凶虎への手紙に対する返事の内容の検討は、
持ち帰りにしてもらいたい。」

と言う、イルムの執政官としての言葉を後ろに聞き、
アマトは強制的にその部屋から、退場させられてしまった。


第2章。恐怖!女子〖ノ〗会(1)


 「ラファイアさん。勝手に退室する判断をするなんて、
それにぼくは、ユウイ義姉のもとから逃げ出していないよ・・・。」

南宮から退出した後、アマトは、ラファイアに苦情の一つも言っている。
だが、それに動じる妖精さんではないことは、アマトが一番知っているのだが。

「ははは、エリースさんは別としても、ラティスさんと
たぶん、騒動に巻き込まれているリーエさんが、
悲鳴をあげている頃ですし・・・。」

「それに、なによりもですね、ルリさんの横にあった木箱に、
アマトさん、気づかなかったですか?」

アマトは、ルリの横に長方形の木箱があったことを、
記憶の中から掘り返す。

「あの木箱が、どうしたの?」

「あの箱は別にいいんですよ。その中身が問題なんです。」

急に、ラファイアが声をひそめる。

「中身って!?」

アマトも、ラファイアにつられて、声をひそめて対応する。

「そう、妖精界の頂点で輝くわたしの、この透視の魔力を
いかなる木箱といえ、誤魔化ごまかすことはできません。」

『いや、ラファイアさん。ルリさんが、誤魔化ごまかしているんじゃないと思うよ。』

その言葉を、アマトは飲み込んでいる。
ここで、気分がよくなったのか、ラファイアは宣言?する。

「アマトさん。あの中は、サラマンデル。そう、火竜の名を持つお酒です。」

「それって・・・?」

「狂喜乱舞・驚天動地・御意見無用の、あのサラマンデルです。」

「そして、いいですか、アマトさん。普通、上位の妖精と契約をしている人間は、
お酒にうことは、ありません。あったとしても酩酊めいていすることはないです。」

「ですが、唯一、例外な飲み物が・・・、それがアレです。」

「それだけではないんですよ、アマトさん。あの状況で、サラマンデルがある。
そしたら、考えられるのは、あのあとの流れは、女子〖ノ〗会ですよ。
だから、この忠義の妖精ラファイアが、アマトさんをあの場所から、
救い出したのですよ。」

ドヤ顔のラファイアが、アマトの?の顔をのぞき込んできた。

・・・・・・・・

「ラファイアさん。その女子〖ノ〗会って!?」

救い出したとまで言われたアマトは、当然説明をラファイアに求めている。

「それはですね、アマトさん。サラマンデルの魔力で、理性を飛ばされた女性が、
いえ、何故かは知りませんが、女子と言わなければならないんですが、
とにかく、周りのものを、けなし続けるという、
小祭おまつり会合のことです。」

「原則、男性不参加の小祭おまつりですが、女性の本性があらわになる祭りに
偶然参加した男性が、女性不信におちいり、家庭を持つのをあきめたという話が、
まことしやかに伝わっています。」

ラファイアが、それこそ、アマトに説明してくる。

「けど、それって・・・。」

「アマトさん。いつぞやの、飲食時に、イルムさんとルリさんに、
からかわれましたよね。」

アマトの、脳内にあのときの光景がよみがえる。

「アマトさん、あの時は、ユウイさんも、エリースさんも、いらっしゃいました。
それに、お酒自体が、サラマンデルでなかったんですよ。」

「それでも、あの状態でした・・・。」

だんだんと、ラファイアの口調が、熱くなってくる。

「イルムさん、ルリさん、キョウショウさん、カシノさん、リントさん。
ひょっとしたら、ナナリスさんとノマさんも加わりますよ。」

「それぞれが、お美しい方で、普通は強理性的な方です。
ですが、大きな作戦が成功した後であり、それにあのサラマンデルです。
これは、いけません。理性が吹っ飛びます!」

「そんなものかな?」

痛飲した女子に取り囲まれるというの恐ろしさを知らないアマトは、
なお、ラファイアの言うことに、未練たらしく
あらがってみせる。

「美女7人の中で、いい想いがしたいと言うのですか、アマトさん!?
わたしは、予告しますよ。あの中に残っていれば、頭の先からつま先まで、
徹底的にぼこられて、逆はがねの精神のアマトさんは、
二度と立ち直ることが、できないでしょうね!」

「女子〖ノ〗会に、参加できる男性なんて、アマトさん。
まず、万人にひとりのレベルの容姿を、最低持ち合わせていること。
次に、女子の乱れ飛ぶ会話の内容に、無理解で、同意・同情できること。
最後に、そこにいる女子全員の容姿・性格・才能を、
過不足なくめたたえることが、できること。」

「このひとつでも欠けると、まともな精神で日常にかえることは、
不可能に近いでしょう。」

「そう、このラファイアは、断言します。
エリースさんの、わずかな髪型の変化を察知もできず、
あげく、めることもできない唐変木とうへんぼくのアマトさんには、
とうてい、不可能なことです。」

「それくらいなら、【予告された帝王】とやらになる方が、まだ可能性が
大きいでしょうね。」
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