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CCⅩⅣ 星々の様相と局面編 前編(5)

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第1章。暗闇の底から(6)


 超上級妖精セイリルの言葉に、とらわれたせいか、
エリースが気付いた時には、この空間に奇妙な波動が広がり、
前方からの滅気は、抜き差しならないものとなっていた。

風のエレメントの妖精契約者エリースは、この場から垂直離脱し、
上空の有利をとろうとするが、身体がピクリとも動かない。
いつの間にか、三重の長大な黄金の円環ー結界呪縛ーが、
エリースの周囲に構築されている。

≪超上級妖精の契約し強大な魔力の使用は出来ても、闘い方自体はシロウトか!?
 戦いはもうはじまっているぞ!≫

土のエレメントの超上級妖精の冷酷な精神波が、エリースの頭に響く。

「クッ!」

そのエリースの吐き出した言葉に呼応したかのように、
レサトの指から4つの黄金に輝く断糸が、エリースの首めがけて
殺意をのせて、飛ぶように伸びてくる。

だが、エリースの背後に位置していた、風のエレメントの超上級妖精の姿が輝き、
さらに発射された電撃が、その黄金の断糸を撃ち落とし、
黄金の円環すら消滅させる。

次の瞬間、「八ッ!!」という気合いと共にエリースが、
レサトに破壊振動音波を打ち出すが、
瞬息に装着された黄金の鎧アウルム・アルマがそれをね返し、
レサトの身には、何の変化も起こらない。

このわずかな時間差を利用し、エリースは、さらに上空へ跳躍ちょうやくする。
その、エリースが浮遊していた位置に、六方位から超高速で、
黄金のつぶてが通過していった軌跡きせきを描き、
エリースの、そして超上級妖精の感覚は、それをとらえている。

『黄金の糸との、黄金のつぶてとの間合いを、見極めなければ!』

エリースは、背筋をこおらせながらも、心を落ち着かせ、
冷静に相手の黄金の糸の、黄金のつぶての、
その限界地域を、その速度をはかっている。

そして、魔法円の反射反発をも利用して、
急上昇してくるレサトの最終予定到達地点に、
全力の緑電奔流を見込み発射し、自らも渾身こんしんの高速移動状態に入る。

だが、エリースの放ったその電撃も、斜めに構えられた黄金の盾に、
斜め後方に受け流されてしまい、致命の一撃になり得ない。

『リーエとの同時一点集中攻撃か?リーエと一体化するか?』

その考えるすきを、戦い巧者こうしゃのセイリルが見逃すはずもなく、
左の肩あての部分が、エリースめがけて、高速発射される。

≪隠し武器!?≫

思わず精神波で叫んでしまうエリース。
だが放つ電撃は、その高速飛翔して来た黄金の肩あてを粉砕ふんさいしたが、
次の瞬間、黄金の肩あては、激しい光を放ち、一帯は黄金の光に包まれる。

「ツゥ!」

と叫び、反射的に間合いを、距離をとるため、空間を高速移動するエリース。
そして、光が収束しゅうそくしたとき、エリースは、この一帯の空間に、
五芒星ごぼうせい型・六芒星ろくぼうせい型の数多あまたの大小の魔法円が浮かんでいるのに、
気付かされる。

・・・・・・・

土のエレメントの超上級妖精セイリルは、
レサトの身体に、エリースと風の超上級妖精の方を半身の体勢で向き合わせ、
大気を楽器として、がくかなでさせだした。
空間に浮かんだ、五芒ごぼう六芒ろくぼうの星型模様の魔法円が、がくの音波にあわせて、
チカチカと点滅を始める。

≪自分たちのための葬送曲のつもり?≫

その不思議な行為に、精神波と笑みで挑発を返すものの、
エリースの心は、かってないほどに冷えてきて、
いや逆に、透明な境地というべきものにまでいたっている。

≪フフフ、では行かせてもらう!!≫

楽が中断した瞬間、レサトの指から、黄金のつぶてが、
小さな五芒星ごぼう模様の魔法円へ、連続で放たれる。

黄金のつぶては、円を通過した瞬間、エリースの方へ向きを変え、
かつ速度を加えて、超高速で飛来する。

もはやエリースの視覚は、その飛来をとらえられていない。
だが、エリースの後方に位置する風のエレメントの超上級妖精は的確に、
超高速で飛来する黄金のつぶてを、緑金の電撃で破壊していき、
おとりとして放たれたつぶての、エリースの近時点で発生してゆく衝撃波も、
エリースのまとう魔力障壁に傷ひとつつけられない。

ここで、高速飛翔に移る、ふたつの影。

上に下に、右に左に、飛翔し 互いの位置を入れ替える。
だが、六芒ろくぼう星模様の魔法円の利用で、
魔法円通過の際、飛翔方向を即変え追加の加速を得る、レサト(セイリル)に、
飛翔に慣性の力を、普通にこうむるエリースは、
その超高速を、十分に生かすことができない。

しかし、防禦ぼうぎょの電撃をリーエに全まかせしたエリース。
そのリーエの無駄むだ撃ちとみえる緑金色の電撃が、大小の魔法円を破壊し、
着実にレサト(セイリル)を追い詰めていく・・・。

・・・・・・・・

五芒ごぼう星・六芒ろくぼう星模様の魔法円のほぼすべてをそう失した、
レサト(セイリル)は、黄金の糸を、黄金の双剣に変え、
静かに空中に静止している。

エリース、リーエからの至近距離以外からの電撃に、
黄金の鎧アウルム・アルマね返すことができるとの
確証が得られたからだろう。

エリース・リーエも距離をとって、対面の空中に停止したが、
背面にいた風の超上級妖精リーエが、スーッと、エリースに重なってゆく。

そう、双方とも、一翔一撃の距離からの攻撃に、
勝負をかける気になったのであろうか。

さらに、空間の緊張が増大してゆく、それが決壊しようと瞬間、
ふたつの影が動いた・・・。

・・・・・・・

ふたつの影が、超高速で交差する。

それぞれの影が、お互いが対面していた位置に入れ替わった時、
エリースの紅い髪のひと房が切り落とされ、
一方、レサト(セイリル)のほうは、よろいが切り裂かれ、
そこから赤い血がしたたっている。

≪エリース。これは、わたしの超上級妖精としての魔力量の差か、
 それとも、おまえとレサトの戦いの経験の数の差か?≫

感情の起伏を消した精神波で、セイリルがエリースが問いかける。

≪セイリル。たしかに戦った数ならレサトの方がはるかに多いわ。
 けどね、わたしが立ち会ったのなかに、暗黒の妖精ラティス、
 白光の妖精ラファイア、火の妖精ルービスがいる・・・。≫

エリースも、冷たい精神波で、セイリルに返す。

≪ククク、あの伝説級の妖精たちと立ち会って、生きて残れたというのか!?≫

≪時代にひとり、複数の妖精に愛される人間が現れるというが、
 おまえがその人間かもな、エリース!!≫

≪・・・・・・・・。≫

≪ふふふ・・、暗黒の妖精ラティスだけではなく、白光の妖精ラファイアに
 火の妖精ルービスか。
 もう、レサトの自裁じさいを止める手段はない・・。≫

セイリルの精神波が、今日の青空のようにみ切っていく・・・。

≪わたしの精神顕現けんげんが弱まれば、レサトは3妖精にんいどむだろう。
 そしたら、レサトに生き残れる可能性はあるまい・・・。≫

≪だったら、わたしの手で、レサトに引導をわたしてやるのも、
 契約した妖精としての誠意か!≫

≪だから、エリース。土のエレメントの妖精の究極の一撃を、馳走ちそうしてあげる!
 生き残りたいなら、わたしを打ち破ってみせろ!≫

意思のないレサトの顔に、透明な笑顔が浮かぶ。
そして、レサト(セイリル)を中心に、同心円上に発生した
複数のエーテル吸収の障壁が拡大していき、
空間の像がゆがんでいく。

それに対してエリースも、右手を大地と並行に伸ばし、手の先にまず緑の光が、
それが、青→藍→紫、最後は透明なものに変わっていき、
やはり、右手の前の空間には、像のゆがみが生じ始めている。

そして、空間の緊張が頂点に達したその時・・・・・・、

≪≪ストレンジレット異様な光粒プロシ・・爆・・≫≫

≪≪ガンマ・ラディウスガンマ線エールプ・・・バー・・・≫≫

と叫ぶ精神波に、最後の言葉をのせる瞬間のタイミングで、

≪「あんたら、何をしてんのよ!!!」≫

と、緑黒色の長い髪・雪白の肌・黒の瞳・超絶の美貌の妖精が、
空間を割り、圧倒的な魔力ちからで、この場に介入してきた。
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