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CⅬⅩⅩⅦ 星々の象意と進行編 中編(4)

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第1章。契約妖精(5)


 ぼくの身体から、鉄槌てっついが、この男に下されようとした時、
右から複数の炎の矢が、左から複数の氷の矢が、一直線に飛んでくる。
ぼくの身体は、男をいったん上空へ放り上げ、それらの矢を無効化する。

そして、予想通り、後ろから、数十の金属の矢も襲い来るが、
黄金のよろいに、なんの傷もつける事もなく、地面の上に落下した。

≪あんたに、わたしの言葉が聞こえるなら、そのいけ好かないバカに、
 それ以上攻撃を加えるのを、やめて、もらえるかしら。≫

その言葉に反応し、ぼくの身体は、痙攣けいれんを起こしてる男を
今度は、地面に投げ捨てる。
さらに、その略よろいをつけた、品のある美しさを持つ女性の戦士は、
地面の上に、うち捨てられた男に対しても、鋭い舌鋒ぜっぽうを向けていた。

≪ラウト! この公都内で、そのような劫火ごうか殺戮さつりく魔法を使用するとはね。
 マリーンさまの末裔ということで、なにをしでかしても、
 免責されるとでも思ったの!≫

右手に、今、精神波を使った、くすんだ金色の髪の女性の戦士が、
そして、左手に銀色の髪の、やはり女性の戦士が、
前面には、黒髪の男性戦士が、ぼくに相対してきた。
よく見ると、みんな年は若い、学院の生徒なのか!?

だが、彼らは、この学院の魔力上位者なのだろう。
後ろの傾斜席のあちこちから、安堵あんどのため息でさえ聞こえてくる。

≪おい、おまえ。その輝くアルマは、誰にもつくれないと思われていた
 アウルム黄金のアルマだな?≫

ぼくの身体は、無反応を選択する。

≪そうか・・。だとすればラトレア。こいつは、【隠れ妖魔】なんかじゃねえ。≫

≪だったら、何だというのよ、リックス。≫

≪土のエレメントの・・・、少なくとも最上級妖精契約者だ。≫

≪なんですって!なぜこの場に、最上級妖精契約者がいるのよ。≫

≪おれにわかるかよ、さま。≫

≪リックスにラトレア、まだ戦闘のさなかです。≫

そう精神波で叫びながらも、左手の銀色の髪の女性の戦士が、
剣を抜き、切りかかってくる。
右手の戦士も、前面の戦士も、それに続く。その動きは速い。

ぼくの身体は、全く苦にもせず、3人の剣をかるくかわす。
という意思が、ぼくの心の奥からき上がる。
この彼らを無視してくれと、妖精に頼もうとした瞬間、
上空から緑色の雷の豪流が、ぼくをめがけて、打ちつけてきた。

同じ瞬間、天井の透明な水晶らしき砕けたものも、ぼくのまわりに落ちてきて、
砂埃すなぼこりが舞い狂う。

その電撃で、ぼくの黄金のよろいのほとんどが、いったんは消滅したが、
すぐに復活していた。
それに、ぼくの身体は、黄金に輝く涼しい光のまもりの盾を、
⦅多面体立体障壁⦆を構築させ。さらに、数十の黄金に光る糸も、
超高速で回転させ、落下物を弾き飛ばし、あるいは極細分化し、
直撃を防いでいた。

≪待たせたな!!≫

4人目の戦士が、空中で浮遊、たぶん攻撃姿勢をとっている。

この学生の登場で、後ろの席からの安堵感が、先程とはくらべもないようにすごい。
⦅わが学院の頂点、双翼のうちのひとり。⦆と、さっき、誰かが精神波で
言ってたな、その残りのひとりか!?
だけど、ラウトとかいう奴とのレベルが段違いであるのは、
にでも、理解ができる。


第2章。契約妖精(6)


≪メグレス!≫

≪メグレス。今日も、遅刻かよ。≫

≪すまんな、みんな。公爵殿下からの呼び出しが、あったからな。≫

金色の髪に、真っ青の目、涼し気な表情の学生が、ぼくの前に着地してきた。

「おれの名は、メグレス。この学園の学生。
あわせて、風のエレメントの最上級妖精の契約者だ。」

その言葉使いと、受ける印象と違って、その立ち姿にすき見出みいだせないのか、
ぼくの身体は、動こうとしない。

「メグレス、闘いのなかで、自分の契約妖精を開示するなんて、
どういうつもり。」

銀色の髪の女性の戦士が、高速移動の滑空で、かれの横にならび、声をかける。

「ミサール。おれの全力の電撃でも、そのよろいが、瞬間砕けただけだった。」

≪「この少年が、最上級妖精契約者であるかどうかはわからないが、
 少なくともその魔力は、おれ以上かもしれない。」≫

≪「なんだと!」≫

≪「なに、それって!」≫

そう叫びながら、ラトレアという女学生と、リックスという男子学生も、
メグレスという、最上級妖精契約者の隣の位置に滑空してきている。

その精神波による会話のすきを見逃さず、ぼくの身体は、
左手を胸の前まであげ、思いっきり横に払う。
彼らの体それぞれに、金色に輝く3つの光輪が出現し、
彼らを、円筒型に拘束する。
⦅結界呪縛!⦆そういう言葉が、心の底から湧き上がってきた。

そして、ぼくの身体は、彼らをはるかに上回る高速で滑空移動をおこない、
この場から離れようとする。
だが、目の前の残ったいた柱のひとつの一部分が、半円形に消滅、倒壊し、
ぼくの前に倒れて、く手をふさぐ。
ぼくの身体は、一端止まり、置き去りにした4人の方へ視線を向ける。

≪「結界呪縛だと、シャレた魔力を使うじゃないか。
  だから、おれも、〖破壊振動音波〗を、使わせていただいたよ。」≫

そう音声と精神波で語りながら、メグレスという最上級妖精契約者は、
3人の結界呪縛も破壊消滅させていた。

ぼくの身体は、再度、この4人と対峙する・・・。

≪「おれの全力を、簡単にはじいたきみに、おれが相手にならないのは、
 十分に理解している。だが、えて言う、この国の法に、きみの身を、
 まかせてくれないか。」≫

≪「おれは、この学院での3年間で、この国を変えるために、
  魔力をみがき、下の階層の位置から駆けあがり、
  公爵から直の会見を受けれるような立場になれるよう、
  努力もした。形も出した。」≫

≪「少なくとも、おれが全力で、きみを弁護する。
  この言葉に、命をかけてもいい。」≫

行こうか。ぼくは、ぼくの妖精に想いを送る。
今は、だれの言葉にも、耳をかすことはできない。
娼館に連行された妹の身が心配だ。まだ、生きてはいるかもしれない。
五体満足ではあるかもしれない。だけど・・・。

ぼくの身体は、きびすを返し、とりあえず公都への方向に、
体を向けようとする。

≪「そうか、残念だ。おれ一人では、きみにかなわないかもしれない。
  だが、おれには、仲間がいる!」≫

彼の前に、巨大な白色に輝く魔法半円が構築される。

≪「ラトレア、リックス、ミサール、おれに魔力を貸してくれ!」≫

≪「まかせて!」≫

≪「まかせろ!」≫

≪「学院のみんなも、お願い!」≫

3人の、赤に輝く・黄に輝く・青に輝く、魔力の潮流が、追加されていく。
それに後ろの学生の魔力もひとり、またひとり・・・、と追加されていく。
魔力半円は、次々と色を変えながら、最終的に天空にかかる虹のように、
7色に輝いて、一瞬強く輝いたあと、光の剛流と化して、
ぼくにおそいかかってきた・・・。


第3章。契約妖精(7)


 7色の光渦巻うずまくの魔力の激流は、その勝利のごとき轟音ごうおんと共に、
秩序を回復させたはずであった。

しかし、魔力の、そのなんたるかを察知できる人間、
特に、中心で魔力を操作した4人は、魔力を使い果たしたからとは別に、
全身をおおう疲労感が、半端なものではなかった。
さらに、後方からの援護の魔力が至近距離を通過したために、その衣服も、
もうボロボロで、あまつさえ肌の露出したところさえある。

そう、あの強大な魔力が、あの少年のところで、はじかれたのだ。
あの現象で、あるひとつの結論が、集約されていく。

【あの少年は、超上級妖精の契約者だ。】と。

魔力を防いだ少年は、いまだ水蒸気が立ちのぼる地面を離れ、
金色のまばゆい光に包まれながら、空中に浮上した。
その光は、最上級妖精契約者が放つレベルをはるかにえ、
そして光は、形に変化していき、黄金色の髪・あお色の瞳・金色の肌・
超絶の美貌の蜃気楼しんきろう体が、中に浮いた少年の背後に現れる。

そして、少年のまぶたは閉じられたまま、
超上級妖精の精神波がこの場を支配する。

≪やっと、まともに、わたしの意思で動けるようになった。
 だがそれは、契約者のレサトが、深い眠りに落ちている間だけらしい・・・。≫

その感情のない目で、妖精は、メグレスを含む4人を、にらむ。

≪レサトは、態度で警告をしたはず。邪魔をするなと!≫

圧倒的な強者の出す怒りに、渦巻く巨大な黄金の光の透明さに、
メグレスをはじめ、学院生を含めだれも動けない。

≪メグレスとやら、いろいろと語ってもくれたな。
 レサトは、これ以上の騒ぎは望まない。
 だから、もおまえの望まない。≫

≪だが、今後、レサトの前に現れんように、おまえたちの心を折らせてもらう。
 わたしの魔力ちから、おまえの良心であらがえるものなら、あらがってみせよ!≫

蜃気楼しんきろう体の超上級妖精が、軽く水平に右手をのばす。

突然、あわく光るふたつの透明な正六面体が、空中に現れ、降下していく。
ひとつは、メグレスとラトレア、もうひとつには、リックスとミサールと、
魔力の使用し過ぎでほとんど動けない4人を、
ふたりずつに分けて、らくらくと捕獲する。

そして妖精の目が光った瞬間、メグレスとリックスは、悲鳴を上げて転がり回り、
苦しいのか上着をやぶき、みずかぎ取り、意味不明な叫びを上げ続ける。

心配して、ラトレアとミサールは、苦しむメグレスとリックスに近づき
抱きかかえようとするが、彼女らを見た、ふたりの目の色は変わっていた。

超上級妖精は、伸ばしていた右手を下におろす。
それに合わせたように、透明だった正六面体の壁面は、
不透明なものに変わっていく。

その不透明になった、正六面体に中から、ラトレアとミサールの叫びが響く。

「やめて~~。」「なにをするの~~。」「正気に戻って~~。」

正六面体は、中の音声を、外部に音響させ続けていく・・・。

・・・やがて、それぞれの正六面体から、

「「いや~~~。」」

という声が音響したのち、正六面体は、静かになった。

超上級妖精は、正六面体に、冷たい目を向けたのち、
深い眠りに落ちている契約者レストを宙に浮ばせたまま、
公都方向への超高速移動にはいる。

同時に、正六面体は、役目を終わらせたかのように、透明になっていき、
大気に溶け込んでいった・・・。
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