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CⅩⅨ 星々の大三角と大十字編 中編(1)
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第1章。翌朝
早朝、アマトは、キョウショウやルリに教わった剣技の型を、
居宅の庭で、繰り返している。
「ラティス、おまえの契約者がやっている、あのお遊技は何だ?」
リア(ラファイス)が、窓枠に座り腕を組んで、温かいまなざしで
アマトを見詰める、ラティスに尋ねる。
「あんた、本当に失礼ね。本人は剣技のつもりよ。」
「あれは~、だめだ。まだ長物、槍とか杖の方が、さまになるだろう。」
リア(ラファイス)も、くだらない会話をしながら、
部屋の窓越しにアマトの動きを、眺めている。
「ハハハ、違いますよ。あれは、どう見ても、健康体操でしょう。」
ふたりの後ろに、夜の警戒行動を終えた、ラファイアとリーエが
音もなく現れ、話に加わる。
そしてリーエは、アマトの動きを真似ておこない、最後に健康体操のポーズを
カッチリと決めてみせる。
『リーエも、きのうの事は、どうやらどこかに、投げ捨ててきたようね。』
きのうラファイスと、滅し合い寸前までいった超上級妖精の、今朝の態度に、
ラティスは、いつものこととはいえ、なかば呆れ果てている。
むろんリーエの方から言わせれば、
《あなた達 さんにん、お互いに、宿命の対決をすると言われてる間柄でしょうが、
なんで一緒にまったりと、できるんですか?》
ということになるのかもしれないが・・・。
「それにしても、ユウイという人間は、あれはなんなんだ。」
きのうの夜、ノエルはともかく、ラファイスも、いつの間にか
皇都に家を持つことに同意させられ、
あまつさえノエルは、しばらくの間、アバウト学院に通うことに、
なってしまっている。
「わかったでしょう、あのユウイさんの神秘的なチカラの発動、
わたしもラティスさんも、いつも一方的に追い詰められるんですよ。」
と、ラファイアは、自分を落としてでも、ラティスへの捨て身のディスりを、
さりげなく会話に入れてくる。
それに全く気付かないのか、敢えて無視を決め込んでいるのか、
ラティスは、話を続ける。
「ラファイア、あれは、<後方移動させ式 強制説得固め>とか名付けてもいい、
魔力に違いないわ。」
「はあ~。それは、どのエレメントの妖精の魔力というんですか?
ほんと、単なるラティスさんの感想でしょう。」
「いや、ひょっとしたら、この世界で、ユウイが創造した唯一無二の魔力かも
しれないじゃない。」
ラファイアも、リア(ラファイス)も、リーエさえも、呆れて
暗黒の妖精をみつめているが、ラティスはブレない。
どうもユウイに、散々とっちめられてるので、本気で思っているようだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「あんたたち、さんにんで何をしてんの?」
扉を開けて、エリースが部屋の中に入って来る。
二人目のセプティが入ってくる時には、ラファイス・ラファイアの姿は
光折迷彩によって人間に変化し、リーエは姿を消している。
「いや~、アマトさんの剣舞に、見とれていたんですよ。」
あんたは本当に、膨大な魔力を持つ、恐怖の伝説級の妖精かと
突っ込みたくなるような、ラファイアの如才ない対応だが、
日頃のラファイアの言動を知っているエリースからいえば、
<どうせ、契約者である義兄ィを、からかっていたんでしょう>
と、素早く考察する。
いつものように、エリースとラファイアが、意識下で戦いを繰り広げているなか、
「ちょっと、はずかしいな。」
紺系の支給服に身を包んだ、ノエルが入ってくる。
支給服は、ラティスの発案により、お財布の苦しい学院生のために
始まった制度で、騎士見習い用の服を徹底改良・多彩色化させ、
紺系・赤系・黄系・青系・紅系・茶系の6種類の型がある。
それは、凛々しさを際立たせ、特に女性は3割方美しく見えるとの評判で、
現在、私服で通う、女性学院生は皆無に等しい。
さらに、紺系は、ユウイによって監修されたため、特に人気がある。
「ほんと、にあうと思うわ。」
リア(ラファイス)の優しい声が、ノエルをつつむ。
「あんたたち、いつの間に仲良くなったのよ。」
「ラティスさん。きのう、ノエルさんとお話したんですが、
なんか親近感を感じちゃって・・・。」
セプティは、ラティスに、うれしそうに、そう返答をする。
エリースは、ノエルを、白光の妖精ラファイスの契約者ということで
少し距離をおこうとしていたのだが、ノエルの
『アマトさんは、いい人ですが。彼氏さんにするのはちょっと・・・。』
という気持ちを聞き出してから、急速に親交が深まっている。
その2点を抜きにすれば、エリースにとって、ノエルはセプティが
もうひとり増えたという感じだったんだろう。
早くもふたりの主導権を握っている。
「あら、みなさん、この部屋にいたんですね。エリースちゃん、エルナさんが
お迎えにおいでよ。」
ユウイが部屋に入ってきて、エリースたちに声をかける。
「わかったわ。今日は、ノエルに学院内を案内したいので、早めに出るわ。」
「あ、それからユウイ義姉ェ。イルムから言付けを預かっているので、
アマト義兄ィに、渡しといて。」
エリースは、ユウイに文を渡し、振り返り、
「さあ、行くわよ。」
と、皇帝予定者と伝説級妖精の契約者を引き連れて、
この部屋から出て行く。
・・・・・・・・
若く生命力にあふれた三人と、神秘的な雰囲気を持つユウイが、
部屋から出て行ったあと、ラファイスもラファイアも本来の姿に戻っている。
「平和ですね~。」
ラファイアが、アマトの健康体操を見ながら、ふたりの妖精に声をかける。
「そうとも、かぎらないわよ。」
ラファイスが、ポツリと不吉な言葉を漏らす。
「ここに来る前に、アルケロンと刃を交わしたわ。」
「ははは、あいつ、この時代にいるんだ。とうとうわたしに討伐されに、
ここに来るかもと言う事ね。」
ラティスに、神々の黒い御使いのような表情の笑顔が浮かぶ。
「やめてくださいよ。ラティスさんがアルケロンさんと遭遇したら、
サル回しの、おサルさんよろしく、クルクルと回らせられるだけでしょうが。」
ラファイアが、面倒ごとに巻き込まれるのは、ごめんだとばかりに、
予防線をはる。
そのラファイアの言葉に、ラファイスが、残念な妖精を見る、表情に変わる。
「あんたたち、こんな至言を知らないの。
〖妖精、三日会わずば、刮目して見よ。〗よ。」
ラファイス・ラファイアの両白光の妖精に、胸をはってみせる、ラティス。
「つまり、ラファイア。ラティスとアルケロンは、
3日以上あってないから、・・・」
「そうですよ、ラファイスさん。たぶんラティスさんは会敵すれば、昔以上に、
クルクルクルとアルケロンさんに、回らせられる事になるでしょうね。」
「おまえらねぇ~。一回、滅してみるか!」
暗黒の妖精ラティスの圧が、急上昇で頂点に達するが、
ふたりの白光の妖精は、相手をしようともしない、
ただ、そよ風をあびてるように、受け流している。
「ところで、ラファイア。あの分身体の妖精だが、
もう消えかかっているわよね?」
「ギルス金貨の礼として、エーテルを取り入れる能力を付与したい。
そうすれば、分身体自体が望めば、何百年はゆうに存在できるから。」
「それは、ぜひとも、お願いしたいです。じぶんから、消滅を望むその日まで、
皇都とあの湖を守護するように。」
ふたりの白光の妖精は、しんみりと話し合っている。
ふたりとも、近い過去に、自立した分身体の痛みを経験させられたから・・・。
「ふたりとも、こっちを向きなさいよ・・・・。」
ラティスの声が、うすく響きながら、虚空へと消えていく。
早朝、アマトは、キョウショウやルリに教わった剣技の型を、
居宅の庭で、繰り返している。
「ラティス、おまえの契約者がやっている、あのお遊技は何だ?」
リア(ラファイス)が、窓枠に座り腕を組んで、温かいまなざしで
アマトを見詰める、ラティスに尋ねる。
「あんた、本当に失礼ね。本人は剣技のつもりよ。」
「あれは~、だめだ。まだ長物、槍とか杖の方が、さまになるだろう。」
リア(ラファイス)も、くだらない会話をしながら、
部屋の窓越しにアマトの動きを、眺めている。
「ハハハ、違いますよ。あれは、どう見ても、健康体操でしょう。」
ふたりの後ろに、夜の警戒行動を終えた、ラファイアとリーエが
音もなく現れ、話に加わる。
そしてリーエは、アマトの動きを真似ておこない、最後に健康体操のポーズを
カッチリと決めてみせる。
『リーエも、きのうの事は、どうやらどこかに、投げ捨ててきたようね。』
きのうラファイスと、滅し合い寸前までいった超上級妖精の、今朝の態度に、
ラティスは、いつものこととはいえ、なかば呆れ果てている。
むろんリーエの方から言わせれば、
《あなた達 さんにん、お互いに、宿命の対決をすると言われてる間柄でしょうが、
なんで一緒にまったりと、できるんですか?》
ということになるのかもしれないが・・・。
「それにしても、ユウイという人間は、あれはなんなんだ。」
きのうの夜、ノエルはともかく、ラファイスも、いつの間にか
皇都に家を持つことに同意させられ、
あまつさえノエルは、しばらくの間、アバウト学院に通うことに、
なってしまっている。
「わかったでしょう、あのユウイさんの神秘的なチカラの発動、
わたしもラティスさんも、いつも一方的に追い詰められるんですよ。」
と、ラファイアは、自分を落としてでも、ラティスへの捨て身のディスりを、
さりげなく会話に入れてくる。
それに全く気付かないのか、敢えて無視を決め込んでいるのか、
ラティスは、話を続ける。
「ラファイア、あれは、<後方移動させ式 強制説得固め>とか名付けてもいい、
魔力に違いないわ。」
「はあ~。それは、どのエレメントの妖精の魔力というんですか?
ほんと、単なるラティスさんの感想でしょう。」
「いや、ひょっとしたら、この世界で、ユウイが創造した唯一無二の魔力かも
しれないじゃない。」
ラファイアも、リア(ラファイス)も、リーエさえも、呆れて
暗黒の妖精をみつめているが、ラティスはブレない。
どうもユウイに、散々とっちめられてるので、本気で思っているようだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆
「あんたたち、さんにんで何をしてんの?」
扉を開けて、エリースが部屋の中に入って来る。
二人目のセプティが入ってくる時には、ラファイス・ラファイアの姿は
光折迷彩によって人間に変化し、リーエは姿を消している。
「いや~、アマトさんの剣舞に、見とれていたんですよ。」
あんたは本当に、膨大な魔力を持つ、恐怖の伝説級の妖精かと
突っ込みたくなるような、ラファイアの如才ない対応だが、
日頃のラファイアの言動を知っているエリースからいえば、
<どうせ、契約者である義兄ィを、からかっていたんでしょう>
と、素早く考察する。
いつものように、エリースとラファイアが、意識下で戦いを繰り広げているなか、
「ちょっと、はずかしいな。」
紺系の支給服に身を包んだ、ノエルが入ってくる。
支給服は、ラティスの発案により、お財布の苦しい学院生のために
始まった制度で、騎士見習い用の服を徹底改良・多彩色化させ、
紺系・赤系・黄系・青系・紅系・茶系の6種類の型がある。
それは、凛々しさを際立たせ、特に女性は3割方美しく見えるとの評判で、
現在、私服で通う、女性学院生は皆無に等しい。
さらに、紺系は、ユウイによって監修されたため、特に人気がある。
「ほんと、にあうと思うわ。」
リア(ラファイス)の優しい声が、ノエルをつつむ。
「あんたたち、いつの間に仲良くなったのよ。」
「ラティスさん。きのう、ノエルさんとお話したんですが、
なんか親近感を感じちゃって・・・。」
セプティは、ラティスに、うれしそうに、そう返答をする。
エリースは、ノエルを、白光の妖精ラファイスの契約者ということで
少し距離をおこうとしていたのだが、ノエルの
『アマトさんは、いい人ですが。彼氏さんにするのはちょっと・・・。』
という気持ちを聞き出してから、急速に親交が深まっている。
その2点を抜きにすれば、エリースにとって、ノエルはセプティが
もうひとり増えたという感じだったんだろう。
早くもふたりの主導権を握っている。
「あら、みなさん、この部屋にいたんですね。エリースちゃん、エルナさんが
お迎えにおいでよ。」
ユウイが部屋に入ってきて、エリースたちに声をかける。
「わかったわ。今日は、ノエルに学院内を案内したいので、早めに出るわ。」
「あ、それからユウイ義姉ェ。イルムから言付けを預かっているので、
アマト義兄ィに、渡しといて。」
エリースは、ユウイに文を渡し、振り返り、
「さあ、行くわよ。」
と、皇帝予定者と伝説級妖精の契約者を引き連れて、
この部屋から出て行く。
・・・・・・・・
若く生命力にあふれた三人と、神秘的な雰囲気を持つユウイが、
部屋から出て行ったあと、ラファイスもラファイアも本来の姿に戻っている。
「平和ですね~。」
ラファイアが、アマトの健康体操を見ながら、ふたりの妖精に声をかける。
「そうとも、かぎらないわよ。」
ラファイスが、ポツリと不吉な言葉を漏らす。
「ここに来る前に、アルケロンと刃を交わしたわ。」
「ははは、あいつ、この時代にいるんだ。とうとうわたしに討伐されに、
ここに来るかもと言う事ね。」
ラティスに、神々の黒い御使いのような表情の笑顔が浮かぶ。
「やめてくださいよ。ラティスさんがアルケロンさんと遭遇したら、
サル回しの、おサルさんよろしく、クルクルと回らせられるだけでしょうが。」
ラファイアが、面倒ごとに巻き込まれるのは、ごめんだとばかりに、
予防線をはる。
そのラファイアの言葉に、ラファイスが、残念な妖精を見る、表情に変わる。
「あんたたち、こんな至言を知らないの。
〖妖精、三日会わずば、刮目して見よ。〗よ。」
ラファイス・ラファイアの両白光の妖精に、胸をはってみせる、ラティス。
「つまり、ラファイア。ラティスとアルケロンは、
3日以上あってないから、・・・」
「そうですよ、ラファイスさん。たぶんラティスさんは会敵すれば、昔以上に、
クルクルクルとアルケロンさんに、回らせられる事になるでしょうね。」
「おまえらねぇ~。一回、滅してみるか!」
暗黒の妖精ラティスの圧が、急上昇で頂点に達するが、
ふたりの白光の妖精は、相手をしようともしない、
ただ、そよ風をあびてるように、受け流している。
「ところで、ラファイア。あの分身体の妖精だが、
もう消えかかっているわよね?」
「ギルス金貨の礼として、エーテルを取り入れる能力を付与したい。
そうすれば、分身体自体が望めば、何百年はゆうに存在できるから。」
「それは、ぜひとも、お願いしたいです。じぶんから、消滅を望むその日まで、
皇都とあの湖を守護するように。」
ふたりの白光の妖精は、しんみりと話し合っている。
ふたりとも、近い過去に、自立した分身体の痛みを経験させられたから・・・。
「ふたりとも、こっちを向きなさいよ・・・・。」
ラティスの声が、うすく響きながら、虚空へと消えていく。
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