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CⅩⅧ 星々の大三角と大十字編 前編(5)
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第1章。星々の大三角(1)
それから、ユウイとラファイアは、特にラファイアは、
あわただしく部屋から出て行き、
仮称ラティス様も、微笑みを残して、この場から消える。
「さてと。」
リア(ラファイス)は椅子から立ち上がる。
瞬時、リアの姿は陽炎が消えていくようになくなり、光が解き放たれる。
白金の髪に白金色の瞳・大理石色の肌・超絶美貌の白光の妖精が、
白金の光彩を纏いながら、顕現する。
白金色の背光が、冷たく禍々しく、されど虚無の美しさを輝かせる。
「異能の妖精の中でも、そこにいる異端の暗黒の妖精ラティスは違うようだが、
他の異能の妖精は、己が許しがなく、正体を知られるのを好まない。」
「だから、死んでもらう!」
次の瞬間、そこにいた、超上級妖精契約者のエリースでさえ、
全身に無数の死の光刃が沈み込み、凄まじい速度で透過して、
彼方に飛び去っていったのを感じる。
『わたしは、生きて・・いるのか・・・!?』
それが、そこにいた人間達の共通する思いだっただろう。
超上級妖精は、契約者を害するものがあれば、自分の意思で契約者を
全力で守ろうとする。
そして、ラファイスの行為は、リーエの許せる一線を超えた。
白光の妖精ラファイスに対する、凶々しい笑顔と、荒れ狂う背光が、
風の超上級妖精リーエの本気の怒りを、写し出している。
「リーエ、髪を逆立ててないの。
なにより、ラファイスへの攻撃の姿勢を解いて!」
「あんたが、たとえ無意識にでも、魔力を解放したら、今度はシャレで
済まなくなるからね。そん時は、このわたしが、あんたの相手をするわ!」
凛としたラティスの声が、部屋の中に響く。
ラティスのその言葉に、リーエは構えを戻していく。
「ユウイの方は!?う~ん、さすがにあのアホが、無力化しているか。」
ラティスは、透視の魔力を使ったのだろう、ひとり頷いている。
ひょっとしたら、ラファイアがラティスの透視の魔力に気付いて、
アマトを治癒しながら、手でも振っていたのかもしれない。
「ラティス!」
自分から意識を切られたので、気分を害したのかラファイスが、
激しい口調で、言葉を放つ。
「ラファイス、下手な芝居はやめたら・・。がらでもない。」
「・・・・・・・。」
「伝説級の妖精の魔力は、欲にまみれた人間には、禁断の小箱。」
「あんた、人間同士の醜く くだらない、いえ、おぞましい殺し合いに、
あんたの契約者を、巻き込みたくないんでしょう。」
「だから、こういう脅しをして、自分は級外枠下妖精って認めさせて、
【漏らしたら殺すわ。】とか言って、あんたの正体を知った、
ここにいる人間の口を、ふさぎたいだけなんでしょう。」
「その心配は、必要ないと思うわよ。」
睨み合い、目と目で信を交わす、ふたりの伝説級の妖精。
《その理由は?》
結果、ラファイスは、同じ伝説級の妖精しか感知できない精神波で、
ラティスに問う。
《ここにいる人間は信用できるからよ。もし違うのであれば、
あんたよりはるかに冷たく、容赦のない、もうひとりの白光の妖精が、
契約者のために、全てを消し去っていたでしょうね。》
《あいつの冷たさが信用状ということ。フフ・・・、それは、いいわ。》
超上級妖精のリーエですら知り得ることのできない、ふたりのやりとり。
ラファイスの緊張が溶けていく。
そして、そこにいた人間たちには、睨み合ったふたりの伝説級の妖精の
強大な威圧が、不意に、全く消えたのを感じていた。
第2章。星々の大三角(2)
「リアさん、いえラファイスさん。」
沈黙が支配するなか、イルムがそれを破り、ラファイスに声をかける。
「私の名はイルム、新帝国で、執政官を拝命しています。」
ラファイスは、あさっての方向を見て、身体をイルムの方へ向けてこない。
「ラファイスさん、ここにいる全員の人間に、〖沈黙の掟〗を誓わせることも
できますが?」
その言葉に、ラティスは横から、イルムに声をかける。
「イルム、気にすることはないわ。
ラファイスは、手品のタネがばれたので、ふてくされているだけよ。」
ラファイスが、そのラティスの言葉にも反応しなかったので、
イルムも表情を凍らせたまま話を続ける。
「では、一方的に話をさせていただきます。」
「ラファイアさんが話したとおり、新帝国は、予想を上回る人口の流入が続いて、
緑野の大地を、食料の問題のみならず、必要としてました。」
「理由はともあれ、あなたとラティスさん、ラファイアさんで、
その問題を半分以上、解決していただきました。」
「ラファイスさんたちが、今後、新帝国に利用されたくないというご意思は、
聞かせていただきました。ここにいる者たちは、行政の中心にいるもの。
あなた方のことは、空気として、お扱いさせていただくことも可能です。」
「しかし、それはそれ。湖を創り出していただいた事に関しては、
わたし共からも、お礼をいたしたいと思います。」
「礼?」
やっと、ラファイスは、身体をイルムの方へ向ける。
「あなた方が、ブリュー王国を追放されたのは、知っております。」
「それで、あなた、いえ、リアさんとノエルさんに、新帝国の戸籍と居宅を、
用意させていただきます。」
「もし、ノエルさんが望めば、アバウト学院への入学も。」
ラファイスの目が、イルムという人間の真意を見抜くべく、
厳しく、美貌の執政官の心の芯を抉るように見据える。
イルムは、喉元に刃を突き付けられたような威圧に、揺らされるが、
かろうじて、執政官としての言葉を、冷静にならべていく。
「今後、あなた方が、旅の治癒士を続けるにしても、ノエルさんは何十年後、
あなたのその膨大な魔力をもってしても、動けなくなるその日が、
やってくるでしょう。」
「妖精契約のおかげで、人間は年を重ねても、腰が曲がったり、
ひたいに深いしわが刻まれることは、なくなりました。」
「しかし、それでも終わりの日は来ます。その時帰るべき国が、
いえ、家があるというのは、ノエルさんにとって、
そう、あなたにとっても、素晴らしいことではありませんか?」
カシノが、この話に割り込んでくる。
「ラファイスさま、あなた方が旅に出たとしても、居宅の管理は、
新双月教教会で取り扱わせてさせていただきます。
千年にわたる、双月教時代の詫びと、
考えていただければ、結構です。」
「ラファイス、あんたの契約者ノエルのためにも、受け取りなさいよ。」
ラファイスの心が、すでに平静なのを見取って、
ラティスもイルムとの話に口を出す。
「イルムとやら、今後、新帝国がわたしの魔力を利用しないと、
約束ができるのか?」
「わたしたちは、ラティスさん、ラファイアさんという、おふたりの妖精で、
手一杯です。あなたまで、どうのこうのとは、とても、とても・・・。」
「フッ。・・・手一杯か・・・」
うつむき、軽く体を震わせる白光の妖精。
「ラファイス!」
ラティスが、床から何かを拾って、ラファイスに投げつける。
それを、片手でラファイスは、パシッと受け止める。
「これは・・・、ギルス金貨か・・・。」
「住むには家具も必要でしょう。私とラファイアからの、ノエルへのお祝いよ。」
涼しく透明な架空の風が、部屋のなかを駆け抜けていったのを、
そこにいる全員が肌で感じていた。
それから、ユウイとラファイアは、特にラファイアは、
あわただしく部屋から出て行き、
仮称ラティス様も、微笑みを残して、この場から消える。
「さてと。」
リア(ラファイス)は椅子から立ち上がる。
瞬時、リアの姿は陽炎が消えていくようになくなり、光が解き放たれる。
白金の髪に白金色の瞳・大理石色の肌・超絶美貌の白光の妖精が、
白金の光彩を纏いながら、顕現する。
白金色の背光が、冷たく禍々しく、されど虚無の美しさを輝かせる。
「異能の妖精の中でも、そこにいる異端の暗黒の妖精ラティスは違うようだが、
他の異能の妖精は、己が許しがなく、正体を知られるのを好まない。」
「だから、死んでもらう!」
次の瞬間、そこにいた、超上級妖精契約者のエリースでさえ、
全身に無数の死の光刃が沈み込み、凄まじい速度で透過して、
彼方に飛び去っていったのを感じる。
『わたしは、生きて・・いるのか・・・!?』
それが、そこにいた人間達の共通する思いだっただろう。
超上級妖精は、契約者を害するものがあれば、自分の意思で契約者を
全力で守ろうとする。
そして、ラファイスの行為は、リーエの許せる一線を超えた。
白光の妖精ラファイスに対する、凶々しい笑顔と、荒れ狂う背光が、
風の超上級妖精リーエの本気の怒りを、写し出している。
「リーエ、髪を逆立ててないの。
なにより、ラファイスへの攻撃の姿勢を解いて!」
「あんたが、たとえ無意識にでも、魔力を解放したら、今度はシャレで
済まなくなるからね。そん時は、このわたしが、あんたの相手をするわ!」
凛としたラティスの声が、部屋の中に響く。
ラティスのその言葉に、リーエは構えを戻していく。
「ユウイの方は!?う~ん、さすがにあのアホが、無力化しているか。」
ラティスは、透視の魔力を使ったのだろう、ひとり頷いている。
ひょっとしたら、ラファイアがラティスの透視の魔力に気付いて、
アマトを治癒しながら、手でも振っていたのかもしれない。
「ラティス!」
自分から意識を切られたので、気分を害したのかラファイスが、
激しい口調で、言葉を放つ。
「ラファイス、下手な芝居はやめたら・・。がらでもない。」
「・・・・・・・。」
「伝説級の妖精の魔力は、欲にまみれた人間には、禁断の小箱。」
「あんた、人間同士の醜く くだらない、いえ、おぞましい殺し合いに、
あんたの契約者を、巻き込みたくないんでしょう。」
「だから、こういう脅しをして、自分は級外枠下妖精って認めさせて、
【漏らしたら殺すわ。】とか言って、あんたの正体を知った、
ここにいる人間の口を、ふさぎたいだけなんでしょう。」
「その心配は、必要ないと思うわよ。」
睨み合い、目と目で信を交わす、ふたりの伝説級の妖精。
《その理由は?》
結果、ラファイスは、同じ伝説級の妖精しか感知できない精神波で、
ラティスに問う。
《ここにいる人間は信用できるからよ。もし違うのであれば、
あんたよりはるかに冷たく、容赦のない、もうひとりの白光の妖精が、
契約者のために、全てを消し去っていたでしょうね。》
《あいつの冷たさが信用状ということ。フフ・・・、それは、いいわ。》
超上級妖精のリーエですら知り得ることのできない、ふたりのやりとり。
ラファイスの緊張が溶けていく。
そして、そこにいた人間たちには、睨み合ったふたりの伝説級の妖精の
強大な威圧が、不意に、全く消えたのを感じていた。
第2章。星々の大三角(2)
「リアさん、いえラファイスさん。」
沈黙が支配するなか、イルムがそれを破り、ラファイスに声をかける。
「私の名はイルム、新帝国で、執政官を拝命しています。」
ラファイスは、あさっての方向を見て、身体をイルムの方へ向けてこない。
「ラファイスさん、ここにいる全員の人間に、〖沈黙の掟〗を誓わせることも
できますが?」
その言葉に、ラティスは横から、イルムに声をかける。
「イルム、気にすることはないわ。
ラファイスは、手品のタネがばれたので、ふてくされているだけよ。」
ラファイスが、そのラティスの言葉にも反応しなかったので、
イルムも表情を凍らせたまま話を続ける。
「では、一方的に話をさせていただきます。」
「ラファイアさんが話したとおり、新帝国は、予想を上回る人口の流入が続いて、
緑野の大地を、食料の問題のみならず、必要としてました。」
「理由はともあれ、あなたとラティスさん、ラファイアさんで、
その問題を半分以上、解決していただきました。」
「ラファイスさんたちが、今後、新帝国に利用されたくないというご意思は、
聞かせていただきました。ここにいる者たちは、行政の中心にいるもの。
あなた方のことは、空気として、お扱いさせていただくことも可能です。」
「しかし、それはそれ。湖を創り出していただいた事に関しては、
わたし共からも、お礼をいたしたいと思います。」
「礼?」
やっと、ラファイスは、身体をイルムの方へ向ける。
「あなた方が、ブリュー王国を追放されたのは、知っております。」
「それで、あなた、いえ、リアさんとノエルさんに、新帝国の戸籍と居宅を、
用意させていただきます。」
「もし、ノエルさんが望めば、アバウト学院への入学も。」
ラファイスの目が、イルムという人間の真意を見抜くべく、
厳しく、美貌の執政官の心の芯を抉るように見据える。
イルムは、喉元に刃を突き付けられたような威圧に、揺らされるが、
かろうじて、執政官としての言葉を、冷静にならべていく。
「今後、あなた方が、旅の治癒士を続けるにしても、ノエルさんは何十年後、
あなたのその膨大な魔力をもってしても、動けなくなるその日が、
やってくるでしょう。」
「妖精契約のおかげで、人間は年を重ねても、腰が曲がったり、
ひたいに深いしわが刻まれることは、なくなりました。」
「しかし、それでも終わりの日は来ます。その時帰るべき国が、
いえ、家があるというのは、ノエルさんにとって、
そう、あなたにとっても、素晴らしいことではありませんか?」
カシノが、この話に割り込んでくる。
「ラファイスさま、あなた方が旅に出たとしても、居宅の管理は、
新双月教教会で取り扱わせてさせていただきます。
千年にわたる、双月教時代の詫びと、
考えていただければ、結構です。」
「ラファイス、あんたの契約者ノエルのためにも、受け取りなさいよ。」
ラファイスの心が、すでに平静なのを見取って、
ラティスもイルムとの話に口を出す。
「イルムとやら、今後、新帝国がわたしの魔力を利用しないと、
約束ができるのか?」
「わたしたちは、ラティスさん、ラファイアさんという、おふたりの妖精で、
手一杯です。あなたまで、どうのこうのとは、とても、とても・・・。」
「フッ。・・・手一杯か・・・」
うつむき、軽く体を震わせる白光の妖精。
「ラファイス!」
ラティスが、床から何かを拾って、ラファイスに投げつける。
それを、片手でラファイスは、パシッと受け止める。
「これは・・・、ギルス金貨か・・・。」
「住むには家具も必要でしょう。私とラファイアからの、ノエルへのお祝いよ。」
涼しく透明な架空の風が、部屋のなかを駆け抜けていったのを、
そこにいる全員が肌で感じていた。
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