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CⅠ 星々の合と衝編 前編(1)
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第1章。ファウスとイルムと
「妃よ、ふたりで楽しむのもいいが、愚か者の私にもご教示してくれないか?」
アウレス大公の言葉に、ファウス妃もにこやかに対応する。
「陛下、少しはご自身で、お考えにならないと。」
「だが、皆さまが、お帰りになるまでには、私とセプティ陛下で合意しないと
いけないんじゃないのかね?」
生真面目な顔で言葉を述べるアウレス大公に、ファウス妃も、
「では、『鉄荷馬車隊と金貨箱に石ころ』の方は、私がお話しますけど、
『鷹翼の陣の初手変化、要の位置』は、イルム將様ごめんなさいね。
説明を頼めるかしら?」
「仰せのままに。」
イルムは、2人のやりとりに、あたたかい微笑を浮かべていたが、
いつもの表情に戻り、ファウス妃の意を受ける。
「さて、教皇猊下の救出に成功された新帝国が、次に早急に必要な事柄は、
国家組織の、遅滞なき成立ですね。」
「セプティ陛下、国家を建築するにあたって必要な基本的な3要素は
なんでしょう?」
ファウス妃は、いかにも親しきものに対して語りかけるように、
ゆっくりと話しかける。
「えっ、有能な人たちと・・・領土をふくめいろいろなモノと・・・
・・・お金でしょうか・・・。」
セプティは、驚きながらも、あまりにも陳腐かなとの疑問をいだきながらも、
何とかファウス妃に回答を返す。
「そうですよね。そして、新帝国は、土台部分を支える人材以外は、
結構早く備わるでしょう。」
「双月教国からの膨大なお金を使ってね。」
【見抜かれていた】か、イルムは心の中で苦笑している。
「他に、軍事の防御面ではすごいわ。私に一軍を与えられても、
新帝国と一戦を交える気にはならないわ。」
ファウス妃は、やさしい眼差しで、セプティに、寄り添うように答える。
『いまのは、私やルリ將、創派のニ將、そして教皇猊下にもあてた私信ね。』
イルムは、素早く周りを見渡すが、ファウス妃の意思を曲解してるような者は
当然いないことに、安堵する。
「けど、問題なのは、国家をつくるにあたって、膨大なお金があることは、同時に
その国家を滅ぼす刃にもなりますよね、イルム將さま。」
「ファウス妃殿下、ご明察その通りと、同意いたします。」
「ふたりとも、おかしい事を言う。お金はあればあるほどいいんじゃないか?」
アウレス大公が、当然すぎる意見をファウス妃に、ぶつけるように問いかける。
「陛下、人間の集まりというものは、お金があればあるだけ、
使おうとするものです。」
「余分なお金がまだあるという事ならば、どうにかできないかを考えるとか、
この件は次回に回そうなどとかの選択肢を、自ら放棄します。」
「そして、国庫にあるお金をいろんな手段で、自分たちの功を得るため、
手元に分捕る事を考えるでしょう。」
ファウス妃が語る、普通の人間の本質に、
「確かに、妃の言うとおりだ。」
腕組みを崩さないままアウレス大公は、それまでの妃の意見には同意する。
「そして、そのやり方で上手くいけば、それを成功体験の御旗として、
必要を超えるお金を使うやり方以外では、その部署は動くことをしないでしょう。」
「たいていの事は、使用する金貨の総重量次第で成功できる。
それで、どんな無能者でも、結果が出せますからね。」
「それがひとつの部署ならまだいい。だが国家であれば、数十、数百の部署が
ありますよね・・・・・、」
「陛下。それが一斉に、努力することも、考えることも放棄して、
『維持発展するために、より多くの金貨を。』と言い立てれば?」
「その場合だと、国家は崩壊するが、建国完成後で締めれば良いのではないか?」
「人は、楽を覚えれば、その手法をなかなか放そうとはしませんよ。」
「イルム將は、土台部分を支える人間を配するにあたって、最初にどこからか
大金を借りているという形にして、それを防ぎたいと、考えられているはず。」
「今、新帝国に、大金をお貸しする国家はテムスぐらいですからね。」
ひと息つくファウス妃の容貌に、媒介石の灯りが、一層明るくなって
妃を照らしてるようだと、イルムは感じている。
「だから、今回、金貨箱に石ころでも詰めて、
テムスから皇都へ行く荷鉄馬車隊が、
事実として、必要なわけです。」
それでも何か言いたそうな、アウレス大公に、
「陛下、ファウス妃殿下は、内乱後テムス大公国を立て直すのに、
その方法を使っておられますよ。」
アウレス4世の祖父たるラザート伯が、指摘する。
「そうなのか、ファウス?」
ファウス妃は大輪の花のような笑顔をアウレス大公に向け、その後
「さて、どうかしら。じゃ、もう一つの件、イルム將様、お願いしますね。」
と、イルムにその場の主導権を譲渡した。
第2章。イルムとファウスと
「では、私の方から、『鷹翼の陣の要の位置と初動』と指摘した理由と
そのものとそれから起こることの意義のご説明を。」
イルムは、ひと通り参加者を見渡して、おもむろに話し出す。
「現在、テムス大公国は内政でも問題なく運営され、大公陛下御自身は
他国の領土に関心を示しておられず、領土拡張を望む家臣団もいません。」
「そして妃殿下は、
『ある仕掛けをお頼みしたいわ。今すぐのことじゃないけど。』
とおっしゃいました。」
「2ヶ国が共同で行う仕掛けなら、戦の事かと。」
「だとすれば、近未来において必至と言われています、王国連合との戦の際での、
クリル大公国・ミカル大公国が知らないところでの事前の謀りごとと、
このイルム、推察いたしました。」
「さすがに、イルム將さま、隠形の軍師の二つ名は、伊達ではありませんね。」
ファウス妃は、本当に嬉しそうに、イルムを褒めたたえる。
「という事は、戦の最中に、第2の敵に備えるという事ですかな。」
このまま、沈黙を通すことによる創派の影響力の低下を恐れてか、
創派のハンニ老が、口を挟む。
この行為に対して、とがめだてする者は、この場にはいない。
「そうです、ハンニ老さま。逆にそれを利用するのです。」
「だとすれば、仕掛ける相手は・・・。」
アウレス大公とファウス妃に、汚名を負わせてはならないと、
ズーホール伯が話に参加してくる。
「クリル大公国。レオヤヌス大公とトリヤヌス大公子!」
「なぜなら、今の帝国内で、あらたな覇権を握ろうと本気で考えているのは、
この両者をおいて他にはありません。」
イルムはキッパリと断言する。
「イルム殿、クリル在籍時に軍師であられた、あなたがそう言われるのだから、
そのふたりの行動は間違いないだろう。」
「では、ミカルのレリウス大公はどうですか?」
ズーホール卿は、恐らくはファウス妃以外の全員の疑問を、イルムに投げかける。
「ズーホール卿、レリウス大公は無頼を装っていますが、行動から読み解くに
極めて冷静な計算で動くお方と、結論いたします。」
「今持っている、自身の若さという手札を捨てて、
積極的に軍を動かすというのは、
レオヤヌス大公の御年齢を考えれば、ありますまい。」
イルムとファウス妃の二人を除く会議の参列者が、一斉に沈黙する。
「ではイルム殿、鷹翼の陣の部分の説明もお願いいたします。」
テムス大公国末席のアリュス準爵が、話を進めるべく、この語りに加わってくる。
・・・・・・・・
「陣形は、簡単。緩やかな円弧状の陣を引き、
中央に主力軍を置くといものです。」
「そう、主力の左側はテムス軍、右側はミカル軍、中央前方に新帝国軍、
中央後方にクリル軍という形に、落ち着くでしょうが。」
「だとすれば、新帝国軍を中央前方に配置する餌のために、
8世の宝冠をもセプティ陛下に、
レオヤヌス大公は、戴冠させるでしょうね。」
ファウス妃の言いように、セプティはさすがに意味がわかり、蒼白になる。
「つまり、王帝自らが最前線に布陣するという形をとらせ、この機会に
新帝国と邪魔な妖精さんたちを、王国連合を利用して、同時に葬り去ろうと。」
「その通り、そんなことは思っていませんとの迷彩を、施しはするでしょうが。」
「そんな、イルムさん!」
セプティは、いつもの口調になって、イルムに話しかけてしまう。
「セプティ陛下、その対抗策がこの話のキモです。
私たちは戦端が開かれる直前、全軍全速前進、急速半転左回頭、テムス軍に合流、
反応の遅れたクリル大公国軍を中央で、王国連合に激突させます。」
「とすれば、当然、左翼が分厚くなりますな。」
戦術論に詳しい、創派のスキ二將も、重い口を開く。
「そうですスキ二將。その光景を見たら、右翼のレリウス大公は、愚將でなければ
全ミカル軍を、全速後退させるでしょう。、
結果戦場に、不完全ながら、斜線陣が構築されます。」
「だとすれば、王国連合軍右翼に混乱を?」
そのあたりに、自分の活躍する場がありそうだと、ルリ將も話に加わる。
「自分たちから見て厚くなった右翼は突破はできないでしょうから、
結果、左斜め前進して中央突破しようとしている中央軍に合流させるよう、
王国連合右翼陣を誘導します。」
「だから、我々も、それを見越し斜線陣構築。王国連合右翼軍が
中央に行きやすいようにしてあげるのです。」
「それに、王国連合の左翼軍も、前面の敵が撤退してるように感じるから、
中途右折、クリル大公国軍の左側面を突くでしょうね。」
「だとすると、敵のほぼ全軍がクリル大公国軍に殺到する。」
その戦いの中間時点を想像したのか、アウレス大公は思わず言葉を口に出す。
「そうです陛下。わたしたち、テムス軍と新帝国軍は、
残りの敵右翼を蹴散らしたあと反転、クリル大公国軍に襲い掛かかっている、
王国連合軍の背後を突きます。」
「それだと、ミカル大公国軍は?」
考え込んでいるアウレス大公にかわり、アリュス準爵が言葉を繋ぐ。
「クリル軍、新帝国軍、テムス軍が崩壊したら、
ミカル大公国単独では、王国連合に対抗できません。」
「だから、再反転。クリル軍のあとに後詰めに入っていくしか選択肢は
ないでしょうね。」
「この戦いの仕掛けは我らにとって、王国連合とクリル大公国の武力を
削ぎ落すためのものになります。」
説明の終わりを感じたセプティが、当然な意見をイルムに述べる。
「ここで、王国連合さんに、恒久平和の話合いはできないんですか?」
「当代の関係者だけならね。しかし、次代の次々代の当事者たちは、
領土拡張と怨敵成敗の名誉の欲望に抗えず、戦いを選択するでしょうね。」
「それでも、簡単に計算しても、長ければ15年は、
緊張ある平和を維持できるるでしょう。」
「妃よ、ふたりで楽しむのもいいが、愚か者の私にもご教示してくれないか?」
アウレス大公の言葉に、ファウス妃もにこやかに対応する。
「陛下、少しはご自身で、お考えにならないと。」
「だが、皆さまが、お帰りになるまでには、私とセプティ陛下で合意しないと
いけないんじゃないのかね?」
生真面目な顔で言葉を述べるアウレス大公に、ファウス妃も、
「では、『鉄荷馬車隊と金貨箱に石ころ』の方は、私がお話しますけど、
『鷹翼の陣の初手変化、要の位置』は、イルム將様ごめんなさいね。
説明を頼めるかしら?」
「仰せのままに。」
イルムは、2人のやりとりに、あたたかい微笑を浮かべていたが、
いつもの表情に戻り、ファウス妃の意を受ける。
「さて、教皇猊下の救出に成功された新帝国が、次に早急に必要な事柄は、
国家組織の、遅滞なき成立ですね。」
「セプティ陛下、国家を建築するにあたって必要な基本的な3要素は
なんでしょう?」
ファウス妃は、いかにも親しきものに対して語りかけるように、
ゆっくりと話しかける。
「えっ、有能な人たちと・・・領土をふくめいろいろなモノと・・・
・・・お金でしょうか・・・。」
セプティは、驚きながらも、あまりにも陳腐かなとの疑問をいだきながらも、
何とかファウス妃に回答を返す。
「そうですよね。そして、新帝国は、土台部分を支える人材以外は、
結構早く備わるでしょう。」
「双月教国からの膨大なお金を使ってね。」
【見抜かれていた】か、イルムは心の中で苦笑している。
「他に、軍事の防御面ではすごいわ。私に一軍を与えられても、
新帝国と一戦を交える気にはならないわ。」
ファウス妃は、やさしい眼差しで、セプティに、寄り添うように答える。
『いまのは、私やルリ將、創派のニ將、そして教皇猊下にもあてた私信ね。』
イルムは、素早く周りを見渡すが、ファウス妃の意思を曲解してるような者は
当然いないことに、安堵する。
「けど、問題なのは、国家をつくるにあたって、膨大なお金があることは、同時に
その国家を滅ぼす刃にもなりますよね、イルム將さま。」
「ファウス妃殿下、ご明察その通りと、同意いたします。」
「ふたりとも、おかしい事を言う。お金はあればあるほどいいんじゃないか?」
アウレス大公が、当然すぎる意見をファウス妃に、ぶつけるように問いかける。
「陛下、人間の集まりというものは、お金があればあるだけ、
使おうとするものです。」
「余分なお金がまだあるという事ならば、どうにかできないかを考えるとか、
この件は次回に回そうなどとかの選択肢を、自ら放棄します。」
「そして、国庫にあるお金をいろんな手段で、自分たちの功を得るため、
手元に分捕る事を考えるでしょう。」
ファウス妃が語る、普通の人間の本質に、
「確かに、妃の言うとおりだ。」
腕組みを崩さないままアウレス大公は、それまでの妃の意見には同意する。
「そして、そのやり方で上手くいけば、それを成功体験の御旗として、
必要を超えるお金を使うやり方以外では、その部署は動くことをしないでしょう。」
「たいていの事は、使用する金貨の総重量次第で成功できる。
それで、どんな無能者でも、結果が出せますからね。」
「それがひとつの部署ならまだいい。だが国家であれば、数十、数百の部署が
ありますよね・・・・・、」
「陛下。それが一斉に、努力することも、考えることも放棄して、
『維持発展するために、より多くの金貨を。』と言い立てれば?」
「その場合だと、国家は崩壊するが、建国完成後で締めれば良いのではないか?」
「人は、楽を覚えれば、その手法をなかなか放そうとはしませんよ。」
「イルム將は、土台部分を支える人間を配するにあたって、最初にどこからか
大金を借りているという形にして、それを防ぎたいと、考えられているはず。」
「今、新帝国に、大金をお貸しする国家はテムスぐらいですからね。」
ひと息つくファウス妃の容貌に、媒介石の灯りが、一層明るくなって
妃を照らしてるようだと、イルムは感じている。
「だから、今回、金貨箱に石ころでも詰めて、
テムスから皇都へ行く荷鉄馬車隊が、
事実として、必要なわけです。」
それでも何か言いたそうな、アウレス大公に、
「陛下、ファウス妃殿下は、内乱後テムス大公国を立て直すのに、
その方法を使っておられますよ。」
アウレス4世の祖父たるラザート伯が、指摘する。
「そうなのか、ファウス?」
ファウス妃は大輪の花のような笑顔をアウレス大公に向け、その後
「さて、どうかしら。じゃ、もう一つの件、イルム將様、お願いしますね。」
と、イルムにその場の主導権を譲渡した。
第2章。イルムとファウスと
「では、私の方から、『鷹翼の陣の要の位置と初動』と指摘した理由と
そのものとそれから起こることの意義のご説明を。」
イルムは、ひと通り参加者を見渡して、おもむろに話し出す。
「現在、テムス大公国は内政でも問題なく運営され、大公陛下御自身は
他国の領土に関心を示しておられず、領土拡張を望む家臣団もいません。」
「そして妃殿下は、
『ある仕掛けをお頼みしたいわ。今すぐのことじゃないけど。』
とおっしゃいました。」
「2ヶ国が共同で行う仕掛けなら、戦の事かと。」
「だとすれば、近未来において必至と言われています、王国連合との戦の際での、
クリル大公国・ミカル大公国が知らないところでの事前の謀りごとと、
このイルム、推察いたしました。」
「さすがに、イルム將さま、隠形の軍師の二つ名は、伊達ではありませんね。」
ファウス妃は、本当に嬉しそうに、イルムを褒めたたえる。
「という事は、戦の最中に、第2の敵に備えるという事ですかな。」
このまま、沈黙を通すことによる創派の影響力の低下を恐れてか、
創派のハンニ老が、口を挟む。
この行為に対して、とがめだてする者は、この場にはいない。
「そうです、ハンニ老さま。逆にそれを利用するのです。」
「だとすれば、仕掛ける相手は・・・。」
アウレス大公とファウス妃に、汚名を負わせてはならないと、
ズーホール伯が話に参加してくる。
「クリル大公国。レオヤヌス大公とトリヤヌス大公子!」
「なぜなら、今の帝国内で、あらたな覇権を握ろうと本気で考えているのは、
この両者をおいて他にはありません。」
イルムはキッパリと断言する。
「イルム殿、クリル在籍時に軍師であられた、あなたがそう言われるのだから、
そのふたりの行動は間違いないだろう。」
「では、ミカルのレリウス大公はどうですか?」
ズーホール卿は、恐らくはファウス妃以外の全員の疑問を、イルムに投げかける。
「ズーホール卿、レリウス大公は無頼を装っていますが、行動から読み解くに
極めて冷静な計算で動くお方と、結論いたします。」
「今持っている、自身の若さという手札を捨てて、
積極的に軍を動かすというのは、
レオヤヌス大公の御年齢を考えれば、ありますまい。」
イルムとファウス妃の二人を除く会議の参列者が、一斉に沈黙する。
「ではイルム殿、鷹翼の陣の部分の説明もお願いいたします。」
テムス大公国末席のアリュス準爵が、話を進めるべく、この語りに加わってくる。
・・・・・・・・
「陣形は、簡単。緩やかな円弧状の陣を引き、
中央に主力軍を置くといものです。」
「そう、主力の左側はテムス軍、右側はミカル軍、中央前方に新帝国軍、
中央後方にクリル軍という形に、落ち着くでしょうが。」
「だとすれば、新帝国軍を中央前方に配置する餌のために、
8世の宝冠をもセプティ陛下に、
レオヤヌス大公は、戴冠させるでしょうね。」
ファウス妃の言いように、セプティはさすがに意味がわかり、蒼白になる。
「つまり、王帝自らが最前線に布陣するという形をとらせ、この機会に
新帝国と邪魔な妖精さんたちを、王国連合を利用して、同時に葬り去ろうと。」
「その通り、そんなことは思っていませんとの迷彩を、施しはするでしょうが。」
「そんな、イルムさん!」
セプティは、いつもの口調になって、イルムに話しかけてしまう。
「セプティ陛下、その対抗策がこの話のキモです。
私たちは戦端が開かれる直前、全軍全速前進、急速半転左回頭、テムス軍に合流、
反応の遅れたクリル大公国軍を中央で、王国連合に激突させます。」
「とすれば、当然、左翼が分厚くなりますな。」
戦術論に詳しい、創派のスキ二將も、重い口を開く。
「そうですスキ二將。その光景を見たら、右翼のレリウス大公は、愚將でなければ
全ミカル軍を、全速後退させるでしょう。、
結果戦場に、不完全ながら、斜線陣が構築されます。」
「だとすれば、王国連合軍右翼に混乱を?」
そのあたりに、自分の活躍する場がありそうだと、ルリ將も話に加わる。
「自分たちから見て厚くなった右翼は突破はできないでしょうから、
結果、左斜め前進して中央突破しようとしている中央軍に合流させるよう、
王国連合右翼陣を誘導します。」
「だから、我々も、それを見越し斜線陣構築。王国連合右翼軍が
中央に行きやすいようにしてあげるのです。」
「それに、王国連合の左翼軍も、前面の敵が撤退してるように感じるから、
中途右折、クリル大公国軍の左側面を突くでしょうね。」
「だとすると、敵のほぼ全軍がクリル大公国軍に殺到する。」
その戦いの中間時点を想像したのか、アウレス大公は思わず言葉を口に出す。
「そうです陛下。わたしたち、テムス軍と新帝国軍は、
残りの敵右翼を蹴散らしたあと反転、クリル大公国軍に襲い掛かかっている、
王国連合軍の背後を突きます。」
「それだと、ミカル大公国軍は?」
考え込んでいるアウレス大公にかわり、アリュス準爵が言葉を繋ぐ。
「クリル軍、新帝国軍、テムス軍が崩壊したら、
ミカル大公国単独では、王国連合に対抗できません。」
「だから、再反転。クリル軍のあとに後詰めに入っていくしか選択肢は
ないでしょうね。」
「この戦いの仕掛けは我らにとって、王国連合とクリル大公国の武力を
削ぎ落すためのものになります。」
説明の終わりを感じたセプティが、当然な意見をイルムに述べる。
「ここで、王国連合さんに、恒久平和の話合いはできないんですか?」
「当代の関係者だけならね。しかし、次代の次々代の当事者たちは、
領土拡張と怨敵成敗の名誉の欲望に抗えず、戦いを選択するでしょうね。」
「それでも、簡単に計算しても、長ければ15年は、
緊張ある平和を維持できるるでしょう。」
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