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ⅬⅩⅩⅩⅦ 水面下編 後編(2)

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第1章。離脱(4)


 『ア・ピ・ス・に・い・な・さ・れ・た・・・・!?!?』

イルムの言葉に、ラファイアの表情は氷壁の微笑にかわり、背光からの光粒が
激しく乱舞する。
ラファイアが、自称、妖精界の理性派の看板を投げ捨てようとした時、

≪誰が、アピスにおちょくられたって!≫

ラファイアの頭の中に、美しくも冷え冷えとした怒声がとどろく。

『「至高の存在の私が、なんの会議よ。」とか、えてらっしゃいましたが、
結局は、のぞかれていましたか。』

≪だいたい、アンタも・・・ξμφσ・・・▲◎★▼・・・!!≫

『はあ~、めんどくさい。』

白光の妖精が思ったのが早かったか、暗黒の妖精が気付いたのが早かったか。
とにかくラファイアは、大天幕に強力な結界を構築し、
強制的に精神波を、遮断しゃだんにかかる。

退きなさいよ、ラファイア。誤った考えは、正してやるのが、
至高の存在の私の存在意義じゃない。≫

ラティスの精神波は、超大型の竜巻たつまきのように荒れ狂っているが、結界のため、
にしか、感じない。

『それでも、私の結界を突破して、はいり込んでくるんですからね。
さすがはラティスさんと、言うべきでしょうか。』

『やはり、私は妖精界きっての理性派の地位は、
捨てることはできないようですね。
だけど、私もラティスさんも、アマトさんが契約者じゃなかったら・・・・。』

一瞬凝固ぎょうこする白光の妖精。すべての光の粒がすべて白金の光を帯びる、
ラファイアのなかで何かが脈動し、非常に静かに切り替わる。

『『ふ・ふ・ふ・ふ・ふ・ アピスにラティスか!』』

その白光の妖精は、心の中で、黒い微笑ほほえみをそよがせていた。


☆☆☆☆


 ふたりの妖精のやりとりとは別に、
大天幕の中でも、激しいやり取りが、行われていた。

「イルム殿、その天才との、将来のいくさのために、我らを危険に
さらしていたのか!?」

メライ老は、創派のおさとして、当然の罵声ばせいをイルムにぶつける。

「メライ老!!」

その怒りの激しさに、破約的なものを感じたのか、
キョウショウが、創派の長のメライ老に言葉をびせる。

「・・・すまなかった。」

メライ老は、素直に、イルムとそこにいる人々に謝罪する。

「イルム!私が言う資格があるとは思わないが、単独行動が許されないのは
軍事行動だけではないだろう。」

ルリが友の間に入り、事態の収拾しゅうしゅうにはいる。

「イルム將。私たちでは、たよりないかもしれないが、
だが少し役に立つかもしれぬ。
どうか、我々にもその戦略を、おしめしいただけないだろうか?」

自分の立場を離れて、モクシ教皇も、仲裁ちゅうさいにはいる。

「イルム將。わたしにもご教授をお願いしたい。」

穏やかな表情でハンニ老は、和解の糸口をイルムにあずける。

「わかりました。私の考えているすべてを、お話しましょう。」

イルムの口から和解の言葉がれる。


第2章。離脱(5)


 「私は、戦略家として、古くはラウト王の親征、
中時代の創派のフェアル將・ドゥーム師、帝国のダヤン侯爵の戦略
新しいところではミカルのレリウス9世の戦術を
読み解いて、むしろその弱点を見出してきました。」

「現実の話としては、帝国内の大乱で、6世派の貴族の戦術・戦略を
抽出ちゅうしゅつし破壊の立案をしたのは、私です。」

「だが、武国の内乱でカウシム王太子が行った戦術・戦略は、
私の理解の範疇はんちゅうを超えているのです。」

「かれの軍と対峙したら、たとえ3倍の兵力差があっても、
私が軍師として対峙しているなら、蹴散けちらされるのは、
こちらの方でしょう。」

イルムは、ここで、一息をつき、香茶に手をかける。

ひるがえって、今回あまりにも、教国の崩壊が激しすぎました。
新帝国側の完全勝利という、最も悪しき結果を、
引き起こしてしまいました。」

「この結果は、他国の教国への侵略を容易なものに、してしまったのです。」

「そのためここ一年で、教国はどこかの国の傀儡かいらい国家となるでしょう。
ですが、その可能性のあるどの国が支配者として入っても、
強圧と収奪しゅうだつの政治がけられないと思います。」

「イルムさん、その理由は?」

アストリアが、説明が分かりやすくなるように、合の手あいのてをいれる。

「私が、ラティスさんとラファイアさんにお願いして、密かに教国と高位聖職者、
それに独占商人たちの財宝を、確保したからです。」

「イルム殿、聖ラファイス、いや、ラファイアさんが消滅させたのは?」

旧教国正規軍のザイル將が、おもわず、イルムに確認してしまう。

の演技です。」

いつもの笑顔で、アマトの後ろで静かにたたずんんでいる、ラファイアを、
ザイル將は、信じられぬという顔で見つめる。

「結果、他国の軍が侵入しても、軍・政府の維持、将兵への報酬も・・・。」

実務家でもあるハンニ老が、イルムに質問する。

「ほとんど、、やらなければならなくなります。」

「保障金さえとれぬのに、そのような、物好きなことをする国家はないな。」

ソーケン將がつぶやく。

綺麗きれいごとの形をとるなら、大幅な増税はけられないか。」

旧教国正規軍の、軍師的立場らしいリント將が、独り言をらすように、
その結果の予想を口にする。

「それ以前に、略奪や賄賂わいろの横行は、信じられない規模になるでしょうね。」

ルリが、工作者の経験から、その未来の予想を補完する。

「新帝国からの派兵は?」

モクシ教皇の顔色が変わっているのを見て、カシノ教導士が代わりにたずねる。

「われらは、この事態を引き起こしたもの。歓迎されることはありますまい。」

「これを利用して、武国のカウシム王太子、その頃は王かもしれませんが、
帝国本領でおこったような、教国の人々の待望のなか、解放者として、
侵攻してくるでしょう。」

「だが、武国以外の国家の動きは?」

ザイル將も、モクシ教皇の態度に気付き、代わりに声を上げる。

「まともな戦略眼を持つ国家なら、カウシム王太子に率いられた武国の軍と
衝突するような、火中のくりを拾うようなまねはしないでしょう。」

「イルムどの、財宝が手に入らないのは、武国も同じであろう。」

メライ老が、当然の疑問を、イルムにぶつける。

「そのあと、カウシム王太子は、教国の艱難かんなんを除くという旗印を掲げて、
被支配国に雪崩なだれれ込むでしょう。」

「そして返す刀で、教皇猊下を捕囚から解放するという、大儀をかかげて
新帝国領への侵攻を始めるでしょう。」

それが、確定された未来のように感じて、出席した彼らは、
一応に口を閉ざし、考え込んでいまった。
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