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ⅩⅬⅣ 詰め開き編 前編(2)
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第2章。とある たたかい
歴史というのは、文書に残っている事が、すべて事実ではない。
だが、事実であり得ないだろうと思われる事が、文章に残っていても、
それが虚構とは限らない。
アバウト学院初等部開設の道のりは後者と言えよう。
それは、詐欺師の集団が、大量に捕まる事から、動き出した。
不思議な事に、支援金を受け取って消えた大人達は、次々と捕縛され、
彼らが持ち逃げた金貨と共に、3大公国の駐兵所に届けられた。
さらに不思議な事に、彼らの多くが指の骨が折られていたり、
身体の一部がなくなったりしていた。
その動きに合わせたように、アバウト学院に、テムス大公国から
大量の物資・保存のできる食料が届けられ、
それを機に、いろんな組織・商店・人々から
浄財が寄付され出した。
回収された、支援金のほとんどが、3大公国からアバウト学院に下賜され、
その資金で、子供たちのため、学院内で住み込みで働ける
大乱未亡人の募集もされ、その中には、
フレイアとアストリア・エルナの母親の名もある。
保護者がいない帝都の子供だけではなく、
近隣の街・町・村で保護者がいない子供まで、
受け入れを拡大していく。
アバウト学院付属初等部開設は、ロンメル事務長の必死の働きもあり、
想像以上に加速している。
・・・・・・・・
「「「1、2、3、ラティス~。」」」
「「「ラティス~。」」」 「「「お外行こうよ~。」」」
「「「お外連れていって~。」」」
名誉学長室前で、子供たちが大声を上げている、それがアバウト学院の
日常行事になりつつある。
ラティスも、暗黒の妖精の隠形の魔力を使い、学内に潜入するのだが、
子供たちの情報網は思ったより凄く、簡単にばれて、こういう景色が
繰り返されている。
無視すればいいものを、暗黒の妖精の辞書に〈逃げる〉の文字はないらしく、
外に出て行き、子供たちにぐぜられ、結局は相手をしてる。
その日は、柔らかな日の光が降りそそぐ、風のない日で、ラティスは子供たちに
引っ張られて、帝都の中央広場を目指している。
暗黒の妖精ラティス様は、功績は皆で分け合おうという主義?なので、
アマトもラファイアも、逃げられずに今日は、お供を仰せつかっている。
(ちなみに子供たちに、ラファイアは、『ラファイアおばちゃん』、
アマトは、『破顔の兄ちゃん』と呼ばれている。)
帝都の中央広場が見えてくる。
ほんの少し前まで、広場は聖ラファイスの像とその周りだけ、申し訳程度に
掃除がしてあり、噴水はポチョ、ポチョと間欠泉みたいに出るだけで、
続く大理石でできた、池々は緑の藻が溜まり、腐臭を発していた。
公園を覆う石畳は、黒く汚れ、雑草が覆い茂る状態だった。
その景色は、一夜にして激変している。
聖ラファイス像と噴水は、石の特性を活かした形で除汚が行われたようで
序幕式があった時より、燦々と美しく光り輝いている。
黒く汚れた石畳は、アバウト学院の校庭と同じ黒のタイルに変わり、
何か所からも、清い水が噴き出し、タイルに幾何学的に刻まれた、
浅い水路の中を、縦横無尽に流れている。
何より、2つの噴水口から像の上空に、水流が勢いよく噴き出し、
日の光を浴びて、虹色の霧の覆いをかぶせていた。
『ラファイア、何してんの。7人程程広場を抜け出ようとしている。』
ラファイアは、子供たちに結界呪縛を、子供たちが傷つかない加減で飛ばす。
『これは、これは、大変です。まだラティスさんとレクリエーションを
してるほうが、楽かもしれません。』
と、ラファイアは思う。
その一方、視界の片隅で、自分の契約者が集団で子供たちに、
噴水池に落されているのも捉えている、と同時にラティスが
子供たちに結界呪縛をとばし、自分の前に引き摺ってこらせているのも
察知しながら、無論、自分達に殺気・敵意をとばしてくる人間は、
別感覚で、ずっと追跡している。
そのなかで、広場にやってきたある人物が、濁りのない敵意を
ラティスにとばしたのを知覚した。
『あれは、入学式のとき、私が意識に悪戯した、双月教のおっさんじゃ
ありませんか、フフ、なにか面白くなりそうです。』
暗黒の妖精がおちょくられる可能性に、無上の喜びを感じてしまう、
つくづくどうしようもない白光の妖精さんである。
・・・・・・・・
双月教帝都教会のワザク枢機卿は、アバウト学院の入学式の際、
白光の妖精聖ラファイスの啓示を受け、より深い信仰心を持つに至っている。
そして、毎日のように、今の宗教者には忘れられた古典的な辻説法を行っている。
アマトの決闘の際に、聖ラファイスが、暗黒の妖精に、退けられた話を聞き、
彼は一日中慟哭し、己の祈りの浅さを恥じ、さらに悔い改めたのである。
今日は、陽気に誘われて、中央広場にやってきたのだが、
そこで不俱戴天の敵である暗黒の妖精を見た、
そう彼の信仰にも、〈逃げる〉の文字はない。
・・・・・・・・
像の左斜め前で、暗黒の妖精ラティスが声を張り上げていることから、
像の右斜め前で、大声で説法を始めるワザク枢機卿。
「暗黒の妖精が1000年前、我らにどんな酷い事をしたのか・・・」
「マー、小さい子を泣かせない。あんた今日のおやつ抜きね・・・・」
「神聖書に書かれた事を忘れたわけではありますまい。日々の営みにそれを
忘れておられるなら、神々は泣いておられるでしょう・・・。」
「カー、大事なおもちゃを椅子の上に置き忘れているよ。あんたすぐ、
ないないと泣くでしょうが・・・・。」
「そして、おぞましき、破壊の使者はよみがえっているのです・・・。」
「ソー、2ヶ所が痛いの。歯か胃の医者に、帰ったら夜みせるのよ・・・。」
・・・
ワザクの低く響く声と、ラティスの高く透る声が重なり、
何を言っているのか、その場に居合わせた信徒たちも子供たちも、
全くわからず、混沌状態になった。
そのうちに、街の鐘が鳴り響く、ワザクは日々のお勤めの、ラティスは子供の
おやつの時間のため、中央広場をあとにせざるを得ない。
お互い双方を見る事もなく、帰り支度を始める。
『双月教のおっさんも、存外情けない。』
なにか起こる事を期待して、ワクワクして待ってたラファイアは、
肩透かしを喰らって、思わず心の中で呟いた。
『これは、もう一度、ラファイスの真似事をして、あのおっさんの
ネジを巻いてやりましょうか。』
わりと本気に、やばい事を考える白光の妖精さんであった。
第3章。戦士の戯れ
10日に一度の食事の夜、パニス・肉・野菜・果実・ギム酒・果実酒・
果実水などが長テーブルに並ぶ。
普段は、アマト・ユウイ・エリース・セプティ・イルム・キョウショウ・ルリの
7人だが、今日はラティス、ラファイアも席についている。
蜃気楼体のリーエだけは、ブーたれながらも、たぶん超上空から、
家を警護しているのだろう、とにかく姿は見えない。
「セプティちゃんの、織物の感覚も、結構いけてるのよ。」
ユウイが、上機嫌で果実酒片手に、日頃の仕事の状況を皆に報告する。
「いえ、ユウイさんの指導がいいから。」
セプティがつくる、小型の四角のクロスも、影でヘーカという名がついて
飛ぶように売れている。
エリースは黙々と食べてはいるが、精神感応で誰かから、たぶん、
『ま~だ終わらない!ま~だ終わらない!』と呼びかけ続けられて、
不機嫌なのは、無能力者のアマトでもわかる。
食事のたびに、だんだん服装が変わってきたのは、キョウショウ・ルリの2人で、
イルムに影響を受けたのか、今日は、ほぼ下着と変わらぬ姿で、イルムと3人で
さっきから乾杯を重ねている。
「そういえば、キョウショウ、その後サニーとはどうなったの?」
イルムが、燃爆石を、会話にぶち込む。
「別に、どうも。」
キョウショウが、ぶっきらぼうに答える。
「私のキョショウだったかな。」
ルリも話にのる。キョウショウも、やられっぱなしで終わるはずもなく、
「ルリ、あんたさ、アマトちゃんの初恋の人と瓜二つなんだから、いろいろと
坊やに、指南してあげたら。」
と話をそらす。
「そうかな。」
なにを思ったのか、ルリは上半身の部屋着を勢いよく脱ぎ捨てる。
アマトは、上半身裸のルリを見てしまい、椅子から転げ落ちる。
「まあ、指南以前の問題だな。」
何事もなかったように、部屋着を再び拾い着直すルリ。
エリースは以前だったら、3人の酔っぱらいに、電撃でも放つはずだが、
赤くなって固まっているセプティに、何事もなかったように話かけている。
エリースもセプティもユウイも、近い将来の戦死を覚悟した
戦士の戯れだというのを、態度の端々から十分に感じている。
だから、自分に火の粉が飛んでこないなら・・・。
この頃、子供たちに懐かれすぎて、鬱憤のたまってるラティスも、
この話に加わる。
「アマトさあ~。あんたせっかくだから、いづれかのお姉さまにいろいろと
教えてもらったら。少しは大人にならないと。」
「イルムさんいかがですか、アマトさんを大人にしてあげたら?」
ラファイアまで調子にのって、話に絡む。
「確かに、女帝を国の頂点にする場合、後継者が問題になる。
後継者の父親がアマト坊やだったら、セプティちゃんも納得するか。」
急に素に戻り、軍師めいた事を言いだす、イルム。
「今日の夜は暇はあるか、アマト君。」
果実酒で、いい気持ちになったユウイも暴発する。
「ま、アマトちゃん。大人の階段を登っちゃうのね、お義姉ちゃん
ちょっとさびしい。」
「ユウイさん。セプティさんも、あなたとエリースさんならアマトさんの
側室になっても、許してくれるでしょうし。」
女帝の夫に側室?やっぱり、素面ではないイルムである。
「エリースちゃん、側室だって。」
「ユウイ義姉ぇ。身体をくねらさない!ほんと、酔っぱらって。」
これ以上はないというほど赤くなって固まっている、セプティを見て
『やれやれセプティ、イルムの言う事、まともに受けちゃったのね。』
『そろそろ電撃で、みんなの目を覚ました方がいいのかしら。』
『ま、いいわ。けど、こんな日がずっと続いてくれたらな。』
心の中で、天上にいる、誰かさんたちに祈る、エリースだった。
歴史というのは、文書に残っている事が、すべて事実ではない。
だが、事実であり得ないだろうと思われる事が、文章に残っていても、
それが虚構とは限らない。
アバウト学院初等部開設の道のりは後者と言えよう。
それは、詐欺師の集団が、大量に捕まる事から、動き出した。
不思議な事に、支援金を受け取って消えた大人達は、次々と捕縛され、
彼らが持ち逃げた金貨と共に、3大公国の駐兵所に届けられた。
さらに不思議な事に、彼らの多くが指の骨が折られていたり、
身体の一部がなくなったりしていた。
その動きに合わせたように、アバウト学院に、テムス大公国から
大量の物資・保存のできる食料が届けられ、
それを機に、いろんな組織・商店・人々から
浄財が寄付され出した。
回収された、支援金のほとんどが、3大公国からアバウト学院に下賜され、
その資金で、子供たちのため、学院内で住み込みで働ける
大乱未亡人の募集もされ、その中には、
フレイアとアストリア・エルナの母親の名もある。
保護者がいない帝都の子供だけではなく、
近隣の街・町・村で保護者がいない子供まで、
受け入れを拡大していく。
アバウト学院付属初等部開設は、ロンメル事務長の必死の働きもあり、
想像以上に加速している。
・・・・・・・・
「「「1、2、3、ラティス~。」」」
「「「ラティス~。」」」 「「「お外行こうよ~。」」」
「「「お外連れていって~。」」」
名誉学長室前で、子供たちが大声を上げている、それがアバウト学院の
日常行事になりつつある。
ラティスも、暗黒の妖精の隠形の魔力を使い、学内に潜入するのだが、
子供たちの情報網は思ったより凄く、簡単にばれて、こういう景色が
繰り返されている。
無視すればいいものを、暗黒の妖精の辞書に〈逃げる〉の文字はないらしく、
外に出て行き、子供たちにぐぜられ、結局は相手をしてる。
その日は、柔らかな日の光が降りそそぐ、風のない日で、ラティスは子供たちに
引っ張られて、帝都の中央広場を目指している。
暗黒の妖精ラティス様は、功績は皆で分け合おうという主義?なので、
アマトもラファイアも、逃げられずに今日は、お供を仰せつかっている。
(ちなみに子供たちに、ラファイアは、『ラファイアおばちゃん』、
アマトは、『破顔の兄ちゃん』と呼ばれている。)
帝都の中央広場が見えてくる。
ほんの少し前まで、広場は聖ラファイスの像とその周りだけ、申し訳程度に
掃除がしてあり、噴水はポチョ、ポチョと間欠泉みたいに出るだけで、
続く大理石でできた、池々は緑の藻が溜まり、腐臭を発していた。
公園を覆う石畳は、黒く汚れ、雑草が覆い茂る状態だった。
その景色は、一夜にして激変している。
聖ラファイス像と噴水は、石の特性を活かした形で除汚が行われたようで
序幕式があった時より、燦々と美しく光り輝いている。
黒く汚れた石畳は、アバウト学院の校庭と同じ黒のタイルに変わり、
何か所からも、清い水が噴き出し、タイルに幾何学的に刻まれた、
浅い水路の中を、縦横無尽に流れている。
何より、2つの噴水口から像の上空に、水流が勢いよく噴き出し、
日の光を浴びて、虹色の霧の覆いをかぶせていた。
『ラファイア、何してんの。7人程程広場を抜け出ようとしている。』
ラファイアは、子供たちに結界呪縛を、子供たちが傷つかない加減で飛ばす。
『これは、これは、大変です。まだラティスさんとレクリエーションを
してるほうが、楽かもしれません。』
と、ラファイアは思う。
その一方、視界の片隅で、自分の契約者が集団で子供たちに、
噴水池に落されているのも捉えている、と同時にラティスが
子供たちに結界呪縛をとばし、自分の前に引き摺ってこらせているのも
察知しながら、無論、自分達に殺気・敵意をとばしてくる人間は、
別感覚で、ずっと追跡している。
そのなかで、広場にやってきたある人物が、濁りのない敵意を
ラティスにとばしたのを知覚した。
『あれは、入学式のとき、私が意識に悪戯した、双月教のおっさんじゃ
ありませんか、フフ、なにか面白くなりそうです。』
暗黒の妖精がおちょくられる可能性に、無上の喜びを感じてしまう、
つくづくどうしようもない白光の妖精さんである。
・・・・・・・・
双月教帝都教会のワザク枢機卿は、アバウト学院の入学式の際、
白光の妖精聖ラファイスの啓示を受け、より深い信仰心を持つに至っている。
そして、毎日のように、今の宗教者には忘れられた古典的な辻説法を行っている。
アマトの決闘の際に、聖ラファイスが、暗黒の妖精に、退けられた話を聞き、
彼は一日中慟哭し、己の祈りの浅さを恥じ、さらに悔い改めたのである。
今日は、陽気に誘われて、中央広場にやってきたのだが、
そこで不俱戴天の敵である暗黒の妖精を見た、
そう彼の信仰にも、〈逃げる〉の文字はない。
・・・・・・・・
像の左斜め前で、暗黒の妖精ラティスが声を張り上げていることから、
像の右斜め前で、大声で説法を始めるワザク枢機卿。
「暗黒の妖精が1000年前、我らにどんな酷い事をしたのか・・・」
「マー、小さい子を泣かせない。あんた今日のおやつ抜きね・・・・」
「神聖書に書かれた事を忘れたわけではありますまい。日々の営みにそれを
忘れておられるなら、神々は泣いておられるでしょう・・・。」
「カー、大事なおもちゃを椅子の上に置き忘れているよ。あんたすぐ、
ないないと泣くでしょうが・・・・。」
「そして、おぞましき、破壊の使者はよみがえっているのです・・・。」
「ソー、2ヶ所が痛いの。歯か胃の医者に、帰ったら夜みせるのよ・・・。」
・・・
ワザクの低く響く声と、ラティスの高く透る声が重なり、
何を言っているのか、その場に居合わせた信徒たちも子供たちも、
全くわからず、混沌状態になった。
そのうちに、街の鐘が鳴り響く、ワザクは日々のお勤めの、ラティスは子供の
おやつの時間のため、中央広場をあとにせざるを得ない。
お互い双方を見る事もなく、帰り支度を始める。
『双月教のおっさんも、存外情けない。』
なにか起こる事を期待して、ワクワクして待ってたラファイアは、
肩透かしを喰らって、思わず心の中で呟いた。
『これは、もう一度、ラファイスの真似事をして、あのおっさんの
ネジを巻いてやりましょうか。』
わりと本気に、やばい事を考える白光の妖精さんであった。
第3章。戦士の戯れ
10日に一度の食事の夜、パニス・肉・野菜・果実・ギム酒・果実酒・
果実水などが長テーブルに並ぶ。
普段は、アマト・ユウイ・エリース・セプティ・イルム・キョウショウ・ルリの
7人だが、今日はラティス、ラファイアも席についている。
蜃気楼体のリーエだけは、ブーたれながらも、たぶん超上空から、
家を警護しているのだろう、とにかく姿は見えない。
「セプティちゃんの、織物の感覚も、結構いけてるのよ。」
ユウイが、上機嫌で果実酒片手に、日頃の仕事の状況を皆に報告する。
「いえ、ユウイさんの指導がいいから。」
セプティがつくる、小型の四角のクロスも、影でヘーカという名がついて
飛ぶように売れている。
エリースは黙々と食べてはいるが、精神感応で誰かから、たぶん、
『ま~だ終わらない!ま~だ終わらない!』と呼びかけ続けられて、
不機嫌なのは、無能力者のアマトでもわかる。
食事のたびに、だんだん服装が変わってきたのは、キョウショウ・ルリの2人で、
イルムに影響を受けたのか、今日は、ほぼ下着と変わらぬ姿で、イルムと3人で
さっきから乾杯を重ねている。
「そういえば、キョウショウ、その後サニーとはどうなったの?」
イルムが、燃爆石を、会話にぶち込む。
「別に、どうも。」
キョウショウが、ぶっきらぼうに答える。
「私のキョショウだったかな。」
ルリも話にのる。キョウショウも、やられっぱなしで終わるはずもなく、
「ルリ、あんたさ、アマトちゃんの初恋の人と瓜二つなんだから、いろいろと
坊やに、指南してあげたら。」
と話をそらす。
「そうかな。」
なにを思ったのか、ルリは上半身の部屋着を勢いよく脱ぎ捨てる。
アマトは、上半身裸のルリを見てしまい、椅子から転げ落ちる。
「まあ、指南以前の問題だな。」
何事もなかったように、部屋着を再び拾い着直すルリ。
エリースは以前だったら、3人の酔っぱらいに、電撃でも放つはずだが、
赤くなって固まっているセプティに、何事もなかったように話かけている。
エリースもセプティもユウイも、近い将来の戦死を覚悟した
戦士の戯れだというのを、態度の端々から十分に感じている。
だから、自分に火の粉が飛んでこないなら・・・。
この頃、子供たちに懐かれすぎて、鬱憤のたまってるラティスも、
この話に加わる。
「アマトさあ~。あんたせっかくだから、いづれかのお姉さまにいろいろと
教えてもらったら。少しは大人にならないと。」
「イルムさんいかがですか、アマトさんを大人にしてあげたら?」
ラファイアまで調子にのって、話に絡む。
「確かに、女帝を国の頂点にする場合、後継者が問題になる。
後継者の父親がアマト坊やだったら、セプティちゃんも納得するか。」
急に素に戻り、軍師めいた事を言いだす、イルム。
「今日の夜は暇はあるか、アマト君。」
果実酒で、いい気持ちになったユウイも暴発する。
「ま、アマトちゃん。大人の階段を登っちゃうのね、お義姉ちゃん
ちょっとさびしい。」
「ユウイさん。セプティさんも、あなたとエリースさんならアマトさんの
側室になっても、許してくれるでしょうし。」
女帝の夫に側室?やっぱり、素面ではないイルムである。
「エリースちゃん、側室だって。」
「ユウイ義姉ぇ。身体をくねらさない!ほんと、酔っぱらって。」
これ以上はないというほど赤くなって固まっている、セプティを見て
『やれやれセプティ、イルムの言う事、まともに受けちゃったのね。』
『そろそろ電撃で、みんなの目を覚ました方がいいのかしら。』
『ま、いいわ。けど、こんな日がずっと続いてくれたらな。』
心の中で、天上にいる、誰かさんたちに祈る、エリースだった。
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