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旅立ちの異邦人

6話 異邦人

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 家にやってきた俺たちは扉の前に立っている。多分、察しているのは俺だけだ。

 中から駄女神クソババァの残念オーラが伝わってくる!!

「ケイラ、あのババァがまだ中にいやがる」
「ババァって女神様のことですか?」
「あれに様は要らないし、絶対女神って呼ぶ必要もないがそれのことだ。しかも相当、拗ねてるなこれ」
「あー、おいてきましたもんね~」
「おい、ユーマ。かなり深刻な顔してるが大丈夫か? 部屋が汚いとかなら俺は気にしないが......」
「わ、私もです」
 先ほどと同様、小会議をケイラと行っていると後ろからディリーとセリーナがちょっと遠慮しがちにそう言った。
「そうじゃないから大丈夫。別の心配なんだ。えーっと、そのなんだ」
「?」
 二人は俺の少々もったいぶった言い方にハテナを浮かべてるようだった。
「いいか? 扉開けても驚くなよ?」
「なんかいやな予感が......」
「わ、私もです......」
「あ、あははー」
 俺の言い方に二人とも警戒心MAXだった。ケイラはケイラで渇いた笑みを浮かべている。
 ガチャッとゆっくり扉を開く。やはりいた。虚ろ目の女神が。
「あ、優磨さんじゃないですか私をおいて一体何処でどんな楽しいことをしていたんですかねぇねぇ答えてくださいよほら女神の私をおいて何処で何をし––––」
 俺は扉を閉めた。
「うん、やっぱりやめよう」
「いやいやいやいや! 現実逃避するの止めろよ! てか今のヤバイのほっといたら絶対後がヤバイぞ!!」
 ディリーが全力で俺に突っ込んできた。その隣でセリーナは状況にドン引きしていた。ケイラは私関係ないと言わんばかりに空を見上げている。
「あぁ、面倒くさいなオイ」
 結局俺はで に促されるままに再び扉を開く。虚ろ目の女神が再び喚き出す。
「勇磨さんなんで扉を閉めるんですかそんなに話したくないほど楽しいことしてきたんですか長い間私を放置してケイラと二人でたの━━」
「うるさい黙れ」
「そんなの言われて黙ると思ってるんですかだとし━━」
「でないと斬るぞ」
 スーッと剣を鞘から抜きながらうるさい駄女神にドスをきかせた声で告げるとピタッと話すのをやめる。
「ハイ、ワカリマシタ」
 そしてガクガク震えながら俺のことを見る。
 チンッと一思いに鞘に剣を落とし込み振り返る。
「中にどうぞー」
「......俺は、ニンゲンの闇を見た気がするよ」
「......完全に同意します」
「......」
 俺が後ろを振り返るとそこではそんな悲しい会話が繰り広げられていた。

◇ ◆ ◇

「粗茶ですが」
「おう、ありがとな」
「ありがとうございます」
「ありがとうです」
 家の中に入った俺は全員を机の周りに座らせてから全員分のお茶(女神の無し)を準備してから自分も座った。
「あの、勇磨さん?」
「なんだ?」
「あ、いや何でもないです。ハイ」
「よろしい」
 俺は学んだ。この女神ババァはドス聞かせて言えばとりあえず反抗してこないことを。
 だが、今はそんなことより俺たちのことを話さなければならない。
「それで? この人は誰何だ?」
「女神だ(です)」
「「は?」」
 都合よく聞いてくれたディリーに俺とケイラはそう答えた。
 当然、残り二人は驚く。そりゃそういう反応になりますよね。
「おいおいユーマ! こんなやばそうな人が女神だなn......マ、マジ?」
「違うと言えないのがすごぉく残念だよ」
 ディリーは俺の横にいる存在女神から無言の圧力を感じてか、否定を飲み込み俺に再確認する。嗚呼、本当に違いと言えないのが残念だと思う。これが女神だなんて世も末だわ。ほら、セリーナとか口開けて放心してるしさ。
 おっと、話がそれそうだからこれ以上余計なことは考えないでおこう。
 なのであれはほっといてもう1つの本題に移ることにした俺は話を切り出す。
「これが女神かはとりあえず置いておいて、俺たちの話をさせてもらうよ?」
「俺は構わねぇよ」
「私も構いません」
 二人とも首を縦に振り、先を促す。
「驚くなよ? 俺とケイラはここじゃない別の世界から来た異世界人なんだ」
「「......頭、大丈夫(です)か?」」
「ま、まぁ、そうなりますよね......」
 俺もそう思ったよ。と心の中で最後のケイラの言葉に同意しておく。まぁ、驚くなという方が無理な話だ。もしも、地球でこうやって言われても似たようなことになること請け負いだろう。
「んー、どう証明したもんかな......。どうしたら信じてもらえる?」
 正直、全くアイデアが浮かばなかった俺は逆にどうすれば信じてもらえるか聞いてみた。
「どうと言われてもな......。例えばこの世界にない技術を披露するとかそんなところか?」
「この世界にない技術......」
 するとディリーから意外にも意見を得られたので思考を巡らせる。
「ディリー、料理とかでもいい?」
「そりゃ、お前の勝手だろ。好きにしてくれ」
 ディリーはひらひらと手を振ってなんでもいいと言わんばかりに促す。
「あいよ! んじゃ、ちょっと待っててくれ。ケイラちょっと手伝って!」
「あ、はい。でも私の料理は......」
「それはむしろちょうどいい!」
「......女の子として今のはちょっと凹みます」
 こうして俺とケイラはディリーとセリーナを置いて奥の台所に消えていく。
「なぁ、セリーナだっけか? どう思う?」
 ディリーが今まであんまり口を挟まなかったセリーナに質問をぶつけてみる。
「そうですね。ここでユーマたちが嘘をつくメリットは特にない気がします」
「......まぁ、それもそうだな」
 すると返ってきた冷静な言葉にディリーは思はず一瞬、反応が遅れる
「それにユーマのような顔立ちはあまりというか私は見たことないです」
「確かに......。そうなるとむしろそっちの方が辻褄が合うのか?」
 ディリーが思考を巡らせながら言った言葉にセリーナは肩をすくめる。
「それはわかりません。......でも」
「でも?」
 含みのある言い方にディリーは思わず聞き返す。セリーナはとてもワクワクしているといったような顔でこう言った。
「料理、どんなのか楽しみです」
「......そうだな」
 ディリーはセリーナのその言葉に思わず苦笑を漏らしたのだった。
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