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旅立ちの異邦人

2話 パートナー

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    パチリッと目が覚める。
「うっはー、楽しみすぎて寝らんねーよ」
 時間としては深夜だろうか?   俺は真っ暗な部屋で楽しそうにそうつぶやいた。
 正直、もう寝れそうな気がしなかったので俺は部屋の明かりをつけ細剣の鞘を掴む。そして剣をスルスルと抜き出すと構えてビュンビュビュッ!   と素振りを始める。その表情はさながら遠足前の子供の顔だ。
 一時間ほどそのまま素振りしていると辺りはボンヤリと明るくなってきている。どうやら深夜だと思っていたがそこまでだったようだ。俺の身体には汗が玉になって大量にまとわりついている。実にむさ苦しい姿だ。
 俺は剣を鞘にパチンと戻すと服を脱ぎ捨てシャワールームでシャワーを浴びる。ジャバジャバと流れ出る冷水が身体を伝い熱を持った筋肉を冷やしていく。
 何分か浴びた後、俺はシャワーを止め身体を拭てから服を着た。
 そして俺は適当に朝食を整えて静かに食べ始める。
 いつもなら騒いでるとこだが流石にまだ夜が明けてすぐでそれは近所迷惑だと思いとどまった結果だ。
   朝食を食べてる途中、くぁーっとあくびが出る。目は覚めたと思っていたがやはり早く起きすぎたようだ。
「あー眠い。なんか素振りやりすぎて疲れたしもっかい寝るかな」
   俺はもう一度あくびをしてから早々と残りを口に放り込んですぐ、引きっぱなしの布団にもぞもぞと入り始めた。

◇   ◇   ◇

     二度寝に入っていた俺はドンドンドンッ!   ドアを叩く音に叩き起こされた。
   くぁーっと一度あくびをし、ゆっくりとドアへ向かう。
   ぽりぽりと頭を掻きながらドアの向こうへ問いかける。
「えーっと?   どちら様?」
「私ですよ!   わ・た・し!」
   元気な声で帰ってくる返事。寝込みのまだ覚醒しきっていない脳を襲う新手の詐欺かと思った俺はぶっちゃけ面倒だったので再び布団に入ろうと部屋に戻る。
「………───って待ちなさい!!   私です!    クレアです!」
   ドアの向こうではそんな声が聞こえてくる取り敢えず
「あっそ。じゃあおやすみなさい」
と返して布団の中に侵入。そのまま静かに寝息を立てようとした。
   ……が世の中はそれほど甘くはない。
「二度寝はさせませんッ!!」
「いや、俺はこれから三度寝だ」
「やかましいッ!!」
   そんなやりとりの後、ドアを開けて堂々と入ってきたクレアは俺から布団を剥ぎ取る。
「おいババァ、不法侵入だ。おとといきやがれってんだ」
「残念ながらここは私の私有地なので不法侵入ではないですしそもそもこの世界にそんな法律ありませーん」
   クレアはへっへーんと腰に手を当て偉そうなポーズをとるが俺は毅然とした態度で言ってやった。
「おい、ババァのくせに『せーん』とか伸ばすな気色悪い」
「ホンットに失礼ですね勇磨さん!   というか今日、私が何故きたか覚えてますかッ!?」
   さっきの偉そうな態度とは一転してクレアは顔を真っ赤にして怒っている。まぁ、でもこれ以上は話進まんしやめるか。
「あぁ、わかってる。魔物討伐の件だろ?   んで連れてきたのか?」
「はい、連れてきてます。外で待たせてますので連れてきますね?」
「まぁ、いいよ」
   クレアは俺の許可を取るとたたたーっと部屋を出て行き、すぐに一人の少女を連れてきた。
「どっ、どうもです!!   私、ケイラ=アーキンスと言いますッ!!   あっちの世界ではアメリカに住んでました!!   よろしくです!!」
   クレアに連れられてやってきた少女は超綺麗な西洋人形風金髪美少女だった!!
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