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第7章
145,超巨大迷宮カトルゼ Part,1
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カトルゼに到着して迷宮の周りを覆う防壁をぐるっと一周して軽く見物してからまた町に引き返す。
浮遊馬車はそろそろ屋敷に戻しておきたいところだが、今は人が多い。
迷宮へは大体いつでも冒険者が出入りしているし、兵士もそれなりの数詰めている。
露店もあるので人の目が途切れる場所がほとんどないのだ。
転移系のスキルを取得できる人物はそれなりにはいるだろうが、馬車ごととなると聞いたことはない。
なので馬車が突然消えたら大騒ぎになる可能性がある。
ただでさえアンカーを設置しておかなければ戻って来れなくなるのだ。
一先ずは人目を避けて馬車を置いてくるのを優先することにした。
中級迷宮カトルゼの周りは防壁が築かれているが本来は森の中にあったものだ。
防壁の外もかなりの範囲伐採されており見通しもかなりよくなっているが、ある程度離れれば森になっている。
街道が森の中を突っ切っている場所もあるのでその辺まで行けば人目は気にしないでも大丈夫だろう。
街道に沿って森に入り、前後に人が居ないのを確認してから帰還用魔道具を起動させ屋敷へと戻り、馬車だけ置いてまたとんぼ返りだ。
街道から戻っても別にいいんだけど、念のため街道から外れて森を進み違う場所から森を抜けて町に入る事にした。
森から出て主要街道から町に入りなおし、賑やかな通りを眺めながら歩いていけば町には迷宮攻略に欠かせない店が多いが特に宿屋が多いことがわかる。
超巨大迷宮の異名を持つカトルゼには冒険者や商人、それ以外の人種も多種多様な人が集まってくる。
そんな人達を収容するためにたくさんの宿屋があるのは当然だ。
もちろん雑魚寝で激安の宿屋もあれば超がつくほどの高級宿もある。
しかし帰還用魔道具があるオレ達は宿屋を必要としない。
さらに武器屋防具屋道具屋もこちらでは割高だし、ラッシュの街で必要な事は済ませた方が経済的だ。
ランカスター家でも武器防具の手入れくらいは請け負ってくれるし。
素材に関しても基本的にネーシャの練習用に確保しておくので売るつもりもない。
オレ達には関係ないが裏通りには奴隷商店や風俗店も多数存在しているらしい。
詰まるところこの町にはオレ達が必要とするものは何一つないのだ。
それでも賑やかでお祭り騒ぎのような場所だ。見ていて飽きない。
これから迷宮に入って攻略を開始するわけだが、多少は気分転換も兼ねて楽しんでも罰は当たらないだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
賑やかな町を抜け、先ほども来た防壁が見えてくる。
防壁の入り口には露店が大量に列を成しているがもう迷宮もすぐそこなので観光も終わりだ。
「いよいよですね」
「はぃ。油断せずにいきましょぅ」
周りに人が多いからフードをしっかりとかぶって必死でステルスモードになっているレーネさんだけど、ちゃんと念話じゃなくて普通に声に出して返してくれる。
これだけでも大分成長したのがよくわかるだろう。オレと会ったばかりだったら絶対無理だったことだ。
レーネさんの成長に満足しつつ最後の露店を抜け防壁内へと足を踏み入れる。
中には兵士がそれなりの人数居り、迷宮の入り口には2人ずつ左右に詰めている。
さらにその前には受付みたいなところがあって、まずそこでキルドカードを見せて確認してもらうようだ。
オレ達の前の冒険者達もそうしている。
特にお金を取られたりするわけでもないし、ギルドカードの確認も1人当たり10秒もかかっていない。
ランクが足りない人や何らかの問題がある場合は迷宮入り口とは反対側の詰め所付近にも受付があるみたいでそちらの方に連れて行かれるみたいだ。
まぁランク外ならそのまま追い出されるだけみたいだけど。
前の冒険者達も特に問題もなく受付を通って行ったのでオレ達もギルドカードを用意して受付に向かう。
「ギルドカードをこちらの台の上にお願いします」
見せるだけだと思っていたが違ったようで、ちゃんと専用の機材で確認しているようだ。
普通に考えれば当たり前か。
オレとレーネさんとアルの3人がギルドカードを出して受付に乗っている台の上のカードがはめられる場所に置くと、カードをはめた場所から台にラインが走り受付の兵士の下まで伸びていく。
「確認しました。ご武運を」
カードをそれぞれ回収して受付を離れる。
あっという間に確認は終わってしまった。あれなら渋滞も出来ることなくさくさく確認できるだろうな。
どう見ても6歳児のオレを見ても大して表情を変化させなかったのもすごい。
あの受付の兵士以外の人達は結構オレを見てびっくりしていたんだけどね。
今も迷宮入り口を警備している4人の兵士がオレをマジマジと見ているし。
まぁそんな視線は今更だ。気にせず最初の1歩を踏み出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
超巨大迷宮カトルゼは入り口から入ってすぐに広間があり、そこにたくさんの赤いクリスタルが鎮座している。
そのクリスタルは一定間隔で明滅しており、光った時に触れている生命体を迷宮内に引きずり込む。
クリスタルに触れている生命体に触れているモノも含めて引きずり込むが、PTを組んでいる場合は1つのPTしか引きずり込まない。もちろんそのPTは全員接触している必要性はあるが。2つ以上のPTが接触している場合は人数の多いPTが引きずり込まれるそうだ。
このクリスタルで引きずり込まれる先はカトルゼの迷宮の第1階層なのは全てのクリスタルで同じなのだが、場所がランダムなのだ。
通路に出ることもあれば大部屋に出ることもある。
酔狂な冒険者が法則性を調べた事もあるそうだが、5000回転移した時点で諦めたそうだ。まぁランダムだと思っていた方がいいだろう。
当然ながら魔物の近くに出ることもあるので注意が必要だ。
しかし第1階層には罠がないので注意すべきは魔物だけ。
受付で兵士が目を光らせているので迷賊が紛れ込むのはそこそこ防げる。
迷賊も第1階層にランダムで飛ばされてくる冒険者を狙って襲うのは難しい。というより無理だ。
だから迷宮に引きずり込まれる際に注意するのは魔物だけでいい。
「では……準備はぃぃですか?」
「問題ないです」
「こちらも問題ありません」
レーネさんはすでに抜剣しており、アルも盾を装備している。
オレは魔法なので必要ないがアルとレーネさんを掴んで接触役だ。ついでに転移後の照明係でもある。
「行きます」
レーネさんの声が聞こえたあとすぐに視界が切り替わった。
入り口の広間だった場所から薄暗い洞窟の中へと転移が完了し、すぐさま照明魔道具を起動させ視界を確保する。ついでに周囲に気配がないのも確認する。
レーネさんもアルも問題ないことを確認したのでさっそく攻略を開始することにした。
カトルゼは超巨大迷宮なだけあってとにかく広い。
初心者迷宮とは違い、最初の階層から光源を確保する必要があったりと色々と勝手も違う。特に違うのは次の階層へ行くためには階段ではなく、入り口と同じくクリスタルを使う必要があるということ。
赤いクリスタルが次の階層へ。
青いクリスタルが前の階層へ。
第1階層の場合は広間が前の階層になる。
見つけるべきは赤いクリスタルだ。
道中の魔物――レーネさんの飛斬で即死――を片付けながら進む。
カトルゼは超巨大迷宮でも挑んでいる人数が人数なため低階層なら地図が大体出来ている。
レーネさんが以前挑んだ時に第12階層までの地図を購入しているのでそれを使って今も赤いクリスタルを目指している。
第1階層もとにかく広いので現在地を見つけるのも困難だが、そこはうちのアルが大活躍だ。やばいくらいに大活躍だ。たぶん某縞模様の上着を着て、ジーパンを履き、杖を持ったアイツを探す事があったら一瞬で見つけてしまうのではないだろうか。
距離的に1番近いクリスタルは徒歩で20分くらいだ。
第1階層には罠がないのでさくさく進んで予定時間通りに到着して、無事第1階層を突破した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
地図がある第12階層まではさくさく進めた。
どこにクリスタルがあるかはわかっているし、敵は雑魚ばかりなのでレーネさんとオレが射程に入ったら即死させ、みんなで解体してアルのアイテムボックスに入れていくだけなので問題の起きようがない。
オレ達が戦闘に時間をかける必要があるような階層に到達するには最短でも数日はかかる。
逆にいえばそこまでは敵は問題にならない。
罠もアルが察知して回避は余裕だ。
回避できないのはオレが破壊する。
基本的に赤いクリスタルまで一直線に向かい、迂回やUターンは一切必要なかったのもさくさく進めた要因だろう。
だが第13階層からは地図がないので赤いクリスタルの位置がわからない。
とりあえず転移してきた場所から適当に方向を決めて進む。
ここからは地図を作成しながらということもあって足は多少鈍る事になるが……うちのアルはやっぱりすごい。
ほとんど速度を緩めずに地図を作成していくのだ。
しかも周辺警戒とオレの護衛もしながらだ。ほんとに完璧超人なんだから困る。でも頼もしい。さすがアルだ。
なのでまだまだ射程内に入れば即死していく魔物ばかりの現状では運が悪くない限りどんどん進めている。
第16階層でちょっと青いクリスタルばかりに当たったりしたがその程度だった。
超巨大迷宮というのは伊達ではなく、迷宮を進む間に1度として他の冒険者と出会うことはなかった。
本日はさくさく進めた事もあり、第19階層まで一気に進む事が出来た。
はっきりいって異常なペースだ。
たとえ地図があっても普通はもっと現在地の確認、罠の警戒や解体、敵の警戒や戦闘で時間も体力も消費するし、消費した体力を取り戻すための休憩も必要だ。
そういう時間をとられるモノを全部最短で突っ切ってしまえるオレ達だからこそ出せるペースといえる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「以前は7階層に到達するのにも1日かかったのですが……」
「まぁその頃はソロだったんですよね? それに今ほどBaseLvも高くなかったんだし」
「そうですね……。でもなんだかちょっと悔しいです。でもそれ以上に嬉しいです」
レーネさんは前にこのカトルゼに挑んでいる。
だからこそ地図を持っていたし、カトルゼの情報を多く持っていた。
そして是非とも攻略したいと願っていた。
その頃のレーネさんと今のレーネさんは比べる事も出来ないほどに違うだろう。
強さだけじゃない。内面のもろもろも成長した今のレーネさんは昔とはもう別人と言ってもいいくらいだと思う。
「明日もがっつり進んでさくっと攻略してやりましょう!」
「はい! ワタリさんと一緒なら出来そうです。
……いえ、出来ます! 頑張りましょう!」
やる気漲るレーネさんに笑顔を向け、超巨大迷宮――カトルゼの初日を終えた。
浮遊馬車はそろそろ屋敷に戻しておきたいところだが、今は人が多い。
迷宮へは大体いつでも冒険者が出入りしているし、兵士もそれなりの数詰めている。
露店もあるので人の目が途切れる場所がほとんどないのだ。
転移系のスキルを取得できる人物はそれなりにはいるだろうが、馬車ごととなると聞いたことはない。
なので馬車が突然消えたら大騒ぎになる可能性がある。
ただでさえアンカーを設置しておかなければ戻って来れなくなるのだ。
一先ずは人目を避けて馬車を置いてくるのを優先することにした。
中級迷宮カトルゼの周りは防壁が築かれているが本来は森の中にあったものだ。
防壁の外もかなりの範囲伐採されており見通しもかなりよくなっているが、ある程度離れれば森になっている。
街道が森の中を突っ切っている場所もあるのでその辺まで行けば人目は気にしないでも大丈夫だろう。
街道に沿って森に入り、前後に人が居ないのを確認してから帰還用魔道具を起動させ屋敷へと戻り、馬車だけ置いてまたとんぼ返りだ。
街道から戻っても別にいいんだけど、念のため街道から外れて森を進み違う場所から森を抜けて町に入る事にした。
森から出て主要街道から町に入りなおし、賑やかな通りを眺めながら歩いていけば町には迷宮攻略に欠かせない店が多いが特に宿屋が多いことがわかる。
超巨大迷宮の異名を持つカトルゼには冒険者や商人、それ以外の人種も多種多様な人が集まってくる。
そんな人達を収容するためにたくさんの宿屋があるのは当然だ。
もちろん雑魚寝で激安の宿屋もあれば超がつくほどの高級宿もある。
しかし帰還用魔道具があるオレ達は宿屋を必要としない。
さらに武器屋防具屋道具屋もこちらでは割高だし、ラッシュの街で必要な事は済ませた方が経済的だ。
ランカスター家でも武器防具の手入れくらいは請け負ってくれるし。
素材に関しても基本的にネーシャの練習用に確保しておくので売るつもりもない。
オレ達には関係ないが裏通りには奴隷商店や風俗店も多数存在しているらしい。
詰まるところこの町にはオレ達が必要とするものは何一つないのだ。
それでも賑やかでお祭り騒ぎのような場所だ。見ていて飽きない。
これから迷宮に入って攻略を開始するわけだが、多少は気分転換も兼ねて楽しんでも罰は当たらないだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
賑やかな町を抜け、先ほども来た防壁が見えてくる。
防壁の入り口には露店が大量に列を成しているがもう迷宮もすぐそこなので観光も終わりだ。
「いよいよですね」
「はぃ。油断せずにいきましょぅ」
周りに人が多いからフードをしっかりとかぶって必死でステルスモードになっているレーネさんだけど、ちゃんと念話じゃなくて普通に声に出して返してくれる。
これだけでも大分成長したのがよくわかるだろう。オレと会ったばかりだったら絶対無理だったことだ。
レーネさんの成長に満足しつつ最後の露店を抜け防壁内へと足を踏み入れる。
中には兵士がそれなりの人数居り、迷宮の入り口には2人ずつ左右に詰めている。
さらにその前には受付みたいなところがあって、まずそこでキルドカードを見せて確認してもらうようだ。
オレ達の前の冒険者達もそうしている。
特にお金を取られたりするわけでもないし、ギルドカードの確認も1人当たり10秒もかかっていない。
ランクが足りない人や何らかの問題がある場合は迷宮入り口とは反対側の詰め所付近にも受付があるみたいでそちらの方に連れて行かれるみたいだ。
まぁランク外ならそのまま追い出されるだけみたいだけど。
前の冒険者達も特に問題もなく受付を通って行ったのでオレ達もギルドカードを用意して受付に向かう。
「ギルドカードをこちらの台の上にお願いします」
見せるだけだと思っていたが違ったようで、ちゃんと専用の機材で確認しているようだ。
普通に考えれば当たり前か。
オレとレーネさんとアルの3人がギルドカードを出して受付に乗っている台の上のカードがはめられる場所に置くと、カードをはめた場所から台にラインが走り受付の兵士の下まで伸びていく。
「確認しました。ご武運を」
カードをそれぞれ回収して受付を離れる。
あっという間に確認は終わってしまった。あれなら渋滞も出来ることなくさくさく確認できるだろうな。
どう見ても6歳児のオレを見ても大して表情を変化させなかったのもすごい。
あの受付の兵士以外の人達は結構オレを見てびっくりしていたんだけどね。
今も迷宮入り口を警備している4人の兵士がオレをマジマジと見ているし。
まぁそんな視線は今更だ。気にせず最初の1歩を踏み出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
超巨大迷宮カトルゼは入り口から入ってすぐに広間があり、そこにたくさんの赤いクリスタルが鎮座している。
そのクリスタルは一定間隔で明滅しており、光った時に触れている生命体を迷宮内に引きずり込む。
クリスタルに触れている生命体に触れているモノも含めて引きずり込むが、PTを組んでいる場合は1つのPTしか引きずり込まない。もちろんそのPTは全員接触している必要性はあるが。2つ以上のPTが接触している場合は人数の多いPTが引きずり込まれるそうだ。
このクリスタルで引きずり込まれる先はカトルゼの迷宮の第1階層なのは全てのクリスタルで同じなのだが、場所がランダムなのだ。
通路に出ることもあれば大部屋に出ることもある。
酔狂な冒険者が法則性を調べた事もあるそうだが、5000回転移した時点で諦めたそうだ。まぁランダムだと思っていた方がいいだろう。
当然ながら魔物の近くに出ることもあるので注意が必要だ。
しかし第1階層には罠がないので注意すべきは魔物だけ。
受付で兵士が目を光らせているので迷賊が紛れ込むのはそこそこ防げる。
迷賊も第1階層にランダムで飛ばされてくる冒険者を狙って襲うのは難しい。というより無理だ。
だから迷宮に引きずり込まれる際に注意するのは魔物だけでいい。
「では……準備はぃぃですか?」
「問題ないです」
「こちらも問題ありません」
レーネさんはすでに抜剣しており、アルも盾を装備している。
オレは魔法なので必要ないがアルとレーネさんを掴んで接触役だ。ついでに転移後の照明係でもある。
「行きます」
レーネさんの声が聞こえたあとすぐに視界が切り替わった。
入り口の広間だった場所から薄暗い洞窟の中へと転移が完了し、すぐさま照明魔道具を起動させ視界を確保する。ついでに周囲に気配がないのも確認する。
レーネさんもアルも問題ないことを確認したのでさっそく攻略を開始することにした。
カトルゼは超巨大迷宮なだけあってとにかく広い。
初心者迷宮とは違い、最初の階層から光源を確保する必要があったりと色々と勝手も違う。特に違うのは次の階層へ行くためには階段ではなく、入り口と同じくクリスタルを使う必要があるということ。
赤いクリスタルが次の階層へ。
青いクリスタルが前の階層へ。
第1階層の場合は広間が前の階層になる。
見つけるべきは赤いクリスタルだ。
道中の魔物――レーネさんの飛斬で即死――を片付けながら進む。
カトルゼは超巨大迷宮でも挑んでいる人数が人数なため低階層なら地図が大体出来ている。
レーネさんが以前挑んだ時に第12階層までの地図を購入しているのでそれを使って今も赤いクリスタルを目指している。
第1階層もとにかく広いので現在地を見つけるのも困難だが、そこはうちのアルが大活躍だ。やばいくらいに大活躍だ。たぶん某縞模様の上着を着て、ジーパンを履き、杖を持ったアイツを探す事があったら一瞬で見つけてしまうのではないだろうか。
距離的に1番近いクリスタルは徒歩で20分くらいだ。
第1階層には罠がないのでさくさく進んで予定時間通りに到着して、無事第1階層を突破した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
地図がある第12階層まではさくさく進めた。
どこにクリスタルがあるかはわかっているし、敵は雑魚ばかりなのでレーネさんとオレが射程に入ったら即死させ、みんなで解体してアルのアイテムボックスに入れていくだけなので問題の起きようがない。
オレ達が戦闘に時間をかける必要があるような階層に到達するには最短でも数日はかかる。
逆にいえばそこまでは敵は問題にならない。
罠もアルが察知して回避は余裕だ。
回避できないのはオレが破壊する。
基本的に赤いクリスタルまで一直線に向かい、迂回やUターンは一切必要なかったのもさくさく進めた要因だろう。
だが第13階層からは地図がないので赤いクリスタルの位置がわからない。
とりあえず転移してきた場所から適当に方向を決めて進む。
ここからは地図を作成しながらということもあって足は多少鈍る事になるが……うちのアルはやっぱりすごい。
ほとんど速度を緩めずに地図を作成していくのだ。
しかも周辺警戒とオレの護衛もしながらだ。ほんとに完璧超人なんだから困る。でも頼もしい。さすがアルだ。
なのでまだまだ射程内に入れば即死していく魔物ばかりの現状では運が悪くない限りどんどん進めている。
第16階層でちょっと青いクリスタルばかりに当たったりしたがその程度だった。
超巨大迷宮というのは伊達ではなく、迷宮を進む間に1度として他の冒険者と出会うことはなかった。
本日はさくさく進めた事もあり、第19階層まで一気に進む事が出来た。
はっきりいって異常なペースだ。
たとえ地図があっても普通はもっと現在地の確認、罠の警戒や解体、敵の警戒や戦闘で時間も体力も消費するし、消費した体力を取り戻すための休憩も必要だ。
そういう時間をとられるモノを全部最短で突っ切ってしまえるオレ達だからこそ出せるペースといえる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「以前は7階層に到達するのにも1日かかったのですが……」
「まぁその頃はソロだったんですよね? それに今ほどBaseLvも高くなかったんだし」
「そうですね……。でもなんだかちょっと悔しいです。でもそれ以上に嬉しいです」
レーネさんは前にこのカトルゼに挑んでいる。
だからこそ地図を持っていたし、カトルゼの情報を多く持っていた。
そして是非とも攻略したいと願っていた。
その頃のレーネさんと今のレーネさんは比べる事も出来ないほどに違うだろう。
強さだけじゃない。内面のもろもろも成長した今のレーネさんは昔とはもう別人と言ってもいいくらいだと思う。
「明日もがっつり進んでさくっと攻略してやりましょう!」
「はい! ワタリさんと一緒なら出来そうです。
……いえ、出来ます! 頑張りましょう!」
やる気漲るレーネさんに笑顔を向け、超巨大迷宮――カトルゼの初日を終えた。
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