幼女と執事が異世界で

天界

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第4章

80,vsビッグホーネット

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 煙を巣に突っ込まれ、飛び出てきたビッグホーネットの数はまず4匹。
 発見される前に数を減らそうとすぐさま火の矢を形成し、射出する。
 それほどの温度ではないとはいえ、赤々と燃える火の矢は射出された次の瞬間には4匹のビッグホーネット全ての頭部を捉え、一拍を置いて羽音が止まり地面に落下した。
 地面に落下したあともピクピクと動いているが頭部に刺さった火の矢から火が燃え移りどんどん止めを刺していく。

 どうやらビッグホーネットもスマッシュマウスを一撃で葬った程度の威力の火の矢で十分倒せるようだ。
 消費効率もいいし、楽でいい。
 4匹程度なら一度に狙えるし、一撃で倒せる。まるで負ける気がしないが油断はしないようにしよう。


 第2陣と第3陣はほぼ同時にあちこちにある巣の出入り口から競うようにでてきた。
 その数28匹。


 ちょっと多くね!? 巣の大きさ的にも多くね!?


 でてくる端から狙い打っても良かったんだが、あれよあれよという間に数が出揃ってしまった。
 黙ってみていても仕方ないので火の矢を最大数で射出する。
 着弾を確認する前に次の火の矢を形成し、射出するがさすがに今回は数が多いのでこちらに気づいて高速で接近を開始するビッグホーネット。

 意外に早い接近速度に半分以上のビッグホーネットの接近を許してしまったが、オレの前にはアルがいる。
 高速接近と同時に尾の――子供の腕ほどもありそうな――巨大な針を突き出してくる蜂達はアルの盾により連続で弾かれていく。

 この蜂達は連携がまったくなっていない。
 直線軌道でまっすぐにオレ達に向かい、針を突き出してくるだけ。
 それを残っている全てのビッグホーネットが同じように行動してくるのだ。
 アルほどの防御技術を持っている者ならただ順番に弾いていくだけの簡単な作業でしかない。

 アルの盾で弾かれて体勢を大きく崩して時には地面に叩き付けられたりする蜂に飛来する火の矢。
 単発で冷静に狙い打ち、最後にアルが弾いたビッグホーネットが地面に叩きつけられよたよたと起き上がりかけたところに止めを刺して全ての蜂を撃破した。

 相変わらずアルはすごい。
 単調だったとはいえ、あれだけの数を相手にして怯みもしないし、オレが狙いやすいように弾く先も考えてくれている。
 可能ならば地面に叩き付けて行動を停止させたりもする。というか6割方地面に叩きつけていたので狙いやすかった。


「アル、ナイス防御だったよ」

「恐悦至極にございます。ですがワタリ様、まだ戦闘は継続中にございます」

「おっと、まだいるのか」


 気配察知の圏外に陣取っているので巣の中にまだいるのかどうかはわからない。
 でもアルにはわかるようだ。彼は気配察知を取得していないはずだけど……執事のスキルか何かですか? 万能すぎませんかね、執事。


 今更か。


 巣の中まで気配察知が通るように近寄ると確かに中にはビッグホーネットがまだ6匹とちょっと大き目の反応が1つある。
 小さい蜂の反応は確認できない。あれくらい小さいと気配察知には引っかからないようだ。

 まぁ引っかかってもうざいだけだからいいけど。


「なんだろう、女王蜂かな?」

「答えは是。巣にはリーダーとなるものが必ずいます」

「にゃるほど。でもどうやったらでてくるのかな。
 もっかい煙でも入れてみる?」


 取ってきた煙木はまだ残っている。
 巣の中からはまだ煙が立ち昇っているけど、追い討ちで煙をぶち込んでもいい。
 煙木を手の中で玩んでいると、女王が動き出したのがわかった。


「来るかな?」


 アルはすでに盾を構えいつでも動ける体勢だ。
 オレもその後ろで相手の動きを捉えていていつでも行動できる。

 先ほどと同じように先に飛び出てきたのは女王の護衛でもしているのか残った6匹のビッグホーネット。
 だがすぐさま火の矢が迫り、次々と地面に落下し痙攣し始める。
 全ての護衛を地面に叩き落したところで女王は姿を現した。


「あれって飛べるの……?」

「答えは是。女王蜂も飛行は可能にございます」


 出てきた女王蜂はビッグホーネットを少し大きくして尾の部分を若干長くした感じの姿をしていた。
 動きも鈍重ですぐさま飛ぶようなこともない。

 護衛のビッグホーネットももう残っていないし、これではただの的だ。

 チラッと後ろに待機しているレーネさんに視線を向けると、ゆっくりと頷いたので少し大きめにした火の矢を3本女王に投げつけてみた。

 他のビッグホーネットは羽音以外ほとんど音を立てなかったのに比べて女王は断末魔のような悲鳴を小さくあげて息絶えた。
 女王はちょっと他のヤツラとは違うのだろう。
 もしかしてクイーンとかつくタイプなのかもしれない。女王だけに。

 まぁまったく苦戦しなかったどころか楽勝過ぎたけど、これで討伐依頼もクリアしたしあとは蜜の採取だ。

 アルが警戒しながらもビッグホーネット達の死体を解体し始める。
 オレは岩食いペンギンの時のようにシートを広げて場所を確保すると、スキルリセットで初級魔法:水を戻してゴミを洗い流すための水を桶に入れておいた。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 巣からは未だ煙があがっているためどうしようかと眺めていると、レーネさんが横に立って戦闘の評価と解決策を教えてくれた。


【お疲れ様です。正直に感想を述べますね。
 ワタリさんの魔法の制御は一流魔法使い並だと思います。それに加え、詠唱省略で隙をまったく与えない戦法には驚嘆の一言です。
 アルさんの防御技術も一流に迫る無駄な動きの一切ない素晴らしいものでした。
 その若さでこれほどの実力を持っているとはやはり私の目は正しかったと思います。これならすぐに高ランクにあがるのも夢じゃありません。
 あと煙ですが、まず煙木を取り除いて、煙が晴れるのを待つのが基本ですがワタリさんなら初級魔法:風が使えますので少し風を送ってやればすぐに晴れますよ】

【ありがとうございます、やってみますね】


 オレの答えにレーネさんはにっこり微笑んでくれる。
 お褒めの言葉も授かり意気揚々と教えてもらった作業をすることにする。

 アルが作業している中、巣に近寄り煙木を除去しようとするのだが結構奥まで入ってしまったようだ。
 なので残っていた煙木の長い枝を使って煙木をなんとか除去すると、またスキルリセットで初級魔法:風に戻して風を送って煙を追い出しにかかる。

 5分かからないうちに煙はなくなり、準備は整った。

 アルの作業もすでに終わっており、シートの上には薄い膜に包まれたカプセルのような物が数個と太い針が20本以上。
 1つだけ色の違う針があったがこれが女王の素材だろうか。


        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 ビッグホーネットクイーンの麻痺針
 ランドール大陸の荒地に生息する蜂型の魔物のリーダー格の針。
 通常のビッグホーネットより遥かに強い麻痺力を誇る針。
 刺されると呼吸困難になるほどの強力な麻痺を引き起こす。

        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 鑑定してみると結構すごい物なようだ。
 レーネさんからも祝福の言葉を頂いた。どうやらレアらしい。

 きっと武器なんかに使って麻痺属性を与えたりするんだろう。
 いいよね麻痺属性。

 それにしても呼吸困難を引き起こすほどの強力な麻痺なのか……。さっさと倒してしまってよかった。
 でも女王ってものすごく鈍重だったけど、あれは卵でも産んでいたのだろうか。


 シートの上に集められた素材を回収し、片付けも済んだので次は蜜採取に移る事にした。


 煙を除去した巣には気配察知に反応するものはいない。
 ただ小さい蜂は気配察知ではわからないので若干の注意は必要だ。

 巣を崩さないように慎重に、だが巣自体が大きいのでちんたらやってる暇はないのでそれなりに大胆に外壁を破壊していく。
 破壊には以前買った木のスコップを使っている。
 若干外側が硬かったくらいでそれ以外は特に苦労することもなく外壁を破壊し終わり、中から親指くらいの幼虫が姿を現した。


「蜂の子かぁ……こっちでは食べたりするのかな?」

【クリーミーで美味しいですよ】

【あ、やっぱり食べるんだ。じゃあ回収しますか?】

【そうですね。全部は時間がかかるので少しだけ回収しましょう。お手伝いします】


 レーネさんも参加してぶよぶよの幼虫を集めて桶の中に入れていく。
 ほとんどの幼虫は死んでいたが中には生きているものもいた。まぁでも関係ないので全部桶の中に入れていく。

 ちなみに蜂の子は蛋白質が豊富で割と美味しい。
 甘露煮にしたり、佃煮にしたり、変わったところでは素揚げや生で食べたりもする。

 桶いっぱいに集めるともういいだろうと蜜の採取を始める。
 蜜は6角形の区切りの中にびっしりと入っていて非常に綺麗だ。
 寄り集まるようにして大量に出てきた6角形の塊達を壊さないように巣から外し、また広げたシートの上に置いていく。

 蜜を採取するといっても濾過したりして不純物を除去し、加工するのはオレ達の仕事ではない。
 なので蜂の巣のまま持って行っても問題はないのだ。


 3mはあった蜂の巣がどんどん解体されていく。
 ビッグホーネット討伐はあっという間だったが、巣の解体には2時間くらい時間をかけて漸く全ての解体を終わらせた。
 蜜は全部で50kgくらい取れたが余分な巣の部分も含めているので実際はもっと少ないだろう。
 だが依頼の分は遥かに超えているので問題ない。どうやらこの巣はかなり大きい部類のものらしい。
 普通ならこの10分の1程度の量しか取れないそうだ。
 まぁ確かにあの量のビッグホーネットがどこに入っていたのかと思っていたが、地下部分にもそれなりに巣が広がっていたので納得した。その分でこの量になったのだ。

 余った分は加工する場所を教えてもらって綺麗にしてもらおう。きっとアルが美味しく調理してくれる。
 全てアイテムボックスに回収すると、やはりレーネさんが目を白黒していた。


【……ワタリさんはアイテムボックスも拡張しているんですか……?】

【あ、はい。えへへ】


 曖昧に笑って誤魔化すとレーネさんも釣られて笑う。
 ほんわかした空間が形成されたビッグホーネットの巣跡地には少し乾いた風が優しく頬を撫でていった。

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