幼女と執事が異世界で

天界

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第3章

60,指輪

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 ネーシャの弟子入り話もまとまったところで他の目的も済ませることにした。
 欲しいのはアルとネーシャの防具とMPタンク系の魔道具だ。


「で、どんなのが欲しいの?」

「ユユ、おまえはカウンターに行ってろ。俺が相手する」

「えぇ!? お父ちゃんばっかりずるいよ! こんな可愛い子なのにお父ちゃんのセンスに任せたら機能性重視になっちゃうじゃん!」

「あの……機能性重視でいいんだけど……」

「えぇ!? だ、だめだよ! 女の子はオシャレしないとだめだよ!?」

「おまえは自分の格好見てからいったらどうだ?」

「はぅ! お父ちゃんはなんて酷いこというの!?」

「言われたくなかったら着替えて来い。よっと」

「くぅ……。おぼえてろー!」


 ゴーシュさんにカウンターの奥に押し込められたユユさんが捨て台詞と共に遠ざかっていく。
 まぁ確かに自分のことを棚にあげてたな。
 謎皮製のオーバーオールはところどころ結構汚れていたし、あの格好で機能性重視じゃないオシャレといわれても正直困る。


「さて、邪魔者がいなくなったところで防具の傾向は考えているのか?」

「えっと、不意打ちなんかに強いタイプがいいんですが見ての通り、2人共軽量型なのであまり重いのや動きづらいのはだめですね。
 2人は何かリクエストとかある?」

「答えは否。私はワタリ様が選んで下さる物が至宝にございます」

「あ、あたしもです!」

「うーん……。君達が使うんだからね? あとで気に入らないとか言われても困るよー?」

「主より賜る物を拒否するなど臣下にあるまじき事にございます」

「お嬢様が下さる物は至宝です!」


 アルは通常進行としてネーシャもだんだんアルに毒されてきてるなぁ……。


「まぁなら携帯できる物でいつでも身につけられるアクセサリーの類にしたらどうだ?」

「あー……。いいかもしれないですね。あ、でもあんまり高いのはだめですよ?」

「あいつの初めての弟子とその保護者だからな、大サービスしてやろう」

「本当ですか!? やった!」


 それなりの出費を覚悟していただけにこの申し出は嬉しい。

 さっそくゴーシュさんがいくつかのアクセサリーを持ってきてくれる。
 光の加減で4色に光る大きな宝石をあしらった首飾りや、精緻な細工の施された指輪などたくさんのアクセサリーがテーブルに並べられる。


「不意打ち対策だとこの辺だな。どれも不意の衝撃などに対して自動で発動する優れものだ。
 当然任意で発動も可能で、使用回数は10回程度だ。使っても魔力を補充してやれば磨耗しすぎなければ何度でも使える」

「へぇー。どのくらいの衝撃に耐えられてどの程度のスピードまで感知できるものなんでしょう?」

「衝撃ならそうだな、こいつでぶったたいても問題ない」


 そう言ってカウンター奥から取り出してきたのはグレイトコーンよりは2回り程度小さいがそれでも大金槌と呼ぶに相応しい大きさの槌だった。


「おぉー。ということは結構な衝撃に耐えられますね」

「まぁ実際に見た方が早いだろう。こっちだ」


 案内されたのはカウンター奥にある通路を少し進んだところにある少し広めの場所だった。
 店の外観からして一体どこにこんなスペースがあったのか不明だがあるんだから仕方ない。
 すごい魔道具がたくさん売っているだけあってきっと魔法のスペース内に建てられているに違いない。
 相変わらず店に誰もいなくなってしまっているがいいんだろうか。


「さてよくみてろよ」


 案内された部屋は石畳で補強された20畳ほどの広さを持った部屋だった。
 各所に鎧を纏った人形や鉄製っぽい台などが置いてあったりして、武具の試し場みたいな感じだった。

 その中にある鉄製っぽい台の上に先ほどのアクセサリーのうちの指輪タイプを置くと、ニヤリと自信に満ちたあくどい笑顔で大金槌を振り上げる。
 ゴーシュさんの腕の筋肉が盛り上がったかと思った次の瞬間には凄まじいスピードで振り下ろされたが、指輪には接触することなく音も無く停止していた。
 どうやら自動発動した防御の魔法か何かが大金槌の破壊力を全て無効化したようだ。しかも接触時の音なんかも無効化している。指輪と槌との距離も50cmはあるし、かなり有効範囲も広い。


「ほれ、嬢ちゃんもやってみろ」

「あ、はい」

「本気でやっても構わんぞ?」


 先ほどのデモンストレーションを見せられればこのあくどい笑顔も納得というものだ。
 渡された大金槌はやはりグレートコーンよりはかなり軽く、片手で高速で振り回せるレベルのようだ。
 材質もかなり頑丈そうなので相当強めに叩いても大丈夫だろう。

 ただやはり指輪の防御力の限界がよくわからないので本気でやって壊してしまったら弁償しないといけないと思うので軽くからやってみることにした。

 ゴーシュさんは両手持ちで振り下ろしていたが、オレの筋力値は結構な値なのでまずは片手でやってみることにして素早く軽く振り下ろしてみる。
 そこそこの速さで振り下ろされた槌は先ほど同様に音も無く指輪の障壁により完全に衝撃を殺されてしまう。
 手ごたえという物がまったく感じられずまるでピコピコハンマーでクッションでも叩いたかのような感じだ。


「これはすごいですねぇ」

「いやいや、すごいのは嬢ちゃんだろう。この大金槌は結構な重量があるんだぞ? それを片手でそこまで早く扱えるってのは……。一体どういう筋力してんだ? 嬢ちゃん魔法タイプじゃなかったのかよ」


 おっと、ついグレートコーンと比べてしまったけどこれはこれで結構な重量らしい。
 超重量のグレートコーンですら片手で扱えるオレが軽く感じても、普通の人には重いのだ。これは失敗した。次から気をつけよう。


「えっと、普段もっと重いの使ってるので……。あはは」

「ちょっとその普段使ってるの見せてもらえないか?」

「えっと……」


 今更だけどどうしようかとアルに視線を向けてみると軽く頷いてくれる。
 アル的にはもう色々見せすぎているので今更だということだろう。アルからもお許しが出たのなら問題ない。

 アイテムボックスからグレートコーンを出して石畳に置くとさすがに宿屋の床とは違い、ミシミシいうこともなく普通に置けた。


「こりゃぁ……。こんなもんを普段使ってるのか嬢ちゃんは……」

「えっと……。あはは」

「いや、たいしたもんだ。ありがとよ。うちには今のところこれ程の重量級はないからな。お奨めもできんわ」

「あはは……」


 グレートコーンを青筋立ててなんとか持ち上げたゴーシュさんは1度振りかぶって見せる。
 これだけでもオーラシア武具店のマッチョ店員よりは遥かに筋力があるのがわかる。さすがだ。
 でも片手でオレみたいにひょいひょい扱えるわけではないようで両手でもかなりきついようだ。
 改めて筋力増加の恩恵の凄まじさを目の当たりにしてつくづくチートってすごいと思った。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 その後は自称目いっぱいオシャレしてきたというユユさんと合流して色々お奨めされたりしたが、結局購入したのは懐の関係上3つで1つの指輪。

 なんだかんだと見ていたらオレも欲しくなってしまったので、3人でお揃いになるように同じデザインの物にしたかったのでちょうどいい。隠し機能として3人で装備して合わせる事により強力な結界を張ることが出来るというなかなかイケテル指輪に決定した。

 ちなみに値段はラード金貨6枚。
 弟子入り記念で3分の1にしてもらってこれである。

 だが単体での防御障壁も相当な衝撃まで耐えられるし、上限となる回数も10回以上だ。
 ただその代わり消費MPが結構高く2人ではとてもじゃないが補充できない。なので補充はオレの仕事だ。
 ちなみにMPタンク系の魔道具から直接MP供給もできるそうだ。
 自動で発動する条件も小石が軽く転がってきた程度の物なら発動せず、ある程度以上の衝撃に対して発動するそうだ。それ以外にも悪意を自動で感知して発動したりもするそうだ。
 殺気を叩きつけられたりしても防いでくれるらしく、衝撃以外でも防御できる優れものだ。
 もちろん魔法や状態異常攻撃にも対応している。当然サイズ調整の刻印も入っているので全員の指にぴったりと嵌っている。
 はっきりいってとんでも性能である。
 諸々な理由で頭部の装備もないし、割と軽装な装備なのでこのオート防壁は非常に助かる。

 3人合わせた結界は蓄積されたMPの9割を消費して作成される防御障壁らしくその強度は凄まじいものだそうだ。ただ3人が装備した状態で合わせないといけないのが難点だろうか。
 それでもなかなかすごい買い物をしたと思う。

 それはソレとして金貨18枚の品を弟子入り記念とはいえ3分の1で譲ってくれるなんてどんだけ弟子入りが嬉しかったのか。たぶん鍛冶神の加護持ちというレアな人材だったのもあるんだろう。あとはやはりユユさんのものすごい喜びようもあるだろうか。
 なんだかんだでゴーシュさんはユユさんが可愛いらしい。親ばかめっ。

 ちなみに約7割引きしてもらっても金貨6枚は痛すぎるのでMPタンクはまたの機会ということにした。
 だってさり気無く値段を聞いてみたら、この店で扱ってる物は軒並み金貨10枚以上だというのだから……。


「ワタリ様、ありがとうございます。一生の宝とさせて頂きます」

「お嬢様、ありがとうございます! あたしこんな綺麗なすごい指輪つけたの初めてです! 綺麗……」

「これで2人共不意打ちを食らってもある程度大丈夫だね」


 アルとネーシャが深々と頭を下げる。
 ネーシャは頭を下げた後、嵌めた指輪を天井のランタンの光に翳してウットリしている。やっぱり光物には弱いらしい。
 頬を少し紅潮させて蕩けるように相好を崩しているネーシャを微笑ましく眺めながら視界の端でさりげなくユユさんを捉える。

 彼女曰く目いっぱいオシャレしてきたらしいその格好。
 なんというかどこぞのチンピラが着ていそうな昇り竜のジャケットと穴の空いたダメージジーンズ。頭には鉢巻という謎すぎるスタイルだ。
 一体どうしたらこの衣装でオシャレといえるのだろうか。
 だが深く突っ込んではいけない。ゴーシュさんも特に突っ込んでいないし、アルもネーシャも何もいっていない。
 いや言えないのか……?

 とにかく周りの反応からオレも突っ込んだら負けだと思いスルー能力全開でいるんだが、どうしても目に入ってしまうしユユさんのにっこにこの自信満々の笑顔を見てしまうと……。

 これは何の試練なんだろうか……。

 普段エリザベートさんとアルに可愛い格好ばかりさせられているオレとしては逆に非常に気になってしまう。

 だが最後の最後まで結局突っ込むこともできず、悶々とした物を抱えたままその日はランカスター魔道具店を後にするのだった。

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