幼女と執事が異世界で

天界

文字の大きさ
56 / 183
第3章

55,竜虎相まみえる

しおりを挟む
 アルとネーシャに解体と回収を任せると突撃して返り討ちに遭いそうになった男を連れてハッシュがやってきた。


「嬢ちゃん、すげぇんだな……」

「助かったよ……。酒場では……その……すまなかった……」

「あー、別に気にしないでください。これも護衛の任務内ってことで」

「そういってくれると助かる。恐らくあのでかいヤツはこの群のボスだろう。
 岩食いペンギンはボスを倒されると散り散りに逃げるから、もう大丈夫だろう。
 だが念のため討伐依頼は取り下げて巣の調査とアレがボスじゃない場合も含めて調べてもらうつもりだ。
 出来れば嬢ちゃんに受けてほしいんだが、指名してもいいか?」

「えっと……。すみません。巣の調査となると林道というか、あの森の方に入っていかないといけないですよね?」

「あぁ、そうなるな。あー……あの子が心配なのか」

「はい、今はまだ危険なところにいくつもりはないのですみません」

「だったら誰かに預けるなりしたらいいんじゃないのか?」

「おい、ランド! 嬢ちゃん達には嬢ちゃん達の都合があるんだ、無理言うな」

「だ、だけどよぉ」

「いや、すまなかったな。さっきの話は忘れてくれ。代わりといっちゃなんだがラッシュの街までの護衛を引き受けてくれないだろうか? もちろん報酬は今回の護衛に上乗せするし、ギルドには事後報告依頼とするからよ」

「構いませんけど、こっち方面に来る予定の乗合馬車は今壊れてて帰るのが大変ですよ?」

「そ、そうなのか? それは困ったな。だが早くギルドに依頼を出したいしな……」


 皆と相談してくるといって離れていったハッシュを見送り、素材の回収をしようと振り返ると、シートの上には魔結晶が1つ乗っているのが見えた。


「お、魔結晶だ! ボスから出たのかな? ラッキー」

「答えは是。その通りにございます」

「おめでとうございます、お嬢様! あたし始めて見ました!」

「うん、ありがとう。2人共」


 さっそく鑑定を使ってみる。


        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 魔結晶【人鳥】
 ペンギン系魔物の体内で結晶化した魔力の塊。
 非常に希少で、魔結晶を生成するまでに到った魔物はかなり強くなる。
 空いているスロットに装着することにより、付与効果を与える。
 付与効果土耐性【弱】

        ■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 人鳥……。
 ペンギンの和名だっけ? うろ覚えだ……。
 効果は土耐性【弱】か。弱かぁ……。

 ラージラビットから出た魔結晶と比べるとどうしても見劣りしてしまう効果だ。
 魔結晶にはやはりピンキリがあるようだ。せっかくでたのになんだか喜べない。
 こんなしょぼい効果だと売っても二束三文なんじゃないのかなぁ……。

 もしかしたら何かに使えるかもしれないのでとりあえず保留ということで素材を回収していく。
 念のためアルの近くでリール村の男達に見えないようにアイテムボックスに詰め込んでいく。
 とはいっても数もそんなに多くなかったので素材も少なくすぐに済んだ。

 魔結晶以外は特に新しい素材もなく、今回も肉が大目だったので帰ったらアルかマスターに何か作ってもらうのもいいかもしれない。


「嬢ちゃん、いいかい?」

「あ、はい」


 どんな肉料理が出来るかと妄想していると相談を終えたのかハッシュが戻ってきた。あの自殺志願者男は今回は付き添わないようだ。まぁさっきは助けてもらった感謝と酒場で怒鳴った謝罪を言いに来ただけだろうし。


「さっきのラッシュの街までの護衛の話だが頼めるか? もちろん片道だけでいい」

「はい、構いませんよ。どうせ帰るつもりですし」

「じゃあすまないが頼む。帰りは乗合馬車が直るまで待って戻らせるつもりだ。
 とりあえず村に戻ろう。ここまでの護衛の報酬とラッシュの街までの護衛のギルドへの事後報告書類を作らないとな」

「わかりました。一応魔物が出るといけないので来たときと同じようにしていきましょう」

「まぁ俺達は毎日ここへ通ってるから大丈夫だとは思うんだが、ここは嬢ちゃんの指示に従わせてもらうよ」

「まだ岩食いペンギンが近くにいないとも限りませんからね」

「あぁそうだったな。例えボスが倒されてすぐに逃げるといっても帰り道でばったりなんてこともあるかもしれんしな。さすが冒険者だな!」

「あはは……」


 ガッハッハ、と大きな声で笑うハッシュに続くようにその背後にいた男達も楽しげに笑い出す。
 そんなハッシュに肩をバンバン、と叩かれたあと無事リール村に戻った。






      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「じゃあよろしく頼む」

「はい、任されました」

「いってくるっす、親方!」


 採掘場までの護衛の報酬とラッシュの街までの護衛の報酬に葡萄ジュースの大樽を2樽ほど貰い、ギルドに事後報告するための書類を2枚貰った。
 この事後報告書があればギルドを通さない依頼であっても、ギルドを通した依頼での貢献度よりはずいぶん下がるが次のランクへの貢献度がもらえる。
 もちろん不正防止の為に村や街などの村長や町長クラスのある程度信頼のおける人物のサインがなければいけない。このサインも魔力で個人識別できるという優れものだ。

 ラッシュの街までの護衛対象はもし襲われて逃げる際の足の速さなどを考慮にいれて、採掘場にひとっ走りした足自慢のニールがいくことになった。

 まぁ転移しまくりだから足の速さとか関係ないんだけどね。
 すでに氷の槍で岩食いペンギンを瞬殺しているのを見せていたりするので別に隠す必要もないだろうと、帰りも転移で帰ることに決めている。正直歩いて帰るのは時間もかかるしめんどくさい。

 ニールをPT編成でPTに加入させると、本人もハッシュ達もずいぶん驚いていた。
 普通冒険者はPT編成を取得しないものだからだ。特に魔法使いと思われているオレはそんな余分なものを取得するくらいなら魔力やMPに振った方がマシだからすごく意外だったようだ。
 まぁ苦笑してついほしくてと言ったら納得していた。

 PT機能は非常に有用だ。
 だからギルドに行かなければPT編成できないのは手間だし、いつでもPT編成しなおせるのは魅力だろう。
 それでも1ポイントという重みがのしかかり取らない人が多い。だが実のところポイントが足りなくて次のレベルアップまで余っていたりするとつい取ってしまう人もそれなりにいるそうだ。
 そういうこともあり、見た目年齢とはまるで違う戦闘力を持っているオレに岩食いペンギンを退治してもらったとはいえ、若干の怯えが見えていたのが親しみに切り替わっていた。
 目を逸らす格好の材料が出てきたからだともいえるが。


「ではこれで」

「おう、気をつけてな! ニール、しっかり依頼してこいよ!」

「わかってますよ、親方ぁ」


 ハッシュを先頭にたくさんの男達に見送られてリール村を出発。
 街道に戻ってからさっそく転移して移動することにした。


「じゃあニールさん。転移しますので~」

「え、転移?」

「はい、みんないくよ~。複数転移Lv1」

「うぉあ! す、すげー!」


 瞬き1つする間もなく視界が入れ替わり転移が完了するとニールが飛び上がって歓声を上げる。
 それを苦笑しつつも、微笑ましく思いながらも連続で転移していく。

 何度も転移してはしゃぐニールが面白かったくらいで帰り道も特に何事もなく、まだ乗合馬車も直っていないのか誰ともすれ違うことなくラッシュの街近くまで到着した。


「あれ? もう転移しないんすか? もう少しですよ?」

「うん、街の近くでは使わないようにしてるんだ」

「そうなんですかー、なんでですかね?」


 転移が使えることや岩食いペンギンとの戦闘を見ているニールは6歳児にしか見えないオレにすっかり敬語だ。


「ラッシュの街は結構大きいでしょ? だから目立つのも面倒だからかなー」

「でも冒険者だったら目立った方が仕事が来るんじゃないですかねぇ」

「ほら、うちは危ない仕事とか請けるつもりないからさ」

「あー……そうっすね!」

「うん、というわけで内緒ね」

「わかりやした、姐さん!」

「あはは……」


 どうでもいいけど慕ってくれるのは嬉しいけど姐さんはやめてほしい……。
 その後も目を輝かせながらはしゃぐ子供のように色々聞いてくるニールに苦笑しつつ、適当に返答しているとすぐに冒険者ギルドについた。


「じゃあ俺はさっそく依頼してくるっす。ありがとうございました、姐さん!」

「うん、帰り道気をつけてね」

「任せてくれっす! それじゃあまたリール村近くまで来たら顔出してほしいっす! 大歓迎っすよ!」

「わかった。またねー」

「またっすー!」


 ギルド前で護衛終了の微妙な挨拶を交わし別れる。
 とはいっても行く場所はあまり変わらない。ニールは近場の受付に行って依頼の変更と新しい依頼を行い、オレはエリザベートさんを呼んでもらう。

 なぜわざわざエリザベートさんを呼ぶかというと……。


「ワタリちゃああああああん!」

「ただいまです、エリザベートさん」

「怪我はない!? 大丈夫だった!? 無理してない!?」

「あはは、大丈夫ですよ。ついでにちょっと退治してきましたから!」

「だ、だめでしょ! 危ないじゃない! ワタリちゃんの可愛い顔や体に傷がついたらどうするの!? あ、でもワタリちゃんは回復……」

「エリザベートさぁーん」

「あ、う……。ご、ごめんなさい、内緒だったわね」

「まぁいいですけどー。人も全然いませんし」


 お昼過ぎて今は特に人がいない時間帯のようでニールと最低限の職員以外は誰もいない。
 受付も2人だけ。受付の奥で作業している人もまばらで2人くらいだ。
 そんな少ない人数でもエリザベートさんを呼んでもらったのは当然彼女から帰ってきたらすぐ自分を呼ぶように何度も何度も念を押されたからだ。
 まぁオレとしても知り合いの方がいいし何も問題ない。問題ない……はず。


「とにかく、怪我はないのね? 無理もしてないのね?」

「大丈夫ですよ~。私だけじゃなくてアルもネーシャも怪我1つありませんよ」

「よかったわぁ……。今日はほんと生きた心地がしなかったんだから……」

「そ、そこまでですか……」

「そうよ! 当たり前じゃない! まったくワタリちゃんはわかってないわ……。私がどれだけワタリちゃんのことを心配したか!」

「す、すみません?」

「まったくもう! これに懲りたら私の家で暮らしましょう! そうしましょう! それがいいわ! さぁ善は急げよ!」

「そこまでにございます」

「くっ! また邪魔をするの!?」

「そこまでにございます」

「今日こそあなたを倒してワタリちゃんを私のものにしてやるんだからーッ!」

「あーまた始まった……。ネーシャ行こうか?」

「えっ……。えっ……? いいんですか、お嬢様?」

「いいのいいの。いつものことだから、もう慣れちゃった。だからネーシャも慣れてね~」

「は、はい……」


 ふしゃー、がおーと竜虎相まみえる状態の2人とオレを交互に見てあわあわしているネーシャに真面目に相手すると疲れるよ~、と適当に言っておく。

 エリザベートさんに依頼処理してもらおうと思っていたのにまったくもう、と思いながらも竜虎状態の2人を見て苦笑している受付のお姉さんのカウンターに向かうのだった。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。 真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。 気付いたら知らない所にいたの。 とてもこまったの。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

処理中です...